「どうしよう曜ちゃん!私変身できないじゃん!ベルトないじゃん!どうしたらいいのー!!!」
「落ち着いて千歌ちゃん!いや、大問題だけど!なんか、とにかく一回落ち着こう!?」
「そ、そうだよね。すー・・・はー・・・。よし!わかった!このままで行くしかない!夢は自力で叶えるもんだ!」
「千歌ちゃん!?良いことは言ってるけど全然落ち着いてないよ!あと、それなら私のほうが強いと思う!なんていうか、体力的に!」
「それもそうだけど・・・うーーーあーーーどうしようーーー!!!」
大事なことが頭から抜け落ちていたことに千歌は焦っていた。
せっかく決心したにもかかわらず、このままでは何もできないままだ。
もちろん、戦わずに梨子を止めることができるならばそれに越したことはない。
しかし、それには自分からも相応の覚悟を見せねばならないと考えていた。
それが、仮面ライダーの力なのだ。
のっぽを差し出す、干物を差し出す、富士の景色を見せて心を空にする・・・。
後から思い返せばきっと馬鹿らしい案を、二人は真面目に出し合っていた。
その時、申し訳なさそうに部屋の障子が開いた。
「ぁ、ぁのう・・・。」
ルビィが、その隙間から恐る恐る声をかけるが、二人はそれに気付かない。
聞こえていないとわかると、今度は勇気を振り絞ってさらに大きな声で呼びかけた。
「あ!!の・・・ぅ・・・。」
勢いあまって声が裏返る。さらに恥ずかしさから語尾が弱くなってしまった。
二人は、ひっくり返った声に反応して同時に障子のほうを向いた。
「ピギィ!!!」
「ピギィ・・・?」
目の前の小動物みたいな女の子から奇怪な声が聞こえ、思わず曜は復唱した。
「あ、あの、私、お姉ちゃんの・・・黒澤ダイヤの妹のルビィです・・・。千歌さんや、曜さんの一つ下・・・。浦の星の1年生です・・・。」
「へえ、ダイヤさんにこんなかわいい妹さんがいたんだ!」
千歌が笑顔でそう言うと、ルビィが照れながら話を続けた。
「えへへ・・・。ありがとうございます・・・!じゃなかった!お姉ちゃんから、千歌さんに、これを渡すようにって頼まれてて・・・。」
言いながら、千歌に風呂敷に包まれたそれを差し出した。
不思議に思いながら、千歌は掌の上で風呂敷を広げた。
「え・・・?」
思わず、千歌は声を漏らした。
それは、カードデッキだった。
タイガのそれと違い、表面には龍の顔のようなシンボルが確認できる。
「ダイヤさんが、これを?どうして・・・。」
動揺する千歌の目を見ながら、ルビィがゆっくり伝える。
「お姉ちゃんが、『きっと千歌さんなら覚悟を決めるはず。その時にこれが必要になるはずです。今は詳しいことは言いませんが、私はこれを千歌さんに託します。』って言ってました。千歌さんなら、きっと大丈夫だからって。」
「ダイヤさんがそんなことを・・・。」
カードデッキを見つめ、深く息を吸う。そしてゆっくりと吐き出す。
「曜ちゃん。こんな言葉で表していいのかわからないし、ダイヤさんにどんな考えがあるのかわからないけど、でも、今のこの状況を言うならこれだと思う。奇跡だよ!!!」
ルビィのほうへ向き直り
「ダイヤさんにお礼を言っておいてもらってもいいかな。それと、私、決めました、って。」
というと、デッキを強く握りしめた。
千歌の熱意あふれる顔に、曜も力いっぱい頷いた。
(ダイヤさん、この戦いについて何か知っていることがあるのかな・・・。)
そんな疑問を抱きながら。
その後、身体がほぼ完治したこともあり帰宅することになった。
玄関まではルビィが見送りに来てくれた。
ダイヤは用事があるらしく不在だった。ルビィにデッキの件を任せたのもそのためだ。
ダイヤにも感謝を伝えておいてくれと伝言を残し、千歌と曜は黒澤邸を後にした。
帰り道、二人に会話はない。
気まずいわけでも、話すことがないわけでもない。
その胸には決心が詰まっており、それがわかるだけで十分だった。
千歌はこの先の困難に立ち向かう覚悟があった。
曜はそんな千歌がとても誇らしかった。
キイイイイイイイイイイイイイイイイン
あの音だ。
耳をつんざく不快音。
二人は目を合わせると、近くのガラス窓に駆け寄った。
人がいないことを確認して、千歌が叫ぶ。
「変身!!!」
赤を基調とし、銀色の鎧を身に纏い、左腕に龍頭のようなガントレットを装備した戦士がそこにいた。
この姿を知っている。朦朧とする意識の中で、梨子が名前を呼んだことも。
千歌が変身した仮面ライダーの名は、
「龍騎。」
いつもありがとうございます。
やっと主人公が主人公ライダーになりました。
なのに更新が火曜過ぎてしまうって・・・。
申し訳ないです。以後気を付けます。
頂いた感想のなかで、タイガと千歌のことを書いていただきました。
ずっと考えていたことなので、わかってもらえてうれしかったです。
英雄にあこがれたものが挫折をする。そのメタファー的存在として、最初タイガに変身してもらいました。
これは、決してタイガが弱いと言っているわけではなく千歌の再起を描くにはどうしたらよいか、と考えた結果です。
きっと、千歌がもし悩まなかったらあんなあっさり負けることはなかったと思います。勝ち負けまでは言いませんが。
ダイヤさんあっさり渡しすぎじゃね?敵100体切りさせてその報酬とかよくね?って考えたりもしましたが、今後のこと考えると余計かなあと思い、このような形をとりました。
長くなりました、それではまた。