声が聞こえる。
「・・・こちゃん」
聞きなれた優しい声。
「善子ちゃん!」
あぁ、私を呼んでいるのか。
おそらくこれはバッドエンド。
堕天使の私に定められた運命。
「・・・なんて、やられただけなんだけどね。」
「善子ちゃん、聞いてるずら?」
こういう役回りだなんて言ったけれど、もしかしたら。
みんなこういう道を辿るんじゃないかなって、思えてきた。
救いなんて、きっとない。
それでも・・・
「聞こえてるわよ。さ、ルビィのもとへ行きましょ。」
少女は静かに眠り続ける。
呻き声が聞こえる。
聞きたくないと耳を塞いでも掌を貫いて耳まで届く。
千歌、梨子、曜は近づいてくるモンスターたちをじっと睨んでいた。
「数、増えてるね。」
千歌はそう言うとデッキを構えた。
三人とも気付いていた。
それが、攫われた人々の想いだということに。
自分たちが戦うのは誰かが叶えたいと思った願い。
いままで戦ってきたはずなのに足がすくむ。
「ルビィちゃん、まだ目を覚まさないの?」
曜が千歌の問いに首を振って答える。
「今は、あれをなんとかしなきゃね。」
ダイヤを起こさないように、なんてのは無理だろう。
それでも、目が覚めた時にこの状況を見せることは避けたい。
それぞれ考えは一緒だった。
「花丸ちゃんが帰ってきてこれを見たらびっくりしちゃうし。」
「善子ちゃん、びっくりして腰抜けちゃいそう。」
「鞠莉さんがまた家を粉々にしないようにも、ね。」
三人とも目を合わせ、頷いた。
「「「変身」」」
剣を取り、一体ずつ片付けていく。
背中を取られないように円になって。
「これ、一人何体!?」
足で寄り付こうとするモンスターをよけながら曜が叫ぶ。
「なるべく多く!」
剣で一突き、答えながらモンスターを消していく梨子を見て曜の口が緩む。
「わかりやすいね、了解!」
一体、また一体。
順調に倒していく。
数が減った様子は感じないが、手ごたえはしっかりある。
これなら、いける。
千歌は勝利を感じた。
しかし、その自信はすぐに消え去ることになる。
大量のモンスターの壁を崩したその先。
それ以上の数のガルドサンダーが待ち構えていた。
それだけじゃない、その亜種であろうモンスターたちも群を成していた。
言葉は無い。
言い表すことのできない絶望。
浮かべたくもない言葉があふれだしてくる。
無理だ、勝てない、逃げることもできない。
足が動かない。
手は酷く震えている。
諦めてしまおうか。
ここで終わってしまっても、きっと次の世界で・・・。
気を持ち直して戦おうとする。
剣は当たる、攻撃は効いている。
それ以上に三人へのダメージが蓄積されていく。
ガルドサンダーだけでなく、倒せるはずのモンスターにまで攻撃を食らう。
耐えきれず、曜が膝をついた。
千歌もだんだん視界がかすれていく。
ここでゲームオーバーなのだろうか。
勢いだけで剣を振る梨子の視界に一体のモンスターの姿が映った。
ダメージを負い、動きが鈍っているモンスターはこの状況ではよく目立った。
目立つ理由はそれだけではない。
剣が背中に刺さっていた。
サーベルの形をしたその剣が誰のものか、梨子はすぐに分かった。
「それ・・・ファム、よっちゃんの・・・。」
鼓動が速くなる。
はちきれそう、止まってくれない。
この感情は何だろう。
わからない、そも、わかろうとしていない。
無意識のうちに、梨子はそのモンスターの元へ進んでいた。
爪で裂かれようと、殴られようと、歩みを止めない。
歩んだ道が赤く色づいている。
道しるべのようなものだ、これでもう迷わない。
やがて剣の目の前にたどり着き、モンスターに向かって言った。
「絶望とか、悲しみとか、いろんな感情の名前を考えたわ。」
剣に手を伸ばし、それを勢いよく引き抜いた。
そのままその剣で辺り一面に斬撃、周囲を一掃した。
「けどね、この感情はもっと単純だった。」
善子の剣がここにあることが何を意味するのか、すぐに分かった。
斬撃の後、剣は光となって消滅。
それは確信に変わった。
「怒り。あなたたちに向ける感情はそれだけで十分よ。」
デッキからカードを引き抜く。
青い風に召喚機が包まれ、形を変えた。
「誰かの想いとか、願いだとか、倒していいのかなって悩んでいたけれど。」
変化した召喚機にカードを挿入する。
『サバイブ』
ナイトサバイブ。
金色が加わった鎧を身にまとい、周囲をにらむ。
「そんなこと、守るべき人を守ってから考えるべきだった。」
『ファイナルベント』
「よっちゃんはこれよりもっと痛かったはずよ。」
言葉とともに、多量のモンスターが消滅していく。
千歌と曜に集っていたモンスターたちも梨子によって倒されていく。
「二人だけは守る、何があっても。」
霞む視界を必死に開き、梨子の姿を見ていた千歌は違和感を覚えた。
二人とは決定的に違う何か。
何か別のこととこの違和感がつながっているような・・・。
「ううん、それよりも!」
痛む身体に鞭を討ち奮い立たせる。
自分も強化を、とサバイブのカードを引こうとしたところで、曜の叫びが聞こえた。
「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
こんなところで負けていられない。
骨の折れる音がする。
どうせ回復するのだから関係ない。
この力は飾りか?
いいや違う、守るための力だ。
おぼれたっていい。
今は梨子ちゃんのように私も戦わなきゃ。
『ソードベント』
『ストライクベント』
『ガードベント』
『アドベント』
『ファイナルベント』
ありったけのカードを突っ込む。
それらをすべて敵へ、敵へ、敵へ!
焼き尽くせ、切り刻め、滅べ!
どんどん敵が消えていく。
武器も消滅していく。
ならば素手だ、足だ、頭突きだ。
「もっと、もっと、もっと!!!!!」
「曜ちゃん、ストップ。」
千歌の手がリュウガに触れる。
どうして?止まったら敵を倒せない。
「それは本当に曜ちゃんの意志?」
曜が動きを止める。
「私の意志?そんなの当たり前・・・。」
「ううん、それは違うと思う。」
違う?そんなことない。
「ほら、梨子ちゃんだってあんな風に・・・。この前とは違うよ。これは私の・・・。」
「違う。今の曜ちゃんは戦うことが目的になってる。」
戦うことが目的に・・・?
掴まれた手を見る。
千歌の腕は無数の切り傷で埋め尽くされていた。
そこで我に返る。
「え・・・?千歌ちゃん変身・・・。」
「解いたよ。危ないのはわかってるんだけど・・・。でも!」
掴んだ手を放し、手をデッキへ。
そして千歌はリュウガのデッキを取り外した。
「!返して!それが無いと・・・!」
千歌は確信した。
曜にリュウガの影響が及ばないわけではないと。
リュウガを呼び出すためには曜が必要であったが、決して抗える身体ではないこと。
以前自分の身に起きた異変と同じことが今起こっている。
それでも曜は自分には影響なく変身できると信じていた。
自分の名前は渡辺曜。
千歌という光に魅せられて、輝こうとする影。
そう思い込んでいた。
「曜ちゃん、聞いて?」
自分の手を曜の頬にそっと添える。
頬に血が付き、ごめんと軽く微笑んだ。
「曜ちゃんはきっと、もっと自分で戦える。こんな力に頼らずとも。だってあなたは渡辺曜、光り輝くって意味の「曜」なんだから!」
目を見開いて千歌を見る。
私が、光。
照らされていると思っていた自分が、光。
千歌ちゃんと同じように、輝いている、光。
そうか、オーディンになることがとかそんなことじゃなくて、もっと単純なことが違っていたんだ。
「二度目、だね。」
「何度でも止めるよ。だから、はい。曜ちゃんにはこっちがいいでしょ?」
渡されたものを見て曜は動揺した。
「これ・・・。」
「タイミングをうかがってたんだ。いつ渡そうかって。梨子ちゃんがあれだけ戦っているのは予想外だけど。あ、あとで理由は聞かなきゃね。でも、うん。それを使って?」
「でも、千歌ちゃんは・・・。」
「大丈夫!対策はあるから!千歌なりに、だけどね。」
あははと笑う千歌をみて曜は思う。
本当に、どうにかしてくれる気がする。
「わかった、行ってくる。」
「梨子ちゃん、助っ人に来たよ!」
声を聞き、梨子が振り向く。
握られたデッキを見て、納得する。
「千歌ちゃん、今渡したんだ。」
「ねぇ、梨子ちゃん。千歌ちゃんが何する気か、知ってる?」
梨子は首を振る。
「ううん。でもあの子ならきっと、やってくれるわ。」
「うん、そうだね。」
「じゃあ曜ちゃん、私ね目の前のモンスターたちが憎いの。倒したいの。怒りがどんどんあふれてくるの。」
「・・・何を見たの?」
「剣よ。堕天使の女の子の。」
「そっか、手、貸すよ。」
「・・・ありがとう。」
「変身!!!」
かつての黒い鎧は今は無い。
曜を包むのは赤き龍。
牙だと名乗った自分はもういない。
赤い炎に身を覆い、形を変化させる。
『サバイブ』
龍騎サバイブ。
千歌と梨子と共に戦うため、曜は剣を取る。
いつもありがとうございます。
時間遅れです、すいません。
それでは内容のお話から。
千歌と梨子は話していました。
曜とリュウガについて。
いつかリュウガ曜がに支配される日が来るだろう、と。
けれどそれを伝えるタイミングが無いまま、敵の襲来。
敵にやられていく中で千歌はある違和感に気付きます。
それはまたいずれなんですが。
それと梨子の戦いの姿が絡み、曜が暴走、千歌は今言わなきゃと。
そんな感じです。
ちなみにダイヤさん寝てます。
寝てるというか、意識を失っている。
そりゃあ、もう何百、何千日も寝てないんですもの、目を閉じれば意識は消えますとも。
近況です。
冬休みに入りました。
ソシャゲ三昧・・・。
それではまた。