名は体を表す。
こうなってから初めてその言葉を知った。
「曜ちゃん、何がどうなってるの?」
千歌が曜に問いかけた。
言葉こそ発しないものの、ルビィの目も同じことを訴えていることが伺えた。
「ずっと黙っていてごめんね。じゃあ、話していこうかな。千歌ちゃんがライダーになる、その少し前から。」
「え・・・?」
曜は静かに、記憶を蘇らせていった。
高校1年の3学期があと少しで終わろうとしていた。
2月終わりの空気はまだまだ冷え切っていて、制服の袖に手を隠してばかりの、そんな毎日。
冬が終われば春が来る。春が終われば夏だ。高飛び込みをいっぱいやろう。沢山泳ごう。
隣で今にも机に突っ伏しそうな千歌ちゃんとたくさん遊ぼう。
そんなことばかり考えていた。
実家のお手伝いがあるからって、その日千歌ちゃんは先に帰ってしまっていた。
1人で帰るなんていつぶりだろう。なんとなく考えながらバスに乗った。
私の家は学校から少し離れているし片道数百円するから、滅多に学校の人と会うことがない。
そう、思っていたんだけど―――――――
「こんにちは、渡辺曜さん。」
その人のことは知っていた。
生徒がもともと少ないこの学校では、この時期から来年の生徒会長が誰になるのか噂が流れる。
今年のその噂の人物、黒澤ダイヤさんが目の前にいた。
「いきなりでごめんなさい、少しお話したいことがあるのだけれどよろしいかしら?」
凛とした態度と澄んだ声に圧倒されながら、思わず私はこくりとうなづいた。
「そう、ありがとう。そういえば自己紹介がまだでした。私は黒澤ダイヤ。ダイヤで構いません。」
予想が合っていた、まだこの頃はそんなのんきなことを考えていた。
話す場所に選んだのは大きな水門の展望台だった。
私とダイヤさんしかいない空間。
ダイヤさんは外の景色を見て、私はそこにある椅子に腰掛けてそれを見ていた。
ダイヤさんは大きな深呼吸をしてから私の方に向き直り、話し始めた。
「今日はあなたにお願い事があってきました。あなたに、仮面ライダーに変身して欲しいのです。」
正直なことを言えば、そのときはこの人何を言っているんだろう?と思った。
仮面ライダー?聞いたことがない。変身?コスプレのなにかだろうか?
「不思議に思うのも無理ありません。まずは私が、それをお見せしましょう。」
そう言うと、ダイヤさんは反射する鏡にカードケースみたいなものをかざした。
私は目を疑った。
鏡の中から、ベルトのようなものが出てきてダイヤさんの腰に巻き付いたのだから。
「変身」
その合図とともにカードケースを先のベルトにはめ込んだ。
「いやいや、嘘でしょ・・・。」思わず私はつぶやいた。
先までダイヤさんがいた場所に今は鎧を身につけた戦士がいるのだから。
「これが、仮面ライダーの力です。」
ダイヤさんは当たり前のように言ったが、私には受け入れ難かった。
それでも、目の前にある現実を受け止めるしか未来はなかった。
夢ならばと何度かつねった手首は内出血していた。
「変身して、仮面ライダーってのは何をするんですか?」
私は聞いた。少しでも受け入れたと感じたのか、ダイヤさんの口元が少し緩んだのがわかった。
「では説明していきましょう。願いを叶えるための戦い、ライダーバトルについて。」
ダイヤさんの説明はとてもわかりやすかった。
ミラーワールドという存在、そこに生息する怪物ミラーモンスター、11人の仮面ライダー同士の戦い。
小説の中の出来事のようなことがただひたすらに続いた。
「私にも、戦えというんですか?」
誰かを落としてまで叶えたい願いなど、私には心当たりがなかった。
しかし、それに対するダイヤさんの返事は意外なものだった。
「いいえ、あなたにはイレギュラーを担当してもらいます。」
「いれぎゅらー?」
「願いをかけて戦う11人の仮面ライダー。それには含まれない12人目・・・いや、13人目の仮面ライダーになってもらいたいのです。」
「13人目・・・?12人目じゃなくて?」
「それはまた、いずれ知ることになりますので。あなたにとっては、今から話すことのほうが重要かもしれません。」
どうしてこの人は私が変身すると決めた前提で話を進めているんだろう、と首をかしげた。
けれど、その理由はすぐにわかった。
「11人のライダーのうちの一人に、あなたのお友達、高海千歌さんが選ばれます。」
言葉はなかった。
千歌ちゃんが、戦う?誰かと傷つけあう?
そんなこと、許さない。
「千歌ちゃんを巻き込まないで。」
「残念ですが、私にそれを変える力はありません。さらに言えば、私に仮面ライダーとなる人間を選ぶ権利もありません。」
「どういうことですか?今私はあなたから・・・。」
「そう、それこそ本題です。」
「・・・聞かせてください。」
「私があなたに渡す仮面ライダーの力は、この時間の戦いと全く関係のない力です。」
「それってイレギュラーってことですか?」
「大まかに言えばそうですが、厳密に言えば『どこかありえたかもしれない別の戦いの力』ですかね。」
私にはあまりピンと来なかった。
「まあ、私がイレギュラーと申し上げたのですし、それで構いません。」
言いながら、ダイヤさんは私に何も描かれていないカードケースを渡した。
「そこにはまだ力がありません。ブランクの状態です。仮面ライダーは普通、ミラーワールドのモンスターと契約して、その力を使って戦います。けれど、そのデッキでは、通常のモンスターと契約することはできません。」
「なら、どうやって・・・。」
「それで契約できるのは同じ虚構の力。そしてそれは、いずれ高海千歌さんの元に現れます。」
「どうして千歌ちゃんに・・・!」
「いずれ高海千歌さんが手にする龍の力には影となる存在があります。それは次第に千歌さんの精神と肉体を乗っ取るでしょう。」
「つまり、私はそれと契約して千歌ちゃんを助ければいいんですね。」
「簡単に言えばそうです。高海千歌さんを守るためならば、きっとあなたはそれを受け入れるでしょう?」
そして私は、仮面ライダーになった。
それからしばらくして、千歌ちゃんから仮面ライダーの話を聞いた。
あの話は本当だったとショックを受けた。
けれど千歌ちゃんが話したのは白い虎だった。
ダイヤさんが話していた龍とは違っていた。
私は悩んだ。このことを千歌ちゃんに話そうかどうか。
でも、千歌ちゃんは言った。
「ライダー同士が戦うのは間違っている」と。
私がここでライダーだと告白したら、彼女はどんな顔をするだろう。
だから、私は来る時まで隠すことを決めた。
『何度も現場に遭遇するうちに、これが現実だと受け止めることができるようにはなったが、今でも夢なのではないかと疑ってしまう。』
(同じ音と、同じ光景を私も感じてしまっていたから。)EP2
やがて、梨子ちゃんがここにやってきた。
梨子ちゃんは私が力を持っているってすぐに気付いた。
『そういって曜のほうに視線を向けると、曜は困ったようにして、私はどうかな、と口にした。』
(私はどうかな、私の力は、それとは別のものだから。)EP3
後に聞けば、ミラーワールドはライダーしか認識できないからと答えた。
それに千歌ちゃんが気付かずにいたのは、最初から私が見ていたからだろう。
千歌ちゃんが梨子ちゃんとの戦いで負けてタイガの力を失った時。
急いで千歌ちゃんのもとへ向かおうとしたんだけど、先にダイヤさんがいた。
1つ、千歌ちゃんの悲惨な具合を受け入れられるか。私ははいと答えた。もう、覚悟は出来ていたから。
もう一つ、もう一度千歌ちゃんが戦うといたらどうするか。私は、私が聞くと答えた。それが私の覚悟だったから。
そして千歌ちゃんは、龍騎のデッキを受け取った。
同時にこの時から、ダイヤさんがこの戦いに何か仕掛けようとしていると思い始めた。
いつもありがとうございます。
送信予約出来てなかったです…。ごめんなさい。
さて、内容のお話です。
このお話を思いついたときからずっとあたためていたお話の一つです。曜ちゃんがライダーだということは、梨子ちゃんとの戦闘のときに示唆されていました。それを千歌ちゃんがまともに聞いていれば気付くのは早かったと思います。けれどあの時の千歌ちゃんそれどこじゃなかったので…。
きっとそのときの曜ちゃんはヒヤヒヤです。
また、序盤でダイヤさんと曜ちゃんが鉢合わせたりしていたのはこれが理由だったりします。
そして曜ちゃんのお話は次回へと続きます。
近況です。
Aqoursのlive、素晴らしかった…。
語りたいですね…。
それではまた!