今回はえみつん楽曲回第5弾! 『WONDER! SHUTTER LOVE』がベースになってます。そして2016年のライブに行ったことがある人もしくはBlu-rayを見た人なら懐かしいと思う内容を含んでおりますのでお楽しみに!
μ'sを一旦終わりにすることをあの海で決めてから初めての休日。私、高坂穂乃果は空也君とデートの約束をしたんだ。結果としては空也君も受け入れてくれて今、準備をしているの。
急だと言って空也君は少し疑問に思っていたみたいだけど、あの日気がついちゃったんだ。想い出を保存して置ける写真って素晴らしいものなんだって。だから私は空也君と写真を撮りに行きたいと思った。2人だけで、2人だけの思い出を作りたい。そう思っちゃったの。
でも穂乃果にはデジカメを買うお金はなかった。……まさかこんなところで無駄遣いしちゃう癖が私に攻撃するなんて思ってもいなかったよ……。っとそうじゃなくて、そんな穂乃果でもカメラを入手することができたんだ!! まさかお父さんがちょっと古いとはいえカメラを持っていたなんて思いもよらなかったよ! けど、これでデートができる!!
……って経緯でデートができることになったんだ。お父さんにもらったカメラはカメラなのに撮った写真が確認できないみたいだけど、普通にデジカメを使うみたいに使っていれば写真は撮れるよね?
デート当日、穂乃果は首にお父さんからもらったカメラを下げて空也君の待っている秋葉原駅に向かった。なんか、私たちの集合場所ってお互いの家とかじゃなく秋葉原駅なんだな~。向かう途中でそのことに気がついた私はなんだかいつもより秋葉原が特別に思えてきた。
「空也くーん!! 待ったー?」
私は首にカメラを掛けて、待ち合わせの場所に走って向かった。目の前にいるのはクリスマスの時に待っていた場所と同じ改札前の柱に寄り掛かっている空也君。時計をチラチラ見てるからもしかしたら結構待たせてたのかもしれない。
だからデートの定番でもある言葉を言ったんだけど、その反応は予想してたものではなかった。
柱に寄り掛かっていた空也君は壁を押し込んでその反動で穂乃果のほうに数歩歩き寄ってくる。
今の時間は10時10分。10時ちょうどに待ち合わせをしたから完全に穂乃果の遅刻だからしょうがないんだけど、空也君はジト目で穂乃果のことを見つめている。
「……あぁ。待った。超待った」
むぅ……。そんなこと言わなくたっていいじゃん。そりゃ、穂乃果が悪いんだけど……。それにしてもその反応はどうかと思うな! ……だって今日は穂乃果、デートのつもりで来たんだし。
「え~、そこは俺も今来たところだよっていう場面じゃないの~?」
恋愛漫画とかでよくあるシチュエーション。女の子は大概こんな夢のようなシチュエーションに憧れている。だからもしかしたら空也君もそうしてくれるかもしれないと淡い期待を抱いてたけど、そうはいかなかったみたい。
「もうそんな嘘通じるような仲じゃないだろ。だから素直に言ったんだよ。このお寝坊さん」
空也君の言葉に私は確かにと思ってしまう。けど、その後空也君は穂乃果の額に親指で押さえつけた中指を近づける。その瞬間に穂乃果は目をつむる。だけどいつまで待っても何かが起こるような気配はない。だから片方の目を開けて空也君のことを見ようとしたんだ。
でも、穂乃果が目を開けると額に一瞬だけの弾かれたような痛みがやってきた。この状況で起きたことを想像するなんてことは穂乃果には造作もないこと。つまり、穂乃果はデコピンを空也君にされたということだ!
って、えぇ!?
「む~……。こうなったら穂乃果の反撃だよ!!」
穂乃果だってやられてばかりいるわけじゃないよ!! 絶対に空也君に反撃してあげる。穂乃果にはちょうどいい反撃の道具があるんだよ!! 私はカメラのレンズを空也君に向けてシャッターを押そうと指を掛ける。レンズキャップは家で取ってきてるから今すぐにでも写真を撮れるよ。
「はっ!? ちょっとやめろよ!?」
フフフ……。嫌がっても駄目だよ~。穂乃果のなかなかできない空也君への仕返しなんだから絶対に撮ってあげる。
空也君は私に撮られないように必死でレンズに手をかぶせてカメラを撮ろうとするけど、空也君が手を出す場所なんて穂乃果にはわかっちゃうんだな~。これが。
「やだよー。ほらほらこっち向いて笑ってよ! 空也君」
だから空也君にカメラを撮られることなく、何回かシャッターを切って空也君の写真を撮った。
「…………」
数枚撮っているともう空也君はカメラを取り上げることは諦めたみたい。けどそっぽ向いたままずっと喋らないでいる。
「聞こえてない振りしないでよー! 穂乃果の声が聞こえないっていうのー!?」
穂乃果はこっち向いてって言ってるのに……。写真くらいいいでしょ~。とりあえずカメラを構えるのだけはやめて空也君にそう言った。
「……はいはい」
私がそんな風に思っていると穂乃果のほうを空也君が向いてくれた。けど仕方ないと言わんばかりの態度……。
そんな態度の空也君にはもう少しお仕置きが必要なのかもしれない。だから私は空也君がこっちに無効としているタイミングで素早くカメラを構える。
けど、カメラを撮られないように空也君が動く場所を避けて逃げていた穂乃果のように、同じ時間を過ごしてきたのは空也君も一緒なんだと思い知らされる。カメラを構える度に空也君は穂乃果のほうから顔を背け続ける……。
やっぱ過ごした時間は同じだと、何も言わなくてもタイミングとかはわかっちゃうみたい。
「もぅ……」
でもね。そんな空也君も嫌いじゃないよ。むしろ大好き! 空也君、かっこいいのに写真は撮る方ばかりで自分はそんなに移ろうとしないんだもん。だからあるのは集合写真ばかり。穂乃果や海未ちゃん、それにことりちゃんの3人共、空也君と2ショットできたことはなかった。だから、今日こそ穂乃果は空也君と2ショットしてみせる!
「にしてもなんで急にカメラなんだよ?」
そんなことを意気込んでいたら空也君が不思議そうな目でちらりとこっちを見て聞いてきた。……あぁ~、穂乃果まだカメラ構えたままだった……。
私は構えたカメラを解いて、首にぶら下がるままにカメラから手を離した。
カメラ……というより私は写真が撮りたかった。永遠に残るきれいな思い出になる写真が欲しかった。
「え~? なんかね。あの日みんなで証明写真撮ったでしょ? その時何もない出来事でも覚えていたいなって思ったんだ」
あの時は特別だったのかもしれない。けど、そんな特別な日は何気ない本当にただの日常があってやってくるもの。それに見方を変えれば何気ない日だって特別になる。だってこの一瞬一瞬は二度と訪れないものだから。
「ふーん……。いいんじゃないか? カメラっていうのは瞬間瞬間を切り取って永遠に保存してくれる、まるで魔法みたいなものだしな」
穂乃果の考えを聞いた空也君は面白そうに笑いながらそう言う。元々魔法のことはなかなか口にしない空也君がそういうことを言うとは思っていなかった私はちょっぴり驚いちゃった。
「何それ~。空也君らしくないよ~」
そう。らしくない。けど目の前にいるのは確かに空也君で……。もしかしたら空也君も私みたいにドキドキしているのかな? だから、いつもと違うようなことを言ってるのかも……。
こんなことを考えたら穂乃果、なんだか恥ずかしくなってきちゃった! 絶対頬赤いよ……。うぅ……。空也君にこんな表情見せたくないな……。あ! そうだ! こうなったらごまかしちゃえ!
私は右手の人差し指を立てて、その指先を空也君の左頬に向かわせる。無抵抗だった空也君の頬に触れることができたからそのまま、手首を小刻みに回してうりうりといじくり回した。
「……うるせ、カメラ持ってる穂乃果に言われたくねぇよ」
私のごまかしが今度は空也君を恥ずかしくさせちゃったみたいで頬を赤くしたまま再びそっぽを向いてしまう。左頬を穂乃果から遠ざけるように顔をそらしたから指先からも逃げられちゃった。
「それは……。って、そろそろ移動しよう? 早く写真撮りたいんだ~!!」
だから穂乃果の手は何の役割を持っていないフリーな状態に戻っている。だからかな? 手をあわあわと振っていたら、首にぶら下がっているカメラに少し手の甲が当たった。
そうだった! 穂乃果には目的があったんだ。それに向かって楽しんでいればこの気恥ずかしさも紛れるよね。それに写真をいっぱい撮ってみたいというのも本当に気持ち。
「はいはい。で、どこに行くとか決めてあるのか?」
私がそう思っていることがどうやら伝わったみたいで、空也君は早速穂乃果に行こうとしている場所を聞いてくる。
穂乃果が誘ったんだもんね。それに今日は穂乃果がやりたいことをやる日。空也君はとことん私に合わせてくれるみたいだった。
「うん! でも、まずは……」
空也君は穂乃果の行きたい場所を聞いてくれた。けどね、まずはここでやりたいことをやってからじゃないとそこには行けないんだ。思い出巡りの前に、ここで1つの思い出を作りたい。だから正面に立っている空也君の腕をつかんで穂乃果のほうに寄せた。腕組状態になっちゃった……。恥ずかしい。けど気にしないでカメラのレンズを自分たちに向けてシャッターに指を添える。
「ここでの思い出も残しておこうよ!」
UTX高校がバックになるように向きを合わせて穂乃果はシャッターを押した。
なんか空也君はカメラのほうをじっくり見てたけど何があったんだろう? 穂乃果、別に変なことをしてないよね?
ちょっとだけ空也君のことが気になったけど、時間は有限。早く最初の目的地に行かないと日が暮れちゃうかもしれない。今はまだお昼前だけど楽しい時間っていうのは何かと早く過ぎちゃうものだから、特に気を付けないと!
少し急ぎ足で穂乃果たちは次の目的地に向かった。
今日の思い出の写真を撮って歩きながら穂乃果は空也君に最初に行く場所を教える。学校の外で近場、そんな限定的な範囲だけどみんなで何かをした思い出の場所を巡ろうと思ってる。
「まず行くところはね~、前にことりちゃんが働いてたメイド喫茶!!」
今日はこの場所以外にも行きたい場所があるからかなりキツキツのスケジュールになるかもしれない。
「ここからだと、少しだけ離れてるのか……。じゃあ早く行こうか。他にもあるんだろ? 行きたいところ」
それに空也君の言うように穂乃果には他に行きたい場所がある。だから急いで行かないと!
「うん!」
私はそう答えて空也君と一緒に並んで目的地に向かう。
だけどどこか穂乃果は違和感を感じた。
いつも通りの速さで歩けない……? 穂乃果は別に風邪気味とかそういうわけじゃない。体調は万全。なのにいつも通りに歩くことができなかった。もしかしてことりちゃんに選んでもらったこの靴のせい? 買う時もちょっとヒールが高いとは思ったけど、結構歩きづらかったみたい。これじゃあ空也君と距離が離れちゃう……。
そう思って前にいるだろう空也君を追いかけようとする。だけど……。
「おい。どこに行くんだよ」
走ろうとした私の腕を大きな手がつかんでくる。そして、前にいるであろうと思った空也君の声が聞こえた。
「え?」
おかしい。だって空也君はいつものペースで歩いてたら絶対に前にいるはず。なのに、どうして……?
「そんな靴で早く歩けるわけないだろ? 慌てなくていいから自分のペースで歩きな」
けど、空也君の言葉を聞いてよくわかった。空也君は穂乃果の靴のヒールが高いことを知っていた。だから穂乃果のペースに合わせてくれたんだ。そう分かると胸が高鳴る。
「……うん。わかった」
熱くなる顔をごまかすように下を向いちゃうけど空也君は穂乃果のペースに合わせながら隣を歩いた。
その間、どうしても嬉しい気持ちを抑えきれずにまともに空也君の顔を見ることができなかったけど目的地の場所に着くころには普通に会話できるくらいには回復していた。
そしてたどり着いた場所は店内ではなく、外。
「じゃあ、早く空也君撮るよー」
ある場所に空也君を誘導して穂乃果はカメラを構える。
「……ここって」
でも空也君はここがどんな場所か、どうして私が選んだのかすぐに分かったみたい。
そう。この場所は初めて学校外でライブをした場所。ことりちゃんがバイトをしているというコネもあってできたライブ。路上ライブをした場所。
「うん! 私たちが初めて路上ライブをやった場所だよ!」
そう言いつつもカメラを構える手を動かさない。手振れを抑えるために脇を絞めてシャッターに指を置く。
画面越し見える空也君は穂乃果のほうに手を向けていた。……どうしたんだろ?
「カメラ貸してみ。俺なんか撮るより可愛い穂乃果を撮ったほうがカメラも喜ぶだろ」
「かわっ!? もぅ!! 急に何を言い出すの!? 今は穂乃果がカメラを使いたい気分だからいいの!!」
全く……空也君は狙ってなのかそれとも天然のなのかよくわからない発言するんだよね……。しかも、聴いててこっちが恥ずかしくなることなんだからズルいよ。もぅ、本当に空也君は卑怯者だ。私のことをキュンキュンさせすぎ。
赤く火照った顔を隠すように私はカメラを再び構える。ファインダーを覗いてみるとやっぱり顔をそらす空也君の姿があった。
……でも、こういうのも個性なんだよね。それにこれも空也君。だから私はためらうことなくシャッターを切った。
ここでの写真も撮り終わり、目的は次の場所になる。
「じゃあ次はどこに行く?」
次の行き先は私にしか分かってないから、空也君が穂乃果に聞いてくる。
次に私が行きたいと思っている場所。ずっと学校内で活動してきたから外で思い入れのある場所はかなり少ない。穂乃果の家とかにこちゃん、希ちゃんの家も想いではあるけど、家だけは撮ろうとは思わなかった。だから音ノ木坂学院以外で一番思入れのある場所を次に行こうと思う。
「うーん。神田明神かな?」
朝にいつも練習をしてた大事な場所。ほぼ毎日行ってたから特別という感情は薄いのかもしれないけど、大切な場所であることには変わらない。
だから特に何の予定もない平平凡凡な日常でもあそこに言ってみたいと思った。もしかしたらまた違った発見があるかもしれないと、そう思って。
「戻るのか?」
けど確かに空也君の言うようにことりちゃんの元バイト先から神田明神までは結構離れてる。というより、普通に穂乃果の家から行けば近かったんだけど、待ち合わせは自然とあそこになるから先にこっちに来たんだけどね。
「うん! 集合場所があそこだったから先にこっちに来たんだ」
秋葉原駅からこの場所と神田明神だと、こっちのほうが近かった。ただそれだけの理由なんだけど、神田明神はたっぷりと時間を撮りたかったから後回しにしたのかもしれない。
自分でも直感的に順番を選んだからどうしてこの順番になったのかよくわかってないけど、納得できた順番だった。
「さよですか。ちょっと離れちゃったけど走るなよ」
私が神田明神を後回しにした理由が分かった空也君は一つ大きな伸びをして私にそう注意する。
「うん。わかってるよ」
もう言われなくても分かってる。私のペースに空也君が合わせてくれるのなら、思いっきり甘えちゃうからね、空也君。
神田明神に向かう最中に通る道はいつも通っている道と同じ。だけど、自然とカメラを向けちゃう。
空也君と一緒に過ごしている時間は最も特別で、大切で、絶対に忘れたくない光景。いつもより色鮮やかに見える1秒1秒が貴重で、いつもの日常が空也君がいるだけで、空也君といるだけで不思議と特別だと感じる。
さっきみたいにヒールが高い時に気がついてくれたり、めんどくさそうに頭を掻いているけど最後までしっかり付き合ってくれたり。そんなさりげないそして何気ない出来事が特別で愛おしくて。
「あぁ……。この時間が永遠に続けばいいのに」
そう思った。だけど、空也君はそう思っていなかったみたい。
「何言ってんだ。時は進むから価値がある。俺たちは人間だ。永遠に生きることも、永遠にあり続けることもできない。人間に永遠はないんだよ。だから一瞬一瞬を思い出せるようにカメラがあるんだ。永遠にはなれないけど、あの時の思い出を思い出していけるように」
確かに、とそう思う。空也君の言いたいことはなんとなくだけどわかる。私たちは永遠に生きていられるわけじゃない。年を取って、老いて死んでいく。スクールアイドルだって同じ。限られた時間の中で精いっぱい輝いているから大切に思える。
「空也君……。そうだね。確かにそうかも。よーし!! じゃあ、ばんばん写真撮ってくよ!! 次は笑顔を見せてね。空也君」
だからその記録が大切になって、もっと時間が流れたらその記録を見てあんなことがあったんだなんて思い出が蘇ってくるんだ。そんな場面を想像していると、早く経験してみたいと強く思っちゃった。
いつまでもカメラから目をそらす空也君を撮るのもいいけど、やっぱ空也君は笑顔でいてほしいな。いたずらっ子のような曇りのない純粋に楽しんでいることが分かるそんな笑顔で。そしてその笑顔を私は永遠に記録していたいな。
「……善処はする」
……空也君の善処するは基本100%やってくれる。良かったー。これで穂乃果のやりたかったことができるよー。……けど空也君、今すっごい笑顔だ。何かあったのかな?
「ちゃんと穂乃果が撮るから、絶対に見せてよね!」
でも今撮るべきじゃない。そう思ってカメラを構えつつも、空也君にそう宣言して胸を張った。空也君の笑顔をしっかりとこのカメラに収めなくっちゃ!
とそんな話をしていると、穂乃果がまず最初に撮りたかった場所に着く。いつも私たちが練習している神田明神に行くために上る大きな階段。『男坂』。私たちはここでいっぱい走ってきた。練習の始まりの場所。
「ねぇ、ここで写真を撮ろうよ」
「それ、いいな。じゃあ撮るか!」
さっきの言葉通り空也君を撮るために穂乃果はカメラを構える。男坂を何段か上がった空也君が手すりにつかまりながら穂乃果のほうを向いた。そこにあったのはさっき穂乃果に約束した笑顔。しっかりとカメラの……いいや、穂乃果のほうを笑顔で見ていた。
やっと撮れる! そう思った私はためらうことなくシャッターを押した。
写真を撮り終わったことが分かったのか空也君は私のほうに再び手を出した。
「……なぁ、今度は俺に撮らせてくれよ。お前のことを」
しょうがなくとか、そんな風には見えない。本当に取りたいと思っているとそう感じた。
「うん。いいよ! きれいに撮ってよ?」
だから穂乃果はこんな言葉と一緒にお父さんから借りているカメラを空也君に渡す。
そして私は空也君がさっき立っていて場所に向かう。
「了解。任せろ」
その最中に空也君は自信満々に穂乃果に宣言してくれる。立とうとしていたポジションにたどり着くと穂乃果は空也君の方向に向き直って、写真が撮られるのを待つ。
何か空也君はカメラを弄っているみたいだけど何をしてるんだろう? そんなことを考えていたら空也君がカメラを構える。
私はさっき空也君がしていたような背を向けながら顔はカメラのほうを向くなんてことは出来なかった。だから普通に写真を撮るように笑顔でカメラに向かってピースをする。
パシャリとシャッターを切った音が鳴り、今の時間がカメラのフィルムに切り取られた。
撮り終わると空也君がが穂乃果のほうにカメラを返しに歩いてきた。
「じゃあ、次はどうする?」
ここで写真とをるのは終わり。そして目的地は次の場所へと移動する。もちろんその場所も決まっている。
「うーん。上に行ってみない?」
そう上。神田明神の中に入ろうと思っていた。あそこには穂乃果たちμ'sの原動力が分かった大切な絵馬たちがある。そこで写真を撮れたらと、穂乃果は思っていた。
「そうだな……。じゃあ行ってみるか」
空也君も私の言ったことに賛成みたいで、男坂を登り始める。……穂乃果の手を握って。
きっとヒールが高いことを気にしているみたい。本当に心配性なんだから空也君は。けど今日はとことん甘えるって決めたんだもん。いっぱい甘えちゃうよ!
その後は穂乃果の撮りたいように写真を神田明神で撮っていた。するとだんだん空が黒くなってきた事に気がついた。
その黒い空には無数の輝く点が散りばめられている。……この光景を上を向いて眺めているとなんだかここ……。
「なぁ、この空……」
どうやら空也君も気がついたみたい。季節は違うはずなのに、星座とかも変わってくるはずなのに、目の前に広がる夜空はどこからどう見ても……。
「うん! あの時みたい……」
空也君が私たちのことをまた信じてくれるようになったあの日の空によく似ている。
だからかな? 予定にはなかったことを空也君に提案する。
「ねぇ、この空撮ってみていいかな?」
この空が見れたのは本当にただの偶然。だから、この一瞬を切り取りたいと思った。
「あぁ。あ、でもその前にカメラ貸して」
穂乃果は首からカメラを外して空也君に渡す。
「いいけど……?」
けど何をしようとしているのかよくわからない。
「これで良し! じゃあこれで撮ってみな」
穂乃果からカメラを受け取った空也君はまたカメラを少し弄って穂乃果に返してくれる。
「うん!」
穂乃果は空に向けてカメラを構えた。
その隣で空也君も空の様子を見守っていた。……ねぇ、不思議だね。空也君と見上げる空って絶対にキラキラ輝いてる。だからこの空を切り取って残したいな。写真を見れば思い出は蘇るんだから。永遠に、私たちの中で。
この写真を撮った後、穂乃果たちは家に帰った。今日撮ったものを写真にするのはお父さんに任せて。
その結果を空也君に見せようと持ってきたんだけど、どうしよう……。お父さんからとんでもないことを聞かされた私は、ちょっとだけ空也君に謝らないといけないのかもしれない。
「あの時の写真? どうだった? 見せてくれよ」
あの時の写真の事と言ってからどうしても言葉が出なくなってしまった私に空也君は手を出して穂乃果から渡されるはずの写真を待っている。
「……はい」
もうこれ以上隠すことは出来ない。観念した私は後ろに隠していた写真を空也君に渡す。ある謝罪とともに。
「ごめんなさい! フィルムカメラってこと知らなくて全然撮れてなかったみたい……」
フィルムカメラなんて知らなかったんだもん! デジカメみたいに操作すれば大丈夫だって思うじゃん! あ~!! 空也君のいい笑顔を残せなかったのがすごい悔しいよ~……。
けど、それだけでは終わらないはず……。
「……穂乃果」
怒られる……。そう思った。けど、その後に続いた言葉は穂乃果が予想していなかった言葉だった。
「知ってたよ? 撮れてないこと」
「……え?」
知ってた……? ……あ!! 空也君にカメラ渡した時なんか弄ってたから、あの時フィルムを巻いていたんだ!!
「だってフィルムカメラなのにフィルム巻いてないんだから気付くでしょ」
空也君が気がついていたことに気がついた私の考えは空也君の言ったことと同じだった。だって現像できたの空也君がカメラを触った直後の写真だったし……。
「知ってたんだったら言ってよ~!! 空也君の意地悪!」
本当に意地悪! だからあんな笑顔をカメラの前でしてくれたのかな? ……けど始まりの場所での写真が……穂乃果の撮った写真が~……。
「まぁ、いいじゃないか。ほら、2枚は撮れてるみたいだし」
そんな悲しみにあふれていた私に空也君が2枚の写真をもって励ましの言葉をかけてくれる。
そこには空也君が撮った私の写真と、穂乃果が撮った最後の夜空の写真があった。
「……そうだね。一番残したかったものものが残せたみたい。でも、今度もまた付き合ってもらうからね! 空也君」
本当に偶然出会えた一番撮りたかったものが残ったのは立ち直るのに十分な効果を与えてくれたみたい。けど、これで終われるわけがない。終われないよ、空也君!
だからもう一回次にやる時は失敗しないように心に誓い、空也君と一緒にやることを約束した。
「はいはい。仰せのままに」
空也君がそう答えると穂乃果と空也君の間に自然と笑顔が溢れだした。
大切な思い出をまた一枚一枚瞬きするたびに撮って行けたらいいな!! 私と空也君のちょっと不思議なシャッターラブな想い出を!!
えみつん1stライブで『WONDER! SHUTTER LOVE』を歌ってる時に写真を撮るというパフォーマンスをしていたのですが、その写真の行方が半年後に開催された追加公演のつなぐメロディ-で明らかになりました。
結論から言いますとフィルムカメラだったらめフィルムが巻けず撮れてなかったみたいです。
まさか半年ごしのドジつんが見れるとは思っておらず、嬉しい半分、写真が見てみたかったなとちょっとだけ残念になりました。
そんな思い出を今回の話に織り交ぜてみましたが、追加公演に参加した人、あるいはBlu-rayを見た人は気がついたでしょうか?
今日6月30日は新田恵海ライブツアーの最終日。『EMUSIC32 -meets you-』が思い出の地"NHKホール"で行われます。
NHKホールと言えばμ'sとして立ったステージの1つ。そして年に1度しか開かれない年末の有名番組『紅白歌合戦』の会場です。そんな会場に今回はえみつんと、生バンドの方々で立たれるということで今からとても楽しみにしています。
当日券もあるそうなので興味がある方は是非!!
ところで、作中にあったあの空というのが気になった人は『ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~』第111話[もうひとりじゃないよ]をチェックだ!