「ごめんなさい、まだここに越してきたばかりで名前を憶えられていないの。私は桜内梨子、あなたたちの名前を教えてくれる?」
梨子の提案により、鏡の外にいた曜含む三人は近くの喫茶店へ場所を移していた。
千歌は自分と曜の名前を梨子に伝える。梨子はその名前を小さく復唱してから、話を始めた。
「こんなにはやく見つかるとは思わなかった。あなたがタイガなのね。」
千歌は聞きなれない単語に首をかしげる。たいが?歴史のドラマ?
その疑問はいつの間にか声になっていた。
「たいがは見たことないなあ・・・難しいからなあ・・・歴史・・・。」
千歌の不思議そうな顔を見て察したのか、梨子が今度は質問する。
「もしかしてあなた、それが何かわからないの?」
ヒーローになれる不思議な力、そう千歌が答えると梨子は驚きとも呆れともとれる表情を見せた。
「まさか、知らずに変身していたなんて・・・。いいわ、その力が何なのか教えてあげる。」
梨子は千歌と曜に一つの単語を伝えた。
「その力はね、仮面ライダーと呼ばれる力よ。」
仮面ライダー。
カードデッキを与えられ、鎧の戦士に変身する者たちはそう呼ばれている。
デッキにはそれぞれモンスターの力が宿っており、それにちなんだ名前でライダーも呼ばれる。
千歌はタイガ、梨子の変身した紅色の戦士はライアと呼ばれている。
ライダーたちは自身の持つカードを駆使しながら最後の一人になるまで戦う。
そして最後の一人となった者は、自身の持つ願いを叶えることができる。
そのため、デッキは強い願いを持つものにしか与えられない。
なお、今回の戦いの舞台が沼津のミラーワールドであり、すでにこの戦いの参加者はすべてこの地にいるという。
情報が多すぎて何を言っているのか千歌には未だピンと来ていなかった。
隣で曜が梨子に尋ねる。
「『仮面ライダー』っていうけど、千歌ちゃんも梨子ちゃんもライダーって呼べるような乗り物乗ってなかったよね?」
梨子はそうね、と同意しながらそのことについて説明した。
どうやら、この戦いは今回だけでなく過去にもあり、その時の呼び名が定着して今に至るらしい。
と、千歌が話の流れを遮って質問する。
「人同士で争いあうってこと?なんで?そんなのだめだよ。」
梨子の表情が険しくなるのを曜は感じた。
「誰かと争ってでも、叶えたい願いが、望みが、夢があるの。この戦いに選ばれる人たちは皆そうよ。
あなたもね、千歌さん。曜さんにだってあるはずよ。」
そういって曜のほうに視線を向けると、曜は困ったようにして、わたしはどうかな、と口にした。
「でも、そのために誰かを傷つけるなんてまちがってるよ。」と千歌が言う。
梨子はため息を一つこぼす。
なんて立派な子なのだろう。それでも、この子の根底にあるものはきっと・・・。
飲みかけのアイスティーに自分の顔が映っている。それでも私は、勝たなければいけない。
そう自分に言い聞かせると、梨子は席を立った。
「今日はありがとう、二人とも。また学校で会いましょう。そのときは二人みたいに、ちゃん、で呼ぼうかしら。」
「どんどん呼んでよ!!千歌ちゃんって!梨子ちゃん!」
千歌はさっきまでの雰囲気がなかったかのようにはしゃぐ。
その横で曜が最後に、と質問した。
「どうして、さっき千歌ちゃんを攻撃しなかったの?」
「わたしだって、初対面の人をいきなり殴る趣味なんてないわ。でも、そうね。これから戦いは加速する。
たぶんそうやって言えるのも今日が最後かな。だから、次ミラーワールドで会ったら、その時は、ね?」
梨子の少し寂しそうな表情に千歌は、そんな・・・、と漏らす。
それと、と梨子が付け加える。
「これは私の予想なんだけど、おそらく他のライダーも私たちのすぐ近くにいるわ。
あなたたちもよく知っている人かもしれない。それじゃ、また。」
そう言い残して、梨子は店を後にした。
同時刻・黒澤邸
黒髪の少女は鏡の前にいた。
「止まりませんのね、もう。」
そう言いながら、カードデッキを鏡にかざし呟いた。
「変身。」
少女たちの戦いが、始まる。
こんにちは。
今回は、ざっとこの世界で起こることの説明でした。
自分が持つ願いに気付かない千歌ちゃん、願いのために戦うことを選ぶ梨子ちゃん。
今後、千歌の前に最初に立ちはだかるのも梨子ちゃんだったりします。
なのでしばらくは二年生のお話かな、って感じですね。
とか言いながらも、最後にちろっと黒澤の黒髪さん。
もともと3年生を見てこの話が浮かんだので、かなりこの人には頑張ってもらいます。
千歌と梨子の戦いにも絡んだりしたり・・・。
ではまた。