俺は大和さんに怒られたい。   作:LinoKa

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夏になった。
第22話 避けても避けれないものがある。


 

 

季節はぶっ飛んで、夏。セミが窓の外で大合唱を繰り広げ、空では太陽が無限太陽拳をし、地面は反射熱によって灼熱地獄を繰り広げている季節になった。

だが、それは外の話だ。俺は自室に引きこもって、クーラーガンガンに効かせ、口にアイスを咥え、パソコンは開かれ、テレビは映画を映し、ベッドの上でゴロゴロしながらゲームをしていた。

すると、ダンダンダンと部屋の扉を叩く音が聞こえた。

 

「…………?」

『提督‼︎もう12時を回っていますよ‼︎良い加減起きなさい‼︎』

 

大和か。俺は鍵をロックし、窓もカーテンを閉めた。

 

『あっ、コラ!』

 

テレビの音量を上げて、外からの音もシャットアウト。完全に閉鎖空間である。

 

『こーらー!開けなさーい!』

 

………あ、天鱗来た。やったぜ。後は古龍の大宝玉、だったか?とりあえず、テオでいいや。こいつ袋叩きしまくって落とす。それまで今日は部屋を出ない。

 

『提督!一週間ずっと、武蔵に一日の予定連絡するだけで部屋を出てないですよね⁉︎そんなのもう許しませんよ‼︎』

 

………うーわ、クーラードリンク忘れたんだけど。まぁ、何とかなるか。攻撃避けまくって、支給品来るまで小まめに回復すれば行けるだろ。

 

『また無視する気ですか⁉︎それならこちらにも考えがありますからね‼︎』

 

………あ、いた。ていうか、お前火山の一番上に出るのやめろや、遠いんだから。

その直後、メコッと音がした。ドアが丸々引き抜かれる音。外れたドアは後ろに投げられ、大和が怒りを隠す事なく部屋の中に入って来た。

 

『提督!追い詰めましたからね‼︎………って、あら?』

 

大和さんは、パソコンの画面に映されている俺の部屋に侵入した。そこは一昨日まで俺が住んでいた部屋だ。昨日のうちに、新しい避暑部屋を鎮守府に作っておいた。これでしばらく安全だ。

さて、テオ狩りに集中しないと……そう思った直後、後ろからガッと背中を踏み潰された。

 

「っ⁉︎」

 

あっ、バカ!テオの火炎放射直撃コー……‼︎

 

「ふむ、やはりそういうことか。え?提督よ」

 

後ろを見ると、武蔵さんが立っていた。俺はとりあえずゲームを閉じた。

 

「む、武蔵さん……?どうしてここが………」

 

俺の質問を無視して、武蔵さんはスマホを取り出すと、耳に当てた。

 

「大和か?私だ。提督を捕らえた。今、そっちに連れて行く」

 

パソコンの画面の中の大和さんは、カメラ越しに真っ直ぐとこっちを睨んでいた。あの目は、「お前マジボコるから」という目だ。

 

「………武蔵さん」

「なんだ、遺言か?」

「iTunesカード1万円でどうでしょう」

「それで売られたら私が大和に殺される」

 

ですよね。俺は、武蔵さんに担がれて、どこかへ連れて行かれた。

 

 

++++

 

 

連行された先は執務室。正座させられ、大和は目の前で仁王立ちしていた。

 

「まったく!毎日毎日毎日毎日世話を焼かさないで下さい‼︎ただでさえ、暑くてイライラしてるのに……!」

「いいじゃないですか、書類仕事だってやってるし、近いうちの夏イベントのために資材貯めてて出撃もできないから指揮も必要なし。俺なんて必要ないと思いますが」

「大真面目な顔でそういう事言わないで下さい‼︎機能性の問題ではなく、指揮的と形式的な問題です‼︎」

「………後でキスするので許して下さい」

「…………。はっ、だ、ダメです!」

 

少し考えたな。なんか、この前鳳翔さんの店を貸し切りにして以来、すごいキスしたがるんだよね。何かあったのだろうか。

 

「でも、暑いでしょ?大和も」

「気持ちはわかりますが……。だからといってサボるわけにいかないのはわかるでしょう。深海棲艦はいつ攻めて来るかわかりませんよ」

「うー……」

 

ダメだ。こうなったら平謝りしてこの場を回避するしかない。

 

「すみませんでした」

「い、いえ、わかればいいんです」

「じゃ、仕事しましょうか」

 

俺は立ち上がって机に向かった。隣に座る大和。仕事はほとんどないので、30分で終わった。

 

「ふぅ……終わりっ」

「本当に提督は仕事が早いですね。そこだけは助かります」

「そこだけって何ですか……。しかし、このままだと午後暇ですね」

「はい……。けど、まぁ仕方ないでしょう」

「……………」

 

大和が何でさっき怒ったのか、それは俺が仕事をしないからでも、ダラダラと部屋に篭ってるからでもない。俺と会えないからだ。なら、どうするか?簡単な話だ。大和も一緒に遊べれば問題ない。

 

「大和」

「はい?」

「明日、プール行きません?」

「……………へっ?」

「だから、プール。暑いし」

「私と、提督が……ですか?」

「え、他の人と俺がプール行って良いの?」

「提督に他の人なんていないでしょう」

「武蔵さんとか大鳳さんとか」

「ダメです」

 

うん、大鳳さんはやめとこう。何か起こる気がするし。

 

「じゃ、明日で」

「は、はい!」

 

大和はすごく嬉しそうな顔で頷いた。プールか、我ながら天才だな。ゲームはできないが、ダラダラはしないし水の中は涼しいしで最強である。海のように流される心配もないし、水を飲んでもしょっぱくない。神か、プールって。

 

「提督」

「ん?」

「明日ですよね」

「はい」

「今から外出しても良いですか?」

「はっ?別に良いですけど」

「じゃあ、失礼します」

 

大和は執務室を出て行った。

………これはつまり、遊んでても怒られない?

 

「やっふううううううう‼︎」

 

まずは、執務室のクーラーをつけた。いつも、大和が「艦娘は暑い中、外で演習してるのに私達が中で涼んでるのは許せない」という理由でクーラーはつけてなかったが、その大和がいないなら、こっちのものである。

クーラーをつけて、ソファーにダイブした。さて、寝るか……そう思ったのだが、目を閉じる前に天井に黒い何かを見かけた。

 

「………クワガタじゃん」

 

そうか、もうそんな季節か。あ、ゴキブリだったってオチじゃないから。何処から迷い込んで来たのか知らんけど、クワガタが天井を歩いていた。

高一までの俺なら、捕まえて友達にしようとしていたが、もうそんな歳でもない。俺はソファーからジャンプしてクワガタを摘んだ。一匹の虫にも五分の魂である。

窓の外から逃がしてあげた。その直後、何かがヒラヒラと落ちて来た。それを反射的に掴んだ。「大鳳」と書かれたパンツだった。どうやら、屋上から風に飛んで、風に流されて来たらしい。

すると、バタン‼︎とすごい勢いで後ろのドアが開いた。大鳳さんが真っ赤な顔で立っていた。

………ほらね?大鳳さんと俺が会うと必ず何かしら起こるんだよ…………。

 

「提督。その手に持ってるものは?」

「風に流されて来たんです。もしかして……」

「それ以上何も言わないで!」

 

大鳳さんが大声を出して俺を制した。

 

「今回は私が悪いから。提督はそれを取ってくれただけだから。余計なこと言って私の我慢を無駄にしないで。黙って私に渡して」

 

そう言って、俺の前に歩いて来る大鳳さん。そして、パンツを受け取った。

取り繕ってるものの、少し恥ずかしそうにしてるので、場を和まそうと俺は大鳳さんに言った。

 

「パンツに名前書いてるなんて、なんだか可愛いですね」

「死ね‼︎」

 

大鳳さんのストレートが、俺の溝にめり込んだ。俺は夕方陽が落ちて大和さんが帰って来るまで、その場から動けなくなっていた。

 

 

++++

 

 

「まったく、バカですね提督」

 

今回は殴られた事情を言わないわけにはいかなかったので、正直に話した。だって、言わなかったら大鳳さんが怒られてたと思うし。

 

「そんな事言ったら誰だって怒りますよ。というか、パンツ握っただけで怒る子もいますからね」

「まぁ、そうでしょうね」

 

理不尽だが、恥ずかしさを何処かにぶつけたくなるのは分かる。まぁ、大鳳さんの場合はパンツどころではないというのもあると思うけど。そんなことは口が裂けても言えない。

 

「………ち、ちなみに、私は……提督になら、パンツを握られても……お、怒りませんよ」

「え?なんだって?」

「な、何でもないです………」

 

ちなみに、大和とはまだ何もしていない。だって、体目的で付き合ってると思われたら嫌じゃん?そういう事は、もう少し先になってからするべきだと思うんだよね。

 

「………やっぱり、武蔵の言う通り同じ部屋で暮らした方がいいのかしら」

 

大和が何か呟いてたが、良く聞こえなかったのでスルーした。だってなんか聞いちゃいけないような内容な気がするし。

ま、いいや。もう8時回ってるし、寝るか。

 

「さて、もう晩飯にして寝ますか」

「そうですね。夜も遅いですし」

「大和」

「はい」

「おんぶ。まだ立てない」

「はいはい……」

 

おんぶしてもらって、部屋に戻った。

 

 

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