善子が追いついたとき、二人のライダーはすでに睨み合っていた。
とにかく制止せねばと、二人に呼びかける。
「二人とも!やめなさいよ!戦う必要なんてないじゃない!」
叫ぶ善子を横目に、花丸が千歌に問いかける。
「どうしても、ルビィちゃんを巻き込みたいんですか?」
「私たちであいつを倒せるのなら、こんなお願いしなかったよ、でも。」
「そうですか、それじゃあ・・・!」
『シュートベント』
機械音がカード名を宣言する。
召喚されたのは花丸自身よりはるかに大きな大砲。
その砲口を龍騎へと向けた。
「これはライダーバトル。望みをかなえるためには、戦うしかない。」
「花丸ちゃん!!!」
千歌の叫びと同時にゾルダはその引き金を引いた。
着弾地点付近のアスファルトはえぐられたように穴が開き、巻き起こる煙幕があたりを覆っていた。
善子の叫びはその轟音でかき消された。
砲口を下げ、じっと煙幕の先を見つめる。
「千歌さん、あなたとは仲良くやっていけると思っていたのに。」
「そう思っていてくれたのなら、まだ希望はありそうだね。」
煙の中からの声。
声に動揺した花丸は、視線をそれから外せない。
鼓動が、早くなるのを感じた。
煙幕が消えていく。
中から姿を見せたのは、盾を構えた龍騎だった。
「花丸ちゃん、私はもう逃げない。この戦いを終わらせるために。」
『ソードベント』
「それにきっと、この世界は、戦わなければ生き残れない。花丸ちゃんの方がそれは良く知っているでしょう?」
それを聞き、小さく深い呼吸をして、花丸は千歌に問いを投げかける。
「もう一度聞きます。千歌さんは何のために戦うんですか。」
「この戦いを終わらせるため。この場所に住む人々を守るため。この二つだよ。」
「一人の女の子が傷つこうとしているのに、その子の傷の上に成り立つ平和に意味なんてない。」
「それでも!!!!!」
目を強く瞑って、吐き出すように叫ぶ。
「それでも、痛みに目を背けちゃいけないんだ。私は、みんなの痛みを受け止める。受け止めて、前に進むんだ!」
「私は・・・あなたほど強くない!」
『ストライクベント』
「ああああああああああ!!!!!!!!!」
角を模した武器を手に召喚し、龍騎へ攻撃を仕掛ける。
龍騎は先に召喚していた剣と盾で攻撃をしのぎながら、ダメージを負わせていく。
攻撃し、攻撃され、激しい攻防が始まった。
「花丸ちゃんの気持ちだってとてもわかる、すごくわかる!でも、目をそらした先にあるのは後悔なんだよ!」
「いくら後悔したって構わない!それで、あの子が傷付かないで済むのなら・・・!」
「このまま戦わなければ、いずれルビィちゃんだってもっとつらい目に合うことになるかもしれない!その前に、終わらせるんだよ!!」
「だから言ってるでしょう!それなら私一人で終わらせてやるって!!!」
「やめてよ!!!!!!!!!!!!」
戦う二人を白鳥が襲う。
衝撃で飛ばされた二人の元へ、ファム-善子-が歩み寄る。
何が起きたのかと、二人は立ち上がりながら歩み寄ってくる影を見つめた。
先の叫びが善子のものだったと二人が気付いたのは、ファムの姿が視界に入ってからだった。
悲痛の混じる、それでいて厳しい口調で善子が話し始めた。
「もうやめてよ。一度一緒に戦った仲でしょう?なのにどうして戦わなくちゃいけないの。」
「善子ちゃん、だってルビィちゃんが・・・」
「ルビィがって・・・。ずら丸、あなたたちが戦っているのをみて、あの子が悲しむとは思わなかったの?」
「でも、ルビィちゃんが無事ならそれで・・・」
「あんたね、そこにあの子の気持ちは一つもないじゃない。全部、あんたの願望でしかないわ。」
「善子ちゃん、それは言いすぎじゃ・・・」
「千歌さん、あなたもよ。ここで戦ったところで何が変わるの?涙が増えるだけじゃない。」
再び花丸へと向き直ると、今度は冷静に語りかける。
「ずら丸、あの子の元にもデッキが渡ったってことは、あの子にも叶えたい願いがあるんじゃないの?あんたそれを知ってるの?」
「・・・知らない。」
「だったら、あの子の意志に任せるしかないんじゃないの?少なくとも、ここでの戦いであの子が泣く姿を私は見たくないわ。」
それ以降、花丸はうつむき、黙り込んだ。
千歌も自分が行き過ぎだったと振り返り、善子に感謝を伝えた。
「あのまま戦っていたら自分を見失いそうだった。ありがとう、善子ちゃん。」
「まさか千歌さんがあんなになるとは、なんだか影を見た気がするわ。って、善子じゃなくてヨハネよ。」
「それでもって、これからどうしよう。戻るにしても花丸ちゃんを置いていけないし。」
変身を解き、壁の近くで膝を抱えて座る花丸を見る。
「そうねー・・・って、もうしばらく帰れなさそうよ。」
善子が指し示すその先に、人型のモンスター。
かつて全員を苦しめた、千歌が倒すべき相手。
「なんで・・・果南ちゃんは鞠莉さんと・・・まさか!」
嫌な予感が胸をざわつかせる。
「とりあえず今は、変身するしかなさそうよ。ずら丸も守らなきゃだし。」
「そう、だね。」
「「変身。」」
龍騎とファムへそれぞれ姿を変え、戦闘態勢を取る。
「そういえば、堕天使?なのに真っ白の白鳥なんだね。」
「んなっ・・・!!気にしてるところを・・・!いいでしょ!これから堕天するんだから!」
「気にしてたんだ、なんかごめん・・・。さて、行くよ!」
「もうっ!」
花丸の耳に、戦闘音は届いていた。
それでも、動けない、動きたくない。
今は、そっとしておいて欲しい。
あぁ、あの子なら、ルビィちゃんなら、どうするだろう。
戦う音が少しずつ変わっていく。
きっと劣勢なのだろう。
四人で戦って勝てなかった相手だ、二人なら尚更。
それに一人で戦うと言った自分は、きっと馬鹿だ。
「でも、それだけ私は・・・」
「それだけ私は、あの子のことを大切に思っていた、違う?」
自分とは別の声に顔を上げる。
ライアに変身した梨子がそこに立っていた。
「梨子さん、どうして・・・。」
「まぁ・・・色々と。なんとなく状況は察しているわ。きっと千歌ちゃんがなんか言ったんだろうなってのもね。」
「千歌さんの言うこともわかるんです、でも・・・。」
「そうね、あの子が本当に自分以外のみんなのことを大切に思ってるって、そこは分かって欲しいかな。」
「それもわかります。だけど、それでも、善子ちゃんに続いてルビィちゃんまで・・・。」
「わかった、これ以上は私よりこの子から言ってもらいましょう。千歌ちゃんたち、かなりピンチっぽいし。」
「ちょ、梨子さん!」
じゃ、と言って梨子は千歌たちの元へと向かっていった。
その後、花丸の目の前に現れたのは、小さなツインテールの少女。
「花丸ちゃん、大丈夫?」
「ルビィ・・・ちゃん?うそ、なんで。」
ルビィの腰にはデッキを挿入するバックル。
そして手にはそのカードデッキ。
「お姉ちゃんたちから聞いたよ。願いを叶えるための力だって。」
「だめだよ、すごく辛い目に合うから・・・ここから早く逃げて・・・。」
「花丸ちゃん、ルビィがこの戦いにかける願いはね、もう一度三人で笑い合いたい、ってことなんだ。」
「え・・・?」
「善子ちゃんと別々の学校になっちゃって、寂しかったね。それから、この前の春休みかそれより少し前ぐらいかな。花丸ちゃん、あんま笑わなくなったよね。」
「春休み・・・。」
「花丸ちゃん、この戦いの大切なお役目があったんだよね。それで、疲れちゃったんだよね。」
「でも、それは家の義務で・・・。」
「ルビィを守っていてくれてありがとう。今度は、ルビィが花丸ちゃんの笑顔を守る番だよね。」
静かに、手に持っていたデッキをバックルに差し込む。
「変身っ!」
ルビィの身体が銀色の鎧に包まれる。
頭と左肩にある角を模した装備から、サイを模したライダーであることが分かる。
「戦うよ、ルビィ。この力に選ばれたのなら!だから、見ててね。」
花丸に背を向け、三人が戦う場所に向かおうと一歩を踏み出す。
その確かな足取りを見て、花丸は自分に問いかけた。
いま自分がすべきことは何なのか。
目の前の少女は戦うことを決めたのに自分はどうか。
私は、ただここでうずくまっているだけでいいのか。
だめに決まっている!!!
花丸は立ち上がって、銀色の鎧で覆われたルビィの腕を掴んだ。
驚いて、ルビィが振り向くより早く、花丸は叫んだ。
戦っている三人にも届くぐらい、大きな声で。
「おらも戦う!あなたを守る!一緒に、戦う!!!」
「花丸ちゃん・・・!」
「ルビィちゃん、ごめんね。・・・って謝ってばかりだ。ありがとう。それから、これからもよろしく!」
「うんっ!」
「変身!!!」
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では、内容のお話。
花丸の言うこともわかる。
千歌の提案に逆らう気持ちも当たり前だよなって思います。
というか、千歌の提案じゃなくて曜の提案ですけどね。
その辺もまた追々。
近況です。
暑い!とにかく暑い!
熱中症気をつけてくださいね!
それではまた!