翌日、俺は一人で執務室で仕事をしていた。だって大和さん来てくれないんだもん。
この前、出撃した海域を、大鳳さんを旗艦にした部隊で突破してやった。大和さんも昨日の夜中に入渠が終わったし、艦娘達は祝勝会をやると騒いでいた。ちなみに、俺は誘われてません。
で、今はその報告書の作成中だ。なのに、俺の隣には、何故か大鳳さんが座っていた。
「………なんでここにいんの?」
「大和さんが完全復帰するまでの間、私がお手伝いします」
「それはいいけど……。大鳳さんだって、祝勝会の準備に参加しても良いんですよ?文化祭も何でも、準備してる時が一番楽しいんですから」
「いや、それは知りませんけど、良いんです。大和さんが全快するまでは、私がその代わりをします」
「ふーん………」
まぁ、大鳳さんを庇って大和さんは大破したわけだし、責任感じる気持ちは分からなくもないけど……。ま、いっか。これは俺が口出しする問題じゃない。
「ま、そういうことなら……。じゃ、この報告書の表紙にハンコと今日の日付だけ書いといてください。それで終わりです」
「ええっ⁉︎ほ、報告書はこれで完成なんですか⁉︎」
「はい。さっさと終わらせたかったので、さっさと終わらせました」
そう言うと、俺は立ち上がってコーヒーを淹れた。大鳳さんの分も淹れて、机の上に置いた。
「あ、ありがとうございます……」
「いえいえ」
そういえば、ここ最近は大和さんとか使いまくってたけど資材の方は大丈夫かな。
「…………あれっ?」
「どうかしました?」
「いや、目の錯覚かな……。資材が……特に弾薬が165とか見えるんだけど……」
「そりゃあ、大和さんや武蔵さんを何度も出撃させたらそうなりますよ」
「……………」
だよね。気が向いたからって攻略なんてするんじゃなかった。
「………しばらく出撃はいいや」
「終わりましたよ、提督」
「なら、部屋戻って良いですよ」
「提督は?」
「俺はここでテレビ見てから部屋でモンハンやるわ」
新作出たし。
「祝勝会には出ないんですか?」
「あーいいです。俺がいても空気悪くするだけなんで」
「ああ……(察し)」
大鳳さんは察しが良くて助かる。
「でも、大和さんは提督に来ていただいた方が喜ぶのではないですか?」
「? なんで大和さん?」
「えっ?」
「えっ?」
「提督は大和さんが好きなのではないんですか?」
「えっ?」
「えっ?」
俺が?大和さんを?
「好きですけど?」
「うえっ⁉︎」
「そりゃ、アレだけ助けてもらってたら嫌いとは言えませんよ」
「ああ、やっぱそういう感じですよね……」
「恋愛的には……どうなんですかね。まぁ、大和さんが彼女だったらなーって思ったりもしますよ」
つーか、こんな話つい最近誰かにした覚えあるんだけど。デジャヴって奴か?
「じゃあ、付き合っちゃえばいいじゃないですか」
「いや、無理無理無理。俺が女性と上手く付き合えるわけがない」
「ええっ………なんでそんなマイナス思考なんですか……」
「なんでだろうな。なんか知らないけど、俺って人付き合いが苦手なんですよね。だから、女性と付き合うなんて尚更無理だと……」
「意外と上手くやれると思いますけどね……」
大鳳さんは、そう言いながら席を立った。
「では、私は祝勝会の準備してきますね」
「あ、はい」
…………しかし、俺は大和さんが好きなのか?確かに大和さんがいないと困るし、最近は大和さんと話してないからか、イライラしてゴアマガラをフルボッコにしたりしてる。むしろ、大和さんがいなくなったら誰に俺はチョッカイを出せば良いのかと考えてしまったりもしてる。
………あれ?これ、普通に大和さんのこと好きなんじゃね?
…………いやー、でもなー。愛してるかって言われたら微妙なんだよなー。
「………んー……」
唸りながら、俺はとりあえずその辺にあったダーツの矢を投げた。それが、執務室にある的に向かう。が、その前に部屋を出て行こうとした大鳳さんが歩き出した。
「っ⁉︎」
「あっ」
大鳳さんは慌てて避けた。体勢を崩してひっくり返り、スカートが捲れた。ダーツの矢は的を外れて壁に当たって弾かれ、ヒュンヒュンと回転しながら落下し、スカートを捲れたまま固定するように、スカートを貫通して床に刺さった。
「キャッ……⁉︎」
「た、大鳳さん⁉︎す、すいませ」
謝りながら駆け寄ろうとした直後、何もないところに躓いて、大きく転んだ。捲れたスカートの中に頭を突っ込んだ。
「なぁっ………⁉︎」
「す、すいませ……‼︎」
「き、きゃああああああ‼︎」
ガッ、と顔面を蹴られた。俺は後方に大きく蹴り飛ばされ、ソファーに頭をぶつけた。
「ってて……んっ?」
後頭部をさすると、布が当たってる感触。見ると、大鳳さんのスカートを握っていた。ダーツの矢は抜けたようで、大鳳さんの横に転がっている。
「………………」
大鳳さんは無表情で立ち上がると、俺に艤装のボウガンを向けた。
「………あ、あの、」
「………………」
「………た、大鳳さん……?」
「………………」
「………い、今のは、わざとじゃなくて……その、」
「………………」
「す、すいませんでした‼︎」
「………………」
大鳳さんは無言で俺を見つめると、俺の前にしゃがみ込んだ。
「………いで下さい」
「………は?」
「ズボン、脱いでください」
「いや、何言ってんの?大丈夫?」
「前の時は、私も提督も恥ずかしい思いをしたので同罪でした。が、今回は明らかに私だけ不公平です!」
「は、はぁ⁉︎ふざけ……!」
「ふざけてません!もし、駄々をこねるなら脱がします!」
「待て待て待て!お前本気かよオイ⁉︎」
「覚悟おおおおお‼︎」
「覚悟、じゃねぇよ⁉︎」
襲い掛かってくる大鳳さんと、横に横転して逃げる俺。
だが、艦娘相手に逃げられるはずもなかった。すぐに捕まり、腰にしがみ付かれた。
「お、おい!何やってんだあんた⁉︎バカなの?死ぬの⁉︎」
「脱がす……!」
「お前の真の姿が脱げてるよ!」
こ、この野郎……‼︎
なんとか引き剥がそうとしてると、執務室のドアが開く音がした。
「提督よ、少し話が………あっ、」
「えっ」
「えっ」
武蔵さんが入ってきた。時間が止まった。
++++
すごく怒られ、ゲンコツを喰らった俺は、武蔵さんに連行された。
もしかしたら、拷問されるのかとドキドキしていたが、連れてこられた場所は間宮さんのお茶屋さん。もう何回、ここに武蔵さんと来てるんだろ……。
「で、なんか用ですか?これからモンハンやろうと……」
「大和に何を言った?」
俺の台詞を遮って、武蔵さんは冷たい声で言った。
「…………はっ?」
「何を言った?昨日から、大和が泣いているんだが」
「………えっ?」
大和さんが、泣いてる……?
「誰だよ泣かした奴。ちょっと呼んで来い。俺の最強無敵の必殺の突き(浣腸)をお見舞いしてやる」
「お前だよ」
「…………は?」
なんで?意味分からんのだけど。
「ちょ、ちょっと待って。何言ってんの?俺、泣かすどころかここ最近、大和さんと話してすらないよ」
「私も詳しくは知らん。だが、大和が子供みたいに泣きじゃくる時に『ていとくが……ていとくがぁ……‼︎』と言っていたからな」
「ええっ⁉︎お、俺⁉︎なんかしたっけ………?」
「まぁ、私も提督が何かするとは思っていない。だから、何をしたか話してくれ」
「何をしたも何も………あっ」
………そういえば、昨日武蔵さんのメガネ取って逃げた時、入渠中の大和さんの隣に落ちたっけ………。
自分の顔が青ざめていくのが分かった。そして、それと共に武蔵さんの表情が鋭くなる。
「………なにかあったのか?あったんだな?吐け」
いや、なんだかんだ昨日のメガネことは武蔵さんに会わなくて済んで、有耶無耶になったから、思い出される可能性が………。
「い、いやっ……知らないです………」
ダンッ‼︎と、武蔵さんは机を叩いた。机は折れて、真っ二つに割れた。
「…………むっ、ついうっかり机が割れてしまった」
つ、ついうっかり机が割れてしまった……?それ日本語……?と、思ったが声には出さなかった。次、口を開いた時に話さなければ殺す、と武蔵さんの目が語っていたからだ。
「………昨日、武蔵さんのメガネ取ったじゃないですか」
「うむ」
「それで、男子トイレに逃げ込んだじゃないですか」
「うむ」
「あの後、俺が着任したての頃に作った逃走ルートを利用しまして、便器の中に入ったんですよ」
「うむ?」
「そしたら、下の増設した入渠ドックに直通してたみたいで、大和さんの全裸を見てしまいました」
「う、うむ……」
武蔵さんは目を閉じて俯くと、とりあえず、と言った感じで俺を睨んだ。
「……とりあえず、昨日のメガネの分を一発な」
「い、痛くしないでください……」
ゴッ、とゲンコツが来た。
「メガネはどうした?」
「へ、部屋にあります……」
「後で返せよ」
「あの、今かけてるメガネは……?」
「予備に決まってるだろ、バカヤロウ」
そう言うと、武蔵さんは続けた。
「とりあえず、大和に謝りに行くぞ」
「………面倒をかけて、ホントすみません……」
まぁ、大和さんの仲直り出来るならそれで良いかな。
俺は武蔵さんに連行される形で、大和さんの部屋に向かった。