一
それは唐突に起きた。
草木も眠る丑三つ時、突然の地鳴りと共に紅き洋館が姿を表した。
洋館は配下であろう下級妖怪を吐き出し周辺に居た者(森の中なので妖怪しか居なかったが)を惨殺していく。
数刻後、舘の回りには静寂が訪れた。結果は舘側の圧勝。幻想郷の妖怪たちも抵抗したものの、徒に死ぬまでの時間を伸ばしただけだった。
一仕事を終えた下級妖怪たちはひとつ勝利の雄叫びを上げ夜の森の中へ進んでいった。恐らくは新しく寝床を作るのだろう。血濡れた斧や剣を持った彼らは宵闇の中へ進む。
そうした後、完全に無音が支配した舘から一人の女性が出てきた。中国を彷彿とさせる服装に紅い髪が特徴的な女性だ。
「ん~ついに始まりましたね~!」
呑気な声でひとりごちる。
「吸血鬼の、吸血鬼による、吸血鬼の為の侵略!まぁ私としては力を試せる場があれば何でもいいんですがね」
屈伸等、柔軟をしつつ体のコンディションを見ているようだ。しばらくそれを繰り返しつつなおも独り言を続ける。
「しかしここも空気が良いですねぇ。目の前の湖も綺麗ですし、一段落ついたら観光というのもよいかもしれませんね」
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幻想郷の賢者、八雲紫は悩んでいた。
「何でこんな時期に……ッ」
博麗の巫女が亡くなり数ヶ月、現在は次代の巫女となるべく霊夢が修行を続けている。1、2年もすれば十分に役目をこなせるようになるだろう。しかし
「時間が足りない、だろう?」
そこに入ってきたのは狸の尾をたらす青年だ。へらへらと笑いつつ近づいてくる。
「まぁ時間っつーか人手が足らんな」
「そんなことは分かってるわ。早く手を打たないと手遅れに……」
「ということで、こんなもの用意しました~」
狸の彼は紫に数枚の紙を渡す。
それは《八雲紫に一度だけ力を貸す》という旨の内容が書かれた契約書であった。紙に載る名はどれも郷のトップランカー。
「っ!」
「くくっ」
思わず驚愕の表情を見せる紫に狸の青年は笑いを返す。
「土下座して交換条件出して喧嘩吹っ掛けてと色々やったんだぜ?これ使ってどうにかしてくれや賢者サマ?」
いやらしい笑みで煽る青年に紫は苦虫を噛み潰したような表情になる。
「……ええ、これならばなんとかしてみせます」
「そうこなくっちゃ!仮にも妖怪の賢者って名乗ってんだ、ここ越えなきゃあかんでしょうよ!」
青年は大袈裟な身振り手振りを交えそう言うと踵を返し部屋を出ていく。
「夕」
その後ろ姿に声を掛ける。
「なんだ」
「ありがとう」
「……どういたしまして、我らが主紫様」
そうして狸の青年/夕は部屋を後にした。
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「んー……?」
森の中、チルノは騒音で目を覚ました。とはいえ寝ぼけ眼でだ。場所は廃屋。恐らく外で忘れられた小屋だろう。寝床として改装したここで大妖精と共に生活していた。
「なんだろ……」
チルノは壁に立て掛けていた長い棒状の物を手に外へ出る。
開くドア
知らない顔
降り下ろされる大鉈
受け流す
蹴り飛ばす
そこでチルノは危険の中に居ることを知る。
「大ちゃん!!!」
「ふぇっ!?」
全力の大声で大妖精を起こし、
「大ちゃんはみんなを捕まえてけーねの所に。あたいも後で追い付く」
そう言って先程蹴り飛ばした知らないヤツを追いかける。その顔に少し前の寝ぼけ顔は無く、戦闘に期待する猛者の顔であった。
「よっしゃ相棒!久しぶりにあたいらの力見せつけるよ!」
手にするは無骨ながら実用的な直剣。剣士チルノは侵略者に力を示すため行動を開始する。
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紅魔館単独で始められる吸血鬼異変、いるはずの無い狸の八雲、妖精の域を越えんとする剣士チルノ。本来の歴史から乖離する現実。それでも世界は回る。否が応でも進んでいく。
「そんなことより納豆食べたい」
「お嬢様……」
と言うことで初めまして。本作品は紅魔館に住まう転生者を主人公にしたものでした。
……主人公何処だ。はい過去形ですね消し飛びました。
ぶっちゃけほのぼの系書きたかったのにシリアス走ってませんかこれ。何でだろう。
後書きも見切り発車なためにしっちゃかめっちゃかで申し訳無い。