また一人はその決断を自分もしようと決めた。
三日が経過した。
ただ時間だけを流すはずもなく。
私は、私に起こったことを一つ一つ確認していた。
まず、私は過去に来ている。
仮面ライダーの力を手にするよりも前、まだスクールアイドルだった頃。
次に身体。
オーディンとの戦いで無数についた傷はすっかり消えていた。
身体の時間も巻き戻っているらしい。
ライダーバトルが始まっていから整えられず不揃いだった前髪がきれいに整っていることから、それを確信した。
変わったこともあった。
仮面ライダーのデッキは変わらず存在していた。
けれど、そこに描かれていたガイのエンブレムが消えてなくなっていた。
アドベントのカードも消え、代わりにコントラクトと書かれたカードが備わっていた。
と、一通り整理をしてみたが正直それどころではなかった。
理由ははっきりとわかっている。
あと三日。
72時間後、再び私はあの時間の中を進むことになる。
三人の関係が壊れた日。
私はそれが怖かった。
時は恐ろしいほど無情に流れていった。
72時間なんてあっという間で。
けれど未来を変えるには残酷なほど足りなくて。
目の前の鞠莉さんの表情やセリフは一度目と変わらず。
私は二度目の終わりを迎えた。
微かな違和感を抱きながら。
何かが足りなかった。
同じことをもう一度繰り返しているはずなのに。
決定的な何かが――。
それが何か掴むことはできず、その日は帰宅した。
翌日。
学生らしく決められた時間に決められた道を通って学校へと歩みを進める。
他の人たちに比べて真面目であることは自覚している。
それだから今こうして苦しんでいるということもまた、わかっていた。
もしかしたら、それを再度自覚させるためにカミサマか誰かがこうしたのだろうか。
試練を乗り越えれば朝が来て、すべてが夢だったという物語のようなオチが待っているのかもしれない。
「なわけないか。」
そう呟いて、通りかかったコンビニに目をやった。
動けなかった。
視線がコンビニに固定されてしまったから。
正確には、コンビニのガラス。
映っているのはカミサマに願う私の姿ではなかった。
重そうな鎧を身にまとい、けれど軽々と動き回る二人の人物。
カードを使って武具を呼び出してお互いを傷つけあう光景。
「仮面、ライダー。」
呟いた声はあまりにも小さく、自分の耳にも届いたか曖昧だった。
私は変身してミラーワールドへと入った。
エンブレムのないデッキでも変身はできた。
鎧の色が抜けており、武器のパワーもはるかに落ちている。
私は気づかれないように戦いの近くまで向かった。
勝敗はすぐに決まった。
問題は勝敗ではなく、戦っていたライダーだった。
勝者がその場を離れたところで、私は倒れた者の近くへ向かう。
敗北し、二度と起き上がることのないその鎧はガイのものだった。
自分の亡骸が目の前にあるようで気味が悪い。
上がってくるものを喉の奥で抑えつつ、それを観察する。
どこを見ても、今自分が纏っている鎧と変わらない。
もしやと思い、デッキを探る。
「あった。」
それはすぐに見つかった。
アドベントと一緒に消えてしまったもう一つのカード。
『コンファインベント』だった。
このカードがあれば、また何かが起こるかもしれない。
祈りをささげて私はその場を後にした。
それからひと月が経ち。
私の参加していないライダーバトルが終わろうとしていた。
オーディンと戦う権利を得たのは仮面ライダータイガ。
戦いにかける願いは「英雄になること」。
最後の一騎が倒れたところで、タイガの前にオーディンは現れた。
「お前を倒せば私は・・・!私は・・・!!!」
オーディンに向かって叫ぶタイガに、誰かが問いかけた。
「英雄になってさ、どうするの?」
その声、その姿。
もう考えなくてもわかる。
今更これが嘘だなんて思わない。
今ならわかる。
二度目の終わりの時に感じた違和感の正体。
私はこの世界この時間において、この人から鞠莉さんに関しての相談を受けなかったんだ。
あと少しというところでつかめなかった真実がもう少しで見えそうな気がする。
トレードマークのポニーテールが小さく揺れる。
かつて私が戦ったときと同じように、松浦果南はオーディンの横に姿を見せた。
「そんなの決まってる。英雄になればみんなが私のことを認めてくれる!」
果南さんはそれを聞いて笑みを浮かべた。
「へえ。でもさ、英雄ってなろうとしてなるものじゃないんじゃない?」
「どういう意味よ。」
「さあ?どんな意味でもないけれど、あなたには何か引っかかるんだね。」
「うるさい!!!!!!!!!!!!!」
声が割れるほどのタイガの叫び。
すぐにでも襲い掛かりそうなタイガに、今度は冷たい目を向けた。
その目はどこか別の場所を、そう、あの時と同じ場所を見ているようで――。
「私も目指してるんだ。ヒーロー。しかもたった二人にとってのね。でも、今回もダメだった。」
果南さんはタイガを指さし、オーディンに命令した。
「始めようか、オーディン。」
オーディンとタイガの戦闘が始まった。
やっとわかった。
けれどこれはまだ予想でしかない。
それを今から確かめよう。
戦いは終わった。
決められていたかのようにオーディンは勝利した。
赤く染まったアスファルトに倒れるタイガを見下ろし、果南さんはオーディンに命令した。
「オーディン、タイムベントを。」
その言葉に合わせて私はカードを使った。
この時間のガイが持っていたカードを。
これですべてがわかる。
もし私の予想が正しかったら。
考えているうちに、意識が沈んでいった。
目を覚ます。
視界に広がるのは見慣れた教室。
変わらないクラスメイト達。
声が聞こえる。
「だから、なんでもって言ってるでしょう?」
鞠莉さんだ。
やっぱりこの笑顔にはいつも励まされる。
元気をもらったところで、返事をしなければならない。
返事は決まっていた。いや、決められていた。
「なんでもって・・・オーケストラで踊るダンスパーティーとか?ふふ、まさかね。」
いつも間にか果南さんが横にいた。
自販機で買ったであろう飲み物を持ちながら
「あ!そういえば船の上でダンスパーティーってやってみたかったんだ!」
と言った。
過去に戻っている。
これで証明は完了した。
「あー、わかっちゃいましたわ。」
声には出さない。
二人の前では笑顔で振るまう。
だって、目の前の果南さんがそうしているのだから。
ほんとうにうまく笑えているのか不安になる。
果南さんが何度も時を巻き戻していることに気付いてしまったから。
いや、それよりも重要なのはその理由。
私たちのために、何度も時を巻き戻しているということ。
私たち三人がばらばらにならないような時を探しているんだ。
もしかしたら、スクールアイドルをやらない世界を探しているのかもしれない。
きっとスクールアイドルさえなければ私たちはばらばらにならなかったと思ってるんだ。
「お馬鹿さんですわね、本当に。」
私のやるべきことは決まった。
果南さんの罪滅ぼしがそれなら。
私の罪はきっとこうでもしなければ消えないだろう。
ずっと消えないかもしれない。
それでも私は一度、二人の救済を願った。
もう、逃れられない。
果南さんを止めよう。
その荷は私が代わりに担ごう。
私が、オーディンになることで。
いつもありがとうございます。
定時更新です。
それでは内容のお話から。
果南がやろうとしていることに気付いたダイヤが、自らオーディンになることで代わりになろうってはなしです。どちらとも、自分はどれだけ苦しんでもいいから二人に幸せをもたらしたいって考えが根本に存在します。二人とも自覚はしています。でも治そうとしない。人がそうだったらきっと怒るのに。
あとタイガ、龍騎本編によせました。答えに対する果南の返答とかも。返答自体にそんなに意味はないんですよね、あれって。
近況です。
最近、平成二期の映画を観返しています。
エターナルかっこいいですね~。
それではまた。