ここが違うぞ!!って思った人は、メッセージや感想で教えてください!!
-ヤマト 医務室周辺-
「包帯が足りない!!急いで持ってきてくれ!!」
「大丈夫だ。すぐに痛みは消える!!」
「佐渡先生!!来てくれ!!こいつ、出血がひどい!!」
医務室周辺に保安兵によって搬送された乗組員たちが運ばれており、原田と佐渡がけが人の治療を行っている。
未確認機による攻撃が続き、乗組員だけでなく、航空隊のけが人も来ており、医務室の中は既にいっぱいになっている。
そのため、廊下や開けた場所に即席ベッドを用意し、けが人を寝かせている。
「くぅ…こんなに入ってくるとは…!く…中村君、汗を!目に入ってしまう!!」
「は、はい!!」
少し癖のあるブラウンのミディアムヘアーで、ピンク色の制服を着た衛生兵の中村美代子二等兵が急いで佐渡の元へ向かい、彼の額の汗を白いタオルでふき取る。
原田の後輩であり、本来ならば佐渡のそばで治療の手伝いをする必要のある彼女だが、その彼女でさえ、負傷者の治療をしなければならず、現に彼女は急いで左腕を骨折した乗組員の元へ走っていった。
(どうにかせんとマズイ…。沖田艦長、この窮地をどうやって対処するんじゃ…??)
-ヤマト 応接室-
「一体、何が起こっているんだ…?」
状況がわからず、1人この部屋に待機させられることになったメルダは困惑する。
十数分前に大きな揺れが発生し、同時に警報音が響いた。
廊下は騒がしくなっており、外で機動兵器が戦闘を行う音が聞こえてくる。
そんな彼女のいる応接室にノーマルスーツに着替えた玲が入ってくる。
保安兵の指示で、彼らに銃は預けているため、今の彼女は無防備だ。
「外の状況はどうなっている!?」
「あなたたちが裏切ったせいで、こうなっているのよ!」
「何…!?」
メルダは玲の言っていることが理解できなかった。
有能で信義に熱いことで知られるラングがそのようなことをするはずがないと思ったからだ。
だからこそ、二等ガミラス人である彼に対して彼女は心から敬意を払い、服従している。
一つだけ心当たりがあるとしたら、実質的には目付け役として艦に乗っているネルゲだ。
「(まさか、奴が…!?)何かの間違いだ!ラング艦長がだまし討ちのようなことをするはずがない!私の誇りにかけてもいい!」
「黙れ!!」
玲はメルダに詰め寄り、彼女ともみあいになる。
メルダが床にあおむけで倒れ、彼女が持っている古代の銃を奪おうと手を伸ばす。
最初はそれを阻止しようと玲の右腕をつかんだメルダだが、ほんの一瞬だけ力を緩めた隙に玲は銃を奪い、それをメルダの額に突き付ける。
「約束が破綻した以上、もうお前は生かす理由はない!!」
ハアハアと息を整え、左手で胸ぐらをつかみながら玲は叫ぶ。
後は引き金を引くだけで、拳銃から発射されるビームで撃ち抜き、メルダを即死させることができる。
だが、息が整っていくうちに浮かんだ疑問と迷いが右手人差し指の動きを止める。
「なぜだ…?なぜ手加減をした?それに…」
あの時、玲がメルダに襲い掛かったとき、彼女の腰には古代の銃が入ったホルスターがあった。
使い方も古代から教えてもらっていて、やろうと思えばすぐに玲を撃つこともできたはずだ。
それに、もみ合いになったときも、急に力を抜いた。
兵士として訓練を受けているから、あの程度でスタミナ切れになるとは到底思えない。
「…古代一尉からの信頼を裏切ることになる。彼は敵である私のことを信頼してくれた。あの人を傷つけるようなことはしたくない…」
「私の家族を奪ったくせに…よくそんなことを!!」
古代の名前を口に出されたことが玲の怒りを増幅させ、同時に家族を奪ったガミラスへの復讐心を燃え上がらせる。
しかし、彼女が古代から信頼され、彼女もまたそんな古代に応えようとしていることを直感で理解してしまう。
様々な感情がサラダボールのようにグチャグチャと混ざっていき、無意識のうちに玲の目から涙がこぼれる。
「…なぜ、ためらう。私を敵だと思っているのなら、かまわず撃てばいい」
「言われなくても…!!」
「嘘だな…。自分の感情に嘘をつくな。みじめになる」
「く…ううう…!!」
撃てないという自分の感情を指摘されたことで、ようやく自分が泣いているということを自覚した玲は力なくメルダから離れ、銃を落とす。
(撃てるわけがない…。この銃は…古代戦術長の…)
落ちた銃を拾い、テーブルの上に置いたメルダは玲をじっと見る。
「それに、戦闘機乗りならば、決着をつける方法が別にあるだろう。最も、このままではヤマトが危ないだろうがな…」
メルダが言い終わると同時に、再び艦が揺れる。
その揺れが玲の思考を正常なものに戻した。
袖で強引に涙を拭いた玲はじっとメルダを見る。
「あなた…ガミラスの艦が逃げたのは間違いだと言ったわね…?」
「そうだ。私と私の先祖の誇りにかけて、私はラング艦長の潔白を信じる」
「なら…その証を見せて…」
「いいだろう」
-次元断層-
「くそ…ポジトロンカノンが!!」
上からの未確認機のビーム攻撃を受け、ポジトロンカノンの砲身が破壊され、それ専用のジェネレーターも損傷してしまう。
誘爆の危険性も考え、チトセの操作によってポジトロンカノンをパージする。
「気にするな!ヤマトの万能工作機なら、またポジトロンカノンを作ることができる!!グオッ…!っといっても、このピンチを脱したら、だけどな」
3機の未確認機が合体し、発射されたビーム砲で左足が蒸発してしまう。
反撃にレールガンを数発発射し、2機は撃破に成功するが、残る1機は分離して危機を脱してしまう。
「ヤマトより各機!これより、山本三尉のコスモゼロとディッツ少尉の戦闘機、ツヴァルケが発進する!!」
「何!?あの女も出撃するだと!?…!?クソッ!!」
機銃が弾切れになった加藤は古代の通信を聞き、困惑する。
この騒ぎに乗じて逃げ出そうとしているのではないか。
そう思った加藤だが、今の彼のコスモファルコンにはもう残弾がない。
「隊長、ヤマトに戻って弾薬の補給を!!ここは俺が支えます!!」
「小橋!?く…頼む!!」
戦闘機の訓練課程を修了したばかりのルーキーである小橋にその場を支える力はないが、ほかにもベテランである大工原や篠原と交代で出撃した田熊が近くにおり、いつでも彼の援護ができることからやむなくこの場を任せてヤマトへ帰投する。
格納庫からは赤いツヴェルケの発進準備が完了しており、乗っているメルダは通信を入れる。
「こちらはガミラス銀河方面第707航空隊所属、メルダ・ディッツ少尉だ。これより、そちらを援護する!なお、私が信じられないのなら、ためらいなく私を撃つがいい!」
「刹那さん…」
「ああ…」
メルダの通信を聞いたトビアと刹那は安堵の表情を見せる。
刹那の、彼の直感は間違っていなかった。
通信を終えたメルダに第一艦橋の古代からの通信が入る。
「古代一尉…」
「君の援護に心から感謝する。だから…必ず生きて戻ってくるんだ!」
「了解…!メルダ・ディッツ、ツヴァルケ、出撃する!!」
ツヴァルケが発進し、同時に専用カタパルトから発進した玲のコスモゼロと合流する。
「あなたを撃つ役は同じ戦闘機乗りの私がやる!」
「そうしてくれ…山本三尉」
短い通信ののち、2機は散開し、未確認機に向けてビームを発射する。
ヤマトに向けて発射された未確認機の下部パーツが次々と撃ち抜かれていき、ヤマトに接触することなく爆発する。
「…へっ、どうやら、俺の目は節穴だったってことだな」
メルダのあそこまで言い切った態度を見た、というよりも聞いた竜馬は心の中で彼女を疑ったことを詫び、ゲッターレザーで未確認機を引き裂く。
しかし、そんな彼のコックピットに警報音が響き渡る。
「何!?まさか…!!」
急いで後ろに振り返った竜馬だが、そこには3機が合体した未確認機がいて、既にビーム砲のチャージが完了していた。
修理不能のゲッター1にはエンゲラトゥスや冥王星、そしてこの次元断層での戦いのダメージが蓄積しており、装甲にもひびが入っている。
その中で、あの火力の攻撃を受けたらひとたまりもない。
「くそ…済まねえ、隼人、弁慶…ミチルさん…」
ここまでかと思い、自分のいた世界にいる仲間たちと死んでしまったとある女性の名前を口にする。
彼女はいま、竜馬が乗っているゲッター1と同じタイプのロボットの実験中の事故で死亡している。
その実験には竜馬と隼人も参加しており、その死は2人にとって、大きな心の傷となっている。
死んだら彼女に詫びに行くことができるのかと思ってしまい、彼の手が操縦桿から離れそうになる。
だが、彼を狙っていた未確認機は真下から放たれた炎に焼かれ、消滅する。
「あきらめるな、竜馬!!」
「鉄也…!?」
鉄也の言葉を聞き、竜馬の離れそうになっていた手に力が再び入る。
刃がボロボロになり、もはや斬るだけの力を失った最後のゲッタートマホークをヤマトへ向かおうとする1機に向けて投げつける。
トマホークの直撃を受けた未確認機は翼部のビームを1発発射した後で爆散した。
「へっ…まだやれるじゃねえか。ゲッター1…」
「竜馬、ハイパーハンマーを取りにヤマトへ戻れ!俺が持たせる!!」
「ちっ…さすがにゲッターレザーもやばいからな。頼むぜ、鉄也!!」
ゲッター1がヤマトへ戻っていき、追いかけようとする未確認機にグレートマジンガーがサンダーブレークを叩き込む。
(そうだ…お前を死なせはしない。それが…俺の記憶を取り戻すカギになるはずだ…!)
「く…!Iフィールドの冷却時間だ…!!」
未確認機のビームを受け止めたX3のIフィールドが冷却時間に入り、両手のそれが使えなくなるわずかなタイムラグを、前に出たスカルハートがビームシールドでカバーする。
「ここまでで撃破した奴らの数は28。だが、残り22…」
スカルハートのザンバスターの銃身は焼けており、ビーム・ザンバーの機能だけは維持できている。
X3もムラマサブラスターのビームサーベルのエネルギーが尽きてしまい、今はザンバスターで迎撃を行っている。
「トビア・アロナクス!キンケドゥ・ナウ!!ここは僕と刹那がカバーする!君たちは戻れ!」
トランザムを起動したラファエルガンダムとダブルオークアンタが2人のもとへ駆けつける。
「刹那!」
「了解、とどめは任せる!」
トランザムで上昇した機動力を利用して、刹那は未確認機の集団に飛び込んでいく。
集団の懐に入られたことで、近接攻撃手段を持たない未確認機はダブルオークアンタをビーム砲で迎撃するが、イノベイターであり、おまけにこれまで長い間戦い続けた彼にとって、そのビームを回避するのは容易なこと。
おまけにあえて自分への攻撃を誘い、後方にいる敵機へのフレンドリーファイアを起こさせるという芸当も見せている。
「チャージ完了、離脱しろ!!」
「了解!」
「GNビッグキャノン、最大出力!!」
刹那が離脱すると同時に、2門のGNビッグキャノンが火を噴く。
かつての彼の愛機であったセラヴィーガンダムを上回る圧倒的な火力が刹那に翻弄されていた未確認機を飲み込んでいく。
「すごい…」
「これが、刹那たちの世界のガンダム…。…穴から反応!?これは…!」
-ヤマト 第一艦橋-
「スカルハートより伝達!穴からガミラス艦…EX178が接近しているとのこと!」
「何!?彼らが…」
EX178の反応はヤマトも得ており、前方のモニターにはその艦と搭載機と思われるツヴァルケ数機が確認された。
そして、正面モニターにはラングの姿が映し出される。
「ヤマト、こちらはEX178。すまない、すべてはこちらの責任だ…。許されることではないが、心からお詫び申し上げる」
モニターに映るラングが堂々と彼らに頭を下げる。
彼の後ろには銃を突き付けられたネルゲの姿があった。
それを見た沖田は何が起こったのかを察する。
「状況が状況だ。事情があるのだろう。貴官が戻ってきてくれたのであれば、こちらからは何も言うことはない」
「寛大な対応に感謝する。これより、ヤマトの曳航を行う。その間、我が艦のツヴァルケが援護する」
-次元断層-
「ラング艦長!!」
EX178の反応を確認したメルダは彼が裏切っていなかったことを悟り、安堵の表情を見せる。
だが、戦場では些細なことであっても雑念を持つことは許されない。
わずかに動きが鈍った赤いツヴァルケに対して、未確認機が攻撃をしようとする。
だが、側面から襲い掛かるミサイルを受け、あっけなく撃破されてしまった。
「山本三尉…」
「今のはあなたへの詫びよ、メルダ少尉」
コスモゼロと赤いツヴァルケの上を数機のツヴァルケが飛行し、コスモファルコン隊のバックアップに入る。
「あいつら…」
自分たちを援護するツヴァルケを見た加藤は今起きている現実が現実に思えずにいた。
地球を滅ぼそうとした悪魔であり、自分たちを見捨てて逃げたはずの彼らが戻ってきて、自分たちを助けている。
(ガミラスは…悪魔じゃない。俺たちと同じ…なのか…?)
「こちらヤマト!機動部隊およびEX178所属機全機に告ぐ!これからヤマトはEX178の牽引により、次元断層を脱出する!これより帰投せよ!繰り返す、直ちに帰投せよ!」
古代からの通信により、加藤の思考が目の前の現実へと戻っていく。
既に未確認機を半分以上撃破し、さらにEX178が戻ってきたことでパワーバランスが逆転している。
だが、ヤマトが離脱する準備が整ったことで、もうこちらが戦う理由はない。
「了解だ!聞こえたかお前ら!コスモファルコン隊はモビルスーツたちの後で帰投する!各機、フラッシュバンの用意!!」
加藤の通信を受け、ソウジ達が次々と帰投していく。
生き残りの未確認機はヤマトを追いかけようとするが、コスモファルコンが発射したフラッシュバンの光に包まれ、身動きが止まる。
「敵の視界を封じたか…!最大戦速!次元断層を脱出するぞ!」
「き、貴様…!これは完全な利敵行為だぞ!?」
銃を突き付けられたネルゲは命令を出しているラングにかみつく。
ほかの場所で乗組員たちを拘束していたほかの親衛隊もすでにネルゲと同じように拘束されており、今彼らに従う者はいない。
「一時的とはいえ、同盟関係にある友軍に危機を招いた貴様こそ、罰を受けるべきだ。よって、お前とお前の部下は拘束させてもらった」
ガミラスの法律でも、同盟関係にある友軍に危機を招いた人物は外患罪の対象となる。
親衛隊の場合はある程度軍法裁判所では便宜を図ることができるものの、外患罪となると重罪で、よくて軍刑務所送り、悪くて親衛隊追放の上、懲罰部隊送りとなる。
「く…親衛隊である私に逆らうことは総統閣下への反逆だ…」
「私は総統閣下にも、軍法裁判所にも、自分のしたことを胸を張って報告するつもりだ」
「くっ…」
何も言い返すことができなくなったネルゲはそのまま独房まで拘束されていく。
「艦長、ディッツ少尉から通信。次元断層の脱出が完了するまで、使者としてヤマトと行動を共にする、とのことです」
「了解だ。ディッツ少尉には一度は見捨てて逃げてしまう形になって済まないと伝えてくれ」
「了解!」
-ヴァングレイ コックピット-
「うう…やれやれだぜ。もうこんな戦闘は御免だ!」
ヘルメットを脱いだソウジは深呼吸をし、シートにもたれる。
ポジトロンカノンと片足が破壊されたうえ、何度も被弾したことで装甲にもダメージが発生している。
「お疲れさん、お二人さん!むさくるしいおっさんがドリンクを持ってきましたぜ!」
コックピットを開けた榎本が水筒を2つソウジに渡し、あとはごゆっくり、と言ってからすぐに閉める。
チトセにそのうちの1つを渡し、もう1つのそれを口にする。
「ああー…生き返るぜ…。…うん?」
上を向いたソウジはチトセを見つめる。
受け取った水筒に口をつけておらず、小刻みにではあるが、彼女の体が震えていた。
(無理もないか…。今回はかなり命がけだったからな…)
未確認機の反応はなく、追ってくる気配はないが、機動部隊は引き続き、戦闘配置のまま待機が命じられている。
次元断層から脱出したとしても、そこからどうなるかは誰にもわからない。
EX178との同盟はあくまでここを脱出するときまでだからだ。
「チトセちゃん…。まぁ、気楽にいこうぜ?ここより辛気臭いところじゃあねえからさ。通常空間は」
「ソウジさん…私、私…」
震えが止まらないチトセの目から涙がこぼれる。
何度も被弾し、そのたびに揺れを感じたことで、死の恐怖を感じてしまったのだろう。
それに、彼女の階級はソウジと同じだが、実戦経験が少ない。
その分、ソウジと違ってそういう命がけの戦場というものに慣れていないのだろう。
メインパイロットシートの上に立ったソウジは泣いているチトセを抱きしめ、顔を自分の胸に押し付ける。
「ソウジ…さん…?」
「我慢しないで泣いていいぜ。ちょっとくらい、カッコつけさせてくれてもいいだろ?」
いつものように気楽な口調で頭をなでながらチトセに言う。
ソウジのその言葉で気が緩んだのか、チトセは大きな声で泣き始めた。
彼女が泣き止むまで、ソウジは何も言わずに胸を貸し続けた。
-???-
EX178にけん引されたヤマトが穴から出ると、そこには冷たい宇宙が広がっていた。
隕石が浮かぶ寂しげな空間だが、その黒々とした光景は今のヤマトの乗組員たちには安心感を与えてくれている。
「本艦は無事、通常空間に脱出!」
「やったぁ!!」
「僕たち、脱出できたんだね!!」
動かぬ大和の中で死の恐怖と戦っていた2人は宇宙に戻ることができた喜びを分かち合う。
そして、約束を果たしたEX178がけん引ビームを解除する。
(感謝しますぞ、ラング艦長…)
これで両者は約束を果たし、同盟関係は終わりを迎えることになる。
後ろにある穴もあと数分でふさがり、あそこで現れた未確認機と戦うことはもうないだろう。
これからどうなるかはわからないが、沖田は目の前にいる『同胞』に対して敬意を表し、敬礼した。
「ディッツ少尉に帰還命令」
「了解です。!?これは…待ってください!友軍艦隊がゲシュ=タム・アウト!」
「何!?」
2隻の戦艦の目の前に、ポルメリア級やデストリア級、メルトリア級で構成された数十隻の艦隊が現れ、中心には350メートルというヤマトを超える大きさを誇るガミラスの弩級戦艦、ガイデロール級航宙戦艦の1隻であるゲルガメッシュが存在する。
(まさかネルゲ…貴様!!)
ゲルガメッシュの艦長であり、この艦隊の司令官であるデスラーの腰巾着のグレムト・ゲール少将を呼び出すことができる人間として、ラングが思いつくことができるのは1人だけだった。
それらの反応はヤマトも拾っていた。
「ガミラス艦隊、ワープアウト!」
「やはり罠だったか!?」
あまりにもタイミングの良すぎる伏兵の登場で島のガミラスへの猜疑心が膨れ上がる。
「ゲール少将!テロンの艦とともにいる友軍機はディッツ提督のご令嬢とのことです!」
ゲルガメッシュの通信兵が艦長席にいるゲールに報告する。
「な…!?」
EX178に配属されていたことを知らないゲールは驚きを見せる。
メルダの父親、ガル・ディッツが大ガミラス帝国の航宙艦隊総司令であり、ゲールの上司に当たる人物だ。
軍人としての実績と評価が高く、ガミラス統一へ大きな貢献を果たしたこともあり、デスラーから厚い信頼を寄せられている。
しかし、自分こそがデスラー総統第一の中心と信じて疑わないゲールにとって、ディッツはあまりにも目障りな存在だ。
だからといって、撃っていい理由にはならず、撃ったら立場が悪くなるのはゲールの方だ。
「なお、EX178は射線上から動きません!」
「何ぃ…だったら構わん、撃て!!」
「な…味方もろとも撃てというのですか!?」
「この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかんのだ!!(ここで挽回しなければ、シュルツの失態で私の立場が…!)」
銀河方面作戦司令長官であるゲールの命令に逆らうことができず、艦隊がヤマトに向けて主砲からビームを発射する。
「敵艦隊からの攻撃、来ます!」
「くっそおおおおお!!!」
まだ波動エネルギーが回復しきれていないヤマトに動く力はない。
これまでかと思い、島は叫ぶ。
だが、島から見れば2度も裏切った艦であるEX178が動くことなく、ヤマトの盾となって砲撃を受けていた。
ビームがEX178の装甲をえぐり、更にミサイルがもろくなった装甲に突き刺さって、爆発と共に兵士たちを吹き飛ばし、宇宙へと吸いだしていく。
それはネルゲや親衛隊も例外ではなかった。
「ば、馬鹿な!?私まで…なぜだぁぁぁぁ!?!?」
独房に大穴が開き、ネルゲは自分たちにまで攻撃した艦隊へ怨嗟の声を上げながら暗い宇宙へと吹き飛ばされてしまった。
ミサイルの攻撃は艦橋にも届いており、負傷したラングが壁を支えにして起き上がる。
先ほどの攻撃で第一艦橋の乗組員のほとんどが死亡した。
ラングは何とかオペレーター席にある生きているコンソールを動かし、後方の状況を確認する。
自らが盾となっていることで、今のところはヤマトや赤いツヴァルケに攻撃は届いていない。
また、攻撃が来ることを念頭に置き、彼の指示で退艦した兵士たちのランチが今、ヤマトへと向かっている。
(沖田艦長…このようなことになって済まない。せめて…ほんのわずかでも時間は稼がせてもらう。これが…私にできるささやかな償いだ…)
「EX178が盾に…」
目の前で攻撃を受け続けるEX178を見た古代がつぶやく。
森が現在、沖田の指示でEX178に離脱するように通信を送ろうとするが、EX178が受けたダメージのせいで、もはやそれはできなくなっていた。
その代わりに、ヤマトのセンサーはEX178の乗組員のランチを確認する。
「艦長!EX178から脱出したランチが本艦へ!」
「うむ…これより…」
「ハッチを開け!これより我々は地球における国際法にのっとり、救出を行う!!…ですね?艦長」
「…うむ」
沖田が何をするかわかっていた古代の言葉に沖田はゆっくりと首を縦に振る。
「…艦長、航海長具申。救助活動中の国際信号を…」
「島君…」
森が心配そうに彼の名を呼ぶ。
迷いのある彼だが、1つだけわかっていることがあった。
「おぼれている人間を救うのは船乗りの義務…。俺の父さんが生きていたなら、絶対そうします…」
いまだにメルダの言っていた地球側からの先制攻撃という話は信用できない。
しかし、いわれもなくEX178を裏切者と思い込んでしまった償いを目の前でヤマトの盾になっている彼らにしたかった。
「…森船務長、救助活動中の国際信号を」
森の手でオープンチャンネルによって救助活動中の国際信号を流し、甲板部の兵士たちがランチに指示を出し、ハッチへと誘導を始めている。
これがガミラスに通用するかどうかは分からない。
だが、自分たちの同盟者の命を守るために、できる限りのことをしようとしている。
EX178の艦橋でランチがヤマトに回収されるのを見たラングは静かにヤマトへ感謝をする。
そして、EX178のダメージが動力部に達し、艦が大きな爆発を引き起こした。
「艦長…ラング艦長ー!!」
目の前で沈むEX178を見たメルダが悲鳴を上げる。
「艦長!ランチの収容、完了したとのことです!」
EX178から出たランチの数は1つ。
ほんのわずかでも、同盟者を、そして助けを求める人を救うことができたのがわずかな慰めだった。
「ディッツ少尉のツヴァルケを回収後、本艦は直ちに現宙域を離脱する!艦首、回頭!!」
ラングが作ったわずかな時間で、ヤマトはようやく航行能力を取り戻した。
武装の使用はできないが、ここから逃げることだけは可能となった。
「馬鹿な奴らめ!敵の盾になりおって…。ええい、ズピストの奴らを出せ!!」
八つ当たりまがいのゲールの命令により、ゲルガメッシュなどから木星帝国のモビルスーツ部隊が次々と出撃し、ヤマトへ向けて接近している。
「後方から熱源反応!例の未確認機が…!?」
「何!?」
更に閉じつつあった穴の中から未確認機が次々と出てきて、ヤマトに向けて接近する。
ラングが穴から離れた場所までけん引したおかげで、出てきた彼らに即攻撃されるという事態は避けられたものの、あとものの十数秒で攻撃範囲に入ってしまう。
「こんな時に…!」
「間に合わなかったか…」
逃げ道がふさがれ、更に挟み撃ちになったことで、ヤマトはもう進むことも引くこともできなくなった。
歴戦の将である沖田であっても、この状況を覆すすべを見いだせない。
機動兵器もコスモファルコン隊も、あの未確認機との戦闘で消耗し、傷ついていて、あの大軍を相手にする力がなかった。
諦めかけたその時、急に宇宙に歪みが発生し始める。
その歪みの影響か、ヤマトに迫っていたミサイルやビームが消滅していく。
「な、なんだ!?何が起きているんだ!?」
ゲールもこのようなことは想定外で、脂汗をたっぷりと流し始める。
「巨大な次元震が発生!震源は…次元断層とのこと!」
「くうう…EX178め!千載一遇のチャンスをつぶしおってぇ!!ええい、撤退だ!今すぐこの宙域からジャンプしろぉ!!」
「こんな不安定な状態では…!」
波動エネルギーによりワープは安定した宙域で行うことで、初めて目的地点まで正確に飛ぶことができる。
しかし、次元震によって歪んだ宇宙でそんなことをやると、目的地へ正確に飛ぶことができず、どこか見当違いな場所へ飛んでしまうことになる。
いや、『場所』だけであればまだいい。
最悪の場合は次元断層の中、もしくは鉄也や竜馬、刹那やティエリアのように別の平行世界へ飛んでしまう可能性も否定できない。
(だが…本当に次元震なのか…??)
揺れを感じる中で、真田はこの次元震の発生にどこか異常を感じられた。
確かにこのように次元断層と宇宙を繋ぐ穴が元に戻ろうとする影響でこのようなことが発生することがある。
しかし、ふさがろうとした穴の大きさを考えると、規模があまりにも大きすぎる。
そして、目の前に広がる宇宙に肉眼で見えるほどの大きな亀裂が発生している。
「総員、対ショック!衝撃に備えろ!!」
「宇宙が…割れる…!?」
伏せる直前に古代の目に映ったのはまるでガラスのように割れる宇宙であり、それと同時に激しい衝撃が襲い掛かる。
戦闘機での訓練中でも感じたことのない強烈なGを感じ、一瞬で彼の意識はブラックアウトした。
宇宙というのは人知を超えた存在であり、割れた宇宙はものの数分で元の姿に戻っていった。
しかし、その時にはヤマトも、未確認機も、ゲールの艦隊と木星帝国のモビルスーツの姿も消えてしまっていた。
-???-
「…ジ、さん…!!ソ…!!」
「ん、んん…」
ヴァングレイのコックピットの中で、突然起こった衝撃で意識を失ったソウジの耳に誰かの声がわずかだが聞こえてくる。
誰の声かわからないが、自分の名前を呼んでいることは確かだった。
(誰…だ…俺を呼んでいるのは…それに、この感触…何だ??)
ムニュ、と大きくて柔らかな、おまけに温かな感触が手に伝わり、声が聞こえるのも手伝ってゆっくりと目を開きながらその正体を見ようとする。
強い衝撃を受けたせいか、目の焦点が固定できず、視界がぼやけている。
「…さん!!ソウジさん!!」
「その…声…まさか…チトセちゃ…!?」
彼女の声が聞こえ、ようやく意識が覚醒したものの、ソウジの目には何か人の胸部が映っていた。
露出度の高いその服の構造はまさしく彼女の物であり、その服の中に右手が突っ込んでいる。
なぜいつの間に彼女の服装が元に戻っているのかわからないが…。
今の状況をようやく理解したソウジの血の気がサーッと引き、顔が青くなっていく。
「え、ええっと…チトセちゃん。じゃなかった、チトセ様。この状況はぁ…そのー…」
必死に言い訳を考えようとするあまり、手をどかすことをしっかり失念している。
顔を真っ赤にし、前とは違う理由で涙を浮かべる彼女は叫ぶ。
「ソウジさんの…バカぁーーーーーー!!!!!」
思いっきりビンタされたソウジは派手に吹き飛んでいき、バサァと砂浜に倒れる。
(砂浜…それにこの匂い…もしかして、海…?)
薄れゆく意識の中で、ソウジは目の前に広がる光景を見る。
それはガミラスによって失われ、自分たちが取り戻そうとしているものそのままの景色だ。
ついでに、先ほどじかにもんでしまった彼女の胸の感触も思い出しながら、再びソウジは意識を失ってしまった。
「まったく…それにしても…」
意識を失ったソウジもまた、チトセと同じくいつもの服に戻っている。
また、目の前に広がる海と砂浜、そして背後に見える緑の木々に彼女は驚きを隠せなかった。
(もしかしてここって…地球…??)
機体名:ツヴァルケ
正式名称:空間格闘戦闘機DWG262
建造:大ガミラス帝国
全長:15.58メートル
全幅:7.5メートル
武装:13ミリ機関砲×6、30ミリ機関砲×4、空対空ミサイル×6
主なパイロット:メルダ・ディッツ、大ガミラス帝国兵
大ガミラス帝国が長期にわたって運用している空間格闘型の戦闘機。
多数の武装を搭載しているため、重量はほかの戦闘機よりも高いものの、格闘性能・機動性も高いため、ベテランのパイロットからの信頼が厚い。
ただし、あくまで戦闘を主眼としたものであるため、航続距離と攻撃力ではゼードラーⅡ、地上への爆撃ではメランカといった、一定の役割に特化した機体と比較するとそれらには及ばない部分がある。
メルダが搭乗しているメランカについては彼女の要望で赤く塗装されており、本来はほかのガミラスの艦や航空機と同様、緑が基調の色彩となっている。