俺は大和さんに怒られたい。   作:LinoKa

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第13話(裏) 嫌われたくないんです

 

 

私は入渠ドックにいた。かれこれ、2日くらいここに浸かっている。身体の傷はほとんど全快しつつあるが、私の心は落ち込むばかりだった。

前の出撃の時に、提督と言い合いになってしまった。その結果、私はあの提督が手を出す程の事を言ってしまった。

__________もう、提督に合わせる顔なんてない。

 

「……………はぁ」

 

考えれば考えるほど落ち込む。他の艦の子達は「大和さんは間違ってない!」とか言ってくれてたけど、それでも気は沈んで行った。

 

「………はぁ」

 

二度目のため息が漏れた。あんな事じゃ、提督にも嫌われたに決まってる。

提督は、大和の身を案じて言ってくれたのに。

私は、提督に、司令を出す者の資格がないなんて言ってしまった。

思わず目に涙を浮かべると、入渠ドックの扉が開いたため、慌てて涙を拭った。

 

「いるか?大和」

「武蔵か……。良かった、提督だったらどうしようかと思っちゃった」

「あいつは来ないだろう」

「ッ………」

 

そう、よね……。あんな酷いこと言った、私なんかの具合を見に来るわけが………。

 

「いや、そうじゃなくて。ここ、風呂場だぞ」

「はっ、そ、そうよね!お風呂場だからよね!」

「なんだ?提督に来て欲しかったのか?」

「ち、違うわよ!」

 

………実際のところはどうなんだろう。いや、裸見られたくないから来て欲しくはないか。………もう胸も性器も見られてるけど。

 

「どうした大和?顔が赤いぞ」

「な、なんでもないわよ!」

 

武蔵は私のお風呂の横に座った。こうして毎日、私の具合を見に来てくれる辺り、武蔵は本当に良い妹だと思う。こっちが裸で向こうは服着てるっていう状況は少し恥ずかしいけど。

 

「提督が心配していたぞ」

「提督が……?」

 

心配してくれてたんだ……。いや、多分違うなこれ。

 

「そうよね……書類が終わらないものね……」

 

こういう事だろう。

 

「いや、書類は一人でも問題ないらしい」

「えっ………?」

 

じ、じゃあ、私別にいなくても良いんじゃ……。

いや、待った。

 

「じゃあ、なんで心配してたの?」

「お前の事だろう」

「えっ………?」

「言うまでもないことだろう、そんな事は」

 

お前何言っとんの?みたいな顔をして私を見る武蔵さん。

 

「まぁ、何より構ってもらう相手がいなくなったことを心配していたがな」

「その情報、いらなかったんだけど……」

「お陰で、後で私が提督の相手をすることになった……」

「………大変だから頑張ってね」

 

ヤケに実感のこもった声で言ってしまった。けど、実際大変なのだから、ここは仕方ない。

 

「でも、まさか提督から手を出されるとは思わなかったかなぁ」

「ああ、それは本人も驚いてたよ」

「まぁ、そうよね。………ひどいこと、言っちゃったし」

「いや、そこじゃない。私達、艦娘が沈む事を『多少の犠牲』と言われた事にショックを受けていた」

「……………」

 

そういう事、だったんだ……。

 

「まぁ、多分『お前達』というか『大和』だろうけどな」

「ふえっ⁉︎」

 

な、何を言い出すのこの子⁉︎

 

「な、何を……⁉︎」

「いや、少なくとも私や鳳翔は、お前ら早くくっ付けと思っているが」

「な、なんでよ⁉︎私にも提督にもそんな気はないわよ‼︎」

「いや、提督はともかく、お前はもう無理だ。諦めて認めろ」

 

な、何よ本当に!あんなエロ提督の事なんて私は別に……‼︎

 

「まぁ良い。提督は多分、自分の事に気付いてもないだろうから、告白するならお前からだぞ」

「ま、待ちなさい!なんで私が提督が好きである体で話が進んでるのよ⁉︎」

「じゃあ、私が提督を取ってもいいのか?」

「ダメ!」

「即答してるじゃないか……」

 

くっ……妹の癖に姉にカマかけるなんて……!

 

「大和。最近大丈夫か?どうもバカになってきてる気がするが……」

「昼間っから部屋で寝転がって漫画読んでる貴女に言われたくないわよ!」

「いや、そう言うんじゃなくて。なんというか……アホの子になってきてる気が……」

「う、うるっさいわよ‼︎」

 

こっの……!お姉ちゃんのことをバカにして……!

 

「まぁ、なんでも良いが、今回みたいに我々はいつ沈むか分からないんだ。仲直りしたければ、早めに提督と話しておけよ」

「…………」

 

私は無言で俯いた。仲直りはしたい。したいけれど、提督はそれを許してくれるのだろうか。多分、いつも説教してる側の私が説教されるに違いない。提督に、提督に……説教、される……か。

 

「…………悪くないかも」

「何がだ?」

「な、なんでもないわよ」

 

武蔵は頭上に「?」を浮かべると、「ま、いいか」と呟いた。

 

「それより、提督の部屋から別の漫画をパクッ……借りてきたぞ。読むか?」

「ありがとう。いつも悪いわね」

「構わん。何日もドックにいては飽きるだろう?」

「うん」

 

私は武蔵に持って来てもらった、ドラゴンボールを読みながら、提督との仲をどう修復するべきか、考えた。

 

 

++++

 

 

武蔵が出て行って数分後、すぐにワーワーと音がし始めた。

多分、提督が武蔵にチョッカイを出したんだろう。多分、メガネを取られたとかそんなとこ。

で、武蔵はメガネを取られるとどういうわけかシャイになるので、それを利用したんでしょう。あの二人思考と行動なんてすぐにわかる。

 

「………私と喧嘩(?)したのに、提督は元気なんですね……」

 

我ながら、随分と小さいことを気にしたと思う。でも、気になってしまった。

まぁ、良い意味でも悪い意味でも切り替えの早いあの人なら、当然といえば当然かもしれない。

私は気を紛らわすために、ドラゴンボールを濡れない場所に置いた。そして、鏡の前に立つと、両手を右腰に当てた。

 

「か〜め〜は〜め〜波ァアアアア‼︎」

 

両手を前に突き出した。当然、何も出ない。

 

「………なんか、違うな……。もっと、こう……」

 

ブツブツと呟きながら、再び構えを取る。

 

「か〜め〜は〜め〜……‼︎」

「や、大和さん⁉︎なんか大声しましたけど何かありましたか⁉︎」

 

大鳳さんが入って来た。直後、大鳳さんは半眼になり、私は真っ赤になった。

そこから先は、何があったかイマイチ覚えてない。ただ、両手で顔を覆う私の隣に座る大鳳さんは、ドラゴンボールを読みながら呟いた。

 

「………私、何も見てませんから」

「…………お見苦しいところをお見せしました……」

「……………何も、見てませんから」

 

穴があったら埋まるどころか掘り進んでブラジルで骨を埋めたい………。死にたい……。

 

「………この前の出撃のことで謝りに来たのですが、そんな雰囲気じゃなくなってしまいましたね」

「違うんです……ドラゴンボール読んでて、少しハイになってしまって……。セルに親子かめはめ波をぶち込んでる所を見て、もう……」

「何も見てませんってば」

 

…………死にたい。私は何をしてたんだろうか……。なんか、提督だけ元気だったから悔しかったんだろうなぁ……。

まぁ、大鳳さんもこう言ってくれてることだし、忘れよう。

 

「それに、私はベジータ派ですから」

「み、見てないって言ったじゃないですかぁ⁉︎」

 

ひ、酷い……意外とサディストだこの人……。

 

「それで、何かご用ですか?」

「あ、いえ。庇っていただいたお礼と謝罪に参ったのですが……いえ、こういう事は雰囲気に流されちゃいけませんね」

 

大鳳さんはそう言うと、立ち上がった。

 

「この前は、庇っていただき、ありがとうございました。そして、申し訳ありませんでした……」

「あ、いえいえ。……? な、なんで謝られるんですか?」

「私の所為で、提督と喧嘩させてしまったみたいで……」

「ああ、いえ、気になさらないでください。それに、喧嘩になったのはもっと別の理由ですから……」

「その所為で、あんな奇行に走るようになってしまって‼︎」

「それは忘れて下さい‼︎」

 

そこを注意しておいてから、私は言った。

 

「とにかく、気になさらないでください。ね?」

「………分かりました。や、大和さんも、とりあえず頭の中を何とかして下さいね!」

「やめてってばぁ!」

 

涙目になってると、大鳳さんは入渠ドックから出て行った。

…………ふぅ。さて、ドラゴンボールの続きでも……そう思った直後、「あがばっ⁉︎」と声がした。ドッボーン☆と隣のドックで音がした。水飛沫が舞い上がり、私は思わず横を見た。

瞬きしていると、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「あーもうっ、最悪……パンツまで濡れるわ、鼻にお湯入るわ……。つーかこれ、人体に影響ないんだろうな……」

「…………提督?」

 

思わず、私が口を漏らすと、提督はこっちを見た。全身びしょ濡れで私を見た。

………どうしよう、ピンチだけど、チャンスかもしれない。今、謝るチャンスなんじゃ……!

 

「チッ……」

 

舌打ちの声が聞こえた。提督から。それに、私は思わずビクッと怯んでしまった。

提督は、不機嫌そうな表情を浮かべると、ドックを出て行った。

____________提督に、嫌われた………?

私は、ただ愕然としていた。

 

 

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