一輝は一足先に第2訓練場に着いた。そこには理事長である黒乃しかおらず他には誰も
いない。
「おっ、来たか黒鉄。」
「理事長、観客がいませんがこれは一体...?」
「翡翠がそう要望したのだ。まぁ今回の試合は半ば強引に私が取り決めたからな...。多
少の配慮はした。」
「ところで黒鉄。お前はこの勝負どう見る?」
「正直のところ、僕にも全く見当がつきません。どちらの能力も桁違いなので。」
「彼の能力を知っているのか?」
否、一輝は結城の能力を多少は知っていた。結城翡翠の伐刀絶技(ノウブルアーツ)は
二つある。一つ目は<完全なる具現化(リアリゼーション)>。この
能力は結城が目にしたあらゆるものを自身の能力として具現化するものでありその対象
は能力者の魔力によって増減する。その気になればどんな伐刀絶技(ノウブルアーツ)
や固有霊装(デバイス)を自分のものとして
扱うことができる反則級の能力だ。
「しかし、この能力には弱点があります。」
<完全なる具現化>の最大の弱点。それは伐刀者本人の固有霊装(デバイス)自体が武
器として形成されないことだ。固有霊装は本来使用者の心の形を形として生み出す物。
通常固有霊装は一輝の<陰鉄>や
黒乃の<世界の時計(ワールドロック)>同様武器という形で形成されるのが一般的
だ。しかし、彼の固有霊装(デバイス)はそれがない。
「では彼の固有霊装は何なんだ?」
「右腕です。彼の右腕自体がおそらく固有霊装なんです。彼の弱点の一つ目は大雑把に
言えば彼の右腕さえ切り落としてしまえばただの非伐刀者ということです。」
「だが今回の模擬戦はあくまで幻想形態での試合だ。その心配はないだろう。ところで
黒鉄。1つ目といったがもしや複数あるのか?」
「はい、もう一つの弱点は身体能力です。理事長もご存じだとは思いますが彼の身体能力は僕に比べて低いCランクです。実際
ステラさんと対峙して剣技で勝ることができるのか...正直疑問に思います。」
一輝がこう言うには根拠があった。日々の鍛錬の中で二人は伐刀絶技を使わずに生身の
剣術のみを使い練習している。そのなかで一輝が結城に負けたことは一回もないのだ。
一輝に勝てないのなら結城はステラに対し剣術で勝るわけがない。
さらに黒乃がもつステラのステータスを表示したタブレットを見た限りでは彼女はほと
んど数値はほとんどAだった。総合的に見れば
ステラのほうが上だろう。
「ここまで弱点ばかり言ってきたが逆に聞こう。彼の強い点は何だ?」
「彼の強い点は2つ目の固有霊装(デバイス)です。」
結城の固有霊装(デバイス)は二つある。1つ目は先ほど紹介した<完全なる具現化>そ
してもう一つは
「<騎士王の蔵>という能力です。この能力も先ほど同様形を成しません。彼が一度具
現化し使用した能力は使用後すべてこの<蔵>の中に保存されます。そして次の戦闘の
際、彼はその蔵の中から最適な能力を選択し再度具現化させれることができます。です
が....」
「所詮は他者の能力のコピーだということだな。」
「理事長のおっしゃる通りです。」
黒乃が言った言葉は見事的中していた。あらゆる能力を見ただけで具現化し自分の能力
にできるという固有霊装(デバイス)は強力すぎる。弱点など存在しないといっても過
言ではない。しかし弱点は存在していた。あらゆる能力を具現化するとはいえ、悪い言
い方をすればほかのブレイザーの能力のまねごとにすぎない。
「通常の伐刀者でしたら他者の固有霊装を持ったところで真価を発揮することは不可能でしょう。」
「なるほどな」
「それに、この能力の力は使用者の魔力量と戦闘量にも左右されます。もしあいつが経
験豊富だとしたら彼の戦闘力は計り知れません」
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「はぁ.....。」
自分の新しい寮部屋に戻った結城はため息をついていた。Aランクとの模擬戦とはいえ
人生で何回かあるかないかの機会。
その1回に彼はめぐり合ってしまったのだ。
「(もし仮に本気で殺り合うとすればあの事件以来2度目。熱くならないようにブレーキ
をかけないと。また理事長の世話に
なってしまうからな...)」
そう考え結城は寮を後にし、第3訓練場へ向かった。
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「おっ、やっと来たね結城!」
「待たせて悪かったよ一輝」
「しかし、本当に引き受けてくれるとはな。」
「いずれは勝たなきゃいけない相手ですから。」
「勝たなきゃいけないか。あの子は強いぞ。」
「たとえ模擬戦でも負けるわけにはいきません。準備はいいかな?ステラさん。」
「いいわよ。」
「それではこれより模擬戦を開始する。わかっているだろうが模擬戦は肉体的ダメージ
を与えず体力だけを削る戦いだ。固有霊装は幻想形態で使用すること。」
会場光が緑色に代わった。各自固有霊装を展開する合図だ。
「傅きなさい!!妃竜の罪剣(レーヴァテイン)!!!」
ステラがそう叫ぶと目の前に巨大な火柱があがりそこから紅蓮の大剣が生成された。
<<Let's go ahead!!>>
試合開始の合図がなるとステラは真っ先に突っ込んできた。
「(まずは様子見だな)」
そう考え結城は右手をなにもない空間に向けた。すると突如青い紋章が出現しその中か
ら剣の柄のようなものが出てきた。
そしてそれを紋章から引き抜き、振り下ろされるステラの妃竜の罪剣を受け止めようと
した瞬間
「(やばいっ...!)」
結城の体が反応した。この一撃をまともに受けるとまずい、そう判断したのだ。結城は
回避し更なる連撃を防ぐため後方へ
バックステップ。ステラとの距離を置く。ステラの剣が当たった地面はまるで噴火が起
きた後のようにひび割れ高熱になっていた。
「いい判断ね。私の剣の温度は摂氏3000度、まともに受ければただじゃすまないわ
よ!!」
そう告げた瞬間ステラは更なる斬撃を浴びせるために結城に接近する。
「(さすがに剣術では向こうのほうが一枚上手か。この剣だと彼女の剣をまともに受け
ることはできない...。ならば)」
結城は右手を軽く上げ無数の紋章を出現させる。彼の能力についてほとんど情報がない
ステラは防御態勢をとる。またなにか新しい武器が出てくるのか、そう思った瞬間
無数に出現した紋章の中から剣先が出現し高速でステラを目がけ射出される。
「気を付けろよ。すこしでも気を抜くと八つ裂きだぞ」
ステラは射出された件を自身の剣に巨大な炎をまとわせまとめて振り払う。しかし何度
ステラが振り払っても再び紋章から剣が出現しステラ目がけて再び射出される。
「何よこれ?!反則級にもほどがあるわ!!」
ステラが処理しきれなかった剣が体にかすり徐々にダメージを奪っていく。ステラの顔
には明らかな動揺が生まれていた。結城はそれを逃さない。
「そらそらそら、休んでる暇などないぞ!!」
ステラが妃竜の罪剣を振り正面に決定的な隙が生まれた瞬間結城は先ほど具現化させた
剣を振り上げ
ガキーンッ!!
鈍い音と同時に、高魔力で覆われた結城の剣がステラの妃竜の罪剣を弾き返す。そして
結城は自らの剣をステラに対し振り下ろす。
「(もらった!)」
そして結城の切先がステラに触れる瞬間、あり得ない出来事が起きた。なんと結城も弾
き返されたのだ。
「かっこ悪いわね。こんな勝ち方。」
ステラの体は薄い炎の防御膜で覆われていた。
「俺の剣が君を傷つけられないとわかっていたのか。」
「ええ、剣で勝って私が才能だけの人間じゃないと見せつけようと思い知らせるために
ね。確かに私の勝利は魔力のおかげ。だから最大の敬意を持って倒してあげる。」
ステラがそう告げた瞬間彼女の周りから複数の火柱が上がりだす。
「お前、何か勘違いしていないか?」
「なんですって?」
「お前が最高の魔力をもっていると誰が認めた」
結城の目つきが豹変する。一輝はこの目を知っていた。
「(やばい...殺し合いの時の目だ)」
一輝と結城は日ごろから鍛錬をしているため当然模擬戦に近い練習もしている。だから
結城がやる気かどうかは一輝が一番よく知っていた。かつて一度だけ二人で本気の試合
をしたときと同じような目。
「いくぞ」
結城は自分が持っていた剣に先ほどより高い魔力を込めそれを思い切り地面に差し込ん
だ。次の瞬間地面に結城を覆うような紋章が出現し魔力の光柱があがる。
「(なにかを始めるに違いないわ。この隙を逃さない!)」
ステラはそう考え複数の火柱を一気に集めた。
「天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)!!!!」
まるでドラゴンのような姿をした炎が出現し光柱の中にいる結城をめがけ突進する。
この一撃をまともに食らえば敗北は確実。黒乃は察していた。しかし、それはすでに遅
くステラが放った炎の竜は光柱ごと結城を火の海に飲み込んでしまう。
「(勝負ありだな)」
黒乃はそう思っていた。しかし、一輝は違った。何かがおかしい。炎に飲み込まれたは
ずの結城の位置からまだ光柱があがっている。
現に結城はまだ生きていた。かすかに炎の中で結城が見慣れない剣を構える動作が一輝
の視界に移る。
そして次の瞬間
「騎士王の聖剣(エクスカリバー)」
炎に飲み込まれたはずの結城が放った眩い光により天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリ
ティオ・サラマンドラ)が吹き飛ばされステラに直撃。幻想形態による直撃を食らった
ステラは体力を削られその場に倒れてしまう。
「しょ、勝者。結城翡翠!!」
コート上に立っていたのはステラの妃竜の罪剣(レーヴァテイン)とほぼ同じ大きさの
光に纏われた美しい剣をもった結城翡翠であった。
「勝負ありだな。理事長後のことは頼みます。それではこれにて」
そう言い残し結城は訓練場を後にした。
「やっば....久々に使ったから疲労が...」
そして訓練場の出口に差し掛かった瞬間結城は力尽き倒れた。
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模擬戦から数時間後ステラは学園内の病院の一室で目を覚ました。窓を見てみると夕日
が差し込みあれからかなりの時間が経過したことを自覚する。
「ヴァーミリオン、具合はどうだ?」
「久しく忘れていました。負けるってあんな感じの気分なんですね。結城は?」
「あいつなら一足先に寮に戻ったよ。」
「理事長、結城のあの化け物じみた強さは一体何なんですか?!彼がBランクなのが私
には理解できません!」
「ああ、そうだったなヴァーミリオン。お前は翡翠のことを伝えていなかったな。いい
機会だから説明しておこうか。彼は、いやあの2人黒鉄一輝と結城翡翠は落第生なん
だ。」
「えっ、それってどういう...?」
「とはいっても2人とも複雑な理由で今に至っている。ヴァーミリオン、黒鉄という名字
に聞き覚えはないか?」
「黒鉄...も、っもしかして極東の小国だった日本を戦勝国へ導いた大英雄を勝利に導い
たサムライ.リョーマの?!」
「そうだ。黒鉄家は代々優秀な伐刀者を輩出している名家だ。この国の防衛においては
重要な役割を果たしている一までは欠かせない存在。っそんなエリート中のエリートを
輩出している名家の人間が最低ランクのFランクで魔導騎士になってしまったらどうな
ると思う?」
「彼らの名誉が傷つくと?」
「そうだ。そしてそれを防ぐために去年の前理事長が魔力試験を学内に導入し通常の
伐刀者の10分の1しか魔力をもたない黒鉄を留年させたわけだ。」
「ひどい...」
「だがヴァーミリオン、あいつをなめてもらっちゃ困る。黒鉄は模擬戦とはいえ我々講
師陣をなぎ倒しFランクながらにして特別に入学を許可された逸材だからな。たとえお
前でも負けるかもしれない相手になるだろう。」
「すごいですね。彼の能力を見てみたいものです。では結城のほうは何なんですか?」
「あいつは...正直私もはっきりとはわかっていない。」
「どういうことですか?」
「一年前、彼はここの学園の1年生でありながら当時の七星剣武祭の校内選抜戦で予選決
勝まで進んだ。しかし決勝で現生徒会長に敗れ惜しくも敗退。そのときは大騒ぎだった
よ。何しろ新入生が決勝まで行くんだからな。それでっも彼は来年の本戦出場のために
情報収集のつもりで行ったんだろう。本戦会場まで直接足を運んで試合を見に行ったら
しい。だが事件はそこで起きた。」
「一体そこで何が起きたんですか?」
「<血の日曜日>今ではそう呼ばれている。当時の会場だった大阪は普段でも観光客
でいっぱいなのだが七星剣武祭にもなるとさらにその数は増える。そこをつけ狙って
解放軍(リベリオン)が一般市民や伐刀者を襲撃したんだ。」
「解放軍ってあの?」
「そうだ。裏社会の頂点に君臨っするプロの殺し屋が集まったのが奴らだ。当然裏社会
の人間だから正当なランクはつけられていない。だがBランクやAランクがいてもおか
しくないレベルだ。この騒動が起きた際連盟は全国の魔導騎士を駆り立ててなんとかこ
の騒動を鎮圧しようとした。。私もその呼びかけに応じた一人だったよ。しかし我々が
向かい到着したころには敵はすでに全滅。大阪市内の都市の3分の1は瓦礫と化しその
焼け野原の中に3人の人間だけが残っていた。勘のいいお前ならわかるだろう?」
「その一人が結城」
こう答えられ黒乃はイエスとこたえたかったのだが確証がなかった。なぜなら今学園
生活を送っている結城とあの時微かに見えた彼とはまるで別人だったからだ。
「これは連盟の中でも機密事項だから他人に教えることは本来できないが、いずれお前
もまた彼と相対する時が来るだろう。特別に教えてやる。あいつの公になっているステ
ータスは私が見る限り偽物だ。そして世界でただ一人世界最強の騎士と肩を並べた人
間。」
黒乃は一年前の記憶をたどる。すでに駆け付けた現場は砂埃が舞いあがり視界が良好で
はなかったが尾の中に立つ2人の白銀の騎士。どちらも同じような色でただならぬ威圧
感をはなっていた。黒乃は考える。
「(おそらく彼の魔力量はヴァーミリオンにも劣らない。っもmっしくはそれをはるか
に凌駕する。だがこの違和感は何だ...?まるで一部の力が抜けきっているような...」
「それと彼の落第したのとどんな関係があるんですか?」
「なに、市内の約半分を木っ端みじんにしたほど暴れまわったんだ。解放軍を倒した
功績は認められたが批判が絶えなくてな。我々も無視できなくなりあえなく留年にし
たという感じだ。」
「それにな、ヴァーミリオン。敗北したからには一輝とのルームメイトになってもら
う」
「あ、そうだったぁ~?!」
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「ん....あれ...」
とある寮の一室で結城は目覚める。見慣れた天井、自分の部屋だった。
「(あのあと確か出口に向かってその後...あれ...記憶がない...?)」
試合後の記憶が抜けていたことに結城は気づいた。あの時に確か自分は倒れたはず。
ではなぜ自分は寮の部屋で横になっているのか。その答えは横を見ればわかった。
「ふふっ、やっとおきたね、ゆう君。」
「えっと.....」
結城が目を向けるとそこには昨年七星剣武祭ベスト4にて現破軍学園生徒会長
東堂刀華がいた。
お待たせいてすいません。アニメを見ながらセリフを考えていたのでじかんがかかってしっまいました。投稿頻度はわかりませんがこれからも書いていくつもりなので評価をよろしくおねがいします。次回はついに結城の人間関係が徐々にあきらかになってきます。楽しみにしていてください!!!