「こうやって改めて来てみると、立派なお家だよね~。」
口を開け、千歌は目の前に建つ昔ながらの住まいに目を奪われていた。
「そりゃあ、ここら辺の網元だった家系だからね。さ、いこっか。」
「うん。」
曜の言葉に頷き、視線の先にあるインターホンを鳴らす。
歴史を感じる建物とは合わない機械的なそれは、この家の長い時代の流れを感じさせる。
『はい、どちら様でしょうか。』
機械越しのノイズ交じりの声が、ルビィの声だと二人はすぐにわかった。
「高海です。ルビィちゃんだよね?あなたにお話があって来ました。時間あるかな?」
『あ、千歌さん!えっと・・・今友達が来ていて・・・。』
声の後ろから誰かの声がしていることがわかる。
その友達の声だろうか。
ただ、千歌はその声をどこかで聞いたような気がしていた。
『え、あ、千歌さんだよ。高海千歌さん。ルビィたちの高校の・・・』
インターホン越しに、向こう側の会話が聞こえる。
途切れ途切れで、ルビィがどんな人と会話しているのかまではわからない。
「曜ちゃん、悪いし引き返さない?」
向こうの様子を察し、曜に提案したその時だった。
『高海・・・千歌さん!?』
ルビィではない、聞き覚えのある声が千歌の名前を呼んだ。
「っはい!私です!」
思わず千歌は返事をした。
声を出してすぐ、馬鹿なことをしたと少し自分が恥ずかしくなった。
『千歌さん、どうしてここに?あ、こら善子ちゃん!だめずら!』
善子という名前、特徴のある語尾、聞いたことあるこの声。
千歌はそれが誰か、答えが出た。
「もしかして、花丸ちゃん!?」
ルビィが自室に千歌と曜を案内する。
千歌は、その部屋を見て思わずつぶやいた。
「すごい・・・。アイドルグッズとか雑誌とか。好きなの?」
「はい!特にスクールアイドルが好きで!」
「スクールアイドル?」
千歌には聞きなじみのない言葉だった。
「学校のアイドルみたいなものなんです。部活みたいな感じで。でも、すっごくキラキラしていて素敵なんですよ!」
「ほえ~、知らなかった。私たちの学校にもいるの?スクールアイドル。」
「今はどうか知りませんけど、前はいたって話聞いたことありますよ。」
アイドルの話をするルビィの目はキラキラと輝いていた。
こんな輝きをもった子にこれから戦いの話をするなんて。
千歌は罪悪感でつぶされそうになる。
「ルビィちゃんのアイドル好きは昔からずら。」
先に部屋にいた花丸が会話に入る。
「ルビィの家で集まることになるなんてね。ところで、千歌さんの隣にいるのは・・・?」
善子の視線は曜に向けられていた。
「あ、うん。渡辺曜ちゃん。ずっと私の戦いを手助けしてくれているんだ。って言っても曜ちゃんはライダーじゃないんだけどね。」
「ヨーソロー!よろしくであります!いきなりお邪魔してごめんね。」
敬礼のポーズをとり二人に笑顔を見せる。
千歌はそれを見ながら、花丸と善子に耳打ちをした。
「二人が言ってた行くところって、ここだったの?」
「ええ。ずら丸と話して、決めたことが。」
「それって・・・」
「あ、あの!」
千歌が仮面ライダー、と言いかけたところで、ルビィが割り込んだ。
「きっとみんな、ルビィに話があるんですよね。とても、大切な。」
場に沈黙が訪れる。
先に口を開いたのは曜だった。
「うん。ルビィちゃん、あなたもライダーなんだよね。」
まだルビィに説明をしていない花丸が慌てて割り込む。
「あ、あの、それは・・・」
「はい、きっとそうだろうとは思ってました。」
「え・・?」
前から知っていたかのような言い方に花丸が動揺する。
「千歌さんにあれを渡したとき、前にルビィが花丸ちゃんに相談したものと同じだって気付いていたんです。きっと花丸ちゃんは、それをルビィから遠ざけるために、預かってくれていたんだよね。花丸ちゃんは、優しい人だから・・・。」
「ルビィちゃん・・・。」
「花丸ちゃん、あれを返してもらってもいい?預かっててくれてありがとう。きっと、今日ここに来たのはそれが理由なんだよね?」
「でも、やっぱり・・・ルビィちゃんまで戦いに参加なんて嫌だよ・・・。」
「ずら丸・・・。」
耐えきれず善子がうつむく。
ルビィは千歌の方を向いた。
「千歌さん、千歌さんの話って何ですか?」
「私たちと一緒に、敵を倒してほしいんだ。」
敵、という言葉に花丸が反応する。
「敵って・・・まさか・・・!」
「うん、私たちが一度負けたあのモンスター。」
「ふざけないで!ルビィちゃんは何にも関係ない!巻き込むのはやめて!」
花丸の激昂。
その場の誰もが言葉を詰まらせた。
「私だって、傷ついて欲しいわけじゃない!でも、戦いを終わらせるには、ルビィちゃんの助けが必要なんだよ!」
「うるさい!!!!!!」
花丸の目には、涙が浮かんでいた。
「ルビィちゃんにデッキは返します。でも、あんな危険な目に友人が会うのはもう嫌なんです・・・。だったら、私一人で、あれを倒してやる。」
持ってきたデッキを部屋の机に置き、千歌と曜をにらむ。
「それでも、まだルビィちゃんに戦えと言うのなら。あなたたちをここで倒したっていい。」
「倒すって・・・ずら丸本気なの!?」
花丸は答えず、部屋の全身鏡に向かってデッキをかざした。
「変身。」
花丸の身体がゾルダの鎧で覆われる。
そして、ミラーワールドへと姿を消した。
「まって花丸ちゃん!」
慌てて千歌も龍騎へと変身し後を追った。
「私も追うわ!えっと、曜さん!ルビィをお願いします!」
そう言うと、善子もまた、ファムへと姿を変え鏡の世界へ向かった。
残されたルビィと曜。
花丸の思いとライダーに選ばれた自分と、ルビィは板挟みにされているような気分だった。
「私も、戦っていないのに、卑怯だよね。千歌ちゃんたちばかり苦しめて。ルビィちゃん、あなたも。ごめんね。」
曜がそう零す。
「曜さん・・・。」
沈黙が部屋を埋め尽くす。
別の声が聞こえたのは、それからすぐだった。
「ルビィ、騒がしいですわよ。」
部屋の入り口から顔を見せたのは、ルビィの姉であるダイヤだった。
この部屋に入って戸を閉めていなかったことに曜が気付いた。
「って・・・。なるほど・・・。なんとなくわかりました。梨子さん、私たちに関係あることみたいです。」
「梨子・・・?」
曜が名前を復唱すると同時に、梨子が姿を現した。
「よ、曜ちゃん!?」
梨子も曜の姿をみて驚きをあらわにする。
「それに、あれは・・・。」
梨子が見ている鏡には、にらみ合う三人のライダーの姿があった。
「大体、予想はつきますけどね。」
ダイヤが梨子に、視線で机の上に置かれたデッキを示す。
「仮面ライダーの、デッキ。」
ダイヤが静かにルビイと向き合う。
「ルビィ、あなたは、どうしたいのですか。」
自分の力となるデッキを見ながら、ルビィは自分に問いかける。
「私は・・・。」
いつもありがとうございます。
内容の話から。
花丸と千歌の「戦いを望まない」の違いの話です。
花丸が思う「戦いを望まない」は、友人が傷つくこの戦いが嫌だ、であって、千歌は誰かと誰かが暴力をふるいあうことそのものに疑問を抱いている、という違いがあります。
どちらがいいとか、そんな話ではなく、言葉にすればどちらもそれは「戦いを望まない」になる、そんな感じです。
近況です。
何があったのか全然わからないんですけど、先週のUAが伸びてて驚きでした。
悪い意味だったらどうしよう、って不安ばかりですが、だとしてもアクセスしていただいたことに変わりはないわけで。とてもうれしいです。ありがとうございます。
頑張ってまいります!
それではまた。