今回このタイトルで作ったのはとあるリクエストが来たのでそれを書いてみたいと思ってしまったがための投稿となります。
メイン作品である『ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~』を読んでいただいている方はへぇー、と思うような、まだ読んでないよーって方はこんな展開があるんだっていう感じに楽しんでいただければ幸いです。時間軸的には『先輩禁止!』の後の話になっています。
それでは、今回起きてしまった最悪の事件を見届けてあげてください!
誰かに穂乃果たちμ'sがさらわれた。その日、俺を起こしたのは明け方に鳴った着信音だった。
「もしもし? こんな時間にどなたですか?」
非通知からの着信だったため俺は相手が分かるまで静かな対応をしようとした。しかし、その対応はすぐに崩れることになる。
そして受話器から機械に頼った音声が聞こえてくる。不快になるようなボイスチェンジャーを使った声だった。
「よぉ~、化け物。お前みたいなやつが普通の日常を過ごしてるんじゃねぇよ」
確かに俺のことをその電話をかけてきた相手は『化け物』と呼んだ。そのことを知っているのは俺の過去を知っている穂乃果たちと、穂乃果たちと同じ中学に通っていた同級生だけだった。それ以外の人には知られていないはずの言葉をそいつは口にした。ただ、それだけの情報しかなくそいつが誰なのかはわからなかった。
何もわからない状況下で一番手に入れたいのは情報だ。少なくてもだれなのか、穂乃果たちがどこにいるのかぐらいは聞いておきたかった。
「お前誰だよ。なんでその呼び方を知っている」
話を長引かせるために呼び方について聞いてみることにした。絞り切ることができない犯人の正体にいち早く近づくためにも話を聞こうとした。
しかし、空也の考え通りの答えは返ってこなかった。本当の名前を教えるようなバカはこんな犯行はしない。だけど何か偽名を教えてくれればそいつの思考のパターンを読むことができると思ったのだが……。
「なんでって、それはお前の過去を知っているからだよ」
だけどそれだけでは終わらなかった。過去を知っている。それだけで十分すぎるほどの情報を俺は手に入れた。あのことは中学校にいた人物しか知らない。周りに言いふらすとしても証拠がないんだ。言っているやつの言葉を信じることなんて大人にはできない。証拠は俺がつぶしたから。
これが俺目当てのただのいたずら電話だと思っていた。全く経験のないことでどうすればいいのかわからなくなるけどとにかく何を目当てでこんな電話をしてきたのかを確認することにした。
「……それで、なんで電話をかけてきたんだよ」
あまり相手を刺激しないように、それでいて回りくどい言い方にならないように話しかけることに成功した。……ただ寝起きで言葉遣いが悪くなったことに気にしてはいないだろう。
本当に気にしないでくれたみたいだったけど、要件について話を聞くことに成功した。
「それはね~、君の大事な人たちを誘拐したんだよ~。ただそんなことだけどね。化け物には教えてあげようと思って~。まぁ、どこにいるかなんてお前なんかには教えないけどね。あ、あと警察に連絡しても無駄だよ。何にもしてくれないから」
この言葉を聞いて、相手がどうしてそんなに優位に立っているのかが分かった。人質がいるから強気な態度でいることができる。もう犯人といっても差支えがないだろう。この犯人は俺の大事な人たちを誘拐したと言った。そして警察が意味のないということも。
それがウソだったとしても、本当だったとしても今はそんなことを気にしている場合はない。大事な人たち。そして俺を化け物だということを知っているものを考えると誘拐されたのはもう限られてきていた。
「…………待ってろよ。お前の居場所をすぐに見つけてお前を消す。それまで穂乃果たちには何もすんじゃねぇぞ」
それは穂乃果たち。9人か、はたまた3人なのかはわからないためあいまいな表現にしてみたが相手はそのことに気が付かなかったみたいだ。
「まだ、誰を誘拐したか言ってないんだけどね。まぁ、正解だよ~。μ's全員を誘拐したから~」
あくまでも自分が優位な位置にいると確信しているからこそ、ここまで情報を引き出してくれる。居場所なって物はあとからどうとでもなる。
俺は限界だった。だからすぐに電話を切って対策をするために思考を巡らせる。居場所に関して何もヒントがなかった。わかることは誘拐されたのは穂乃果たちだということと、俺の過去を知っているやつの犯行ということ。そして穂乃果たちはいつ殺されてもおかしくないということだった。逆探知もする手立てがなく電話の向こうには穂乃果たちの声も周りの環境の音も何も聞こえてこなかった。電話番号だって非通知。こちらから連絡を取ることはできない。
「声は誰なのかわからない。普通ならこのまま何もできないだろう。けど、それは俺が普通の一般人であった時だけだ!」
魔法を使うことのできる俺は居場所を探すなんてことをしなくても見つけて移動することが可能だった。ただ魔法を使うには枯れない桜の力を借りないといけない。俺は本島のこの場所では大きな魔法が使えない。これは前からわかっていたこと。
だから俺は西木野病院に向かった。少しでも早く穂乃果たちを救えるように。
時間は待ってはくれない。だから俺はまっすぐに西木野総合病院に向かい医院長である真姫に父親に話をするべく受付の人に呼んでもらった。
「少しだけ真姫のことで話があります」
少しの間待っていると忙しそうな医院長が俺のもとに駆け足でやってくる。それで俺は話をするべく真姫のことを話題に出して話をつけることにした。
きっと真姫がいなくなったことにすぐに気が付いた医院長はすぐに警察に連絡をしたんだろう。しかしどうにか取り合ってくれない。そんな状況で何かを知っている俺のことを見た医院長は、俺の肩をつかみ話してくる。
「真姫のこと……? 今真姫がどこにいるのかわかるのか!?」
取り合ってくれなくて反応してくれなかったからこそ、今真姫がどこにいるのかわからない状況での俺の言葉に反応を示してくれた。これで少しの時間だけなら話ができそうだ。
しかし、そう言い寄られても俺は真姫たちの詳しい場所はわかっていない。そして俺はこの人に謝らなくてはならないことがあった。
「詳しい場所はわかりません。そして俺のせいで彼女が誘拐されてしまったことを謝りたいと思います。申し訳ございません」
真姫がさらわれたのは俺のせいだ。詳しい原因が俺になかったとしても、俺がいたからこそ事件が起こってしまったことにわかりはない。だから誤っておかなければならなかった。
だけど俺が責められることはなかった。やさしい親のような声が俺に浴びせられた。
「君が真姫たちのためにいろいろしているのはわかっている。気にしてはいない。ただ、真姫を救ってほしい」
真姫のことを頼まれた。それは絶対に達成することだ。だからそれが罪滅ぼしになるのなら俺は喜んですべてを投げ出してでも救おう。
だから俺はすぐにその言葉を受け入れ、これから絶対に必要になるものを手に入れるために医院長であるこの人にある頼みをする。
「もちろんです。それでお願いなのですが私を今すぐに初音島に連れて行ってくれませんか!」
初音島。俺の第2の故郷でもある場所。今度穂乃果たちを招待しようと思ってたんだけど、今はそこに行かないと助けることを優先しなければならない。だから俺は医院長にお願いする。
ただ、その話を聞いただけでは関連があるとは思えない事だったためか、疑問に思っている医院長は俺の頼んだことについて聞いてきた。
「それが真姫を助けることに関係するのかい?」
無理もないだろう。俺がやろうとしていることは一般人にはできない。魔法使いである俺がそこにいるから意味があって、俺の得意としている魔法を最大限に使うにはそこに行くしかないからなのだから。それでみんなを救う。穂乃果も、真姫もみんな。
だけど魔法のことを詳しく説明することはできない。言っても伝わるわけがないし、むやみに魔法のことを知っている人を増やすのも適切な行動ではないから。
「はい! あそこに行かないと助けることはもちろん。場所を探し出すのすら困難になります」
そう。だから捜索が困難になるということを伝えて一刻も早く初音島に迎えるようにしてもらえるようにしていた。
俺がそう言っていること医院長は少しだけ考えるようなしぐさをしていた。
「それはどうやら本当のようだね。わかったすぐに手配する。医療用のヘリを用意するからそこにある水越病院につかせるよ」
すると俺の聞きたかったことを言ってくれた。ヘリを出してくれるなら今すぐにでも初音島に向かうことができる。
待っている時間ももどかしいと感じている俺はすぐさまに俺は反応してヘリがあるところに医院長の案内で向かうことにした。
「ありがとうございます」
待っていろ、誘拐犯。お前はもう、生きていることすら許さない……!
俺が少し待つだけで医院長はヘリの準備をしてくれた。職権乱用だとかは今は気にしていられない。どうしても助けたい人たちがいる。そのために俺はなんだってしてやる。それほど大事な奴らなんだ……!
ヘリを飛ばしに飛ばし、数十分で目的地の初音島についた。水越病院の屋上のヘリポートにたどり着いた。そこに降り立った瞬間、俺は真っ先に目的地に向かい走り出す。病人に当たらないように確実に人をよけて病院を出てそのままあの目的の場所に向かう。もうほぼ準備ができている。あとは、穂乃果のいる場所を感知してそこに向かうゲートを開くだけだ。俺にならできる。
枯れない桜。俺はこの枯れない桜にたどり着くことができた。俺が最大限に魔法を使えるこの場所に。きっとこれから犯人と戦闘する……。戦闘になるかわからないけど、穂乃果たちのもとにたどり着いた後大きな魔法をもう一度だけ使う。その分の魔力はもらっていくぞ! さくら!
「穂乃果……。待ってろよ……!」
俺はそっと目を閉じて全神経を穂乃果の現在地を感知するべく尽くした。……魔法は想いの力。どれだけ、そのことを想えるかというのが重要になってくる。俺の想いの対象はμ's、及びその周りの未来。そのためなら普段よりも強い魔法を使うことができる。そんな気がしていた。
…………繋がった。はっきりとわかるそこに穂乃果がいる。そしてその周りには8人の姿も感じることができた。すぐさまゲートを作り、その場所とこの枯れない桜をつないで穂乃果たちのもとに向かう。……合宿が始まったらこのことをみんなに教えないと。
ゲートを潜り抜けると俺の目の前に穂乃果の姿が見えた。そしてその周りにはほかのメンバー無事だった。それが何よりうれしかった。こんなことを誰にも気づかれないように、警察にすら手を回せる相手だ。そんな奴に覚えがあるが、そんなことはないと思い。とにかく今は穂乃果たちの状態だ。誘拐の定番といえば定番の口にガムテープ、手首足首はロープに拘束され、手首のほうは柱に括り付けてあった。そんな状態で座り込んでおり、その目尻には少し涙がたまっていた。こんな廃工場のような場所に急に放り込まれたら、怖いもんな。ごめんな。俺はすぐに助け出して、9人は必ず家に帰すから。
すぐに穂乃果たちのもとに向かい、全員分のガムテープをはがし、すぐにその場を離れる。ロープを壊すには時間が足りない。きっとここには犯人も一緒にいるのだから。だから犯人を見つけるため、穂乃果たちから離れ、身を隠した。
犯人を捜すため俺は犯人に気が付かれないように周りを見渡した。この空間には俺と穂乃果たち以外に1人しか気配を感じない。いや気配を感じないのではない。それ以外の気配が全くないのだ。9人を同時に誘拐しているからには複数犯を想定していたが、その心配は必要ないみたいだった。そして犯人の人物はすぐに見つかった。
「お前が穂乃果たちをさらったのか……」
怒りが頂点に達していることが自分でもすぐにわかる。それほどまでに俺はこいつの存在が許せない。この……大将勝手の存在が。いくら俺のことを罵ろうが、貶めようとしようが俺は気にも留めない。だが、穂乃果を、穂乃果たちを巻き込んだのならそれ相応の報いを受けてもらうぞ。
俺の登場に動揺している犯人がいる。こんな奴の名前を俺は呼びたくない。本当にイライラしているのが分かる。
「なっなんでお前がここにいるんだよ! どうしてここにいるんだよ! あの暗部のやつらがしゃべったのか!? そんなことはないはず……。依頼が終わったことに対してあいつらは何も関わらない。秘密を話したりはしないはずだ!」
この前オープンキャンパスの時絡まれた際に言った『二度と穂乃果たちに近寄るんじゃねぇ! じゃないと今度は消すぞ』っという言葉を覚えていないのか、それとも来れないと思ってたのかわからないが見つかったせいでかなり動揺している。
そして俺はこいつの疑問に答えてやるほどやさしい性格はしていない。……ただ、お前が使ったものが日本における暗部のようなものだということはわかった。それについては俺がよく知っている。俺に最も親しい人物が所属している場所なのだから。間接的にやってしまったことがあるが、俺は今回完全に自分が望んでこの行動をとる。一般人には使うことのできない、この魔法の力を使って。
……あぁ、俺は今、霧に飲まれたリッカの気持ち、わかるよ。でもやめない。
「そんなことを今から消えるお前に言っても意味がないだろ。虚無の空間に消えろ。クズ」
俺は魔法使いの補助アイテムであるワンドを誘拐犯に成り下がった同級生に向けて魔法を発動する。出口のない暗闇のみが支配する、何もない空間が開く。それはブラックホールのようにあいつを飲み込もうとしている。もちろんこれはあいつだけを吸い込もうとしているわけではないが穂乃果たちは柱につながれている。俺は対抗できないほどの強さではない。必然的にあいつだけが吸い込まれる。
そんな状態で余裕のないはずの犯人が笑った。懐から出したものに一瞬何なのかわからなかった。黒光りする何か。持ち手があり、L字型の日本では現物は見ないであろうもの。
「おっお前がいるから彼女たちは不幸になるんだ! お前のせいでμ'sは死ぬんだよ!」
犯人の手には銃が握られていた。その銃口は俺ではなく穂乃果たちのほうに向いていた。もう何をしてもだめだということを察しているのかわからないけど、何のためらいもなくこの誘拐犯はその引き金を引いた。
穂乃果たちから離れたのがここで仇となるのか……。自分の身を盾に穂乃果たちを守ろうとしたが使おうとしている大魔法のせいで動けなかった。動いても魔法は発動したままなのだが、ゲームでも何でもないのにこの魔法を使うと数秒間動けなくなる。そんなデメリットがあった。だから、身を盾に穂乃果たちを守ることができない……。
穂乃果たちのほうに向かう銃弾はまっすぐに走っていく。無情にも減速することもなく、そして途中で軌道がずれたりすることもなく。
そのまま進み穂乃果の額を銃弾は貫通する。そしてそのまま絵里の胸と真姫のお腹にも。そしてそこからは赤い液体が次々に流れてくる。いやだ……、嫌だ! 見たくない!
しかし、何度目を背けても起きてしまった事実は変わらない。今の俺はただただ撃たれた3人の名前を呼ぶことしかできなかった。穂乃果は多分即死、絵里も。真姫に至っては、意識がないし、多分出血が多すぎて今からじゃもう助からない……。
「穂乃果!!! 絵里!!! 真姫!!!」
俺はそんな3人を見て、今まで以上にこいつに殺意が沸いた。その殺意を込めて俺は撃ったやつのことをにらみつける。すると今まで全体的に吸い込みをしていたブラックホールのような黒い空間の入り口はあいつだけをターゲットに吸い込みを始めた。今までよりも強く。それが起きた結果、もうすでにそこにあいつの姿は存在していなかった。
……終わった。あいつはこの世界からいなくなった。それを確認した後、俺は穂乃果たちに近づく。額から血を流している穂乃果、そして場所は違うけど、それぞれの場所で血を流している絵里と真姫。こんな姿になってしまったのも、突き詰めれば俺がいたから。そんなことを考えているから俺は倒れている穂乃果たちに謝る。今は聞こえていないが。
「……ごめんな。穂乃果。俺は何の配慮もなく突っ込んでしまった。だから……」
俺は怒りのあまり周りが見えていなかった。いや、1つのことに執着しすぎてしまった。あいつを消すということに。もちろん穂乃果たちを助けることを忘れていたわけじゃない。だけど、あいつを消せば無事に穂乃果たちを救えると思ってしまっていた。俺の慢心で……。
しゃべることのできる海未は穂乃果たちを撃たれたショックでもある程度会話ができる状態であった。
「……空也。一体、今までのは何だったんですか! 穂乃果は……穂乃果たちは大丈夫なのですか!?」
そして今のこと、魔法のことを聞いてきた。ただ魔法に関してはもう話したって意味がない。すぐに…………のだから。
だから俺は穂乃果たちに対しての心配にだけ答えることにした。今はそのことを知っているだけで十分すぎるとわかっていたから。
「海未。大丈夫だよ。穂乃果は大丈夫」
そう言って俺は穂乃果と絵里と真姫にワンドを向ける。この3人がまた普通の生活ができるように、そして9人で輝かしいステージを見せてくれるように。
もう失われてしまった命は取り返すことはできない。だけど俺には約束がある。ここに来るために利用した医院長の、真姫のお父さんとの約束。そして俺の……な人を救わなくてはならない。絵里には、彼氏だっているのだから。
「こうなった原因が俺にある。命を懸けてとかそんな大層なことはできないけど、俺は想う」
命の対価となるのは命なんかじゃない。人の命で生き返れるほど命は軽いものなんかじゃない。じゃあ何が退化になるのか。それは今まで過ごしてきた時間そのものだ。その人がいたということを証明する、かかわってきた人物の記憶から生きていることを証明する記録までをなかったものにする。そうすることにより、ある対象となる人物の時間を戻すことのできる魔法。これは禁忌。使ってはならない魔法。周りを巻き込む魔法は概ね禁忌になっていた。これも例外ではない。
俺は何の戸惑いもなくその魔法を発動する。『時空の覇者』最後の一世一代の大魔法だ。これで、あの太陽の笑顔が戻るのならこんなに安いものはない!
俺のワンドから光が灯り始めた。その光が真姫を絵里を包み込み打たれていない海未たちや、真っ先に撃たれてしまった穂乃果もその光が包み込む。これで穂乃果たちは撃たれる前の状態に戻った。……いや撃たれる前ではない誘拐されてここに監禁される前の彼女たちに戻った。
光がなくなるとそこには血なんて何も流れていない3人の姿と残りの6人。そして空也の姿があった。
光が収まり数秒が立つと穂乃果の閉じられていた瞳が動き出す。
「ううん? ここ……どこ?」
まるで朝、目が覚めたかのように感じさせるような声で穂乃果は起き上がった。そんな彼女には何の外傷もなく、いたって健康な状態で。
それは一緒に撃たれたはずだった絵里と真姫も。何もなかったかのように目を覚まして起き上がる。それだけで俺は十分に救われた。
「穂乃果? ここはどこなのかしら?」
絵里は見覚えのないこの場所に疑問を感じていた。誘拐されたことすら覚えていないらしい。
見知らぬ場所で穂乃果が目を覚ましたという現状を認識し、穂乃果に疑問を感じていることりと海未。
「穂乃果ちゃん……?」
「穂乃果……」
きっと、今までに起きたことは何一つ覚えていないのだろう。だからそんな顔ができる。いつもの何をしでかすのかわからない穂乃果に向ける顔が。
こんな状態になっていることまでがどうしても思い出せない希は疑問に思っている点を口に出す。
「確か昨日は……? 何があったか思い出せへん……」
まだ記憶に混乱があるようだった。昨日は何も特別なことをしたわけじゃない10人でラブライブに向けて練習をしていた。それだけだ。ランキングも50位までに言ったから、よりやる気になってはいたんだけど……。
希と同じくして昨日の出来事を思い出せない凛と、花陽はその場で首をかしげていた。
「そうだにゃ……。何してたんだっけ?」
「私も何も覚えてない……」
夏のあの激しい日差しの中で練習をしたというのに凛と花陽は思い出せないでいるらしい。あれだけ頑張っていたのにな。
だけど、しっかりと今まで何をやってきたのかわかっている人がいた。
「ちょっとみんな大丈夫?昨日は練習をして普通にみんなで帰ったじゃない」
さすがは部長。あの時にみんなで押しかけて以来、こんなことを口にした覚えはないけど、それでもやっぱあんたはすごいよ。にこ。
にこの言った言葉で考える真姫は、納得はできたようでその場でうなずいていた。
「確か……、そうだったはずだけど」
そうそう。何にも変なことじゃないみんなで練習をしたんだよ。そう、みんなでね。
真姫と同じくしてにこの言葉で昨日の予定を思い出す穂乃果は不思議そうな顔で俺のことを見ていた。
「そう……だったよね? それで……あなたは誰ですか?」
…………わかってはいた。わかってはいたけど俺の中で何かが壊れるような音と一緒に何かが無くなった。
俺はこれからこの今までかかわったこともない少女たちをもといた場所に戻さないといけない。そのために俺は嘘をつく。
「……いや、ただここに通りかかったんだ。そしたら君たちが寝ていて」
はたから見ればそれがウソだなんてすぐに気が付く。通りかかるなんてできるはずもないこの廃工場。そして扉なんて開いていないのだから入ってすぐにこの子たちを見つけたわけじゃない。そんなのがウソだってわかるはずなのに、それでも俺はまだ期待してしまっている。この9人には俺に関する記憶があるのではないかと。
しかし、現実は無情だ。心から願っていてもそれ通りになるなんてほとんどあり得ない。聞きたくもない言葉がとさか頭の少女から言われる。
「そうだったんですか……。心配をおかけしました……」
お前は俺に敬語を使ったことなんてないだろう。いつも通りに話してくれよ。そう思ってしまうが彼女たちからしたら俺は今初めて出会った名前も知らない赤の他人。無理もなかった。
もう……、この場にいるだけで俺はどうにかなってしまいそうだった。幸い大和撫子のような少女に関しては話し方が同じだったため平静を装うことができた。
「それで、あなたはここからどうやって帰るのかわかりますか?」
だがこの質問には答えられない。こたえられるような情報を持ち合わせてはいない。ここが日本なのかすら怪しい。
だけど、俺にはそれは関係ない。けど、もう耐えられそうにないや。こんな9人の女神を相手にしているのは。
「うん。みんな。目をつむってくれるかい?」
せめてこれ以上に悪化することを考慮して9人には目を閉じてもらうことを提案した。
勿論急に言われて若が分からない状況になるのは仕方ない。
「なんでよ」
この赤髪のツリ目の子の疑問も納得することができる。
でも、それをしてもらわないと俺が俺でなくなってしまうかもしれないんだ。
「大丈夫何もしないから、目をつむって。お願い」
それが伝わるように俺は頭を下げて9人にお願いする。
みんなが目をつむってくれてあとは俺が魔法を9人にかけるだけだった。だけどその前にあることをやっておかないといけない。『これからはお前が作詞をするんだ。頑張れよ』っという想いを込めて俺は大和撫……いや、海未に対して魔法をかけた。俺が今までに培ってきた経験と知識を海未に渡す。
そして最後に9人に対してワンドを振る。これで彼女たちの自宅につけるはずだ。
「じゃあな。"穂乃果"、"海未"、"ことり"、"花陽"、"凛"、"真姫"、"にこ"、"絵里"、"希"。これから頑張れよ」
最後に俺はこの言葉を送って別れを告げる。そして彼女たちは誘拐されたという結果をも残さずに元の生活に戻った。この時坂空也のいない普通の世界に。
この世界にもう俺のことを知っている人間はいない。いくら長年過ごした幼馴染でも、同じ魔法使いであっても。そして家族だったとしても。俺の使った魔法はすべての人にある自分に対する記憶をすべて消し、そこに存在したという事実をも消して対象人物の時間を戻すというもの。だけど、虚無の空間で未だなお生活できているあいつだけはその空間から出てくることはない。そして時間を戻しても同じ結果にはならない。同じ現象が起きなければ。
「まぁ、俺自身は存在し続けるわけだし、穂乃果たちの活躍が見れればいいかな」
そうして俺は隣で支える者から、遠くで見守るだけの存在になった。そこにはもう俺が存在したという証拠が何一つないというのに。彼女のことだけは見届けたいと、最後までそう思ってしまった。
空也に飛ばされた穂乃果たちはそれぞれの自宅で目を開いた。
「え? ……不思議なこともあるもんだねー。ん? 何かが足りない気がする……」
何もなかったかのように自室にいることに驚いてしまう穂乃果だが、その驚きもすぐになくなってしまう。それは違和感を感じたから。
穂乃果は部屋の中を探し回り何が足りないのかを調べることにした。最後に残ったのはアルバムに貼ってある写真……。そこには楽しそうに映っている幼い時に穂乃果と海未とことりの姿が映っている写真があった。どれも"3人"で映っている写真か"9人"でとっている写真だけしかそこには存在しなかった。
「まぁ、気のせいだったのかな。それより今日も練習だ! 急いで学校に行かなきゃ!」
こうして穂乃果のいつも通りの生活が始まった。それが今までと異なる異質な生活であることに気づくこともできずに。
このEND実際にゲームとかでもあるみたいですね。まったく気にしたわけではないですが私の好きな作品である『D.C.Ⅱ』にも同じようなものがあることに気が付きました。まぁ、結果が同じであってプロセスが違うのですが。
今回ある暗い話をよく書いている方からバットエンドを書いてみてくださいというリクエストがあったのでここに形として投稿させていただきました。
次回はポピュラーなあのモンスターアニメをクロスさせて書きたいと思いますので、興味があれば待っていてください!