俺は大和さんに怒られたい。   作:LinoKa

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第21.5話 飲めなかった。

 

 

貸し切り券を持って、私と提督は居酒屋鳳翔に向かった。お店の中に入ると、中はいつもと机の数が違った。四人がけの机が一つ、真ん中に置かれていて、他の机は見当たらない。隅っこには布団が畳んで置かれていて、なんか少し広い1LDKみたいだった。

…………ていうか、布団があるって事は、一泊しろって言われてる?あと、布団が一枚しかないって事は………。

わ、私と提督でナニをしろと⁉︎

真っ赤になる顔を必死で抑えてると、提督は「腹減ったー」と呑気な声で席に座った。少しは緊張しなさいよ!

 

「大和さん、座らないんですか?」

「大和さん?」

「………大和、座らないの?」

「今行きます」

 

私は提督のお向かいに座った。

 

「何食べる?」

「提督の好きなもので」

「………いや、俺お店で注文できないんです……」

 

そういえば、コミュ障だったわねこの人………。

 

「分かりましたよ……。すみませーん、唐揚げとお刺身の盛り合わせと軟骨揚げ野菜炒めネギチヂミビール二本たこ焼き!」

「はぁーい」

 

鳳翔さんはいるんだ……。と、思ったら30秒くらいで料理が運ばれて来た。

 

「早っ⁉︎」

 

提督がリアクションする間も無く、料理とビールは机の上に並べられた。

鳳翔さんは最後にポケットから鍵を取り出して机の上に置いた。

 

「ごめんなさい、提督。私、これから用があるので失礼しますね。お店の鍵、お願いします」

「え、あ、はっ、はい……」

「では、失礼しますね」

 

鳳翔さんは裏口に消えていった。その後ろ姿を見ながら、提督が「経営者も大変だなぁ」とか呟いてたけど、別に経営者だからというわけじゃないと思う。最後に、私にウィンクして来たし。

 

「………じゃ、飲もうか。大和」

 

何も知らない提督は呑気にビールのジョッキを手に持った。私もため息をつきながら、ジョッキを持った。

 

「「乾杯」」

 

ジョッキを軽くぶつけて、グイッとビールを飲んだ。私はジョッキを置くと、お箸を持って唐揚げに手をつけた。あーん、と自分の口に持っていこうとすると、提督がその唐揚げをパクッと食べた。

 

「ふえっ⁉︎」

「んーっ……おいひぃ」

 

なっ……何その顔………⁉︎可愛い………。ていうか、顔赤くない?なんでそんな赤いんですか。

 

「おい、大和ぉ」

「な、なんですか?」

「お前、なんでそんな背ぇデッカいわけ……?」

「はっ……?」

「お前と二人きりで並んでると!俺の方が小さいから、弟みたいに思われんの!」

「え、お、弟?誰かに言われたことあるんですか……?」

「ないよ!言ってくれる友達なんていないし!」

「ご、ごめんなさい……」

 

よ、酔ってる………。ていうか、ビール一口で?嘘でしょ?

 

「え、じゃあ何を気にして……」

「だって弟じゃん!どう見ても!小鳥遊家みたいになってんじゃん‼︎」

「た、たかなし……?」

「大和さん‼︎」

「は、はい……」

「………慰めろよ」

「よ、よしよし……」

「子供扱いするな‼︎」

 

嫌だこの人面倒臭い。提督が不機嫌そうに料理を摘んでいたので、私はお望み通り慰めた。

 

「で、でも、提督には私がいるじゃないですか」

「……………」

「だ、だから落ち込まないで下さいよ………」

「大和」

「な、なんでしょう」

「隣に来て」

「は、はぁ」

 

言われるがまま、私は椅子を持って隣に座った。直後、私の胸に顔を埋めて来る提督。

 

「大和ぉ〜……」

「きゃっ⁉︎にゃっ……なっ、何をっ………⁉︎」

「俺、もうダメかもしれん……」

「な、なんですか今度は急に………」

 

提督を抱き抱えながら頭を撫でた。

 

「いや、特にダメである要因はないけど」

 

クッ、この人は………‼︎

 

「よくよく考えたらさ、俺ってダメダメである要因なんてないんだよなぁ」

 

今度は自慢話ですか。提督は料理をまた摘みながらブツブツと呟いた。

 

「事務作業実技成績優秀、仕事も速くて顔だけならジャニーズに若干劣るくらいのイケメン」

 

この人、自分をそんな風に思ってたんだ………。

 

「それで大和さんみたいな彼女がいるとか……え、何この完璧超人」

「自分で言わないでください」

 

ていうか、性格が残念だし。まぁ、そんな人を好きになった私の言える台詞じゃないけど。

 

「でもなぁ……ほら、俺って性格がアレじゃん?」

「自覚はあったんですか……」

「いくら完璧でも、中身がダメじゃ、生きてる価値なんてないよなぁ………」

 

そこまで言わないでも………。

 

「周りに頼れとか言われても仕方ないじゃん!大体のことは一人で出来ちゃうんだからさ!」

 

あれ?自慢?

 

「結果出してんのに周りから避けられるってどういう事だよ!………まぁ、俺も周り避けてたけど」

「ま、まぁ……落ち着いて下さい。それでも、私がいるじゃないですか」

「けっ、雷かお前は」

 

…………ダメよ、大和。イラっとしては。相手は大きな子供、ある意味弟だと思えば然程腹も立たない。

 

「大和」

「は、はい」

「なんでもなーい」

 

あ、今のは少し可愛い。ムカつくけど。

私も料理を摘みながら、ビールをグイッと煽った。提督がボンヤリとした表情で私を見ていた。

 

「な、なんですか?」

「………大和ってさ、可愛くて美人だよね」

「ふぁっ⁉︎」

「外見は全然可愛くないし、むしろ美人なのに、中身はクッソ可愛くて美人じゃないよね」

「な、なんですか急に⁉︎」

「いや、ポンコツな所もあって……こう、ギャップがすごいなって」

「わ、私はポンコツなんかじゃありません!」

「しかも制服エロいし」

「エロッ……⁉︎」

「仕事してる時、たまにノースリーブの脇の下の辺りから横オッパイ見えてたんですよね。エロいなぁ、と思って」

 

なっ………この男は………!恥ずかしさのあまり、私の身体はプルプルと小刻みに震えていた。ていうかもう無理、私は部屋の隅にある布団をチラ見すると、ビールを一気に流し込んで、椅子を倒して立ち上がった。

 

「………提督」

「何?」

「不公平です」

「何が?」

「なんで前々から思っていたけど、私だけこんなに恥ずかしい思いしなくちゃいけないんですか⁉︎」

「あー、前におっぱい見たりスカート覗いたり色々あったからねー。まぁ、運が悪かったんじゃない?」

「運だろうとなんだろうと不公平です!」

「そんな事俺に言われても……」

「野球拳です」

「はっ?」

「それで公平に提督の身ぐるみを剥がして私が勝ちます‼︎」

「おおー、良いねぇ。その代わり、負けた方は勝った人の言う事を一つ聞くのな」

「上等ですよ‼︎」

 

私は拳を引き、提督も手首を回しながら構えた。

 

「「野球、するなら♪こういう具合に(以下略)」」

 

 

〜5分後〜

 

 

提督→靴すら脱いでない。

大和→身ぐるみ剥がれた。

 

「……………ッ‼︎」

「はい、俺の勝ちね」

 

死にたい………まさか、ストレート負けするなんて……。

 

「じゃ、俺の言う事聞いてもらおっかな〜」

 

提督はふらふらした足取りで、私の前に立った。で、私の顎を摘むと、くいっと自分の方を向かせた。

 

「さっきからさぁ……部屋の布団をかなり気にしてるみたいだけど、どうしたの?」

「ッ……!そ、それは……!」

「もしかして、あそこで俺と何かしたいとか思っちゃってる………?」

「ち、違います!」

「へぇ?それは、どうだかね?」

 

提督の手が、そーっと私の身体に伸びて行く。私は何故か抵抗できなかった。力でも身体能力でも私の方が勝っているはずなのに、身体を動かそうと思えなかった。

目をキュッとつむって、思わず覚悟しそうになった時、提督の体が私の方に倒れこんで来た。

 

「きゃっ⁉︎」

「…………」

「て、提督………?」

「zzz…………」

 

………寝やがった……。とにかく、提督にお酒を飲ませちゃいけないことがわかった。

 

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