今月はこの作品に入っているコンテンツ2つのライブがあります。そして今日はその1つ目のライブの開催日になっています。なので記念回としてこの話を投稿します。
それでは、どうぞ!
穂乃果です。今日は今度やるライブの下見として神奈川県の厚木市に来てみました。どういう道順で行くかちゃんと決めてから来たから、大丈夫だとは思うけど……。とにかく行ってみないとわからないもんね!
「って来てみたはいいけど……。ここ、どこ?」
みんなと一緒に行動していたのにμ'sの9人とも目的の場所である厚木公園にたどり着けていない。しっかりしている海未ちゃんとか絵里ちゃんもいるのにどうしてだろう?
来たことのない土地で少し戸惑っている私は周りを見渡してあたふたしていた。
「そんなこと言っていないで穂乃果もここがどこなのか地図を見て確認してください!」
そんな私とは少し違い、だけど余程余裕がない海未ちゃんも焦っているみたいだった。このままでは目的の場所にたどり着くどころかアキバまで帰ることもできない。
私は慌ててスマホの電源を入れて地図を開いた。とりあえず地図を見れば何かわかるかもしれないと思ったから。
「んーっと。あれ? 現在位置が出ないよ!?」
だけど、地図を確認してみると本来自分のいる位置を教えてくれるはずのカーソルが地図上に存在しなかった。ナビゲートをしてくれるアプリのはずなのにこれじゃ全くの使い物にならない。こういう時は地図で現在位置の確認をするのがいいんだろうけどみんなのスマホの画面を見ているとそこには全く違う場所を示している地図が存在していた。
今の状態だと穂乃果たちはどこにいるのかが全く分からない。打つ手はほとんどない状態になってしまっている。
「現在位置が分からんと何もできないんよね」
電柱に何丁目とかは書いてあるがそれがどこにあるのかをスマホで探すのもできない。この状態に勘がとても強い希ちゃんもお手上げ状態になっている。
スマホを懸命に操作しながらにこちゃんが呟く。
「まったく……。大丈夫なの?」
「まったくわからないもんね。今どこにいるのか……」
「こういう時は気の向くままに歩いて行ったほうがいいよ!」
にこちゃんの話に同調する花陽ちゃんと、道に迷い今どこにいるのかわからないため、頑張って今穂乃果たちがいるところを探している中、凛ちゃんはどんどん突き進もうと言い出した。
子供の時はそうやっていろいろ歩いて回っていたけどその度に思ったことがある。ここがどこなのかわからない状況でむやみやたらに場所を移動しないほうがいいということ。
「それは良くないわ。今よりも現状が悪化してしまう可能性のほうが高くなってしまうから」
穂乃果が思っていることを絵里ちゃんが凛ちゃんに言う。いまよりも悪くなっちゃったら多分もうどうしようもなくなっちゃう。
そんな中真姫ちゃんが周りを見てあることに気が付いてくれた。
「……あ、みんな。あそこに誰かいるわよ」
そう言いながら真姫ちゃんは自分たちのいるほうに歩いてくる人がいることを穂乃果たちに教えてくれる。その人が地元の人であってほしいと穂乃果は心の中で願っていた。
みんながその人のことを目で確認して、最初に動いたのはことりちゃんだった。
「あ!本当だ!ちょっとことり、話を聞いてくるね!」
アルバイトをしていたから慣れているのかその人に向かってことりちゃんは駆け足気味に近寄っていった。
「すいません。ちょっといいですか?」
笑顔でことりちゃんは歩いてきた人に話しかける。するとその人も立ち止まりことりちゃんのほうに顔を向けた。
ことりちゃんが話しかけたのは、とても小さい女の子だった。髪の毛の色は水色で、身長は穂乃果たちよりも低い。多分150センチもない女の子だった。頭の上には猫の耳のようなものがありとても不思議な少女だった。
「なんでスカ?? お話なら聞きまスヨ!!」
そんな女の子はことりちゃんの問いかけに反応する。振り返るとよく見えるのだがおへその見える服装に全体的には髪の毛の色と同じ水色の服装になっていた。
穂乃果はその女の子の外見にばっか気にしていたけどことりちゃんはそことは違う場所に驚いていた。
「え!? 穂乃果ちゃんと……声が、一緒!?」
良くことりちゃんの声が聞こえなかったため少し近寄り穂乃果はことりちゃんにどこに驚いているのか聞いてみることにした。
「どうしたの?ことりちゃん」
「はわわっ! 急に驚いてどうしたんでスカ!?」
私と同時にその女の子も急に驚きだしたことりちゃんに驚いてビクリとした。
穂乃果とは違いことりちゃんの言っていたことを聞いていた絵里ちゃんは、ことりちゃんの言っていたことが分かったようで、私と声の一緒なその女の子に驚いていた。
「確かに穂乃果と声が一緒ね。でもそれより今はここがどこで、どこに行けば厚木公園に行けるかを尋ねましょう」
私もさっきの声で気が付いたけど少し穂乃果より声が高い気がするけど確かに私と同じような声だと思った。そう思っているみんなとは違い驚きながらも絵里ちゃんは今聞くべきであることをその女の子に訊ねることを提案した。その女の子が地元の人であることを願いながら。
もともとそのことを聞くために話しかけたのだからと海未ちゃんはその女の子と同じ目線の高さとなり話しかける。
「そうですね。すいません。厚木公園に行きたいのですが、どう行けばいいのかわかりますか?」
幼い少女に話しかけるように海未ちゃんはその女の子に厚木公園までの道を聞くことにした。通行人が他に誰もいない状況ではこの女の子が唯一の希望。
その希望は打ち砕かれることなく明るい笑顔と一緒に穂乃果たちが待っていた答えと一緒に帰ってくる。
「もちろんわかりまスヨ!!
自分のことを1000ちゃんと名乗る少女は海未ちゃんだけでなく私たちにも笑顔を向けてくれた。
ただよく聞きなれない名前だったからか、花陽ちゃんは戸惑いながらちゃんの部分をさんに変えて1000ちゃんのことを呼んだ。
「えっと……、千さん? よろしくお願いします!」
恥ずかしがり屋の花陽ちゃんは勢いよく1000ちゃんに向けてお辞儀をした。
「よろしくにゃー!」
それに合わせるように凛ちゃんも笑顔でいる1000ちゃんに向けて道案内をお願いした。
ただ花陽ちゃんの言ったことは訂正しておきたいと思ったのか少しほほを膨らませてその部分を1000ちゃんは訂正する。
「1000さんじゃないデス。1000ちゃんデス! 皆さんもこう呼んでくだサイ!」
きっとちゃんを含めて名前なんだろうとその時私は判断した。みんなにもそう呼んでほしいと1000ちゃんはお願いする。
穂乃果は出会った1000ちゃんがそう呼んでほしいといってくれたので、いつもと同じμ'sのみんなに話しかけるように1000ちゃんに話しかける。
「うん! わかったよ。1000ちゃん!」
笑顔には私も自信があったから1000ちゃんの輝く笑顔に負けないように穂乃果は新しく友達になる1000ちゃんに一番の笑顔を向けた。
だけど元からちゃんをつけて呼ぶことに慣れていない真姫ちゃんは少し戸惑い気味に1000ちゃんのことを呼ぶ。
「えっと……1000ちゃん? よろしく頼むわ」
そして何か1000ちゃんに違和感を持っているのか希ちゃんはじっと1000ちゃんのことを見つめていた。
「うーん……」
見つめながら希ちゃんはずっと考えるようなそぶりをしていた。何かに引っ掛かりがあるかのように。
1000ちゃんに案内されてすぐにみんなで行こうとしていた厚木公園が見えてきた。道中には少し演奏しているのか楽器の音が聞こえていた。
「つきましタヨ!」
私たちが目指していた厚木公園に案内され、そして1000ちゃんが着いたと宣言してくれたところは女の子5人が楽器を披露している、そして今度私たちがライブをするステージが見えた。
ここに来るまでにずっと迷っていたにこちゃんはたどり着いた場所と連れてきてもらった1000ちゃんを見て唖然としていた。
「あっさりついたわね……。さっきまで迷っていたのがウソみたい……」
そして私はにこちゃんと同じことを考えはしたけど、それよりもここに連れてきてくれた1000ちゃんに感謝した。
「1000ちゃん、ありがとう!」
穂乃果と同じように1000ちゃんに向けてことりちゃんも同じことを言う。多分あのままじゃ、ここにたどり着くこともできずに帰ることもできなかったと思う。
「ありがとう」
だから大げさかもしれないけど私たちを救ってくれた1000ちゃんには感謝しか感じなかった。
そうやってここに連れてきたことへのお礼をしていると1000ちゃんは何かを思い出したかのように私たちに話しかけてくる。
「そういえば、今日はこの公園にどんな用事で来たんでスカ??」
1000ちゃんに言われて気が付いたけどあまり高校生が近場以外の公園に来ることってあまりないよね。多分だから1000ちゃんはわからなくて質問したんだと思う。ここに来るまでの話は厚木の事ばかりだったから。
穂乃果が答えるよりも先に絵里ちゃんが1000ちゃんに向けてこの場所に来たかった理由を話してくれる。
「あ。私たちはμ'sってスクールアイドルで今度ここでライブをしようってことになったから今日は下見に来たのよ」
ここに来たのはライブ会場の下見をするため。もうすでに会場を使うことの許可は取ってあるからあとは下見をしてどういう風にステージを作るかを今日決めるつもりだった。そのついでに少し観光しようかと思ったけどそれで迷っちゃたんだよね。
絵里ちゃんの話を聞いた1000ちゃんは思い出したかのように手をポンとたたいて私たちのほうを向いて口を開いた。
「あ!あなたたちがμ's、だったんでスネ! 今度のライブ、楽しみにしていマス!」
どうやら私たちのことを知っていたみたいで本当に楽しそうに私たちにそう言ってくれた。
「私たちのことを知ってくれていたんですか! これは頑張るしかないね!」
「そうだね、かよちん。凛も頑張るにゃ!」
その言葉は私たちにとっては本当にうれしい言葉だった。だから花陽ちゃんと凛ちゃんは次のライブに向けてのやる気を一層上げていた。
すると目の前でやっているバンドのことを指さして私たちに話しかける。
「今日はちょうどそのステージであるバンドの練習が行われているんデス。見ていきまスカ?」
同じ音楽ということで私たちに見てみないかと誘ってくる1000ちゃん。少しステージに上がれたらと思ったけどこの様子だとできないみたい。
「そうなんですか……。それじゃあ今日はステージに上がってみることはできなさそうですね」
そのことを少し残念がる海未ちゃんだけど、
「そうやね。けど少し気になってしまうな」
希ちゃんは少しそのバンドに興味があるみたいで1000ちゃんの提案を受け入れようとしていた。
私としてもちょっと興味があるから見れるなら見たいと思った。だから希ちゃんと同じくして1000ちゃんの申し出を受け入れるつもりでみんなに話しかけた。
「そうだ! ちょっと見せてもらようよ!」
今日は基本的にここ以外に行かなくちゃいけない場所はない。みんなは私の言葉にうなずき、また1000ちゃんの案内でステージのほうに向かうつもりになった。
それが通じたようで1000ちゃんがステージのほうを指差しながら目的地として案内してくれるみたいで、
「じゃあこっちにきてくだサイ!」
また私たちは1000ちゃんについていく形でそのバンドがいるというステージに向かっていくことになった。
私たちは1000ちゃんに連れていかれステージにやってくるすると曲が始まりだし私たちはそれをキラキラした目で見て聞いていた。最初は少し暗いような感じの曲だったけどサビに入る前にドラムの娘が歌いだした瞬間、その曲は姿を変え明るくテンションの上がるリズムを作り出した。穂乃果たちはただひたすらにその曲を楽しんで聞いていた。それは隣にいた1000ちゃんも。
演奏が終わりだすと曲が明るくなるきっかけを歌っていたドラムの娘がほかのメンバーに話しかけ始めた。
「今のは良かったんじゃない!? ね! あーりん!」
自分たちの演奏に満足したようにギターをもっている金髪のメンバーに今の演奏について聞いてみる。
そのあーりんと呼ばれた女の子は穂乃果と同い年ぐらいで少し汗の書いている額をぬぐいながら、
「そうね。今までの中ではできたほうだったわね」
ドラマーの娘に向かって自分の感じた今の演奏の評価を言う。すごく今の演奏は自分たちでもかなりいい感じでできていたようだった。
そう話しているともう一人のギターの娘がその場にバタンと座りだした。あーりんと呼ばれた女の子と同じくらいの汗をかいていて、
「ふー。なんか疲れちゃったよー」
少し色っぽく座り込むピンクの髪の色をした眼鏡をかけた女の子は疲れたようにそう呟いていた。
そして私たちの視線に気が付いたツインテールでベースを弾いていた黒髪で小さい女の子は、未だ気が付いていないドラマーの娘とギターを持っている2人に向けて話しかける。
「……なんかみられてないか?」
ジト目でこちらを見てくるそのベースの子は少し警戒しながらこちらを見て来る。
ベースの子同様に気が付いていたキーボードの女の子は座り込んでいるギターの女の子に話しかける。
「そうですね。なずな先輩、少ししっかりと座っていたほうがいいかもしれないです」
確かに座り込んでいる娘の姿は同性の私からもドキドキするような格好であったためそれを注意してくれたのは少しありがたかった。注意をしてくれたキーボードの子は白髪で肩までの長さの女の子だった。
演奏をしていた娘たちにジト目で見られながらも見ていた1000ちゃんは演奏をしていた5人の女の子たちに向けて拍手をしていた。
「良かったよ! なんかわからないけどテンション上がってきちゃった!」
穂乃果も1000ちゃんと同じように拍手をしてしまう。そうしてしまうほどのその演奏には自分を熱くするものがあった。
座って聞いていた穂乃果が立ち上がって5人に向けてそう話しかけているとことりちゃんが隣から肩をたたいてきて、
「そうだけどとりあえず落ち着こう?穂乃果ちゃん」
穂乃果に落ち着くように話しかけてくる。アハハ……確かに熱くなりすぎちゃってたかも。
そんなことをきっかけにみんながその場に立ち向かい、聞いていた感想をいうにこちゃん。
「いい演奏するじゃない。にこたちには及ばないけど」
少しすねながらにこちゃんは演奏をしていた5人に言う。……素直にいい演奏だったっていえばいいのに。にこちゃんは素直に今の演奏の感想を言えないでいたみたい。
そう話していると私の大声の感想に気が付いたのかベースの子が私たちのほうを見て、気になることを言った。
「ん?
私たちのほう、というより私のことを見て知らない名前を言ってきた。多分ほかの4人の中のだれかのことなんだろう。
穂乃果の考えは当たってたみたいでその名前を呼んで反応するのが後ろのドラムをたたいていた娘だった。
「え? なるちゃんどこ向いているの? 私はこっちだよ!」
曲を盛り上がらせるきっかけを作っていた女の子が芹菜という名前らしい。その子は私と同じような声をしていたためかベースの子も勘違いしてしまっていたようだった。
改めて芹菜と呼ばれた女の子の声を聴いた海未ちゃんは少し呆れたようにしていた。
「……またですか。穂乃果の声に似ている人と今日はよく会いますね」
今日2度目の同じような声を持った人に出会い、珍しいことなのにこんなに連続して出会うのがもう驚かなくなってしまっていたみたい。
いわれると1000ちゃんも気が付いたみたいで驚いていた。
「本当デス! 珍しいでスネ!」
「本当だ!」
穂乃果も1000ちゃんに同乗して同じ声を持っている芹菜と呼ばれた女の子に向けて驚いていた。でも、これだけ連続で同じ声の人と出会うと珍しいはずなのにそれを忘れちゃいそうになるね。
そんな穂乃果たちのことでみんなも思ってるであろうことを希ちゃんが口にした。
「不思議なこともあるもんやな~」
本当に1日で同じような声を持った人と出会うのは不思議というか珍しいというか……。それは本人である私も思っていることなんだけどね。
あまりのことに声を失ってしまっていた絵里ちゃんも希ちゃんの言ったことには反応することができた。
「え、えぇ……」
だけどそれは短い受け答えで本当に驚いているからこそあまり声が出せないみたい。
その一方で穂乃果たちのように同じ声を持った人と出会ったことのない凛ちゃんは少し羨ましそうにしていた。
「なんかいいにゃー。凛も同じような声の人と会ってみたいにゃ」
自分と似た声を持つ人と出会ったときの気持ちが分かるのは同じ事を体験した人だけで、多分凛ちゃんは穂乃果たちが今どんなことを思っているのかが気になっているみたい。
「でも、ちょっと怖いね」
けどうれしいと思う反面、花陽ちゃんの言う通り少し怖いとも感じている。この声は自分だけのものだと今までの生活の中でそう思い込んでいたから感じることのできる感情みたい。
私たちがそんな話をしているとステージの上のほうにも変化が現れたみたい。
「
キーボードを担当していた女の子が輝かしい笑顔で私たちに近づいてきている女の子に質問した。多分だけど今、あの子がやろうとしていることが穂乃果にはわかる。同じ状況になったら私だってそうするかもしれないから。
だけど何をしようとしているのかはバンドの子たちにはわからないみたいで、芹菜と呼ばれた女の子の行動に疑問を持っていた。
「芹菜ちゃん? あ、もう行っちゃった……」
それでも歩みを止めることのないドラマーの娘は私たちに着々と近づいてくる。それは、1000ちゃんの時にも感じた笑顔をもって。
これからやろうとしていたことがあったみたいであーりんという女の子は歩いているドラムの子に少しあきれていた。
「まったく……。これからいろいろ話し合いがあるっていうのに……」
確かにグループでやっている以上話し合いは絶対に必要だと思う。私もだれも見ている人がいなかったなら話し合いを始めようと思うことだってある。だけど今はそれよりも大事だと思えるものがあった。
それが分かっているからこその歩いている女の子の発想がある。ここには1000ちゃんを含め、10人の演奏を聞いていた人たちがいる。
「それはあとでもできるでしょ! 今はどうだったかこの人たちに話を聞こうよ!」
そうすると一番は聞いていて客観的な意見を持っている人たちから感想を聞くことが大事だということにドラマーの娘は気が付いていてそれを実行に移そうとしていたみたい。ここまでやっぱり行動的に私と同じ部分を感じた。
意見を聞こうという提案を聞いてベースの子が得意げな顔になり、ドラマーの娘の行動を理解した。
「まぁ、そうだな。人の意見は参考になるし、褒められるのはうれしいからな~」
どこか私たちのメンバーのうちの一人に似ているようなことを言ってそのままドラマーの娘の行動を止めることはなかった。
なんで私が同じようなメンバーがいると思ったかというと、その自信満々な発言を聞いてのことだった。
「褒められるの前提なのね……」
あーりんと呼ばれた人もそう思ったのかその部分をいう。そう、にこちゃんと同じだった。自信満々で自分の音楽に絶対的な信頼を持っているにこちゃんに似ている。
私たちは芹菜と呼ばれた女の子が来るまでのやり取りを聞いていたためもうすでに話の流れは理解している。
「ってことで、お話聞かせてもらってもいいですか?」
そのことを理解してか、はたまた説明するのが苦手なのかそう私たちは提案された。そしてその提案に私たちμ'sとここに来るまでに案内をしてくれた1000ちゃんは顔を見合わせみんなが笑顔になった。
その答えを代表して私が言う。
「喜んで!」
あれだけの演奏を聞かせてくれたから、何か力になりたい。そう思ったり頼られているなら力を貸してあげたいと思ったから私たちはその提案を受け入れることにした。
「デス!」
そして私の言葉の後に笑顔で1000ちゃんも演奏についての感想を伝えることに賛成のようだった。
そうして話をしているうちに話題はバンドの話からお互いの音楽の話に入った。座っているところにはちょうど真姫ちゃんが持っていたμ'sの楽曲の楽譜があった。それを見ながら、自己紹介を済ませて一通りみんなの名前を知ることができた。
「じゃあμ'sの皆さんはスクールアイドルをやっているんですか」
私たちのことを聞いてきたあーりんと呼ばれていたのは私と同い年の2年生でリードギターっていうのが担当のイロドリミドリというバンドのバンドマスターらしい。名前は
私たちのことを知っている1000ちゃんは穂乃果たちの代わりに今度のライブのことをイロドリミドリの人たちに教えてあげてる。
「それで今度ここでライブをしてくださるんデス! 楽しみデス!」
なんか今日は1日の密度が高くて本来の目的を忘れそうになるけど私たちはライブのステージの下見に来たんだった……。私は1000ちゃんの言葉でここに来た理由を思い出した。
そんな中さっき私が思っていたことを実現するかのようににこちゃんがライブのことについてしゃべり始める。
「まぁ、にこがいれば当然よね」
本当に似てるな~と思いながらその言葉を聞いていると多分私と同じようなことを考えたのかキーボードの子が口を開く。
「……ツインテールでちっちゃい人は自信過剰の人が多いいんでしょうか?」
彼女は
「そうだね~。なんか似てるよね」
そしてその凪ちゃんの言葉に同調するようにバンドのリズムギターを担当しているという
凪ちゃんの意見に同調する人も出てくれば言われた当人たちは否定したいみたいで、その発言をした凪ちゃんに向かって反論する。
「「それってどういうことよ(だ)!?」」
にこちゃんと同じく反論していたのは
2人にものすごい勢いで迫られているというのに全く動じない凪ちゃんは先ほどの全く変わらない声のトーンでにこちゃんとなるちゃんに先ほどの自分の発言についていう。
「いえ、他意はないです」
凪ちゃんがあっさりとそう答えるからか、多分不満は残っているんだろうけどそれからはにこちゃんもなるちゃんも何も言わなくなった。
その話もひと段落したのを見計らって今度はイロドリミドリを作ったリーダーの明坂芹菜ちゃんが私に話しかけてくる。
「それで、やろうと言い出したのが穂乃果ちゃんなんだね」
μ'sの始まりのことを話したからそのことについても当然話したんだけど、実は芹菜ちゃんも同じようなことをしていたみたいで、成績が足らないから学校にある噂を信じて学園祭でいい演奏をしようとしたみたいで出来たのがイロドリミドリらしい。
でも、μ'sの話になったらまずはあのことを話さないと始まらない。
「うん! 廃校を阻止することが目標で始めたんだけどやっぱり音楽って楽しいね」
あの事。つまりは音ノ木坂の廃校問題があってそれを無くすためにやって来たんだけど、話すとしても今は、そこまで重要ではない。音楽が楽しいということさえ伝わればここにいるみんなには十分すぎる言葉になる。
その証拠に私の言葉はすぐに芹菜ちゃんに伝わった。本当に楽しそうに演奏していたからそこについてはあまり芹菜ちゃんのことは知らなくてもわかる。
「うん! 私も、太鼓をたたいてるとき楽しいな!」
明るすぎるくらいの笑顔で芹菜ちゃんはそう言った。穂乃果の推測は間違っていなかった。話している芹菜ちゃんもそうだし、イロドリミドリのみんなも、さらには1000ちゃんまでうなずきながら話を聞いていた。
そう。ここにいるみんなは全員、音楽にかかわっている。それは案内をしてくれた1000ちゃんも例外なく。
「それにしても、1000ちゃんまで歌にかかわってたなんてね」
ただ、真姫ちゃんの言うようにまさか1000ちゃんが音楽をやっているとは思わなかった。自己紹介の話の中で自分の歌を持っているということを聞いたときは驚いたなぁ~。
でも私たちのこの驚きはほんの少しのことだけに過ぎなかったことにすぐに思い知らされる。
「この間デビューしちゃいまシタ!」
あっさりと告げられる事実に私たちは今まで以上に驚くことになった。音楽に関わっていると聞いたときに驚いたけど、まさかデビューしちゃっているとは思わなかった……。
デビューをしている。つまりは1000ちゃんはアーティストとして活動していることになる。
「まさか、プロだったんですか!?」
そんなことを聞かされて普通に今まで道案内を頼んでいた人がそうだと思うことができなかった。
「こんなところで普通にしてていいんですか?」
そしてプロのアーティストであるということが周りにばれればファンや、あまりよく思っていない人たちから襲われてしまうことがあるのだが、そこを心配した花陽ちゃんは1000ちゃんに大丈夫なのかと尋ねてみる。確かに普通にこうやって話をしているだけでも危なそうに感じるけど……。
でも、花陽ちゃんの心配している部分は全く心配に思っていないようですぐに1000ちゃんは明るい笑顔になり答える。
「大丈夫デス!」
どうして大丈夫なのかはわからないけど、それがウソでないことは穂乃果にはなんとなくわかった。……嘘をつく理由もないしね。
そんな話をしていると2匹のお腹の虫が鳴き声をあげた。……だ、誰だろうね……。
「「お話してたらお腹すいてきちゃった……」」
はい……。私です。いろいろ話していたら時間はもう12時を指していた。私の体内時計正確すぎじゃないかな?それにしても芹菜ちゃんが一緒で少し安心した……。
私と芹菜ちゃんの発言で1000ちゃんは時計を見て何かを思い出したかのように立ち上がる。
「はッ、少しだけ失礼しマス。
おっ昼だぁ〜☆☆☆
お昼ご飯、しっかり食べて午後も頑張っていきまショーネ!!
マスター♡」
急にそんなことを言い出す1000ちゃんに驚く私たち。でも、1000ちゃんにとってそれは日常のようなものみたいですぐにその場に座りなおしみんなのほうに向きなおる。
「あ、いつものやつなので気にしないでくだサイ。できればこれからも一緒にお昼だ~してほしいでスガ」
やっぱり穂乃果の思ったことは当たりみたいで今まで通りの1000ちゃんのまま私たちに話してくれた。
お昼ということで穂乃果はいつも食べている『パンパック』のパンを食べようと取り出し一口、いつものようにかぶりついた。
「今日もパンが……? まずい?」
いつもと同じ言葉を言おうとしたけど、その言葉が出ることはなかった。今開けたばかりなのにパンはぱさぱさしているし、いつも食べている味と同じはずなのに味が全くしなかった。
穂乃果のお昼にいつも一緒にいる海未ちゃんとことりちゃんは私の言葉を意外そうに聞いていた。穂乃果もパンでまずいなんて言う日が来るとは思わなかったけど……。
「珍しいですね。穂乃果がパンをまずいと言うなんて」
多分毎日私の『今日もパンがうまい!』を聞いているからこそ信じられないといった様子で私のことを見ている海未ちゃんと、
「そうだね。いつも食べているやつだし、賞味期限がきれているわけでもないのに」
私の持っているパンを隅々まで調べていることりちゃん。本当に何もないのに今日は穂乃果はどうしてもそのパンをおいしいとは言えなかった。
穂乃果がどんなパンでも大好きだということはμ'sの中では知られていること。なのに今の私の言葉を聞いた希ちゃんは、不思議そうにつぶやいた。
「珍しいこともあるもんやな~」
今日はなんだか希ちゃんの言う通り珍しいことがある日だと思う。パンの件もそうだし、同じ声を持った人と出会ったり、スマホの地図が使い物にならなかったりしていろいろなことが起きている日になっていた。
だけど私のパンがまずいという言葉に1000ちゃんはみんなとは違う反応を示した。
「ということは……」
立ち上がった1000ちゃんはそう言って周りを見渡して何かを探しているみたい。何か今の話にきっかけがあるみたいで。
しばらく1000ちゃんが周りを見渡していると、1000ちゃんにとある連絡がきたみたいで、私たちからは背中しか見えないけど誰かと話しているみたいだった。
「あ、プリマちゃんから連絡デス」
1000ちゃんはプリマちゃんという人から通話が入ったみたいだった。
すぐに1000ちゃんとは違う声が私たちの耳に聞こえてきた。声からして少しお嬢様チックな女の子だったと思う。
「1000ちゃん!近くにマズマズ獣がいます!」
そしてその声から聴きなれない言葉が聞こえてきた。マズマズ獣。一体何なんだろうと思っていると、1000ちゃんがまた歩き出した。
その後ろ姿は少し怒っているように感じられた。パンがまずくなってしまった原因を作ったということはなんとなくわかったけど、それ以外のことは全く置いてけぼりの状態だった。
「そうですか……。今日仲良くなったお友達にこんな思いをさせるなんて許せないデス!」
そんな風に今私たちが思っていても1000ちゃんの進む足は止まらない。きょろきょろ何かを探している風に1000ちゃんはしていた。
私たちもつられて周りを見渡してみるとそこには普通なら見ることのできない。そして一生見たくはなかったものが存在した。
『我名はパックパン。王女を出さないとこの公園を壊してやるー!』
穂乃果の食べているパンを大きくして怪獣のようにしてしまったような化け物がそこにはいた。大きさは街路樹ぐらいのサイズでとても大きく感じられた。
目の前の信じられない光景に絵里ちゃんも心を乱し、混乱しているみたいだった。
「あ、あれは何なの!?」
まったく今起きていることが飲み込み切れない。すぐに逃げなきゃいけないのに1000ちゃんはどんどんその化け物のほうに向かって行っちゃうし、まだ私たちは動けるような精神状態じゃない。
だけど意外にへっちゃらな感じをしている人も中にはいた。それはあまり大変だと思っていないなずなちゃんと、
「パンみたいなお化けかな~。でも、今はお昼だし~」
「なんかスピリチュアルやね」
心霊現象にはとても興味のある希ちゃんは興味津々な様子でそのパンの怪物のことを見ていた。
歩きながら進み続けている1000ちゃんはようやく私たちに話をしてくれた。だけど私たちのほうは見ないで歩き続けたまま。
「私が倒しますカラ、皆さんは安全なところに避難してくだサイ」
私たちの中でも身長が低いほうなのにまったく歩くことをやめないで進み続ける1000ちゃん。まっすぐ透き通った声に恐怖心は感じられなかった。
1000ちゃんの無謀だと思える答えに私は驚きながらも言葉を返すことができた。
「大丈夫なの!?」
心配になってしまう。あんなの小さい女の子があんな怪物に向かっていくなんて。本当なら私たちが止めなきゃいけないのに何もできないでいる。そんな私に向かって1000ちゃんは大丈夫と返し、化け物のいるところに駆け足で迫っていく。その間に1000ちゃんに言われたように私たちは近くの茂みに隠れることができた。
ある程度化け物との距離が詰まると1000ちゃんはその場で止まりその手にはマシンガンのようなものが握られていた。目が真剣になると1000ちゃんがそのマシンガンを打つ。その無数の弾丸はまっすぐ化け物のほうに飛んでいく。動きが遅かったからなのか全弾発が化け物にあたった。しかし、少し動きが止まるだけでダメージは全く入っていないような状態だった。
距離を詰めていたことが仇となったみたいで1000ちゃんに攻撃をしようと動き出す化け物。まだ、当たるには時間があるけどそれでも大きな銃を持っている1000ちゃんにはよけることができないと思った。
(このままじゃ1000ちゃんが!? 誰か1000ちゃんを守って!!)
とっさに私は手を組んで神様にお願いするかのように、届かないであろう願いを祈った。今の私じゃ何もできない。だからせめて助けてあげられる人をっと思ったら……。自分たちがいたステージのちょうど中央に光が集まっていくのが見えた。
その光が次第になくなっていくとそこには音ノ木坂学院の制服を男子生徒用にしたものを着ている1人の男性がたっていた。
その男の人は何が起きたのかわからない様子で周りを見渡していた。
「ここは……?」
そこにいてもたってもいられなかったから私はその人に避難するように声をかける。今はせめて1000ちゃんの邪魔にならないようにしないといけないと思ったから。
「そこにいる人!! 早く逃げてください!!」
必死になって逃げてくれるように大声で少しでも早くここから逃げ出してくれるように声を出した。
その男の人は私の声に反応して私たちのいる方を見てきた。すると私が声を出したからなのか穂乃果と目が合った。
「穂乃果……? いや、そういうことか」
小声で何かを言っているがここでは何を言っているかわからない。だけど何かを考えているようにしていた。その時に私から目線をずらし怪物のいるほうに目を向けていた。
次の瞬間に穂乃果の言葉とは反して男の人は化け物に立ち向かっていく。姿勢を低くして1000ちゃんのいるところにまっすぐ走っていく。1000ちゃんの時と同じように無謀だと思われたその男の人の手に木の棒のようなものが握られていたことに気が付いてもそれで何かできるとは思えなかった。
side out
助っ人side
急にこの場所に来たと思ったら穂乃果が逃げろというし、名前を呼ばないし、女の子が戦っているしで現状を把握するのに少し時間がかかった。だけどこの子を助けないといけないということはなんとなくわかった。そしてここが俺の普段いる世界じゃないことも。
「えっと、そこの君。少し俺が変わるから、もう少し力をためてくれないか?」
そして俺はこの怪物を倒すほどの力を持っていない。できるのはせいぜい足止めをするぐらい。だから俺はこの子にとどめを刺すことを託した。
女の子は俺にこの怪物を対処するのが難しいと思っているようで不安げに訪ねてくる。
「大丈夫なんでスカ?」
まぁ、俺が普通の一般人だったらこの反応が普通であると思う。だけど残念ながら俺はただの一般人ではない。数分程度の時間ならいつでも稼げるくらいできる。
それにしても相手の正体がわからない以上むやみに攻撃するのは悪手でしかない。だから知っていそうな女の子に訊ねてみることにした。
「あ、あとあいつがどんなやつなのか教えてくれると楽かな」
すると女の子はすぐに教えてくれる。その時声が穂乃果と同じように感じたのは今は必要じゃない。
「えっと、敵さんはマズマズ獣といいマス。近くにいるだけで食べ物がおいしくなくなってお友達を傷つけるんデス!」
話によると怪物の名前はマズマズ獣というもので暴れまわっていることからして普通に敵であるということが分かった。そして見た目からしてあれはパンをまずくさせる怪物なんだろう。……穂乃果にとっては絶対に存在してほしくないやつだなあれは。
とにかく情報はある程度つかんだ。あとは俺とこの女の子の動きをよくできるようにあのことを頼んでおこうと思う。俺は絶対にそうなるんだけど女の子はわからないけど。
「それとそこにいるみんな! なんかテンションが上がる曲を頼んでいいか?」
テンションが上がれば自然に自分の動きにリズムができ普段よりいい動きができる。そのため、μ'sに歌を歌ってくれるようにお願いをする。
急に歌ってくれと言われたからか穂乃果は少し意外そうにしていたが、
「え……?」
その近くにいたスティックを持った女の子は返事を返してくれた。
「わっ分かった!」
……この子も穂乃果と同じような声の持ち主なのね。どこかの孤高のカトレアさんを思い出すわ。
ステッキを持った子が言ったことに驚いたギターを持っていた金髪の女の子が今からどうするのかの会議を始めた。
「ちょっと、どんな曲やるのよ! 『Change Our MIRAI!』は期待に沿えないし、『ドキドキDREAM!!!』はまだ不完全よ!?」
彼女たちも歌を持っているみたいだが今の俺の注文にこたえられるような曲は持ち合わせていなかったみたいだ。
その近くにいるにこはある曲を思いついたみたいでμ'sのみんなにその曲をやることを提案する。
「……『No brand girls』しかないわね。演奏はできるかしら?」
多分μ'sの曲の中で一番テンションが上がる曲はその1曲なのだろう。自信をもってその曲を候補に挙げる。
「そうだね。一番はその曲しかない」
当然、異論はなかった。穂乃果が賛成した瞬間μ'sはその曲をやる気になっていた。
ただ問題となるのは今音源を持っていないということみたいだ。
「できますか? イロドリミドリの皆さん」
μ's以外にいるのはバンドのメンバーらしく海未が演奏をすることができるかどうかを尋ねていた。
「まぁ、あの曲なら一度譜面見たし、難しくなさそうだったからできなくはない」
するとベースを持った子は自信をもってできると宣言した。
「大変だけど、できなくはないよ~」
「問題ないです」
それを皮切りに残りのギターを持ったピンクの髪の女の子と今は何も持っていない女の子ができると言った。
その発言に意外そうな表情を見せている金髪の女の子が口を挟む。
「え!? 大丈夫なの?」
確かに今日見ただけの譜面ならできるかどうかわからないため怖いのはわかる。
最後の一人である返事をしてくれたスティックを持った女の子もできると言い出し、今度は金髪ギターの子を挑発するかのように話しかける。
「私も大丈夫だけど、あーりんはダメなの?」
今のこの状況で相手を挑発するほどの余裕を持っていることに驚くこともできるが今はそんなことよりも早く演奏をしてもらいたい。
そんな俺の願いが通じたのか最後までできるかどうか不安がっていた女の子は前のこの言葉を聞いてやる気になった。
「でっできないわけないでしょ!? それじゃあやりましょうか」
その言葉をみんなが聴くと14人がステージのほうに登った。
それぞれのメンバー通しが円陣を組みこれからの演奏に気合を高めていく。
「ってことでμ'sの皆さん行きましょう!」
グループは違ってもこれから同じ曲を作り上げるためμ'sに話しかけるスティックを持った女の子。
「うん! 行くよ!」
それにμ'sのリーダーである穂乃果が答える。
『μ'sミュージック~スタート!』
『イ・ロ・ド・リ・ミ・ド・リ、勝利を~ゲットー!』
それぞれの掛け声を終えてやる気を高めた14人は一気に演奏に入る。
そして始まりだす『No brand girls』。さっきからずっと待っていた曲が始まり俺はそのリズムに合わせてステップを踏みながら動いていく。多分今までより動くは早くなったと思う。そして攻撃をけん制するために魔法を使い、相手を転ばせたりして時間を稼ぐ。
曲はもうそろそろ最後のサビに入るところまでやってきた。そろそろ時間もいいころだろうと思い後ろでパワーをためている女の子に話しかける。
「そろそろ、パワーはたまったかい?」
俺の問いかけにその女の子は大きな明るい声で答えてくれる。
「ハイ! 大丈夫デス! もういけマス!」
先ほどの形の少し異なる武器を持っている女の子はそれをマズマズ獣へと向けていた。持っている武器は銃から剣に代わっており、それそれを横に大振りで振った1000ちゃんはマズマズ獣に背中を向けた。無防備な状態だが俺にはその状態が不安にはならなかった。
それはなぜかというと、もうすでにマズマズ獣は攻撃ができる状態ではなかった。もうあと数秒で倒れてしまうだろう。
『あまり被害を出さないように公園に人があまり来ないようにしていたのにー! やーらーれーたー!』
……なんか良心的な怪物もいるんだな。でも悪いことをしようとした時点でアウトだ。っと思いながら立っていると俺の足が消え始めていた。この世界で俺が活動できる時間の限界が来たみたいだった。もう少し話をしたかったと思うけど俺はそのままおとなしくこの世界から消えることにした。その場に桜の花びらを散らせながら。
そのあとに男のお願いした曲は終わりを無事に迎えることができた。
「壁は! ……」
side out
穂乃果side
あの化け物との出来事が終わり1000ちゃんはその報告だか何だかをするために帰っちゃって今はいないけど話題は先ほどの1000ちゃんと男の人との戦いについての話になっていた。
「1000ちゃんがこうやって普通に外を歩いている理由がわかった気がする」
確かにあれだけ動けているんだから護衛の人とかはいないほうがいいのかもしれない。私は真姫ちゃんと同じ意見だった。
「そうね。あれだけできるんだからボディーガードなんていらないわよね」
それはにこちゃんも思っているみたいだった。
でも、あんなことに会いながらも私たちは男の人に演奏をしてほしいといわれて歌ったけどそれがとても楽しく感じていた。
「ふぅー。楽しかった~」
ちょっと疲れたけどそんなことが気にならないくらい本当に楽しい時間を過ごせたと思う。
自分でも思ったけどあんなことがあったからこんなに楽しそうにしている私が意外なのかことりちゃんが話しかけてくる。
「あんなことにあったのに本当に楽しそうだね」
やっぱりそうだった。今までいろいろあったけど生バンドでのライブっていうのがなかったから新鮮で楽しかったんだけど状況が状況だったからね。もっと心の底から楽しめるような状況でライブをしたいと思った。
でもこれだけ楽しめたのには理由がある。それはあのライブ中、なぜかわからないけど優しい安心感があったから。
「うん! 誰かわからないけど男の人が助けてくれたし、1000ちゃんが倒してくれたんだもん!」
だから私はあの時みんなよりもライブが楽しく感じることができていたんだと思う。
1000ちゃんと男の人の動きを見ていた海未ちゃんは武道をやっているからかその動きに着目してみていた。
「すごかったですね」
普段はしっかりと自分の感じたことをはっきりという海未ちゃんだけど今回に限って言っちゃうと本当に何をどう言えばいいのかわからないくらいその状態を示す言葉が見つからなかったみたい。
そして今回のライブで変わったことがもう一つあった。それは、μ'sとイロドリミドリのみんながより仲良くなれたこと。
「同感です。ちっちゃいのにあんなに動けるんですから」
1000ちゃんの動きに見とれていた凪ちゃんは感心したような感じで海未ちゃんの言葉に同感していた。身長も1000ちゃんと同じぐらいだもんね。
そして同じく身長の低いなるちゃんは1000ちゃんのことを思い出しているようにしている。
「これも未来への希望か~」
確かにあの身長であれだけ動けると自分もできそうな気がしてきても無理はないとは思うけど、少し無理があるかもしれない。
そして話は戻り先ほどのライブの話になる。アリシアナちゃん……。……あーりんでいいや。は最後までやることに戸惑ってたけど、それでもライブは楽しかったみたい。
「でも、初めてやる曲だったけどすごく楽しかったわね!」
初めて合わせたはずなのに違和感のないように最後まで通すことができて意外そうにあーりんちゃんはしていた。
話の中で少し体が弱いと聞いていたなずなちゃんが演奏してみての感想を口にする。
「そうだね~。あんなに激しいのは大変だったけど、すごかったね~」
あの曲は激しい部分が多い。だから疲れてしまうのはよくあると思う。けど私たちの曲を楽しそうにしてくれたのはすごくうれしかった。
あのライブのことは多分この14人全員が忘れなれないくらいのものだったと思う。
「凛も、初めて生演奏でライブしたから新鮮だったにゃー」
私たちにとってはさっきも思ったように初めての生演奏でライブをできたことで楽しいライブができたと思う。
そして、それは演奏してくれている時にも効果を発揮したみたい。それはテンションが上がってたからなのかいつもよりいい動きができた。
「しかもいい感じに踊れたし、普段より良くできたかもしれへんな~」
私の感じたことは希ちゃんも感じていたみたいで、本当に何もかもがいい方向に向かっていった1曲だったと思う。
「うん!やっぱりこっちも楽しんでたからいい感じにできたのかもしれないね」
今日のあのライブの成果はみんなが楽しめたということ。そして被害もなくあの怪物を倒せたことだと思う。
そして今日得ることができたものもある。それは初めて生演奏でライブをしたからこそ気が付いたこと。
「あとは、普段とは違う緊張感もあったからかな」
それはやっぱりライブには緊張感が大事だということ。楽しむのも大事だけどそれはもうすでに自然にできている状態。ライブは緊張することがあっても慣れてしまうとそれほど感じなくなってしまっている。新しい環境が私たちを普段とは違う緊張感を感じさせてくれたからこそ気が付いたことだった。
しかもあれは普段じゃ絶対に感じることのできない緊張感だった。だって怪物が目の前にいるんだもん。恐怖とまではいかなくても少し怖かったことも含めるとあれだけの緊張は今日しかできないと思う。
「あんなに緊張して楽しいと思えるなんて普段は感じられないからね。それでお願いといいうか、さっき楽しかったからできればμ'sの曲のカバーをさせてくれると嬉しいんだけど……」
それは芹菜ちゃんも思っていたことで、何かと穂乃果と考えていることが一緒なところがあるような気がしていた。そして芹菜ちゃんから提案されることがあった。それは私たちの曲をカバーしたいということ。
その提案を受けた私は正直言って、何も言わずに使ってくれてもよかった。ただ聞かれたからにはちゃんと反応しないといけないし、私以外の意見も聞かないといけなかった。
「え? いいんじゃない? みんなもいいよね?」
私の言葉にμ'sのみんながうなずく。これでイロドリミドリとμ'sはより親睦を深めることになった。おんなじ音楽をしている者同士、これからもたがいに頑張っていこうという誓いを交わして。
もう日が傾き始めそれぞれが帰ることになった。
「芹菜ちゃん。またね」
私たちは東京に向かうため駅に向かう。だけど芹菜ちゃんたちは家が厚木よりも東のため公園で別れることになった。
最後に芹菜ちゃんが私たちにある提案をしてくれる。それは私たちにとってとてもありがたいものだった。
「穂乃果ちゃんたちもまた今度コラボしようね!」
それは今度ライブを一緒にやろうという提案。初めて生演奏でライブをしたからその良さに私たちはどっぷりとはまってしまっていた。
でも、どうやらそう思っているのは私たちだけじゃないみたいでイロドリミドリの5人もそう感じてくれているみたいだった。
「演奏だけに集中できる演奏もいいと思ったしな~」
確か聞いたときはみんな演奏をしながら歌っていた。だからか演奏だけに集中できるのは珍しく、それはそれで楽しいみたい。
なるちゃんの言葉を皮切りに凪ちゃんも私たちに向けて次のライブの話をしてくれる。
「また今度もやりましょう」
この言葉を聞くとどうしても次で生演奏でできるライブが楽しみになってしまう。残念ながらもうすでに次の厚木でのライブは予定がびっしり詰まっていて時間もそれほどないからできないけど近い未来にまたイロドリミドリとμ'sが一緒のステージに立つことができたらと思った。
私たちという表現をしたからわかると思うけど一緒にライブをしたいと思っているのはイロドリミドリだけはなかった。
「そうね。どちらかのライブに参戦しましょうか」
もちろん合同ライブを楽しみにしているのはμ'sだって同じこと。絵里ちゃんも、凛ちゃんだって。みんなが生演奏でライブをできるのを楽しみにしている。
「それ楽しそうにゃ!」
とても楽しそうな笑顔で凛ちゃんはそのいずれやってくるライブのこと想像していた。
にこちゃんに至ってはいつも通りな感じで、より大きく活動することができることにうれしがっていた。
「どんどんにこの良さが広がっていくのね!」
それを華麗にスルーして真姫ちゃんが話し始めた。
「それは置いといて、連絡先も交換したんだし、やれるときはいつでもやれるでしょう」
ライブのことを話している時にもうすでに連絡先は交換済みだった。だからこれでいつでも日程を決めることができる。
それにタロットカードで今後について占っていた希ちゃんはその占いの結果を教えてくれる。
「またできるってカードも言ってるから問題ないと思うで!」
希ちゃんの占いはよく当たるからこの結果になったことに純粋に穂乃果はうれしい。絶対に実現させたいと思った。
次のライブが絶対にできると言い切ってくれたおかげで私たちはより一層その日が待ち遠しくなった。ことりちゃんに至ってはそのライブの時に着る衣装のことばかりを考えている。
「じゃあ今度はことりの作った衣装も見せてあげるね!」
多分この衣装の中にはイロドリミドリのみんなの衣装も含まれているんだろうなと穂乃果は思った。……ことりちゃんならやりかねないよね。
そしてことりちゃんのその言葉に反応するのが可愛いもの好きということを聞いていたなずなちゃんだった。
「かわいいのかな~。いっぱい見せてね~」
イロドリミドリの衣装はなずなちゃんが担当しているみたいで衣装班通しどこか通じるものがあるみたいだね。
なずなちゃんのお願いにことりちゃんは嫌な顔をすることなくうなずく。
「うん!」
ことりちゃんは自分の作ったものを見てもらうことがうれしいんだもん。断るわけないもんね。
もう今日あったばかりの友達とは思えないほどの関係に今日は慣れたと思う。今はここにいない1000ちゃんも。
「なんか、今になって余計に打ち解けあってますがこの調子ならそう遠くない未来にできるでしょうね」
だから今度ここでライブをする時もそうだし、未来に同じステージに立つ時だって、イロドリミドリのライブの時だってこれからもいい関係を築いていける気がする。本当にこのままならいつか絶対にライブができちゃいそう。
「これからもいっぱい一緒にライブしようね!」
私たちの思っていることを花陽ちゃんが代弁して伝えてくれる。その言葉にイロドリミドリのみんなは笑顔でうなずいてくれて、ここにいる14人全員が笑顔になった。それを最後にそろそろ帰らないとまずいとのことで今日は解散となりみんなは帰路についた。
side out
希side
実はうち、1000ちゃんに会った時から少し疑問に思っていたことがあったんよ。それは1000ちゃんが人ではないということ。だけど幽霊とか心霊的な存在でもないことから何なのか少しわからなかったんだけど家に帰ってきて少し占ってみたら正体がわかってしもうた。
「1000ちゃんはやっぱりロボットだったんやね」
まさか1000ちゃんの正体がロボットだったとは思わんかったわ。でもこれはあまり知る意味もないことやし、みんなに言うのはやめておこう。っとうちはそう思った。
side out
1000ちゃんと初めて会ったとき以降μ'sとイロドリミドリのみんなが12時になると決まって『おっ昼だ~』と明るく言うようになったのはまた別の話だとかなんとか……。
ということで今回の話はイロドリミドリと1000ちゃんから登場していただきました。
そして前書きに行った今日のライブはイロドリミドリのライブになります。私自身も参加させていただき、楽しんで来ようと思います。実はこのイロドリミドリの曲には東方のカバーやチュウニズムの収録曲のカバーなんかもあるので興味を持っていただけたらYouTubeにあるイロドリミドリのチャンネルを覗いてみてくださいね。私としてもこれをきっかけに興味を持っていただけるのは嬉しいことなんで!
それでは、今回はこの辺で。次回は本当にポケモン回を書きます。年末に更新予定なのでお楽しみに!