その子を呼ぶ。
「・・・こちゃん」
呼び慣れた名前を。
「善子ちゃん!」
あぁ、やっと気づいてくれた。
おそらくこれは夢だろう。
多くの罪を犯したおらに課せられた罰。
「ちゃんと聞いてるわよ。」
「あやしいずら。」
先に夢を見るだなんてずるいだろうか。
許して欲しいなんて少しも思っていない。
許されたら、それこそ・・・
「ルビィちゃんが待ってるずら。」
私たちはもう、目覚めない。
手にマメができる。
そしてつぶれる。
痛みをこらえて次の敵へ。
そしてまたマメができ、つぶれる。
痛みが消えたと思ったら、あばらがやられていると気づく。
痛みを感じないのならむしろ好都合。
そうやって身体に思い込ませる。
二人は互いの様子を伺おうとはしなかった。
状態を知ればきっと助けてしまう。
だから、見渡す限り埋め尽くされたモンスターをすべて倒すまで話しかけないと決めている。
曜は感じていた。
身体が悲鳴を上げているのは確かだった。
しかし、それと同じぐらい身体が軽かった。
これが、サバイブの力。
大きな力を使うことはそれだけ身体に負担がかかるということ。
これが終わったとき、身体がどうなっているか。
ライダーの治癒能力があれど、状態は良くないだろうことも分かっていた。
それでも曜は戦うことをやめなかった。
あの子にこの力を託されたから。
「うおおおおおおお!!!!!」
叫べ、叫べ、叫べ。
怒り。
まさか私がこの感情で動くとは思わなかった。
何に対して憎いのか。
一体消滅する度に梨子はそれを刻んだ。
モンスターたちが憎い。
間違ってはいない。
あの子を倒したのだから。
でも、それだけでは自分を保てないともわかっている。
「私が本当に憎いのは、人の夢に優劣をつけようとするこの戦いよ!」
怒れ、怒れ、怒れ。
龍騎を譲渡した千歌は自分の手のひらを見ていた。
「二人が頑張っているのに、こんなことしてちゃダメなんだけどね。」
一人で苦笑いしながら、手のひらを強く握った。
爪が食い込んでも力は弱めなかった。
やがて裂けた皮膚から血がにじんだ。
「いったあ・・・。」
思わず手を振って痛みを和らげようとする。
いつまでも痛いのは慣れないことを実感しながら、もう一度手のひらを見た。
「・・・。よし。」
誰にも聞こえない声で気合を入れる。
その直後、背後から何かが高速でモンスターの群れへ突っ込んでいった。
それが誰なのか考えるまでもなかった。
「うるさくて寝てられませんわ。」
オルタナティブ、ダイヤだった。
ダイヤは梨子と曜の倍以上の速さでモンスターたちを仕留めていった。
「うわ、ダイヤさんすご・・・。」
曜が思わず声を漏らす。
その速さには梨子も唖然とした。
「やはり睡眠は大事ですわ。」
この状況でそれを言えるダイヤが恐ろしいと誰もが思った。
ダイヤの加勢もあり、モンスター群と距離ができたところで三人が集まる。
「これ、キリないって!」
曜の言葉に梨子も頷く。
「殲滅してやりたいけれど、このままじゃ私たちが先に・・・。」
疲労が蓄積する二人を見てダイヤは思った。
オーディンであれば、と。
「三人に聞きたいんだけど。」
千歌の声がした。
千歌は三人が気付かぬうちに同じ戦線に戻っていた。
「千歌ちゃん!生身のままじゃ・・・!」
千歌は首を振った。
「大丈夫、それより教えて。残りの群れのガルドサンダーを引いた2/3、これだったら三人で何とかできそう?」
「千歌さん?それはどういう意味ですの?」
ダイヤも意図が分からず困惑する。
「できるかできないか、どっち?」
その真剣なまなざしに最初に答えたのは梨子だった。
「やるわ。対策とかいうの、あるんでしょ?」
満面の笑みを浮かべて千歌はそれに答えた。
「よかった。じゃあ、任せたよ。」
それ以上は何も言うなという目を向けられた三人はただ頷き再びモンスターと向き合った。
「あ、ダイヤさん!」
呼びかけに、ダイヤは思わず振り向いた。
それを見なければ、こんな気持ちにはならなかったかもしれない。
それを聞かなければ、悲しまずに済んだのかもしれない。
忘れていたわけではない。
ただ、そうならないように努めていはずなのに。
「約束、三つめもお願いね!」
金色のデッキをこちらに向けながら、そう言った。
心は決まった。
自分にとっては初めてだ。
けれど、自分にとっては二回目らしい。
それは今からわかること。
さあ、行こう。
「変身!!!」
思えば、最初からそうだった。
初めて龍騎に変身したとき、初めてだとは思えないほど戦い方を知っていた。
あれは知っていたんじゃない。
サバイブと、リュウガのカードがあったからだ。
サバイブはオーディンの契約モンスター、ゴルトフェニックスの一部。
リュウガは千歌。世界が変わるごとに変質してしまっていたけれど。
これは想いの戦い。
特に想いの強いものがライダーに選ばれる。
単純に、大勢より一人を想う方がその尺度は大きいはずだ。
なのに千歌はその真逆。
ライダーバトルを止めたいという願い、ヒーローという願い。
願いはあっても、想いはなかった。
決定的なのはガルドサンダーだった。
先の戦いの中で抱いた違和感。
二人とは決定的に違ったこと。
ガルドサンダーたちは、千歌を攻撃しなかったこと。
モンスターがライダーに選ばれなかった人々の想いなら、ガルドサンダーはオーディンの願いの形。
親に攻撃はしない。
黄金の羽が千歌を包み込む。
記憶が濁流のように押し寄せる。
それを一つ一つ大事にしまい込んでいく。
これまでのダイヤの頑張り、敗れていったライダーたちの想い。
そして、自分と出会う。
「よくたどり着いたね!」
当たり前だと千歌は笑う。
だって、あなたも千歌なのだから。
羽が静かに落ちていく。
中から現れたのは不死鳥を模した黄金の戦士。
仮面ライダーオーディン。
仮面越しにモンスターたちを一瞥する。
ガルドサンダーたちは待っていたかのように千歌の元へ集まった。
「行け。」
その一言で、ガルドサンダーたちはいっせいにモンスターに向かっていった。
当然のごとく、倒すために。
「だめだよ・・・なんで・・・」
うろたえる梨子と曜を見た千歌は人差し指を立てて言った。
「相談せずごめんね二人とも。でもお話はこれが終わってから。だから一つだけ。私は高見千歌。ライダーバトル最初のオーディンだよ。」
いつもありがとうございます。
一日遅れです、すいません。
(日付とか決めない方が良い気がしてきたぞぅ・・・)。
それでは内容のお話から。
やっとこれを書くことができましたって感じです。
ダイヤにオーディンを渡したのも千歌です。
いまの世界の千歌とは少し性格が違います。
アニメ時空とジーマガ時空の違いです。
個人の解釈ですが、アニメ千歌は悩みながらも頑張る、ジーマガ千歌は元気にとにかくやる!って感じだと思ってます。
これをこのお話に当てはめたらこんな感じになりました。
梨子も曜も、ダイヤさえも変身するという話は聞いていません。
ましてや逃走中の果南や追っかけ中の鞠莉は知るはずもありません。
近況です。
家のWi-Fiの調子がおかしい。
それではまた。