俺は大和さんに怒られたい。   作:LinoKa

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第6.5話 姉妹喧嘩の夜

 

 

居酒屋鳳翔。私と武蔵はビールで乾杯した。

 

「「お疲れ様」」

 

そう言ってゴクッゴクッとビールを飲み、机の上に置いた。

 

「ふぅ……しかし、最後のゲンコツは効いたぞ」

「アレはあなたが悪いんでしょ?鎮守府内で、あんな破廉恥なこと……」

「腕枕していただけだろう」

「それが問題なのよ!」

「なんだ、嫉妬か?」

「だ、誰が誰に嫉妬するのよ⁉︎」

「まぁまぁ、今日はお二人とも始めからクライマックスですね」

 

鳳翔さんがおつまみの軟骨揚げを私と武蔵の間に置いた。

 

「何かあったんですか?」

「大和がぶった」

「武蔵が悪いんでしょう⁉︎」

「説明が子供みたいですよ」

 

鳳翔さんに最もなことを言われ、私と武蔵はビールを飲んで落ち着いた。

 

「まぁ、何があったかちゃんと話してください」

「………実は、私と武蔵と提督で少しトラブルがありまして……。けど、それは別に良いんですよ。解決しましたから」

「だが、その後に私が提督に腕枕をしていたというだけで、大和はマジギレしたんだ」

「そりゃ怒りますよ!そもそも、その以前の問題で、提督がお願いしたとはいえ武蔵が濡れTシャツなんてやって怒ったばかりなのに、またあんな破廉恥なことをするからでしょう⁉︎」

「腕枕は破廉恥ではないだろう!ていうか破廉恥ってなんだ⁉︎言い方が古い!普通にエロいでいいだろ!」

「い、いやです!そんな下品な言い方……!」

「下品ってなんだ⁉︎毎度毎度、お前はお高くまとまりやがって……‼︎」

「あなたは色々とズボラというか、ガサツなのよ‼︎女の子ならもう少し身だしなみくらい整えられないの⁉︎」

「お前がキッチリし過ぎなんだ‼︎」

 

ぐぬぬっ……!こ、この妹は……‼︎

私と武蔵が睨み合ってると、寒気を感じた。それは武蔵も同様みたいで、体を震わせて押し黙る。

二人して、その寒気の方を見ると、鳳翔さんがニコニコしながら、枝豆を運んで来た。目も口元も確かに笑ってるのに、こんなに怖い笑顔を私は見たことがない。私と武蔵の間に枝豆を置くと、微笑んだまま言った。

 

「落ち着いて下さい。冷静に話し合いましょう?ね?」

「「………はい、すいませんでした」」

 

私と武蔵は素直に謝った。とりあえず、このお店で喧嘩するのはもうやめよう。

 

 

++++

 

 

と、いうわけで、とりあえず3人で話し合うことになった。鳳翔さんが裁判長的立ち位置になって、私と武蔵で問題点を議論することにした。

当然、今回の鍵は「腕枕が破廉恥な行為であるかどうか」だ。まぁ、その時の状況で話は別れると思うけど。

 

「腕枕は別にエロい行為じゃない」

「いいえ!提督は顔を真っ赤にしていました!少なくとも異性が軽々しくやっても良い行動ではありません!」

「軽々しくではないさ。私だって相手を選んだつもりだ」

「相手も何も、この鎮守府に男性は提督しかいないでしょ!」

「だから、もしその提督の性格がダメなら、私は腕枕などしなかった。あの提督だから、許せたのだ」

「で、でも殿方が顔を真っ赤にしたことには変わりないでしょう⁉︎」

「私は事前に腕枕をしてやると言った。提督はそれで私の腕に頭を置いたんだ」

「うっ……‼︎で、でも!あんな事が起こったすぐ後にあんなに距離を縮めるのはおかしい‼︎」

「怒られた上で、私は腕枕くらいなら大丈夫と判断したんだ。そして、提督にとっても問題はないか、確認した。提督の真意は分からないが、提督も問題ないと思ったから腕に乗って来たのだろう。………と、いうか、」

 

武蔵は言葉を切ると、ビールを一口煽って続けた。

 

「そもそもこれは私と提督自身の問題だ。大和には関係ないだろう。それともなんだ?私が提督に腕枕すると大和に問題があるのか?」

「うっ………⁉︎」

「事情も何も聞かずにさっきゲンコツして来たが、あの制裁はあまりにも感情的過ぎではないか?」

「ううっ………‼︎」

「というか、お前はただ単に羨ましかっただけだろう」

「〜〜〜っ‼︎ ほ、ほうしょうさぁぁぁぁん‼︎」

 

私はカウンターの奥の鳳翔さんに泣き付いた。

 

「武蔵が、武蔵がいじめる〜‼︎」

「はいはい……。言い過ぎですよ武蔵さん」

「ふむ、そうか?それはすまない」

 

これっぽっちも悪いと思ってる様子を見せずに武蔵は枝豆を食べた。こ、こいつ………!

 

「でも、私は腕枕は少し距離が近い気もしますけど……」

 

鳳翔さんが、私の背中にぽんぽんと手を置きながら言った。

………これは、好機⁉︎

 

「ほ、ほら見なさい武蔵!第三者から見れば、腕枕は距離が近過ぎるわ!そもそも、あなたみたいな痴女は常人からは感覚がズレてるのよ!」

「むっ……それは私が痴女だとしたらだろう」

「痴女よ!間違いなく痴女!痴女どころかビッチだわ!」

「お、怒るぞ大和!さっきから女性に対して失礼ではないか⁉︎」

「上等よ!表に出なさい!」

「二人とも?」

 

微笑まれて私と武蔵はビールを飲んで落ち着いた。

 

「………そもそも、何故武蔵さんは提督に腕枕をしたのですか?」

「むっ?」

 

確かにそれは重要だ。武蔵がしたいからした、だと武蔵はビッチだが、提督が脅迫したのだとしたら、武蔵に非はない事になる。

 

「それは、アレだ。なんだかんだ提督は大和だけではなく私とも話せるようになったからな。その褒美だ」

「褒美で自分の腕枕を差し出すとか………クソビッチね」

「アアッ⁉︎」

「武蔵さん、落ち着きなさい」

「それだけじゃない‼︎提督はなぁ、提督はあの時、私のついたウソを庇ってくれたんだぞ‼︎それで……‼︎」

 

そこで、武蔵の言葉は止まった。「口が滑った」みたいな顔だ。私としても、今の言葉は聞き捨てならない。

 

「…………どういうこと?ウソ?」

「……………なんでもない」

「目を逸らさないで。ウソ?いつ?どの?」

「………………」

「こっち見なさい」

 

無視して目を逸らし続けると、鳳翔さんが「武蔵さん?」と微笑みながら言った。お陰で、武蔵は身じろぎしながら頬に汗を流し、目は相変わらず逸らし続けながら説明した。

 

「…………その、提督が私に『濡れTシャツ』を命じたと言ったじゃないですか」

「で?」

「……………それ、本当は私が自分から水を被って提督を元気にしようとしまして」

「で?」

「…………………その結果、提督のシャワーとジャージを借りることになりまして、」

「で?」

「……………………以上です」

「まだあるわよね?」

「ないです」

「じゃ、聞き方変えるわ。提督に一切、非があるように見えないけど、それで提督があなたを庇った理由は何?」

「………先程の一件を伝えると、提督は私と大和の間に亀裂が入るんじゃないかと思ったみたいで、私の嘘に乗ってくれたみたいでして、」

「何故、あなたはそもそもウソついたの?」

「………後になってから、自分から水被るって行為が恥ずかしくなりまして……」

「その後に訂正しなかった理由は?」

「提督が思いの外乗ってくれて、『ラッキー☆』と思いまして」

「鳳翔さん、判決」

「ギルティ」

 

武蔵は大きく肩を落とした。私はそれに構わず怒鳴った。

 

「提督のお心遣いは確かにありがたいものだけど、それに甘える部下がいますか⁉︎」

 

私は立ち上がり、武蔵の襟首を掴んだ。

 

「今から、提督に謝りに行きます‼︎」

「ま、待て待て待て!もう夜中だぞ⁉︎提督はもう寝てるだろう‼︎」

「寝てません!あの人は夜遅くまで漫画読んでます!……あ、鳳翔さんこれお勘定」

「ああ⁉︎私の財布⁉︎いつのまに⁉︎」

「お釣りはいりませんので」

「いらないわけないだろ‼︎中、2万入ってるんだぞ⁉︎」

「分かりました」

「ほ、鳳翔うううう⁉︎ていうか待て!そもそもこの議論は腕枕が卑猥な行為であるかどうかを決めるものじゃ……‼︎」

「良いから来なさい!」

「ほ、鳳翔おおおおおおお‼︎」

 

私は武蔵を引きずってお店を出た。

 

 

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