「どういうつもり?」
「どうもこうも、鞠莉さんの知っている通りですが。」
「知っている通りですが。・・・って、龍騎のデッキを渡したってどういうことよ!ライダーの力がなければ、果南を止められないじゃない!」
激昂する鞠莉を見据える。
「私は、私のやり方で果南さんを、いいえ、この戦いそのものを終わらせます。」
「冗談じゃない!私は取り戻したいの!あの日々を・・・!」
ダイヤは何も言わなかった。迷いのない瞳が鞠莉を映している。
「もういい。私一人ででも、果南を止める。」
そう言い捨て、鞠莉は自身の住むホテルへと帰っていった。
「続く戦いの末路にあなたはまだ気付かないのですか、鞠莉さん・・・。」
遠のく背中に、小さく呟いた。
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戦いは一瞬だった。
比喩でも何でもない。本当に一瞬だったのだ。
使用したのは、タイガのときに使い慣れたカード。
『アドベント』
現れたのは赤い龍だった。
赤い龍は口から炎を吐き、龍尾でなぎ払い、文字通り跡形もなく敵を消し去ってしまった。
千歌はただ茫然と立ち尽くす。
この指示を出したのが自分だということを受け入れるのには時間が必要だった。
考える、とは違う。戦い方を感じたのだ。
身体が初めから知っていて、思い出すような感覚。
千歌は思った。
この違和感はなんだ、と。
変身を解き現実世界へ、曜の元へと戻る。
「一瞬、だったね。」
曜も同じことを思っていた。
今の千歌には、カードの種類も、武器の名前も、まるで昔から知っていたかのように答えられる。
これが龍騎の力、そう納得するしか、他になかった。
その日はそのまま帰宅することになった。
どちらにせよ明日、学校に行けば梨子に会える。その時に話をすればいいと二人は思った。
「じゃあ、曜ちゃんまた明日!」
「うん、千歌ちゃんまたね。」
これまでと変わらない挨拶をして、帰宅した。
家に帰ると、姉が千歌を迎えた。
ただ出迎えてくれたのであれば、感謝の一つもあっただろう。
しかし、目の前にいる実の姉が自分の顔を見て、笑いを必死にこらえているとしたら、それは別だ。
「ぷふっ・・・。千歌あんた、生徒会にでも入るの?千歌が・・・?ぷぷふっ・・・あはははははははは!!」
ついに堪えきれず、口を大きく開けて笑い始めた。
何のことかわからず、千歌は眉をひそめる。
「生徒会・・・?なんでそんなこと・・・あっ!!!」
一つ、あった。
『あなたの家には、適当な理由をつけて話しておきますから。』
「ダイヤさん・・・。もう少し他の言い訳もあったでしょ・・・。」
小さなため息をこぼす。
「って言うか、もしやるとしたって笑うことないでしょーーー!!!」
晩の間、姉に笑われ続けた。
もういいでしょ、と思いながら。
それでも、やっぱりこの笑顔も守らなければ、と思いながら。
朝。窓の外は暗かった。
その日の予報では、一日雨らしい。
傘を差して、学校へと急いだ。
教室につくと、先に登校していた曜が傍に来た。
「おはよう千歌ちゃん。今日、梨子ちゃんお休みだって・・・。」
「そっか・・・。」
戦って、倒した相手と再び顔を合わせたくないのだろう。
いや、もしかしたら本当に体調が悪いのかもしれない。
いや、もしかしたら・・・。
考えれば考えるほど頭が回らなくなる。
落ち着こうと、自分の机のいすを引いた。
その時、二人はあの音を聞いた。
キイイイイイイイイイイイイイイイイン
「もう!!こんな朝早くから来なくてもいいのに!!!」
鏡を求め、走りながら千歌が嘆く。
途中、廊下を走るなと言われた気がした。
心の中で必死に謝って、先を急ぐ。
「授業までまだ時間はあるし、間に合わせたいよね!」
曜は、教室を出た時に時計がちょうど朝の8時を知らせていたことを思い出していた。
「そうだけど~!!せめて来るなら学校終わってからにしてよ~!!!」
勢いよくトイレの扉を開け、千歌が鏡の前に立つ。
「変身!!!」
龍騎へと変身した千歌は、ミラーワールドへと姿を消した。
「千歌ちゃん、頑張って・・・。」
残された曜は、鏡に祈りを捧げた。
鏡の世界に着き、千歌は辺りを確認する。
「おかしいなぁ、音は聞こえたのに。」
怪物の姿は千歌には確認できなかった。
しばらく、近くを調べていると、遠くで音が鳴っていることに気付いた。
音の鳴る方へ近づいていく。
その音が戦闘音だと気付いたとき、向こうもこちらに気付いた。
見覚えのある、紅色の戦士。
ライアが、梨子が、そこにいた。
最後の一体を倒したところでこちらを見る。
「龍騎・・・!!」
そう言うと、龍騎へと近づいてきた。
「生徒会長だったことには驚きましたけど、私だって覚悟を決めたんです。
友人になれるかもしれなかったあの子に手をかけた今、もうこの手では戦うことしか出来ない!」
『スイングベント』
尾部を模した鞭を出現させた梨子が、龍騎へ攻撃を仕掛ける。
「くっ・・・。梨子ちゃん!私はダイヤさんじゃないよ!!!」
「え・・・?」
明らかに動揺した梨子の隙を見て安全な間合いを確保する。
そして、千歌は龍騎の変身を解いた。
「私だよ、高海千歌だよ。」
「うそ・・・。なんで・・・。なんで高海さんが・・・。」
作った拳を固く握り締める。
降り続く雨は激しくなっていく。
それでも、決意をもう一度確かめて、いきなりだろうと言おうと思っていたことを思い出して、梨子にぶつけた。
「私は、ヒーロー。だから、あなたのことも助けてみせる!」
いつもありがとうございます。
次回、2年生編、というか梨子編?完結です。
それもあって今回気持ち長くなった気がします。
それでも2000字ですが。
梨子編終わった段階で、投稿分の表記ゆれやら誤字脱字やら、意図して書いたけど紛らわしくてやめた方がいいところやらをまとめて直すつもりです。
そう、投稿を始めてから初の評価?投票?をいただきました。
ありがとうございます。
初めて感想をいただいた時も、お気に入り登録していただいたときもそうなのですが、誰かが見てくれて、さらに反応してもらえるって本当にうれしいです。
本当にありがとうございます。
内容のお話。
冒頭部分は、千歌たちの裏で起こっているイベントです。
マリーご立腹。そりゃそうだ。
全部を言わないダイヤさん、言ってやれよ。
でも、一人で抱え込んでいるであろう不器用ダイヤさん。
助けてあげたい。ほんとに。
長くなりました。それではまた。