二人から離れたとたんに世界は闇に包まれた。
使える感覚はすべて使って光を探す。
たった一度だけでいい。
この力を、叩き込むために。
息を切らしながら追い続ける。
その背中を見失わないように。
世界のどこに行こうと追いかけ続けるつもりでさえいた。
一発この拳でぶん殴ってやらなければならないと考えていた。
そのあとで自分も頬を差し出そう、そうすればすべてが解決する。
鞠莉にはそんな気がしてならなかった。
この地に来れば、なおさら。
「結局、ここに戻ってくるのね。」
見慣れた風景を横目に鞠莉は呟いた。
果南を追ったその先は淡島だった。
進む先を追うと、トンネルが見えた。
「ここ・・・。」
電飾で彩られた隧道の中は二人を虹色に照らす。
外の暗さも合わさって、さながら異界のようだった。
「二人はどうしたの。」
来た道を振り返り、果南が言った。
「・・・任せてって、背中を押してくれたわ。」
汗がにじむ掌をぎゅっと握りながら鞠莉は姿を見せた。
気付かれないように追いながらも、誘われているという感覚はあった。
この場所に来るとは思ってはいなかったが。
「いつぶりだろうね、ここに来るの。」
そこは、三人にとっての思い出の場所。
いつも一緒にいたそれぞれの記憶そのもの。
色付いた電灯が形作る星々は彼女たちにとって全部が一番星だった。
思い出と想いをぐっと堪え、鞠莉は訴えた。
「戦いをやめる気は無いの?」
ストレートに聞く。
それが彼女に対して、一番だと思ったから。
「鞠莉には関係ない、何がわかるっていうのさ。」
予想していた答え。
痛む心を押さえつけた。
「全部聞いたわ。この戦いの仕組みも、オーディンのことも、タイムベントも全部。・・・果南がやろうとしていることもね。」
果南は目を見開いた。
手が震え始めた。
呼吸は乱れ、頭の中はかき混ぜられたかのようにぐちゃぐちゃになった。
「聞いたって。ありえない、誰に。誰がそんなこと知っているっていうの!!!」
声を荒げて追及する。
鞠莉はさらに心が痛んだ。
「ダイヤよ。」
果南の動きが止まった。
沈黙の中に互いの吐息だけが聞こえる。
そのせいで、鞠莉は果南の呼吸がどんどん荒くなっていくのがわかってしまった。
「・・・そんなはずない。大体どうやって!?私のことなんて一緒じゃなきゃわかるはずな・・・」
言葉が切れた。
果南は鞠莉を見つめた。
焦りと、怒り。
瞳からはそれらが容易に読み取れた。
今、彼女の多くを占めているのが怯えだということも。
「えぇ。彼女、オーディンだった。あなたに気付かれないようにしながらずっとそばにいたのよ。」
傍にいるのに二人は孤独だった。
手を伸ばせば触れられるのに、その距離は何よりも離れていた。
それは鞠莉には想像できない辛さだろう。
鞠莉自身がが今抱く辛ささえも、受け止めきれていないのだから。
「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!」
髪をかき乱し、頭を振り払う。
トレードマークのポニーテールはほどけ、乱れた髪から覗く果南の表情を鞠莉はあまり見たくなかった。
自分だってショックだったと言おうとしたがそれは遮られた。
「じゃあ何!?これまでの戦いは無駄だったっていうの!?救うつもりがずっと傷つけていたっていうの!?ふざけてる、そんなのふざけてる!!!!!」
言葉にすらならないまま果南は叫んだ。
「・・・そんなはずはない。オーディンは私の分身。そうだよ。ここで確かめればいい。来い、オーディン!!!!!!!!!!」
呼び声と共に、金色の羽が吹雪く。
羽の吹雪の中から現れたオーディンは考える間なく鞠莉に襲い掛かった。
「変身・・・!」
即座に王蛇へと変身してオーディンの攻撃を防ぐ。
「ほら・・・!ダイヤじゃないじゃん!」
「なんで、どうして攻撃なんか・・・。」
オーディンは何も言わず鞠莉に攻撃を続ける。
鞠莉はダイヤの名を何度も叫ぶが、防御をやめることはできなかった。
「誰から聞いたのか知らないけれどこの世界もダメだったってことだね。勝者が決まればまたタイムベントで・・・。」
果南が怯えながら発した言葉は別の人物によって遮られた。
「鞠莉さん!しゃがんで!」
言葉のまま反射的に鞠莉がしゃがむと、その頭の上を剣が斬った。
ギリギリのところでその斬撃を防いだオーディンは引き下がり果南の横に付く。
「鞠莉さん、大丈夫ですか。」
鞠莉は立ち上がり、状況を把握した。
剣がナイトのものだということも分かった。
「梨子、ありがとう。助かったわ。」
ナイトの後ろには龍騎がいた。
「あれは千歌・・・?」
確かめるように鞠莉は梨子に尋ねた。
その答えは、梨子ではない人物から返された。
「その龍騎は曜さんです、鞠莉さん。」
トンネルの入り口から姿を見せたのはダイヤだった。
「ダイヤ!?なんであなたがそこに・・・。じゃああのオーディンは・・・。」
「鞠莉さん、オーディンは私たちが引き受けます。ダイヤさんと一緒に果南さんを。そして、決着を。」
梨子の横に並び、曜が言った。
声を聴き、曜であることが事実だと知った鞠莉はうろたえながらも頷いた。
ある程度、察しがついてしまった。
プロセスはどうであれ、今のオーディンが誰なのか、二人が請け負ったことで鞠莉は予想が出来てしまった。
どこまでこの戦いは残酷なんだと、心で嘆きながら。
トンネルにはダイヤ、鞠莉、果南の三人が残った。
梨子と曜はオーディンとの戦場を外へと移した。
「あのオーディンは千歌さんです」というダイヤの言葉で三人の会話は始まった。
「千歌が?あの子はライダーだった、何をしたの。」
落ち着いたのだろう、果南の表情からは怯えが消え視線は鋭くダイヤをにらんでいた。
「それは千歌さんから聞いた方が早いでしょう。ただ、これは言わなければなりません。私はオーディンとしてあなたといた、これは事実です。」
果南の指先がピクリと動いた。
「・・・仮にそうだったとして、私のやることは変わらない。ずっと見てきたならわかるでしょ。タイムベントすればまた初めから。ダイヤもね。オーディンが千歌ならいっそ私が変身してしまえばいい。いや、そうすればよかった。次からは・・・。」
「次はありません。」
遮るようにダイヤが言う。
「私が、鞠莉さんが、あなたをここで倒す。」
「えぇ、ここで終わりよ果南。」
ダイヤはオルタナティブ、鞠莉は王蛇のデッキをそれぞれ構えた。
「私は倒れない、私は願い続けるの。わかってくれなかったとしても!!!!」
「「「変身」」」
王蛇、オルタナティブ、アビス。
朽ちた友情の明かりに照らされて、決戦が始まる。
いつもありがとうございます。
遅れ更新です、すいません。
何とか最後まで書ききるので・・・。
内容のお話です。
ずっとそうなんですけど、戦いの始まりである果南は実は何も知らないんですよね。だから今回のように真実を一つ知るとそれだけで怯えてしまう。自分のための戦いじゃなかったのかって疑ってしまう。さすがにオリジナルはそこまでじゃないですけど、きっとオリジナルの果南もそうなんじゃないかって、僕はそう思ってます。誰かを助けられるならやる、でも間違ってるかもって不安になるときがある。でもやらなきゃって。誰もがそうなのかもですけど、果南は特にそれが強いんじゃないかって思うんです。
近況です。
更新ペースにも表れてるんですけど、リアル生活の予定とかやることとかリズムとかぐちゃぐちゃになってて今悲惨です。
身体だけは・・・どうか・・・。
それではまた。