ゴゴゴゴゴという地響きの様な音ともにフライング・ダッチマン号は浮上した。
「ふい〜!まさかこんな簡単に北の海に来れるなんてな!さすがは幽霊船だ!」
ロウは背伸びしながらそう言った。ジョーンズは腕の無い袖をぷらぷらと揺らしながらこう言った。
「あの島では補給と人員を募集をしようと思う。世界政府非加盟国だ…世界政府に恨みのある奴もいるだろう」
「ああ!あの国は世界政府に恨みを持つ奴しかいねぇぜ?船長?あっこの連中なら裏切る心配もねぇさ!」
「そうか…」
ジョーンズは遠い目をしながらマッカスにこう命令した。
「マッカス!島の裏側に船を停泊させろ!」
「了解しました…船長」
マッカスは舵を操作しダッチマンを島へと向かわせるのだった。
「ハァ…ハァ…」
暗い路地裏で2人の少年は身を寄せ合い隠れていた。
「こ…怖いよ…。兄上…」
「我慢するんだえ…!ロシィ! 母上にこのパンを絶対に、持って帰るんだえ!」
グラサンをつけた少年はゴミの影に隠れながらこう思った。
(全て…!全てあの男が悪いんだえ!あの男が聖地から降りたりしなければ…!こんな事にはならなかったんだえ!)
何者かが走ってくる足音ともに兄弟はゴミの山へさっと身を隠した。
「何処に行ったー!」
「探せー!近くに隠れてるぞぉー!」
怒声ともに騒がしくなる本通りを見ながら兄弟はまた息を潜めるのだった。
世界政府非加盟国〜キール王国〜
〜グダニスク造船所〜
偉大なる航路に近いこの国は
造船所の中だというのに不気味に静まり返っており、たまに風で揺れるクレーンの鎖の音だけが造船所の中で響いていた。
その造船所のある建物の一室でジョーンズ達は話し合っていた。
「無茶な事言ってるつもりは無いんだがなぁ…?ヨハン君?」
蝋燭の光がチロチロと揺れると不気味にジョーンズの顔を浮かび上がらせた。ジョーンズの目の前にはヨハンと呼ばれた目の下にクマのある髭面の男は眉間に皺を寄せるとジョーンズを見た。
「だぁーれもぉ?俺が持ってる3隻の船を完璧に直せとは言っていない。直せる分だけ直してくれと言っているだけだ。それにちゃんとそれに見合った報酬は渡すしなぁ?悪い話ではないとは思うぞ?」
「その通りだぜ!ヨハン?俺とお前の仲だろう?船の修理ぐらいしてくれてもいいよなぁ?」
ロウも目の前に座るヨハンに顔を近づけるとそう言った。ヨハンは値踏みをするようにジョーンズ達を見ながらこう言った。
「確かにロウ…あんたが世界政府捕まったと聞いてたのに、こうして会いに来たのは心底ビックリしてるだなも…だがな?」
ヨハンは葉巻をふかしながらニヤリと笑いこう言った。
「今は材料も足りんし、人員も足りん。非加盟国にはいい資材は手に入らんでよぉ…」
「少しだけなら直せるだろ?ヨハン?お前…俺が海賊になる時船を作ってくれたじゃねぇかよォ?」
「あれは難破した船を修復しただけ…スクラップになった船の1部も使ってだなも?あの時はまだ資材に人材があったやつだなも…。今はそれもないんだなも…」
ヨハンはわざと表情を暗くするとそう言った。ジョーンズは黙って見つめると椅子から立ち上がりこう言った。
(欲かきめ…このタヌキが)
「ふむ…いいだろう。行くぞ、ロウ」
渋々…ロウは立ち上がると造船所を後にした。船へと戻る最中…ロウはジョーンズを見てこう言った。
「どうするんだ?船長?このままじゃあ修理もできねぇぞ?」
「材料や人材が足りんだけだろう?」
「そう言ってたな…」
ジョーンズは立ち止まると振り返り、ニヤリと笑いながらこう言った。
「簡単な事だ…。俺達は海賊…。無いのなら…奪えばいいのさ!」
「ククク…。アンタのそういうところ嫌いじゃねぇぜ?」
ジョーンズがそう言うとロウもニィっと笑いながら後に続くのだった。
それから…2日後〜
キール王国周辺では消息を絶つ、奴隷船や商船が後を絶たなくなっていた。ある奴隷船も襲撃を受けていた。
『うぎゃああああああ!』
甲板上では吊るされた船員達が叫び声をあげていた。
「なんでだ!あの野郎はいつもなら偉大なる航路にいるはずだ!なんでだ?なんで!こんな北の海の辺境なんかにいやがるんだ!」
奴隷商人は恐れ戦きながらそう言った。旗を見るとほかの船員達も口々に叫んだ。
「ヒィィィ!噂と同じだァ!」
「タコの海賊旗!悪霊だああ!」
そんな悲鳴の中…ロウは奴隷船に乗り込んでくると言った。
「俺らの船長はこの船をご所望だ!奴隷も船も!俺らが頂く!」
ロウがそう言うと奴隷商人はこう言った。
「わ…わかった!船は大人しく明け渡す!だから、命だけは!命だけは助けてくれ!」
「おお!物分りが良くて助かるね!だがァ…残念ながら、生き残れるのはお前らのうち…たった1人だけだ」
「そ、そんな!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
ロウは奴隷商人に顔を鷲掴むと顔をどろどろに溶かした!もがき苦しむ奴隷商人を見ながら、ロウは歯をむき出しにして笑うとこう言った。
「さぁ、誰を生かそうか?」
一方、アン女王の船長室ではジョーンズがルチアーノと話し合っていた。
「今回で何隻目だ?ルチアーノ?」
「6隻目だね…資材に人員は十分だよ」
「奴隷船は世界政府から公式の許可を貰ってないからな?お陰様で襲いやすいことこの上ない!」
「そうだね!船長!」
「それよりも…ルチアーノ?エンデヴァーから手に入れた暗号書類は解けたのか?」
ジョーンズの言葉にルチアーノは顔を顰めるとこう言った。
「半分は解読出来たんだけどね…。古代文字で書かれてるのに、あんな暗号文にするほどの重要な書類だって事は分かってきたってとこだね」
ルチアーノは黒い髪をガシガシとかきながらそう言うとジョーンズを見た。
「そりゃあ…世界政府の秘密書類だ…。簡単には解けんさ」
ジョーンズがワインをラッパ飲みしているとロウが入ってきた。
「こっちは終わったぜぇ?船長?」
「ご苦労…ロウ」
ジョーンズはロウにそう言うと立ち上がりこう言った。
「よし、もう島に戻るぞ!」
「了解!」
ロウは笑うと船室から出ていくのだった……。
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ヨハンは高台に登り、そこから港を見下ろすと目を疑った。
「な…なんだなも…あれは!」
今…まさに港に入港しようとするアン女王を先頭に6隻の船が曳航されているだった。
「あれだけあれば…足りるだろう?ヨハン君?」
ジョーンズは後ろから現れると不気味な声色でそう言った。ヨハンはビクッと体を震わせると、恐る恐る振り返った。
「6隻もあれば…材料も有り余るだろう?人材は奴隷を貸してやろう」
「ヒッ!」
ヨハンは悲鳴を上げるとヘタリと座り込んだ。
「もう断れんぞ?ヨハンくん?お前の言う通り必要な物は揃えてやった!できないと言うのは不可能だからなぁ?」
ジョーンズは詰め寄るとさらにこう言った。
「失敗する事も許さん。ここまでしてやったのだ…!失敗しましたなどと言う戯言は許さんぞ?お前はこの俺と約束したのだからなぁ?お前言った!材料と人材がないとな!約束通りにしたんだ。やって貰おうか?」
「わ…わかりましだなも!絶対にやりどげるだもぉぉぉ!」
ヨハンは慌てて立ち上がると叫び声を上げながら走り出した。
ジョーンズは念を押すようにさらにこう言った。
「何処へ逃げても無駄だぞ?約束は必ず守ってもらうからな!」
ヨハンは造船所へと慌てて逃げ帰るのだった。
「さて、次は乗組員を探すか…」
ジョーンズは歩きながらパイプをふかすとそう言った。
「おっと!この姿はまずいな…『擬態変化』!」
すると、姿がいつものタコ船長からそこらにいるモブのような顔つきへと変わった。
「これでいいだろう…」
ジョーンズはそう言うと路地裏へと入っていった…。暫く進むと何者かが後を追ってきたが、無視してジョーンズはブラブラと歩き出す。
暫く歩くと…後ろからジョーンズにめがけて鉄パイプが振り下ろされた!サッと避けるとそこにはサングラスをかけた金色の髪の子供がいた。
「何の用だ?小僧ぉ?」
「金目の物か食べ物をよこせだえ!」
「ほう?食べ物か?食べ物が欲しいのか?」
値踏みする様な視線を目の前にいる子供に向けるとジョーンズはせせら笑った。しかし、子供はその視線に物怖じもせずこう言った。
「そうだえ!」
「そうか…。食べ物か…今の俺は何も持ってないぞ?」
ポケットの中地を出しながらそう言った。しかし、子供は食い下がろうとせずにこう言った。
「嘘だえ!お前の身なりからして外の人間だろ!なんか持ってるに違いないえ!」
その子供は鉄パイプを構えながら、恐る恐るジョーンズに近づくと物色し始めた。
「何も持ってないぞ?物は全部船の中だ」
ジョーンズはおどけたようにそう言うと子供は言った。
「なら、俺をその船に案内するんだえ!お前は人質にするえ!」
グラサンをつけた子供がそう叫ぶと物陰から慌ててもう1人の子供が現れた。
「兄上!よそうだえ!」
「何言ってるんだえ!こいつを人質にすれば必ず何か手に入れれるはずだえ!」
2人はいい争いをし始めたがジョーンズはニヤリと笑いながらわざとらしく両手を上げるとこう言った。
「別に構わんぞ?人質にするんならすればいい…」
「おかしな奴だえ!早く船へ連れていくんだえ!」
鉄パイプを向けながら子供はそう言った。ジョーンズは肩を竦めるとこう言った。
「喧嘩なんぞするなよ…俺の船へ行きたいんだろ?なら、連れてってやる」
ジョーンズはニヤニヤと嫌らしく笑いながら歩き始めた。
「ま…待つんだえ!」
サングラスの子供はジョーンズの後を追いかけるのだった…。
寂れた港の中を歩くジョーンズ…。鉄パイプで背中を押されながら歩みを進めていた。
「まだ着かないのかえ!」
「もうすぐだ…そこを左に曲がればそこに停泊している」
ジョーンズはニヤッと笑うとそう言った。
「兄上…やっぱり止めようよ…。何かおかしいよ」
気弱そうにビクビクしながらもう一人の子はそう言った。
「大丈夫だえ!こっちには人質がいるんだえ!下手に手を出したりはしないえ!」
ジョーンズを鉄パイプでつつくとそう言った。
「なんで…港町なのに誰もいないの?さっきから誰ともすれ違っていないえ…!」
その言葉にサングラスの子供は辺りを見渡した。
確かにおかしい…。いつもならゴミ山を漁る連中がいるのに今は誰もおらずガランっとしている。
キョロキョロと不安げに見ていると目の前にいたはずのジョーンズが居なくなっているのに気づいた!
「あっ!いなくなったえ!追いかけるえ!ロシィ!」
「ま…待ってよ!兄上!」
慌てて子供達は走り出して曲がり角を曲がると…そこには!
血のように赤い船が停泊していた!
子供の一人が船へと近づくとある事に気づいた!
「あ…兄上!あ…!あれ!」
「どうしたんだえ!ロシィ!」
「船の手すりが…!」
サングラスの子供が船をよく見ると、船の装飾に使われているのが人間の骨だという事に!
2人は恐怖のあまり後退りを始めると後ろから誰かに肩を掴まれた!
「ひっ!」
気弱そうな子が小さく悲鳴を漏らすと、恐る恐る後ろを見た。そこには先程まで人質にしていた男が立っていた。男は何も喋らずまるで人形のように2人の顔を見ると言った。
「何処に行くんだ?俺の船へ用があるんだろ?」
恐怖のあまり2人は声を出せずにいると男はこう言った。
「ドフラミンゴ君にロシナンテ君?食べ物が欲しいんだろ?」
2人は名前を呼ばれた事にびっくりしていると、男は嘲笑うかのようにこう言った。
「何だ?そんな鳩が豆鉄砲喰らったような顔をして?」
「なんで…!お前!我らの名前を知ってるんだえ!」
ドフラミンゴが恐れずにそういうとジョーンズは高笑いをしながらこう言った。
「ヌハッ!ハハハ!なんで知ってるのかだと…?」
ジョーンズは2人の肩をギュッとつかみながらこう言った。
「俺はこの海で起きることは何でも知ってる!何故かって?それはなぁ…?」
そう言うとジョーンズの顔が普通の顔からどんどんいつものタコの顔へと変貌していった。あまりのことに2人はあんぐりと口を開けながら呆然としていると、ジョーンズはドフラミンゴの顔にタコの触手を纏わりつかせるとこう言った。
「俺が『海の悪霊』だからだ!」
ジョーンズは嬉しそうに顔の触手をばたつかせるとドフラミンゴの顔を見てこう言った。
「さぁ、歓迎するぞぉ?ドンキホーテ兄弟よ…!悪名高き我が船…!アン女王の復讐号へ!」
次回から新メンバー出るよー
モルガンズも出るよー
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