形式番号:GN-011
建造:ソレスタルビーイング
全高:19メートル
全備重量:57.7トン
武装:GNソードライフル×2、GNミサイル、GNシザービット×10
主なパイロット:アレルヤ・ハプティズム(機体制御)マリー・パーファシー(火器管制)
ソレスタルビーイングがアリオスガンダムの太陽炉とフレームをベースに改修したもの。
前大戦で投入した支援機であるGNアーチャーのコンセプトをアリオスガンダムに取り入れるという形となっており、これまでアレルヤが搭乗していたガンダムと比較すると火力と重量が大きく上回っているうえに、操縦システムが複雑化したことからアレルヤ単独での運用が難しくなったため、サブパイロットしてマリーも搭乗している。
また、変形機構に関してはほぼ機体を寝かせるだけと単純化されており、最低限のタイムラグで変形が可能となっている。
なお、ガンダムサバーニャにも言えることではあるが、太陽炉の出力には変化がないことから、GNキャノンなどの装備の一部を取り除くことで、重力下での戦闘に対応している。
-プトレマイオス2改 ティエリアの私室-
「ティエリア…どうかしら?あのナオミって娘からもらったデータは…」
「もうすぐ読み込みが終わる…だが、ミス・スメラギ…」
パソコンを操作するティエリアは後ろの椅子に座っているスメラギに目を向けないものの、鼻に伝わる匂いに頭を抱える。
テーブルの上には日本で買ったものと思われるブランデーが置かれており、彼女の手にはそれが入ったグラスが握られている。
「別にいいじゃない。酔わないように加減はするから…」
「そういう問題じゃない…。他人の部屋で勝手に酒を飲まないでほしいものだ」
「固いわねー…すっかり柔らかくなったと思ったのに…」
「ミス・スメラギ、あなたはもう少し指揮官としての自覚を…」
注意が終わらないうちに読み込みが終了し、ディスプレイにはナオミが搭乗していたものとほぼ同じ機動兵器の姿が表示される。
大きさはエステバリスと同じくらいで、白い装甲でV字型のバックパックが搭載されており、その映像で先ほどエリアDで交戦したピンク色のドラゴンをアサルトライフルで牽制し、最後は左手に搭載されている青い弾丸を発射し、そのドラゴンを氷漬けにしていた。
最後はガンダムハルートと同じように、戦闘機に変形して離脱したところで映像が終わり、続けてカタログスペックや武装などが表示される。
「グレイブ…アルゼナルが所有する人型機動兵器パラメイルの1つで量産型…」
「映像とあのナオミって娘のパラメイルを見たら…乗っている人のことを考えていないような欠陥兵器ね」
スメラギは映像の最後にあった戦闘機形態に変形するグレイブの姿を思い出す。
その時、コックピットの中が完全に見えており、乗っている人間が肉眼で見ることができた。
戦闘機形態は人型よりも機動力が高いため、パイロットにかかるGも人型より大きい。
そのため、パイロットの安全を考慮した設計にしなければならないにもかかわらず、これの場合はパイロットが落下してしまうことがあり得るほどに最悪の安全性となっている。
ガンダムハルートなどの可変機動兵器を知っているスメラギにはその危険性はよく理解できた。
もしイアンにこのような映像を見せたら、怒りを見せるかもしれない。
装甲の素材となっているのはM1アストレイで使用されている発砲金属と近い流れの金属であるものの、強度と軽量さを両立したそれとは異なり、軽量さのみを追求したものとなっている。
高い機動性で敵の攻撃を回避するというコンセプトで採用されている発砲金属だが、ある程度被弾の可能性も頭に入れなければならない。
そんなことを考えない装甲と安全性のないコックピット。
兵器としては失格としか言いようがない。
「このパラメイルという機動兵器、ヴェーダのデータにはなかった。なぜ彼女の司令はこれを見せた…?」
今回見せられたのはこのパラメイルに関する情報だけで、先ほど遭遇したドラゴンについては何もなく、ナオミもそれについては司令から許可を得ていないという理由からまったく口を割る気配がない。
「そういえば、刹那達はトゥアハー・デ・ダナンか…」
「ええ。パイロット同士の交流のためね。私は艦長同士の交流に行ってくるわ。ティエリアも終わったら、ダナンへ行っていいわよ」
スメラギはブランデーとグラスを放置してティエリアの部屋を出ていく。
ブリーフィングルームで待つルリとテレサ、かなめと交流するためだ。
ちなみにかなめについてはテレサからの説明で、高校生兼ミスリルの戦術アドバイザーということになっている。
「…ブランデーは持ち帰ってほしいものだ。ふぅ…」
ため息をついたティエリアはグレイブ以外のパラメイルのデータも見始めた。
-トゥアハー・デ・ダナン 第2格納庫-
「いやぁー、あの美少女艦長ちゃんと美人艦長さんに加えて、パイロットにも、こんなカワイコちゃんがいるなら、この世界も悪くないなぁ」
「は、はぁ…」
「マリーさん、ここは怒らないと…!」
スケベ根性満載な眼でジロジロと見ているクルツに怒りを抱くチトセが隣のマリーの小声で言う。
ただ、表立って怒ることができないのはクルツに自分がかわいいと認められているからだ。
「マリーから離れろ、このナンパ師のスケベ野郎!初対面からこれとは、なれなれしいなんてレベルじゃねえぞ!」
チトセとマリーの分の怒りもぶつけるかのように、リョーコの怒号がクルツを襲う。
このままではマリーもチトセも、最悪の場合自分もクルツに変態的妄想の対象となってしまうという危機感を抱いたからだ。
既に彼女はクルーゾーとメリッサから忠告されており、クルツに激しく警戒している。
「いやいや、リョーコちゃん。じゃあ次は…」
このままクルツはマリーと握手をしようとするが、急に悪寒を感じて断念する。
彼女の近くにいるアレルヤの眼がとても怖かったからだ。
「いやぁー、見事な男だよ、あんた。女性への礼儀をよくわかっている御仁だなぁ」
どこに褒める場所があるのかわからないが、一連のクルツのナンパに感動した三郎太が賞賛する。
「とりあえず、悪い奴じゃないみたいだな。アイツには会わせるわけにはいかないがな…」
ロックオンが心配になったのはクルツがこのナンパのターゲットを恋人であるアニューに向けられることだ。
「ま…いつまでこっちにいるか分からんが、よろしくなご同輩方」
「ミスリルがナデシコ部隊と契約を結んだ以上、挨拶をしよう」
遅れてクルーゾーとメリッサがハサウェイと宗介と共に第1格納庫に戻ってくる。
なお、ハサウェイは薄赤いズボンとネクタイ、白いシャツの上にミスリルの制服の上着を着るという形となっており、他のミスリルのパイロットである4人と大きな違いがあった。
なお、ミスリルへの報酬の支払いは金での支払いとなっている。
さすがに違う世界からきている彼らにこの世界の通貨で報酬を出したとしても、あまり意味がないというルリの判断だ。
その金は旋風寺コンツェルンが調達するため、ある程度メドが立てば、一度日本に戻る必要がある。
「もっとも、我々の組織や従事していた作戦については別の世界とはいえ、話せないこともあるがな」
「その辺りは聞いていますので、お気になさらず」
クルーゾーの言っていることは同じ私設武装組織であるソレスタルビーイングの一員であることから、アレルヤも理解することができた。
ロックオンと刹那、マリーも口を挟む様子がないため、彼らもそのことは理解しているようだ。
「感謝する。自分はベンファンガン・クルーゾー中尉。このトゥアハー・デ・ダナンの特別対応班…SRTの指揮官だ」
「メリッサ・マオ曹長だ。よろしく頼むよ」
「これはぜひとも、ヨロシクされたい」
三郎太の視線はメリッサの若干見えている胸元に向けられている。
そんな彼の視線が嫌で、チトセは彼から若干距離を置いていた。
「うちの曹長と艦長、戦術アドバイザーちゃんもなかなかのもんだろ?」
「いやはやまったくだ。こういう来客なら歓迎…痛た…!!」
「ナデシコのルリ艦長も若いけど、そちらの世界の軍人さんも若いですね」
ニコニコ笑うチトセだが、ソウジの耳を引っ張る手の力は緩んでおらず、すっかりソウジは涙目になっていた。
「あの子たちはちょっと特別なのさ…。あと、そこの日焼け男とロンゲに言っておくよ。テッサやカナメに手出ししたら、このマオ姐さんが承知しないよ!」
「うう…了解…」
「イエス・マム!痛い…」
三郎太もソウジもマオの迫力満点、殺気満点の声に逆らえず、テレサとかなめに手を出さないことを心に誓った。
「こいつはいい。俺とチトセだけじゃ、このボンクラどもをしつけるのは難しいと思ったが、強力な助っ人の登場だ!」
「んじゃ、リョーコちゃんは俺専属ってことで…。クルツ・ウェーバー軍曹だ。女性陣はプライベートでもよろしくな」
「あんたって男は…どこの世界でもぶれないね…」
ため息をつくメリッサだが、なぜか頼もしく感じられた自分が嫌に思えた。
こういうところは見習うべきかもしれないが、とても見本にすることはできないだろう。
「んじゃ、ソースケ!シメは任せた!」
その次も宗介も、ぶれていないという点ではクルツと同じだ。
(この感覚…。この人からの?)
(彼も俺たちと同じ…なのか?)
(アレルヤ、マリー?いや、この感覚ではない…)
チトセとトビア、刹那は宗介を見て、何か違和感を覚えた。
彼から発せられる何かが自分たちと遠いようで、近いもののように感じられた。
それをどう説明すればいいのか分からずにいる中、宗介は3人に目を向ける。
「…俺の顔に何かついているのか?」
「う、ううん!?なんでもない!!」
「そうか…。相良宗介軍曹だ。よろしく頼む」
(相良宗介…こいつの眼、俺よりも戦士らしいぜ…)
高校生くらいで、トビアと年齢が近いと思われる宗介を見たソウジには彼が戦う人間としての力が自分よりも強いように感じられた。
しかし、軍人としてはどうなのかはわからない。
どこか命令に必ず服従するように見えなかったからだ。
それはあくまで勘であるため、正しいかどうかは分からないが。
「ちなみに、カナメに手を出したら、あたしよりもソースケが黙ってないよ」
「なるほど、なるほど」
「そういう関係ってわけね」
メリッサの言葉の意味を理解した三郎太とロックオンは察するように宗介を見ながらうなずく。
普通の男性なら、それを見せられたら反応を見せるのだが、宗介は特に何事もないかのように無口な様子で、表情にも動揺がない。
「否定、しないのかよ?」
「俺の任務は彼女の護衛だ。何も間違っていない」
「まぁ、そうだけど…かなめの前ではもうちょっとロマンチックな物言いにしてあげなよ」
「まぁ…見た目通りのムッツリネクラ野郎だが、よろしく頼むぜ」
メリッサとクルツの言っていることが理解できず、何が間違いなのかわからない宗介は首を傾げ、メリッサはどういえば彼に理解してもらえるのかと苦悩する。
そんな3人の姿を見たソウジ達には彼らには戦友として確かな絆ができているように感じられた。
そんな中、刹那が口を開く。
「お前たちも、ガンダムを運用しているのか?」
第1格納庫に目を向ける刹那は先ほどの戦闘で現れたΞガンダムのことを彼らに尋ねる。
エステバリスと同じくらいの大きさの機動兵器を扱う彼らが30メートル近い、自分たちが所有するガンダムよりも巨大なガンダムを運用するとは思えなかったからだ。
「まあね。といっても、あれは預かりものだけどね」
「しかし驚いたぜ…。こっちの世界にもガンダムがあるとは」
「ガンダムが存在するのは俺たちの世界だけではない…」
ヤマトがいた世界でもクロスボーン・ガンダムが存在することから、自分たちの世界以外にもガンダムが存在する可能性は薄々感じていたが、自分の世界に帰ってきて早々、またこのようなことが起こるとは思わなかったようで、どこか恣意的なものが感じられた。
偶然としては出来過ぎで、何か自分の見えない歯車が動いているように思えて仕方なかった。
「…」
会話に参加することができないハサウェイは黙り込み、この話の行く末を見守っていた。
元々人見知りするところのあるハサウェイには別世界の人間であるソウジ達と何を話せばいいのかわからないところがあった。
「君が、あのガンダムのパイロットだね?」
同年代であるドビアは笑みを浮かべながら、ハサウェイに声をかける。
「あ、うん…」
このまま会話に参加できなくても構わないと思い始めていたハサウェイは急に声をかけられてびっくりしてしまう。
急に声をかけてしまって申し訳ないと思いながら、トビアは自己紹介をする。
「俺はトビア・アロナクス。クロスボーン・ガンダムX3パッチワークのパイロットだ」
「僕はハサウェイ・ノア。Ξガンダムのテストパイロットをやってる…」
少し話を聞いただけだが、気さくなトビアの雰囲気から悪い人間ではないと思ったハサウェイは堅いものの、少し口角を上げて自己紹介をする。
だが、彼のガンダムの名前を聞いたトビアはどこかやっぱりと思ってしまった。
「ええっと、トビア」
「な、何?ハサウェイ」
「君だっけ?その…マフティーって言ったの」
「ああ、何でもないよ。忘れて」
「あ、ああ…」
トビアにとっては、宇宙世紀で最も広く語られるテロリストの名前であるマフティーは今のハサウェイにとっては聞いたことのない人物の名前、もしくは物の名前でしかなかった。
聞いてほしくないものだったのかと思ったハサウェイは急いで話題を変える。
「そ、そういえば、君のガンダム…ほかの人のモビルスーツとちょっと雰囲気が違うね」
ドクロの付いた、海賊のようなデザインな上にX字のスラスターというあまりにも特徴的で、ハサウェイが知っているガンダムとはあまりにもかけ離れている。
刹那達ソレスタルビーイングが搭乗しているガンダムはそれとやや近いため、すんなりと自分の中に入れることができた。
「どちらかというと、僕のΞガンダムに近いみたいだ」
高い機動力を武器に戦うという意味もあるが、どちらかというとこれまでのモビルスーツと離れたコンセプトになっているという意味合いが大きいだろう。
Ξガンダムは可変を一切行わずに重力下で空中を高機動で飛び回ることを追求したもので、そのためにミノフスキークラフトを搭載したがために30メートル近い巨大なモビルスーツとなっている。
しかし、それによって大出力になっているうえに巨体にもかかわらず旋回能力などはサブフライトシステムに搭乗したモビルスーツや可変モビルスーツを上回っている。
高コストであることはネックだが、性能は保証されている。
「俺も別の世界から来たからね。まぁ…その世界でもクロスボーン・ガンダムみたいなモビルスーツはかなり珍しいと思うよ」
「そうだったんだ…」
「どうして君は潜水艦に乗っているの?モビルスーツに乗っているのも、君だけみたいだし…」
ダナンの2つの格納庫を見たトビアだが、モビルスーツはΞガンダム以外はなかった。
ドダイ改はアーム・スレイヴでもモビルスーツでも搭乗可能で、格納庫の大きさから考えると、Ξガンダムレベルの大型モビルスーツを搭載することも可能だろう。
しかし、いかに高性能であったとしても、規格外の兵器は取り回しが利かないため、扱いづらい。
しかも、モビルスーツに近いとはいえコンセプトに違いのあるアーム・スレイヴを扱うミスリルが扱うような代物には見えない。
「Ξガンダムはアナハイム・エレクトロニクス社が作った試作機なんだ。この大気圏内でのテストのために、テストパイロットである僕と一緒にミスリルに預けられたんだ」
「アナハイム…!?」
あまりにも聞いたことのある企業の名前にトビアは驚きを露わにする。
戦闘中であるため、そんなところを見る暇がないものの、Ξガンダムの右方にはアナハイムの社章と型式番号がペイントされている。
『スプーンから宇宙戦艦まで』というキャッチフレーズで、かつてはモビルスーツや戦艦などの兵器を地球連邦軍だけでなく、ネオ・ジオンのような反連邦組織にも売っていた死の商人だ。
地球連邦軍がそんなアナハイムを制裁できなかったのは自らの注文にこたえることのできる高性能モビルスーツや量産機などを用意することのできる力があるのがアナハイムだけだったからだ。
そのため、連邦軍とほぼ癒着ともいえる寡占状態を続けることとなった。
情報開示によって明らかになったゼフィランサスやサイサリスなどのGPシリーズやZガンダム、ZZガンダムなどの名機を数多く作り上げていて、兵器現代史の中で何度も名前が出ている。
しかし、アースノイドとスペースノイドの大きな戦争がなくなり、地球連邦軍の軍事予算と兵器調達数が削減され、兵器開発も消極化していった。
そんな中、かつてサイド1建造にかかわった民間企業で、地球連邦軍設立と共に地球連邦政府に株の大半を買収されたことにより半民反映企業と化した海軍戦略研究所、サナリィが小型化・単純化をコンセプトとした15メートル級モビルスーツ、F90の開発に成功した。
大型化・複雑化したモビルスーツがコストがかかることから、コストを抑えることができるため、F90は大きく注目され、アナハイムは大きく後れを取る結果となった。
しかし、100年前の名量産期であるジェガンの発展型であるジェムズガンやソウジが最後に搭乗したモビルスーツ、ジャベリン(どちらも既に生産を打ち切っている)やサナリィのOEM提供で生産したコスモファルコンなど、今でも兵器生産で大きな力がある。
なぜそれが可能となったのかというと、一説によるとサナリィやコスモ・バビロニア建国戦争時代のクロスボーン・バンガードの隠れ蓑となっていた企業、ブッホ・コンツェルンの技術を盗用したらしい。
実際、アナハイム社がコスモ・バビロニア建国戦争よりも少し前に行った独自の小型化・単純化モビルスーツ開発計画、シルエット・フォーミュラプロジェクトで開発されたモビルスーツ、シルエットガンダムやハーディガン、Gキャノン・マグナはサナリィの技術を取り入れた痕跡がある。
サナリィはそのF90で手に入れたデータをもとに91年ぶりに開発した真のガンダムとしてガンダムF91を開発しており、シルエットガンダムについてはそのコピーに過ぎないからとガンダムであることすら認めていない。
「ああ、ごめん。アナハイムって言うのは、僕たちの世界の企業で、モビルスーツの開発をしているんだ」
驚きの意味を知らないハサウェイはトビアに自分の世界のアナハイム社について教える。
だが、その説明を聞いたトビアはより目の前にいるハサウェイのいる世界と自分たちの世界に何か似たものを感じざるを得なかった。
そして、ハサウェイが100年前からタイムスリップしてきた人間のように見えてしまう。
(でも…Ξガンダムの機動力はX3以上だ。モビルスーツ開発に停滞があったとはいえ、そんなことはあり得ない。どうなっているんだ…?)
「どうか…したの?」
「ううん!なんでもない…!!(それに、潜水艦があるということはハサウェイ達の世界には海があるということになる。じゃあ…やっぱり彼が、マフティー・ナビーユ・エリンだって言うのか…?)」
あんな人見知りをする気弱な、16から17くらいの少年が将来伝説のテロリストともいえる男になっていくとは到底思えなかった。
トビアは過去に暮らしていたコロニーの図書館にあったマフティー宣言の音声データを聞いた時のことを思い出す。
その時のマフティー、ハサウェイの言動は自信と責任感、そして地球への思いの強さに満ちたものだった。
それ故に、なぜ善とも悪とも言い切れないような手段を択ばなければならなくなってしまったのかと残念に思ったのを今でも覚えている。
-インド洋 エリアD アルゼナル-
ナオミの案内の下、ナデシコBとトレミー、トゥアハー・デ・ダナンがアルゼナルに到着する。
兵器工廠という意味があるその組織と場所はドラゴンに対抗できる唯一の機関というが、絶海の孤島に作られた粗末な基地というのが本来の姿だ。
海から突き出た岩礁に離着陸デッキ用の鉄板を敷きつめただけで、かつて鎌倉時代末期に粗末な城を作って大軍を誘い込んで撃破した楠木正成のような仕掛けも何もない。
また、ガイドビーコン替わりに誘導灯2本を動かしてナデシコBとトレミーを誘導しているのは年端もいかぬ少女で、屋内でパラメイルを整備しているのも女性ばかりだ。
そんなアマゾネスの里へ来たかのような異様な空間に足を踏み入れ、スメラギ達指揮官ら3人はナオミの案内の元、司令室へ向かうこととなった。
それ以外の面々はそのまま艦内に待機することになった。
-アルゼナル 司令室-
「司令、ナオミです。ソレスタルビーイングとナデシコ隊が到着しました」
「入れ」
「失礼します」
扉が開くと、そこはまるで戦艦のブリッジのような場所になっており、中央にある艦長席、いや司令席には1人の女性が座っていた。
黒いポニーテールで体を包むような大きなマントを身に着けたその女性は三十路近いようだが、その白く皺のない肌からそれよりも若く感じられる。
また、入ってくるスメラギ達を見るその黒く鋭い瞳はまるで戦闘中のスメラギをほうふつとさせた。
その周辺にあるオペレーター用の席は空席となっており、いるのは彼女1人だけだ。
「ご苦労だった、ナオミ。お前は下がって、ココとミランダのところへ行ってやれ」
「ココと…ミランダがどうかしたんですか?」
「行けばわかる…」
「は、はい!」
困惑するナオミだが、すぐに敬礼をして司令室を後にする。
司令と呼ばれたその女性は3人をじっと見た後で自己紹介をする。
「アルゼナルへ、ようこそ。私は司令官のジルだ」
「ナデシコB艦長の星野ルリです。お招きいただき感謝します」
「その若さであれだけの部隊を指揮するとは…大したものだ」
ソレスタルビーイングは表向き、ナデシコBに協力していないということになっていて、ミスリルは傭兵であることから、今のこの部隊の総指揮をとっているのはルリということになっている。
無論、彼女一人で指揮をしているとはジルも思っていない。
だが、一応の社交辞令として、それでもナデシコBの艦長としてクルーとパイロットの命を預かっていることもあるため、称賛の言葉を贈った。
「そして、ソレスタルビーイングまでしたがえるとは…」
「外の情報も仕入れているのですね」
アルゼナルは始祖連合国の組織であるため、彼らと同じく、外界には無関心であろうと思っていたが、ナオミの登場によって、それが少し違うかもしれないとスメラギは思うようになった。
「当然だよ。ここには例外なく外から人間がやってくる。何しろ、大抵がノーマだからな」
「やはり…」
「さすがはソレスタルビーイングだ。ここのことも知っているようだ」
ヴェーダで探ることが難しいことを知っているように、アルゼナルの実態について情報をある程度つかんでいるスメラギにジルは薄い笑みを見せる。
その手にした情報がどこまで真実のものかはわからないが、それでも尻尾をつかむだけでもいばらの道であるこのエリアD、始祖連合国のパンドラの箱のカギに触れた今のソレスタルビーイングを想像以上に手ごわく感じられた。
「ある程度、ですけどね」
「ならば、この2人のお嬢さんのために私が説明しよう。始祖連合国で見つかったノーマは全員、ここに送られる。大騒ぎになっているアンジュリーゼ殿下…いや、アンジュも今じゃここの住人だ」
「ドラゴンと戦うために…ですか?」
「そうだ。ノーマはそうすることでしか生きる権利を勝ち取ることができない」
わざとらしく右腕を動かすと、カチャリと金属の動く音が耳に届く。
彼女の右腕は義手で、おそらくドラゴンとの戦いの中でできたものだと3人は予測した。
「ということは、ドラゴンはずっと前から現れていたということですか?」
「ああ、そうさ。アルゼナルがドラゴンたちと戦うから、人類はドラゴンの脅威から守られているのさ」
ジルのいうことは理解できるものの、スメラギには引っかかるものがあった。
見た限りでは、アルゼナルの兵力は一個中隊レベルであり、先ほど遭遇したドラゴンの力や数を考えると、ここだけの戦力でエリアD内に出現するドラゴンをすべて駆逐するのは難しい。
撃ち漏らし、エリアDの外へ出たとしても不思議ではない。
しかし、ヴェーダとマイトステーションの情報網で調査しても、エリアDの外でドラゴンが現れたという情報は一つもない。
ドラゴンとアルゼナルには何かほかに秘密があるように感じざるを得なかった。
「ドラゴンとそれを駆逐する組織…。戦場が限られていることから、ソレスタルビーイングは静観の姿勢を維持してきましたが、それがノーマと関係していたなんて…」
始祖連合国のノーマの扱いを暗に感じ取ったスメラギはこれまでの対戦の最大の原因となったナチュラルとコーディネイターの対立を頭に浮かべた。
日本やオーブのような差別の薄い地域ではそれほど表面化することはなかったものの、多くの国ではナチュラルとコーディネイターは相いれず、どちらかが滅ぶまで戦おうとしていた。
ロゴスがレクイエムを使って行ったコーディネイターの大量虐殺は記憶に新しい。
しかし、ノーマに対する始祖連合国のそれはそれ以上のおぞましさが感じられる。
日本やオーブのような逃げ場がそこにはないのだ。
「お尋ねしますが、なぜエリアDにだけドラゴンが出現するんですか?」
「ここら一帯は時空が不安定らしくてね、奴らはここに現れるとき、必ずこのあたりにシンギュラー、異界の扉を開くんで、ここに基地を作ったってわけだ」
「始祖連合国で生まれたノーマのすべてがここに集められるのですね…」
「ですが、それほどの人数がこの基地にいるとは思えませんが…」
ざっと見た限りでは、アルゼナルで収容できる人数は3桁が限度だろう。
始祖連合国の統計データがないため、人口やノーマが生まれる確率はわからないが、もっと多くの人員がいてもおかしくないと思うのは当然のことだ。
しかし、アルゼナルの基地の設備を見た限りでは、一部を除いて修理や近代化整備、拡張工事が行われた痕跡がない。
「当然さ。ほとんど死んでしまうからね。ドラゴンとの戦いというのはそういうものだよ」
淡々と述べるジルを見て、どれだけの死者がドラゴンとの戦いで出たのかが感じられる。
あまりにも死者が多すぎて、感覚がマヒしているようだ。
(ヴェーダでも詳しく探せなかった情報…完全にここは外界から隔離されている…。あの無人機の部隊がその秘密を守るためだとしても、不可解なところが多い…)
「質問があります」
スメラギが逡巡している中、ルリが手を挙げる。
「なんだ?」
「あのような生物の存在を公にするわけにはいかないことはわかります。ですが、人類の防衛という観点から考えれば、小規模な戦力ではなく、連合軍という組織で事に当たるべきではないでしょうか?」
ドラゴンを駆逐するのはアルゼナルの戦力だけでは不可能に近い。
3年前ならまだしも、今なら地球連合軍という大きな組織が存在する。
その組織を動かすことで、ドラゴンを駆逐することは可能だ。
磁気の問題は簡単な処理で解決できるため、大した問題にはならない。
「その答えは知らないよ。すべては、あの始祖連合国の人間が決めたことだ。なぁ、エマ監察官」
扉が開く音が聞こえ、今度は眼鏡をかけた薄緑色の髪の女性が入ってくる。
軍隊の制服姿のジルとは異なり、その女性は動くには不都合な文官のスーツを着用しており、そこから軍人ではないことがわかる。
「はい…。このことは地球連合政府も、その前の組織である国連も承認しております。ご挨拶が遅れました。私はエマ・ブロンソン監察官。始祖連合国からアルゼナルの監視役として派遣されております」
スメラギ達に頭を下げ、エマは自己紹介をする。
彼女の言葉を聞いていると、彼女だけがこのアルゼナルではイレギュラーな存在に聞こえてくる。
それを肯定するように、ジルは付け足す。
「要するに、ここでマナを使えるのは彼女だけ、ということだ」
「では別の質問です。それだけ徹底して秘密を守っているにもかかわらず、なぜ我々を招いたのですか?」
ドラゴンとの戦いを終えたタイミングでナオミをこちらへよこし、アルゼナルまで案内させる。
彼女のグレイブの装備とアルゼナルの目的を考えると、彼女も加勢するのが当然のはずだ。
案内させた上にスメラギにはパラメイルのデータを見せている。
また、オーブからの協力者をアルゼナルで保護しているらしい。
その意味をルリはどうしても聞きたかった。
「最近、ドラゴンの攻撃が激しくなっていてね…。前の戦闘で小隊長が1人やられたうえ、新兵2人が今は使い物にならない…。このままではドラゴンがこの海域を突破して始祖連合国やインドに到達する可能性がある。無論、上には打診しているが、答えはこちらで何とかしろの一点張りだ。そういうわけで、いろいろ秘密を知られた以上、そっちに協力してもらおうと考えたわけだ。無論、ドラゴンに勝てないようなやわな奴ではなく、腕に覚えのある助っ人にしか頼めないが…」
「やっぱり、私たちを試していた…というわけね」
「お互いさまだろう?」
フッと笑ったジルにスメラギはじっと目を向ける。
一応、自分たちには背に腹を代えられない事情があり、戦力を欲している。
ジルの腹の内は読めず、ドラゴンとアルゼナルの秘密がそれがすべてかどうかはわからない。
しかし、その事情をこちらがどうにかすれば、より多くの何かを知ることができるうえ、それと引き換えにこちらへの戦力の貸し出しを要求することができる。
現状はそのギブアンドテイクな取引でこの糸を維持するべきだろう。
「わかりました」
「即答かい。肝の据わった子だ」
(ルリ艦長も感じている…。この世界の流れをコントロールする者と始祖連合国に何か関係があることを…。その彼らが直接管理するアルゼナルと異界からの敵、ドラゴン…そこに謎を解くカギがあるのかもしれない…)
「あの…オーブからの協力者をここで保護していると聞きましたが、その人はどこへ…?」
ある程度話を終えたのを確認したテレサがジルに尋ねる。
表向きの目的はその協力者と接触するためだということをスメラギとルリからすでに聞いているが、少なくともここにはそのような人物の姿はない。
「彼女たちはパラメイル隊と一緒にいるよ。確か…マユラ・ラバッツとジュリ・ウー・ニェン、アサギ・コードウェルだったかな?まさかオーブのモビルスーツ、ムラサメがここまで飛べるとは思わなかったけどね」
保護し、整備が行われているムラサメを実際に自分の目で見たジルは改めてその量産機の性能の高さを感じていた。
より洗礼された発泡金属を利用した軽量化とユニオンフラッグ以上のシンプルな変形機構、そして追加ブースターを装備することによる航続距離の長さ。
仮にモビルスーツをアルゼナルの中核戦力としていたなら、このようなモビルスーツを選んでいただろう。
また、パイロットは2度にわたる大戦を生き延びており、腕にはある程度覚えがあるようで、現地へパラメイル隊を救出に向かわせた際には緑色のドラゴンを含む10匹以上を彼女たちは撃破していた。
ただ、無傷とはいかなかったようで、そのうちの2機は修理が必要となり、使えるムラサメは1機だけになっていた。
-アルゼナル 墓地-
「ココ、ミランダ!!」
仲間の隊員から話を聞き、走ってきたナオミが新しくおかれた墓石の前で泣いている2人の幼い少女の名を呼ぶ。
緑がかったボブヘアーの少女で、青いライダースーツ姿の少女がミランダで、青いおさげを2つぶら下げた髪型の少女がココ、2人とも彼女の年下の同期だ。
ナオミがノーマと発覚したのとほぼ同じ時期にノーマであることが判明して連れてこられた少女たちで、彼女たちはナオミがナデシコ隊とソレスタルビーイングを迎えに行っている間に起った戦闘で先日アルゼナルに来たばかりのアンジュリーゼとともにグレイブで初陣を飾ることとなった。
なお、アルゼナルに来た少女たちは姓を名乗ることが許されず、入ってから半年から1年はドラゴンと戦うためのすべを教えられることになっている。
ライフルやパラメイルの使い方、それぞれのドラゴンの特徴や弱点、攻撃の回避方法などで、それを学ぶのに不自由がない程度の国語とそれ以外の授業は皆無だ。
なお、ソウジ達が戦ったピンク色のドラゴンがスクーナー級、緑色のドラゴンはガレオン級とアルゼナルでは呼称している。
そして、アンジュリーゼが1週間足らずで初陣を飾ることになったのはジルからの指示であり、始祖連合国内で行われているエアバイクのスポーツ、エアリアの選手としての技量からそう判断したものと思われる。
アンジュリーゼが通学していた鳳凰院のエアリア部は強豪チームで、彼女はその中核選手だった。
エアバイクの操縦とパラメイルの操縦はほとんど共通しており、実際にその初陣で3匹のドラゴンを撃墜したことはすでに確認されている。
ちなみに、赤ん坊や幼少の少女については教育の期間の延長やメカニックなどの後方での任務を行わせるなどのある程度の配慮はある。
「ナオ…ミ…?」
声が聞こえた方向に目を向けたミランダが小声で友の名前を呼び、ナオミはうなずくと、彼女たちの後ろから墓石に目を向ける。
「ゾーラ隊長…ね?」
ナオミの問いにココは何も言わずに首を縦に振った。
「そう…」
2人の間を通り、墓石に近づくと、そっとそれに手を触れる。
(話は聞きました…ゾーラ隊長。あなたが嫌いでしたけど…ココとミランダ、そしてアンジュリーゼ…いえ、アンジュを助けてくれたこと、感謝しています…)
アンジュリーゼは名前を奪われた後、ジルからただのアンジュとして、アルゼナルでドラゴンを殺すためだけの生きる戦士、メイルライダーになるように宣告された。
戦闘のさなか、自分がノーマであること、そしてドラゴンと闘わなければならない現実をこれ以上直視できなくなったアンジュは新兵用のグレイブに乗ったままミスルギ皇国へ帰ろうと敵前逃亡を図った。
アルゼナルの規則として、パラメイルは出撃の際に戦闘一回分の推進剤と電力しか補給されないことになっている。
逃亡を防ぐための措置であり、仮にそれでも逃亡しようとした場合は可能な限りパラメイルを無力化し、最悪の場合は撃墜も許可されている。
逃亡の際、ちょうどガレオン級が5匹のスクーナー級を引き連れて出現しており、アンジュと友の戦っていたほかのメイルライダー達はまだ残っているドラゴンの対処で精いっぱいだった。
アンジュからミスルギ皇国のことを聞いていたココは赤ん坊のころにアルゼナルに連れてこられたことから、外の世界にあこがれを抱いており、特にその国が魔法の国だと思うようになった。
そんな彼女に連れて行ってもらおうとついて行ってしまい、ミランダは2人を追いかけた。
そのとき、増援のドラゴンが彼らを襲ったものの、修理を終えたムラサメで出撃したアサギが救援したことで大事には至らなかった。
しかし、ドラゴンに追いかけられたこと、そして一歩間違えば撃墜されたかもしれないという恐怖でアンジュがパニックを起こしてしまい、ガレオン級が4人に襲い掛かった。
ガレオン級はバリアを展開できることから撃墜が難しく、新兵やガレオン級を倒せる武装がないパラメイルについては後退が推奨されており、3機のグレイブとアサギのムラサメにはそのドラゴンを倒せる武装がなかった。
そんな彼女たちを隊長であるゾーラが乗る指揮官用パラメイルであるアーキバスで庇うことになり、最後は彼女がアーキバスを自爆させ、そのガレオン級の頭を吹き飛ばし、ほかのドラゴンの対処を終えたメイルライダーたちの手によってとどめを刺すことができた。
ドラゴンの撃ち損じがなかったこと、損失がアーキバス1機だけで済み、ゾーラの遺体の回収ができたのがわずかな幸いだ。
ゾーラは面倒見がよく、メイルライダーとして多くの戦果を挙げた先輩であるものの、後輩のメイルライダー達に手を出すレズビアンで、ナオミもターゲットにされたこともあったことから、内心では彼女のことを嫌っていた。
だが、死んでしまえと思うほどのものではないため、ショックが大きい。
「ごめんなさい…隊長さんを助けられなくて…」
若干暗めの金髪でオレンジ色のノーマルスーツを身に着けた女性、アサギ・コードウェルが花束を持ってやってくる。
彼女は花束を墓石の前に置くと、静かに手を合わせた。
「アサギさん…いえ、あなたのおかげで2人とアンジュが助かったんです。だから…ありがとうございます」
「ううん。でも…問題はアンジュちゃんのほうよ。あの子…人殺しなんて呼ばれてるわ」
それを言っている人物の筆頭がヒルダだろうことは簡単に予測できた。
初対面でアンジュはノーマは人間でないとしたうえに『これ』と物のように言い、そして自分がノーマであること自体認めなかったことから、多くのメイルライダーから悪印象を得ている。
特にゾーラからの寵愛を受けていたヒルダと彼女の友人であるロザリー、クリスは彼女を敵視しており、それを言うのは想像に難しくない。
社交的なメイルライダーであるヴィヴィアンと面倒見の良いエルシャがなんとか関係をよくしようと手を尽くしているが、なかなか成果が上げられない中でこのような最悪の事態が起こった。
このまま一人ぼっちのまま戦えば、近いうちにアンジュは死んでしまう。
「ゾーラさんのお墓の代金はアンジュさんが出して、墓石も運んだって司令が言っていたわ。死ぬ原因を作った償いとして…」
アルゼナルでは戦死した仲間の墓は生き残った仲間たちがドラゴンを倒して手に入れたキャッシュを出し合って購入し、墓場まで持っていくのか慣習となっている。
このキャッシュによってパラメイルの修理や改造、配給には出ないような食料や制服などを購入することから、彼女たちの生きる糧となっている。
そんななけなしのキャッシュを出し、自分たちの手で運ぶことで死んだ仲間たちのことを記憶するのだ。
ちなみに、ゾーラの墓にはゾーラ・アクスバリと苗字まで刻まれており、ここでようやく人間として眠ることが許される。
「アンジュは…どうしてますか?」
祈るアサギにナオミは問いかける。
確かに、隊長であり先輩であるゾーラの死の原因を作り、仲間2人を殺しかけたアンジュは許せないと思っている。
しかし、ゾーラの墓を自腹で購入し、ここまで運んだことである程度償いを果たしているのはわかっている。
だからこそ、自暴自棄になって早死にさせるよりも、現実を受け入れて戦い、償うことを願っていた。
「マユラの話だと、墓石を運んだあとは部屋に閉じこもってるわ…」
-アルゼナル アンジュの私室-
「…」
真っ暗で、硬いベッドの上で腹部が露出していて、下半身がミニスカートとなっている白い制服姿になっているアンジュリーゼ、いやアンジュは目をうつろにしたまま天井を見ていた。
目を閉じると、あの戦闘の記憶がよみがえってくる。
襲ってくるドラゴンとアサルトライフルでそれを撃った時に出てきた鮮血とその匂い。
襲ってくる恐怖と目の前で自爆し果てたゾーラ。
そのすべてが夢だと思い、何度も額を壁にぶつけたせいで、そこは赤くなっていた。
しかし、いくら痛覚に呼びかけても帰ってくる答えは一つだった。
「アンジュちゃん、ごはん持ってきたけど…食べるかしら?」
部屋の外からドアをノックする音が聞こえてくる。
アンジュと同じ制服で、ピンクのロングヘアーをした少女のエルシャだ。
まだ18歳であるにもかかわらずアルゼナルでは古株で、幼年部のノーマや後輩への面倒見がよいため、年齢以上の成熟しているように感じられる。
アンジュも仮に彼女がノーマでなければ、すぐに打ち解けることができたかもしれない。
エルシャは扉の前に放置された料理が乗ったお盆と今持ってきたものを入れ替える。
今回収したものはエルシャが半日前に作ったものだ。
「また、できたら持ってくるわね」
返事が来ないことはわかっているものの、気に掛ける人間が1人でもいることを教えるため、そう声をかけたエルシャはその場を後にした。
そして、再び静寂が部屋の中を包み込み、数十分経つと、突然ドアが開いた。
そこにはジルの姿があり、ベッドに寝転がるアンジュは彼女に目を向けることさえしなかった。
「どうだ?しばらく引きこもって頭は冷えたか?」
ドアを閉めたジルはベッドのすぐそばまで行き、アンジュに声をかける。
聞きたくないといわんばかりに枕で両耳をふさぐアンジュだが、それでもジルは容赦せず言葉を続ける。
「隊長1人死亡、指揮官用パラメイルは自爆により喪失。ゾーラがわが身を犠牲にして救った命がこんな根性なしだとはな。おまけにお前や新兵、ゾーラが危機に陥った最大の原因は貴様の逃亡未遂。どう思う?皇女殿下」
「…」
「私の言う通り、墓を購入したことと墓場までそれを運んだことまでは認めてやる。だが、このザマでは貴様はノーマ以下だ。ヒルダやロザリーのいう通りの人殺し、仲間殺しの虫けらだ」
「違…う…ノーマは…ノーマは人間じゃ…」
唇をかみしめ、容赦なく聞こえてくるジルの言葉に抵抗するように、アンジュはつぶやく。
戻ってきて、その事実を伝えたときのアンジュはノーマは人間ではないと言っていたが、それで言い切らなかっただけでも進歩したといえるかもしれない。
同時に、徐々に自分がノーマであることを認め始めた証左でもある。
「私は…虫けらじゃ…」
「なら、ドラゴンと戦え。そうすれば、貴様を虫けらではなく、ノーマ…メイルライダーとして認めよう」
「戦え…?じゃあ、教えてください!!ドラゴンとは何なのですか!?どうして、わたくしがあんなものと!!」
堰を切ったように感情を爆発させたアンジュは枕をジルに投げつけて叫ぶ。
右手で枕をつかみ、起き上がったアンジュを見たジルはニヤリと笑みを浮かべる。
「それが…ノーマが生きる権利を得る唯一の手段だからだ。ドラゴンの正体などどうでもいい」
「なぜです!?世界には軍隊がいるのに…なぜ、わたくしたちだけが…??」
「どこかのだれかが、ドラゴンと私たちが殺しあうのを楽しく眺めているのだろうさ…」
枕を置いたジルはベッドの近くであることも構わず、たばこを吸い始める。
司令を務めていると、ほかのメイルライダーと比較にならないようなキャッシュが手に入るため、彼女はこのような高価な楽しみを得ることができる。
そして、天井を見ながら煙草の煙を口から出した。
「そのために、アルゼナルは隔離され、誰にも知られず戦い続けた…。この世界は…お前が生きてきた薄っぺらい世界は死んでいったノーマたちが守ってきたのさ」
アルゼナルはエリアDのドラゴンを殺すことで世界を守っている。
仮にドラゴンがエリアDを出て、世界に出ていったらどうなるか?
日本でガイゾックが起こした人間爆弾による大量虐殺、血のバレンタイン、ロゴスによるベルリンなどの都市への攻撃と住民の虐殺に匹敵する惨劇が起こることは容易に想像できる。
そんな悲劇をノーマたちは戦い、死ぬことで守ってきた。
そんなことは、外界に無関心な始祖連合国で生きてきたアンジュには知りようがないことだ。
しかし今、アンジュがここにいるのはその出番が回ってきた。
「そんな…少しマナが使えないだけではありませんか!?始祖連合国以外はそれが当たり前だと聞きます!なのに…こんな仕打ちは…」
タバコを吸いながらアンジュの言い分を聞いていたジルはあきれたようにため息をつく。
ここに連れてこられるまで、アンジュは皇女として不自由ない暮らしを楽しみ、ミスルギ皇国の象徴のような存在となっていて、他の始祖連合国の人間と同じようにノーマを差別してきたのはジルもわかっている。
これはその国々の連中全員に言えることだが、アンジュは1つ忘れていることがある。
その始祖連合国に一般人とのマナ以外での決定的な違いだ。
「それを決めたのは…お前たち始祖連合国の指導者。お前の父親たちだろう?となると…お前も同罪だな」
睨むジルの目に耐え切れず、アンジュは目をそらす。
そして、この部屋に入っていても現実から逃げられないとアンジュに伝えるように警報音が鳴り響く。
「ドラゴンが来るか…出撃準備をしろ、アンジュ」
「わたくしは…」
警報音が聞こえても、アンジュは動こうとしない。
しびれを切らしたのか、ジルはそんなアンジュの頬を思いっきり平手打ちした。
「呆けている場合か!?」
頬から伝わる突き刺すような痛みと口の中が切れ、舌に伝わるあたたかな液体の味を感じ、アンジュは目を大きく開く。
父親にも母親にも一度もぶたれたことがないアンジュには、このビンタはあまりにも衝撃的だった。
「この世界は不平等で理不尽だ!だから…生きるか死ぬか、それしかない!死んだ仲間の分も、ドラゴンを殺せ!それができないなら…死ね!」
アルゼナルには、ドラゴンを殺せず、ドラゴン殺しのサポートもできないような人間に居場所は与えられない。
今のアンジュに、ドラゴンを殺せなくなったアンジュにはこのような部屋に閉じこもることさえ贅沢に等しいものだった。
涙を浮かべ、耐えられなくなったアンジュは崩れ落ち、懇願するようにジルを見つめた。
「殺して…ください…。こんなの、辛すぎます…」
皇女であり、愛に包まれて生きてきた自分がノーマで、仲間の死の原因を作った現実はアンジュにとって死刑判決以外の何物でもなかった。
もう1度皇女としてミスルギ皇国に戻ることができるのならば、そのような苦痛にも耐えることができる。
しかし、もう戻ることができないのであれば、生きる希望はない。
ジルは護身用に拳銃を持っている。
それを一思いに撃ってくれれば、死んだ母のもとへ行くことができる。
だが、ジルはアンジュをにらむだけで手を動かさない。
「だめだ。ゾーラと同じように、戦って死ね。義務を果たさない貴様の願いなど聞かん」
「…」
「だが、死にたいのならばドラゴンに特攻して死ぬという選択肢もある。ちょうど、それにふさわしい旧型のポンコツがある。そんなことに貴重なパラメイルを使わせるわけにはいかないからな。それが貴様の棺桶だ」
「棺桶…」
顔を上げたアンジュを見て、ジルはニヤリと笑みを浮かべた。
-アルゼナル 出撃用デッキ-
「各機の発進準備を急げ!ドラゴンは待ってくれないよ!」
メイの檄が飛ぶ中、ノーマの少女たちはパラメイルの出撃準備を整えていく。
停泊しているナデシコBとトレミー、トゥアハー・デ・ダナンでも出撃準備が始まっており、図らずもこれがアルゼナルとナデシコ隊による初めての合同戦線となった。
本当はメイルライダーだけ出撃するのだが、今回感知したシンギュラーの反応がアルゼナルのすぐ近くであり、ドラゴンの数も多いことが予想される。
おまけに、隊長であるゾーラを失った上に3人のメイルライダーが出撃できない状態であることから、このような事態になった。
「結局、よそ者の力を借りることになるとはよ…」
ワインレッドのカチューシャ付きツインテールで赤いメイルライダースーツを着た少女、ヒルダが2本角のついた赤いグレイブに乗り込み、最初に出撃したマイトウィングを見ながらぼやく。
彼女のグレイブにはほかの機体とは違い、可変斬突槍であるパトロクロスが装備されており、接近戦を得意としている彼女が一番気に入っている武器だ。
「仕方ないわ。この前の戦闘で戦力ががたがたなうえに、アルゼナルの近くが戦場になるんだから…」
青い髪で水色のメイルライダースーツを着た少女、サリアは指揮官用として2本のアンテナが追加搭載され、翼状のバックパックがついた水色のパラメイルに乗り込む。
これは指揮官用のパラメイル、アーキバスでアルゼナルにあるパラメイルの中では一番の高性能を持つ。
右肩に収納されているアサルトブレード、Dスレイヤーは細身の片手剣で、ガレオン級のバリアを軽度のものであれば切り裂くことが可能だ。
「あのイタ姫のせいで…」
オレンジの髪で右目付近に泣きぼくろがある黄色いメイルライダースーツ姿の少女、ロザリーが悔し紛れに乗り込もうとしている薄黄色でバックパックに連装砲を装備したグレイブの装甲をたたく。
隊長であるゾーラの死の原因を作ったアンジュが許せずにいて、おまけに出撃していないことから、帰ったら本気で殺してしまおうと思ってしまうほどに怒りを肥大化させていた。
「しかし…よそ者を招き入れるとは、司令も焼きが回ったな。(だけど…これはチャンスかもな…)」
「ヒルダ機、ロザリー機、クリス機の出撃準備、完了!」
「行くぜ!!ロザリー、クリス、ついてこい!」
「ああ!!」
「う、うん…行くよ」
ヒルダのグレイブを戦闘に、ロザリーのグレイブと薄緑色でバックパックにリボルバー状のキャノンを二門装備した、アーキバスやグレイブと比較するとやや小柄で、太目なデザインとなっているパラメイル、ハウザーが飛ぶ。
ハウザーのパイロットで、水色の三つ編みで、そばかすのある小柄な少女であるクリスがやや弱気な感じがしたが、ヒルダはあまり気にしなかった。
もうすでにシンギュラーが開いており、20匹近いスクーナー級と5匹のガレオン級が出現しているのはすでにマイトウィングでもキャッチできていた。
「マイトウィングだと、スクーナー級の相手だけで精いっぱいだ。どうにかガインたちを空中戦ができるようにしないと…」
「舞人、マイトウィングでラファエルの射線上にドラゴンたちを誘導してくれ。そうすれば、一気に多くのドラゴンを葬れる」
「了解、頼みます。ティエリアさん!」
さっそくドラゴンがマイトウィングを見つけ、口からビームを発射してくる。
加速させてビームの射線上から逃れた舞人はミサイルを発射し、撃ってきたドラゴンを爆破した。
「ああ、あの野郎!死体は残さねーと、データだけじゃあ…」
アサルトライフルでドラゴンを攻撃するヒルダはマイトウィングによって破壊されたドラゴンを見て、こぶしを挙げて彼に怒りを見せる。
メイルライダー達はドラゴンを倒すことでキャッシュを手にしているが、ドラゴンを死体がほとんどなくなるレベルに破壊した場合、戦闘データしか持ち帰ることができないため、報酬は少額になる。
死体が残る程度のダメージで撃破することで多くの報酬を手にすることができ、特に戦闘データのない新種のドラゴン、初物を撃破し、死体を残した場合は特別ボーナスが倒したメイルライダーだけでなく、所属する部隊全員に支給される。
そのため、ミサイルやビームのような武器は可能な限り使用を避けている。
とはいうものの、ビームについてはバッテリーの消費に問題があるという理由もあるが。
「にしても、滅茶苦茶な部隊だな、俺たちって…」
「そうですね、3つの世界の混成軍なうえに、パラメイルもいますからね…」
「パラメイル以外は、ヤマトでも同じような感じですよね」
チトセのいう通り、ソウジ達が3つの世界の混成部隊で戦ったのはエリアDが初めてではなく、自分たちの世界だ。
その時はグレートマジンガーやゲッター1が存在しており、キンケドゥのスカルハートとヤマトを含めていまだに行方が分からない。
「ティエリアの話じゃあ、あのパラメイルって機体にはオーブの技術も含まれてるらしいが、技術系統はほとんどモビルスーツと違うみたいだな」
オーブの発砲金属をベースとした装甲で、可変機能が付いた小型人型兵器で、乗っている人間を考えていないような安全性。
そんな機体で出撃する人間の気が知れないように思えるソウジだが、自分も載っている人間を考えていないという点では同じヴァングレイに乗っていることから、人のことは言えない気がした。
「待たされている間、スメラギさんたちは何の話をしていたのかしら…?」
彼女たちがジルと話をしている間、チトセ達はずっと艦内に待機させられ、彼女たちが戻ってくるとほぼ同時にこのように出撃することになった。
オーブの協力者について話が聞けると思ったが、それができるのは帰ってからになりそうだ。
「ま…お楽しみは帰ってからだな。叢雲総司、如月千歳、ヴァングレイ出るぞ!」
ナデシコBからヴァングレイが出撃する。
背中に装備されているのはガトリング砲ではなく、この世界の技術と資材でナインが再現したポジトロンカノンになっていた。
トレミーからはX3がカタパルトに乗り、発進タイミングを待っていた。
脳裏に浮かんだのは、やはりΞガンダムとハサウェイだ。
(ダナンでΞガンダムを見せてもらって、カリーニン少佐と整備のサックス中尉の話を聞いて分かった。X3とΞガンダムはほど同系統の技術が使われている…)
白いサンタクロースをほうふつとさせるような豊かなひげで、帽子をかぶった職人肌の整備師であるエドワード・ブルーザー・サックスはミスリルのメカニックであるが、若いころは軍で働いていたようで、モビルスーツに関する知識も持っていた。
その彼にカリーニンの口添えで依頼して、ΞガンダムとX3を調べてもらった。
結果はトビアの予想通りであった。
機体の大きさ自体は違うものの、フレームの素材やOS、CPUや核融合炉などでX3と似た技術が組み込まれており、とても100年前の機体とは思えない。
(100年前のモビルスーツって、そんなにすごかったのか?いや…考えられないな…)
「アロナクスさん、出撃いつでもOKです!」
「了解、トビア・アロナクス、X3出る!」
しかし、今はドラゴンを倒すことを先決にしなければ死ぬ。
頭を振ったトビアはX3を発進させた。
(いや、今は考えるのはやめよう。俺が会ったのはマフティー・ナビーユ・エリンじゃない。ただのハサウェイ・ノアだ。このことはソウジさんとチトセさんに相談すればいい)
さらにナデシコBからは2機のエステバリス、トレミーからは残り3機のガンダム、ダナンからはドダイ改に乗ったアーム・スレイヴとΞガンダムが発進した。
「クルツはデッキの上からドラゴンを狙撃しろ。できるな?」
「俺を誰だと思ってるんだ?ま、狙撃するなら女の子のほうがいいけどな」
ファルケが乗るドダイ改に便乗していたクルツのガーンズバックが飛び降り、アルゼナルのデッキの上に立つと、狙撃銃を展開し、狙撃ポジションにつく。
「さーてっと、かわいい女の子たちのために、本気を出すとしますか!」
さっそく1発撃ち、それがスクーナー級の頭を吹き飛ばした。
「さっそく1匹狙撃したか…」
相変わらずの狙撃技術に舌を巻きつつ、宗介はアーバレストにアサルトライフルを握られる。
(本当ならボクサーの方がいいが、アーバレストはドダイ改なしでは飛べない。ここはアサルトライフルが最適だ)
「軍曹殿、新たな反応。我々の世界のモビルスーツです」
「なに!?」
アルの声を聴き、宗介は一瞬彼がジョークを言っているのかと思ってしまった。
しかし、アーバレストのメインカメラが映す前方の映像を見て、それが真実だというのを確認する。
「あれは…」
ビームライフルとミサイルを混ぜて発射し、スクーナー級を攻撃するハサウェイもそれを見ていた。
前に映るのはドダイ改に乗った金色のモビルスーツと白いガンダム、そして赤と青をベースとした戦闘機に可変したモビルスーツ、そして2門のビームキャノンとミサイルランチャーがついた重爆撃機とモビルスーツの両腕を含めた胴体をそのまま取り付けたような戦闘機、そしてコアファイターの姿だった。
「あれは…百式とMk-Ⅱ…Zと…ZZ…」
あまりにも見覚えのある機体の登場、そしてコアファイターから伝わる感覚。
ハサウェイと宗介はあまりにも奇妙な現実に目をそむけることができなかった。
機体名:グレイブナオミ・カスタム
形式番号:AW-CBR115(NM)
建造:アルゼナル
全高:7.8メートル
全備重量:5トン
武装:試作レールガン、専用ハンドガン、脚部マシンガン、パイルバンカー付きシールド、クラブ
主なパイロット:ナオミ
メイルライダーであるナオミが搭乗しているパラメイル。
ナオミが初陣の時から使用しているもので、損傷するたびに別の期待や試作武器などを組み込んだ結果、片足が義足のような形になるなど、ほかのグレイブとは一線を画すような姿と武装を手に入れるに至った。
左腕には機動力を重視したパラメイルには珍しい実体シールドが装備されており、ガレオン級のバリアに対抗するためにパイルバンカーが装備されている。
また、右手にはメイが試作したパラメイル用のレールガンが装備されており、弾数は連装砲や肩部リボルバー式大口径砲と比較すると少ないものの、破壊力はパラメイルの中では現状最強である。
なお、レールガンの弾数不足と取り回しの悪さを補う形で銃身を短くして取り回しを重視した専用のハンドガンと義足のような右足にマシンガンが装備されている。
そして、接近戦武器としては珍しい打撃武器であるクラブが採用されている。
その結果、ピーキーではあるものの性能は一部においてはアーキバスを上回る結果となった。
しかし、あまりの魔改造と性能向上によって多額の借金を抱えることになっており、それ故にナオミは借金姫と呼ばれることになった。
その額はキャッシュで1000万を上回っているという…。
ちなみに、そのような試作兵器の装備にはジルの許可が必要で、なぜ多くの試作装備の投入を彼女が許したかについては不明。
HP4500 EN200 運動性120 照準値150 装甲1300 移動6
タイプ空陸 地形適正空A 陸A 海C 宇宙A サイズS パーツスロット2 シールド防御
カスタムボーナス 試作レールガンの威力+400 射撃武器の射程+1
射撃 専用ハンドガン 攻撃力2800 射程1~4 C属性 命中+5 弾数10 CT+5 地形適正海B それ以外A
格闘 クラブ 攻撃力3000 射程1~2 P属性 命中+15 CT+10 EN10地形適正海B それ以外A(とどめ演出として右足でニーキックをした後で脚部マシンガンでダメ押し)
格闘 パイルバンカー 攻撃力3300 射程1~3 P属性 命中+10 CT+5 EN15 地形適正すべてA 気力110
射撃 試作レールガン 攻撃力4500 射程3~7 S属性 命中+5 CT+15 弾数5 地形適正海C それ以外A 気力120 備考バリア貫通 装甲低下 サイズ差補正無視
射撃 フォーメーションアタック 攻撃4700 射程2~4 P属性 命中+20 CT+20 EN40 地形適正海C それ以外A 気力120 備考バリア貫通 サイズ差補正無視(ココとミランダのグレイブを召喚し、専用ハンドガンと対ドラゴン用アサルトライフルの十字砲火の後、2機の凍結バレットの至近距離発射で敵機を凍結。その後、クラブで氷ごと敵機をたたき割る。とどめ演出の場合は代わりに試作レールガンを発射して撃破してシメ)
ナオミ
能力値はアンジュやタスク程ではないものの高水準で準エース級
精神コマンド
加速 集中 閃き 友情 熱血 絆
特殊技能
メイルライダー 援護攻撃2 援護防御2 サイズ差補正無視1 強運
エースボーナス
獲得資金・TacP+15% 援護攻撃・援護防御時にTacP+10