私がハリーたちを待ち構えた日から、三日が経った。学校中に、ハリーが悪者だったクィレルを倒した、と噂が流れている。その噂を流したのは実は私なんだけどね。
「明日でホグワーツともお別れかぁ。寂しいなぁ」
「いや、一ヶ月もしたらまた来るから」
隣の席では、ミッコとアキが漫才みたいなことをしている。見慣れた日常だ。
◇◇◇◇
蛇の横断幕が掲げられた大広間で、私は二人とかぼちゃジュースを飲む。一ヶ月ほど、この味ともお別れだ。戦車の整備もあまりできなるなる。
「ミカの家って、どんな所なの?」
「普通のログハウスだよ。ハグリッドの小屋よりかは広いかな」
「なんか、動物がいっぱい寄ってきそうなイメージがあるんだけど……」
「わかる。ムー○ン谷って感じ」
「誰がスナ○キンだって?」
バタン、と大広間の扉が開く。現れたのは、ハリーだった。全員が彼の方を向き、静まり返る。そして、またうるさくなり始めた。
すぐにダンブルドアが現れ、彼の話が始まった。
「また、一年が過ぎた。さて、ご馳走にかぶりつく前に、この老いぼれの話を聞いてほしい。良い一年じゃった……しかし、もうすぐ夏休み。おそらくは、夏休みの間に君たちの頭の中は綺麗さっぱり、空っぽになるじゃろう。わしは宿題は出さんよ。様々な先生から山のように宿題が出されているはずじゃからのう。主に、マクゴナガル先生から」
大当たり。マクゴナガル先生からは夏休み半分を使ってようやく終わる、というほど多くの宿題が出ている。
「では、お待ちかねの寮対抗杯の表彰を行うとしよう。四位はグリフィンドール、三百十二点。三位、ハッフルパフ、三百五十二点。二位のレイブンクローは四百二十六点。スリザリンは四百七十二点じゃ」
スリザリンのテーブルから歓声が巻き起こる。反対に、グリフィンドールのテーブルの空気は重く、暗い。
「スリザリンはこれで七年連続なんだってさ」
「まさか、来年もスリザリンが取ったりしないよね?」
アキとミッコは気づいていないみたいだけど、ダンブルドアの目が、悪戯っ子のようにキラキラしている。やっぱり、大番狂わせは起きるようだね。
「スリザリンはよくやったと褒めよう。しかし、つい最近の出来事も勘定に含めなくてはなるまいて」
部屋全体が静まり返り、ダンブルドアに注目する。
「駆け込みの点数をいくつか与えよう。まずはロナルド・ウィーズリー君。ここ何年か、ホグワーツで見ることのできなかった、最高のチェス・ゲームを見せてくれた。よって、五十点をグリフィンドールに」
浮かぶろうそくが揺れ、いくつかの火が消えた。それほどに、グリフィンドールからの歓声は大きかった。パーシーがはしゃいでいる。
「次はハーマイオニー・グレンジャー嬢じゃ。火に囲まれながら、冷静な論理を用いて対処したことを称える。五十点をグリフィンドールに与えよう」
再び歓声が上がる。そして、その歓声が鳴り止まぬうちに、次の追加得点が発表された。
「三番目はハリー・ポッター君。その完璧な精神力と、並外れた勇気を称え、グリフィンドールに六十点を与える」
ようやく付いたろうそくの火が再び消えた。耳が割れるほどの騒音が、グリフィンドールのテーブルから上がった。
「これで、グリフィンドールとスリザリンが並んだね」
「でもさ……ダンブルドア、まだ何か企んでない?」
「正解、だろうね」
ミッコの言う通り。ダンブルドアが右手を上げてみんなを黙らせる。
「勇気にも色々ある。敵に立ち向かうには大きな勇気がいるが、味方の友人に立ち向かうにはもっと勇気がいるじゃろう。そこで、わしは、ネビル・ロングボトム君に十点を与えたい」
瞬間、大広間から全ての音が消えた。より正確に言うなら、グリフィンドールの大歓声により、全ての音が掻き消され、うるさ過ぎて歓声も聞こえなくなっていた。パーシーは人目を憚らず狂喜乱舞していた。
「えー……誰も聞いておらぬとは思うが、もう一人だけ。敵と認識されるかもしれん状況下で、適切なアドバイスを授けたことを称え、ミカ・クリスティに十点を与えよう。
よって点数が大きく変更されたのう。レイブンクローが四百三十六点に、グリフィンドールが四百八十二点に上がった。したがって、大広間の飾り付けを変えねばならんのう」
私の名前はさらっと流され、ダンブルドアが手を叩く。スリザリンカラーの幕はグリフィンドールカラーに変わり、蛇は獅子に変化する。
そのあとは、スリザリン以外は飲めや歌えやの大騒ぎ。ペネロピー・クリアウォーターとパーシー・ウィーズリーが抱き合ったり、ネビルが胴上げされたり、私がミッコとアキに弄られたりして、宴は終わった。