スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

54 / 65
機体名:シナンジュ
型式番号:MSN-06S
建造:アナハイム・エレクトロニクス社
全高:22.6メートル
全備重量:56.9トン
武装:60mmバルカン砲、シールド、ビームライフル、ビームアックス×2、バズーカ
主なパイロット:フル・フロンタル

シャアの再来といわれるネオ・ジオン総帥のフル・フロンタルが操るモビルスーツ。
元々はアナハイムがUC計画の一環として開発したサイコフレーム搭載モビルスーツであり、機体自体もガンダム系列の外装を持つものであったが、ネオ・ジオンによって強奪され、フル・フロンタル専用モビルスーツへと改修される際にジオン風の改装へと換装された。
全身にスラスターが搭載され、パイロットの脳内操縦イメージを思考波としてMS内部のサイコフレームに感受させ、機体の挙動へダイレクトに反映させるインテンションオートマチックシステムを搭載しており、極めて高い追従性と機動性を獲得した。
ただし、機体を極限までに機動性に特化した設計となっているために凄まじい加速によるGと脳波を読み取られるシステムによって、並のパイロットでは心身を追い詰められ、自滅する可能性をはらんでいる。
なお、メリダ島での戦闘で新たに重力下で空中を飛行していることが確認されているが、アナハイムで開発されている段階ではそのような能力は存在しておらず、改修時に何らかの新たな装備が施されている可能性があるという。


第54話 暴走

-メリダ島-

「くっ…各機は下がれ!あの赤いモビルスーツは俺がやる!!」

次々と撃墜されるアーム・スレイヴとモビルスーツ達を見たアムロが叫ぶと空中を飛ぶシナンジュへと突っ込んでいく。

そのモビルスーツに近づくにつれて、シナンジュのパイロットが放つ感応波を感じ取っていく。

それはあまりにも、かつてのライバルであるシャアに似ていた。

「お前は…お前は誰だ!?シャアではないな!!」

アムロは確信する。

この感応波は確かにシャアに似ているが、ただ似ているだけでシャアのものではない。

そこからはシャアと戦うときに感じた熱が感じられない。

νガンダムに気づいたシナンジュはそれに接近し、ビームアックスで切りかかり、νガンダムは即座にビームサーベルで抜いて対抗する。

「やはり、君の目はごまかせないか。アムロ・レイ」

「やはりか…」

モニターに映るシナンジュのパイロットの姿。

シャアを模倣していることはわかるが、体格も髪型も違う。

仮面をつけている状態での顔立ちはシャアによく似ているが、それだけだ。

「お前は…お前は、『何』だ!?」

「私の名はフル・フロンタル…。ネオ・ジオン総帥だ。人は私を赤い彗星と呼ぶ」

「くっ…!」

ビームアックスの出力を前にはビームサーベルでは勝てないとわかり、一度距離をとると同時にフィンファンネルを放つ。

重力下に対応したフィンファンネルがシナンジュの周囲を飛び回りつつ、ビームを放つが、全身に取り付けられたスラスターと空中での立体的な機動がそれらをことごとく回避していく。

νガンダムもビームライフルを放つが、どのビームも一向にシナンジュに当たる気配がない。

「機動力と反応速度はあちらが上か!!」

「νガンダム、アムロ・レイ…かつて、シャア・アズナブルのサザビーを破った機体、そしてシャアと何度も戦い続けたパイロット…。だが、その程度ではな!」

避けるだけなのは飽きたといわんばかりに今度は手にしているビームアックスで次々とフィンファンネルを切り裂いていく。

空中にい続けていることから常にスラスターは稼働状態であり、νガンダム以上に推進剤を消耗させているように見えるが、それを気にしているそぶりを一向に見せない。

「シャアを失ったネオ・ジオンが連邦を混乱させるために用意した影武者だというのか…!?」

シャアが倒れてから、シャアのようなカリスマ性を持つリーダーが存在しないことから一時はこれから連邦とジオンの和平が結ばれると楽観した人々もいた。

確かにアムロとシャアが行方不明となってから数か月は戦闘は各地で行われていたものの、シャアやハマーンがいた頃と比較すると大したものではなかった。

だが、フロンタルという新たな赤い彗星の登場が今のような状況を呼び起こした。

アムロは先ほど影武者という言葉を使ったが、それが本当に適切な言葉かどうかはこうして正面から戦ったアムロ自身が疑問を抱いている。

赤い彗星、シャアの再来。

フル・フロンタルをそう呼ぶ者が数多く存在し、アムロも彼からシャアに似たものを感じた。

声色も同じで、仮に機械が判定を下すとしたらそれは間違いなくシャアのものだと判定するだろう。

それだけ彼はシャアの代替としての価値があるかもしれないし、カリスマ性もなければネオ・ジオンを掌握することなどできないだろう。

だが、その影武者にしてはあまりにも力を持ちすぎていて、その力から違和感を感じざるを得ない。

(これだけの力を持つ男が、どうしてこれまで表舞台に現れなかった…?)

ネオ・ジオンのリーダーであったハマーンはグリプス戦役が始まる前から話題に上がっていた人物であり、そのきっかけになったのが5年前にジオンで起こった穏健派と主戦派による内乱だ。

そのころは一年戦争から12年近く年月が経過しており、ハマーンの父親であり当時は首相を務めていたマハラジャ・カーン率いる穏健派を中心に地球連邦や連邦に与するコロニーと平和条約を締結し、アースノイドとスペースノイドの対立を終結させようともくろんでいた。

このことは長きにわたる軟禁生活を送っていたアムロもネットのニュースで見聞きしている。

マハラジャ本人は一年戦争の原因を作り出したジオンがたとえ解体されることになったとしても、スペースノイドとアースノイドが平等となるのであればそれでいい、そして荒廃した地球を捨ておくわけにはいかないと考えており、その考えに共鳴したシャアは積極的に彼に協力した。

だが、マハラジャの欠点はなるべく穏便に事を収めたいという考えから思い切った動きをとることができず、その性格が首相ではなく宰相などのナンバー2向きであったことだ。

主戦派はアースノイドがかつての一年戦争の原因を作り、現在はサイド6条約によって独立は認められているものの、いずれ連邦はそれを反故にして、力で再びスペースノイドを虐げていく。

その証拠として和平の中心であったレビル派が連邦では既に下火となっていて、コリニー派を中心としたタカ派が発言権を強めている。

彼らが行動を起こす前に、再び戦争を起こして連邦を叩き潰すべきだと主張しており、マハラジャの平和路線を公然と批判していた。

マハラジャはそれに対して、ほかの派閥の意見も取り入れていくためということで主戦派のリーダーであるエンツォ・ベルニーニ大佐を防衛大臣に加え、そのほかの主戦派の主要人物も閣僚に入れることで争いを収めようとしていた。

だが、そのことが主戦派の増長を招くこととなり、その対立が決定打となったのが軍内で穏健派として発言力を高めていて、マハラジャからは後継者として期待をかけられていたハインツ・ヴェーベルン少佐が殺害されたことだ。

連邦との対等な講和のアピールをするための合同軍事演習が計画され、その調整のために地球へ赴こうとしていた時に突然近づいてきた男に射殺されてしまったためだ。

犯人はどこにでもいるバーテンダーの店員で、すぐに取り押さえられて連行されようとしたら、その犯人も護送中のパトカーが事故に巻き込まれたことで乗っていた人間ともども死んでしまった。

このことにより、彼を中心に計画されていた合同軍事演習が白紙となり、後継者になるはずだったハインツを失ったことでマハラジャは気落ちすることとなった。

主戦派にとってあまりにも都合のよすぎるハインツの死によってジオンはデラーズ紛争以来の分裂を起こし、両者による内乱、エンツォの反乱が起こってしまった。

その内乱で穏健派に属したシャアとともにハマーンはいくつもの武功を挙げ、ついにはエンツォを討ち取ったことで穏健派の勝利に貢献した。

だが、後継者を失い、内乱が起こってしまったこと、そしてその原因を作ってしまったことの自責の念に追い詰められたマハラジャは内乱終結を見届けぬまま病により急死してしまう。

マハラジャが死に、仮に彼の後継者となるはずだったハインツも既にこの世におらず、議会は新たな首相として一時はシャアを選出しようという動きもあった。

だが、シャアは表向きではあくまでも軍人の一人にすぎず、一年戦争の当事者となったしまった自分が首相となっては新しい時代を作ることができないという理由から固辞し、一年戦争時はまだ幼かったことからその破滅的な対立を間近で感じたわけではなく、今回の反乱で活躍したハマーンを推挙し、彼女のもとで新たな時代を作っていくべきだと主張した。

当時はまだ20歳にも満たない彼女を首相とすることは一時は議論になったものの、ほかでもないシャアからの推挙であり、マハラジャの娘でもあることから最終的には承認された。

当時からすでにカリスマ性の片輪を見せていたハマーンによって、対立していた両者を抑えることを期待されていたが、ハマーンのとった方針はマハラジャとは真逆の、エンツォと同じ連邦の打倒だった。

そして、行方不明となっていたミネバの影武者を用意してザビ家再興を大義名分として掲げた。

エンツォを通じて一年戦争の怨念に飲まれたかのようなハマーンに失望したシャアは病気を理由に退役し、その行方をくらました。

その後のシャアは非合法な手段でクワトロ・バジーナの軍籍を手に入れて連邦軍人となり、やがてブレックス・フォーラと接触してエゥーゴを結成していくことになる。

このように、ハマーンはその欠鱗を既に以前から見せ続けており、ハマーンの死後にリーダーとなったシャアは言うまでもないが、フロンタルにはそれがない。

シャアの死後にいきなり現れて、いきなりそのカリスマ性でネオ・ジオンを掌握していき、いきなり首相となった。

それに見合うだけの実力があることはわかっているが、なぜシャアやハマーンのように過去から話題とならなかったのか。

シャアの影武者を作り上げるとしても、シャアの反乱からまだ1年も経過しておらず、その間にシャアと同等かそれ以上の力を持つ影武者を作れるとは思えない。

プルツーのように、プルのクローンを生み出すことはできるだろうが、幼いプルのクローンを作るのとはわけが違う上に、生み出すためには長い時間がかかっている。

手っ取り早くするとしたら、シャアと同等の力を持つ人間を強化することだが、そんな人間がいれば、既にその人物が話題に挙がっている。

「君がそう思うなら、それでもいい。赤い彗星という存在は味方を鼓舞し、敵には畏怖を与える…。私はその役割を果たすもの…。いわば人の想いを集める器なのだよ。そして…」

フィンファンネルをすべて破壊したフロンタルは間髪入れることなくビームライフルを放ち、それがνガンダムのビームライフルを撃ちぬき、爆散させる。

その直前にライフルを手放したことでマニピュレーターへの直接的な被害を避けたアムロは近づいてくるプレッシャーに反応してダミーバルーンを展開し、ビームサーベルを抜く。

バルーンをかいくぐったシナンジュとνガンダムが再び鍔迫り合いを演じる。

「くっ…!」

「そして私はそれに足るだけの力を持っているとうぬぼれている」

「アムロさん!!」

アムロの危機に駆け付けたジュドーがダブルビームライフルを放ち、横やりに気づいたフロンタルは再び機体を上昇させてそれを避ける。

「くそ…!自分で偽物なのを明かしてりゃ世話ないぜ!!」

「果たして…そうかな?」

「何!?」

「この男のもとでネオ・ジオンが統制されている。今更、奴の正体を暴いたところで無意味だろう…だが、つまらんところまでシャアをまねたのは致命的なミスだな!!」

敵として、味方としてシャアを見てきたアムロだからわかる。

シャアはどんなに立場を変えようとも、少佐や大佐、大尉に総帥と立場が変わろうとも、あくまでも一人のパイロットとしての己を貫いた。

確かにハマーンもパイロットとしてキュベレイに乗り込み、最期はジュドーに討ち取られたが、彼女の場合はネオ・ジオンが正面から連邦に宣戦を布告してからは艦に乗ることはあってもモビルスーツに乗ることが少なくなった。

「前線に出たことを言っているなら、君の認識の甘さを笑おう。アムロ」

「癇に障るな…そのしゃべり方が!!」

「ガンダムの一点突破で決めてやる!フロンタルを墜とせば、それで終わりだ!!」

「できるかな…?君たちに」

「アムロ大尉、ジュドーさん!援護します!」

Ξガンダムも合流し、ミサイルをシナンジュに向けて放つ。

ミサイルの間をかいくぐるように飛ぶシナンジュだが、よけられたミサイルの一部が軌道を変えてシナンジュを追う。

「ファンネルミサイルか…。なるほど、思い出すな。ブライトの手を…」

アクシズ落としの際にかつて、ブライトがとったアクシズ破壊のための手札の1つ、それは核ミサイルを混ぜたミサイルで攻撃することだった。

カムランから託された核ミサイルは15発で、そのうちの何発かでもアクシズに直撃させることができれば、アクシズを崩壊させることができる。

アクシズに積まれている核ミサイルも誘爆させ、細かい破片になれば大気圏で燃え尽きさせる。

そのミサイルを通常のミサイルと混ぜてアクシズへ攻撃したものの、シャアとネオ・ジオンの強化人間として前線にいた男、ギュネイ・ガスが感応波でミサイルの中にある熱源の強い核ミサイルを特定し、ファンネルを利用して攻撃することでその作戦を失敗させた。

最も、核ミサイルとファンネルミサイルのどちらが脅威かは言うまでもないが。

フロンタルは追いかけてくるミサイルを今度はギリギリのところまで引き付けてから高度を上げて回避し、ライフルで撃ちぬいて破壊していく。

「ちっ…!ファンネルミサイルでもダメか!」

「アムロ・レイにジュドー・アーシタ…そして、ハサウェイ・ノアか…。カミーユ・ビダンがここにいないのは残念だが…マリーダ中尉の報告にあったガンダムがいるか…」

3人からのライフルやサーベルなど、遠近入り乱れた攻撃をさばきながら、フロンタルが注意を向けたのは離れた距離にいるユニコーンだ。

全身をサイコフレームで構築し、あの純白なフォルムが赤い光を放つガンダムへと変貌を遂げたときの圧倒的な性能。

そして、何よりフロンタルが気になるのはそんなモビルスーツのパイロットが何者かだ。

「ならば、一つ挨拶でもさせてもらおうか」

アムロ達への興味はもうないといわんばかりに一気にスピードを上げて彼らから離れたフロンタルは一直線にバナージの元へと飛んでいく。

「抜かれた…!?」

「逃げろ、バナージ!」

結局3人がかりでも、攻撃を一度も当てることができず、νガンダムに至ってはライフルとフィンファンネルをすべて失う結果となってしまった。

そんな化け物とまだまだパイロットとしては経験不足であるバナージが正面切って戦えるわけがない。

「バナージ!!くそ…リタ!!」

「うん、時間を稼ごう!」

ユニコーンに向けて接近してくるシナンジュに向けてナラティブがビームライフルを連射すると同時にバックパックに搭載されているインコムを展開する。

フィンファンネルもファンネルミサイルも効かなかったシナンジュを相手に運動性の低いインコムでは歯牙にもかけられないことはわかっているが、それでもほんのわずかでもバナージが逃げることのできる時間を稼ぐことができる。

ライフルとインコムのビームも、いずれも高速で飛ぶシナンジュには当たらず、しかもそれを維持したままインコムのケーブルを2本ともビームアックスで切り捨てる芸当まで見せた。

ケーブルを失ったインコムはコントロールを失って地面に落ちる。

「バナージ!!」

フロンタルがあと少しでそこまでくるにもかかわらず、バナージは一向に動かない。

バナージの脳裏に浮かぶのは自分に背を向けて離れていくオードリーの姿。

(オードリー…どうして…?)

ネェル・アーガマに収容されている友達を守るためという理由もあるが、それ以上にバナージの戦う理由はオードリーの力になるためだ。

だが、そのオードリーがもはやバナージなど用済みだといわんばかりに、ねぎらいや感謝の言葉もないままにリディとともにいなくなってしまった。

別に感謝されたいと思ったわけではないが、最もショックなのは自分に何も相談もしてくれなかったことだ。

「バナージ!!!」

「もう遅い!!」

ジャンプしてビームサーベルで斬りかかろうとしたナラティブを一蹴りで地面に落下させたシナンジュがそのままユニコーンに肉薄する。

あとはその手に握っているビームアックスで切り伏せれば、さすがのユニコーンもひとたまりもない。

もうビームサーベルを抜くだけの時間もない。

「うわ、うわあああああああ!!!」

バナージの絶叫がコックピットを塗りつぶしていき、同時に左腕のビームトンファーがギリギリのところでビームアックスの刃からユニコーンの身を守る。

「むっ…?これは…」

「…!ダメ!バナージ君!」

「リタ!どうしたんだ、リタ!!」

「バナージ君…この状態で…デストロイモードを発動しないで!!!」

「うわあああああ!!!」

ユニコーンモードで隠されていたサイコフレームが赤く発光し、その光が装甲の隙間から漏れ出す。

やがてそれが引き金となったかのように装甲が展開し、デストロイモードへと変貌を遂げる。

「これがデストロイモード…ユニコーンの真の姿か…!」

「うわああああ!!」

バナージの声に反応するかのようにビームトンファーが出力を上げていき、それに危機感を覚えたフロンタルが距離を離す。

「これは…まずい!!バナージ・リンクス!すぐにデストロイモードを解除しろ!!」

距離をとったシナンジュに刹那がGNソードⅤで切りかかりながらバナージに声をかける。

だが、傷ついた精神状態で発動したデストロイモードがバナージにとって悪影響なのは明白で、刹那の言葉程度ではどうにもならなかった。

「みんな!聞こえる!?バナージ君を…ユニコーンを止めて!!」

「千鳥!?」

急にパイロット全員にダナンから通信が届き、かなめの声が響く。

急にダナンの艦橋に駆け込んできたかなめに無理やりどかされた通信兵が困惑するのを気にせず、それ以上にモニターに映るユニコーンの赤い光をかなめは警戒していた。

「サイコミュが…サイコフレームが…人の意志をゆがめていく…」

「何!?」

「うわあああああ!!!」

ガタガタと震えだしたユニコーンがビームマグナムをシナンジュに向けて発射する。

そばには応戦しているダブルオークアンタがいるにも関わらず発射されたそのビームを殺気に感じた両者が互いの距離を離すことで2機の間を通過していく。

「ほぉ…味方ごと撃つか…?」

「バナージ!!」

暴走の兆候を見せているユニコーンを止め、シナンジュから守るべくZZが接近してくる。

だが、バナージはあろうことかビームマグナムの照準を今度は仲間のはずのジュドーに向けた。

「あああああ!!」

「やめろ、バナージ!味方だろう!?」

ライフルを撃とうとするユニコーンの右腕をダグザのジェガンがしがみつく形で抑え込む。

「バナージ!バナージ!!落ち着け!!俺の言葉が聞こえんのか!?」

「ダメだ…!今のあいつに俺たちの言葉は届かない!システムに飲まれている!!」

「くそ…やはりジェガン程度では止められんのか!?」

しがみつくジェガンが地面にたたきつけられ、全身に強い衝撃を受けたダグザはその痛みに耐えながら、暴走するユニコーンを見る。

バナージ、いやユニコーンは邪魔をしてきたダグザを敵と判断したのか、右腕からビームトンファーを展開し、ダグザを斬り捨てようとする。

だが、頭部をギリギリかすめるかという距離をビームが通過し、それを感じたユニコーンが顔を向けると、そこにはビームガンを握るコンロイのジェガンの姿があった。

「バナージ!お前に仲間殺しをさせるわけにはいかん!!」

 

「ユニコーンガンダム!バナージ君!応答して!!…ダメです!つながりません!!」

「くそ…!アルベルトさん!ユニコーンはなぜこのようなことに!!」

ネェル・アーガマでもミヒロが何度もバナージを呼びかけるが一向にその効果がない。

ユニコーンのことをこの中では一番知っているであろうアルベルトを艦橋に引っ張り込み、聞き出して解決策を探る。

「バナージ君は…あの小僧は…NT-Dに飲み込まれた…」

「なんだと!?NT-D…」

「ニュータイプ・ドライブ…。敵対者の感応波をキャッチすることでその相手をせん滅するための力を発動する対ニュータイプ機体管制システム…。ユニコーンはサイコフレーム実験機であると同時にニュータイプをせん滅するためのマシーンだ…!」

「なんだと!?」

「だとしたら…バナージ君は今…そのシステムの一部になっているというのか!?」

「そ、そうだ…!サイコミュのフィードバックによって、本人の意思はない!ただ、目の前のニュータイプと強化人間、邪魔者を排除するだけの…」

「そんなものを…そんなものをロンド・ベルに!バナージ君に!!」

怒りを覚えたオットーがアルベルトの胸倉をつかむ。

ロンド・ベルは対ジオンの前線に立っていることが多く、それゆえにニュータイプと戦闘を行う機会はほかの部隊と比べても圧倒的に多い。

だが、同時にロンド・ベルにはアムロなどのニュータイプも存在する。

ユニコーンがニュータイプを殲滅する機体だとするなら、暴走した場合はそのターゲットがアムロ達も含まれるということだ。

おそらく上層部はそうなることを期待してユニコーンがロンド・ベルに配備されるようにしたのかもしれない。

そして、その期待はバナージの精神状態が不安定になったことで実現することになった。

「愚かな話だ…。連邦最大の戦力を自らの手でつぶそうとするとは…」

「フル・フロンタル!!」

「フルサイコフレームのニュータイプ殲滅用モビルスーツとガンダムの戦い…。どちらが勝ったとしても、私たちにとって益となる。アンジェロ」

「ハッ!各機、大佐の後退を援護しろ!!」

親衛隊の中で、ランゲ・ブルーノ砲を装備したメッサー達が攻撃を開始し、その攻撃に守られる中でシナンジュが後退を始める。

「逃がすか!!」

「構うな、ハサウェイ!!今はユニコーンを止めるのが先だ!!…刹那!?」

「奴は…危険だ!!」

弾幕をかいくぐりながらシナンジュを追うダブルオークアンタは左肩のGNビームガンと右手のGNソードⅤライフルで攻撃する。

背後から攻撃しているというのに、シナンジュはバッタのように飛び回りながら、イノベイターである刹那の攻撃をことごとくかわし続け、どんどん距離を開けていく。

「ならば…!?」

GNソードビットを展開し、それで仕掛けようとした刹那だが、一瞬強い殺気を感じ、左腕のシールドで即座にコックピットを守る。

すると、ダブルオークアンタのコックピットめがけてビームが飛んできて、シールドがそれを受け止めた。

その間にシナンジュは親衛隊の後ろへと飛んでいき、親衛隊もまたシナンジュに従って後退していった。

「今の攻撃は…!?」

刹那はその攻撃が行われたと思われる位置をモニターに表示し、そこに映し出された姿に言葉を失う。

赤黒いラインが刻まれた緑と白の装甲に覆われ、両肩にはGNシールドビットで構築されたかのようなGNフルシールドを装備した、3年前の戦いで失った仲間の愛機。

この機体から感じるどこか懐かしい感覚。

「デュナメス…ロックオン!?」

デュナメスと思われるモビルスーツはトランザムを起動し、刹那に背を向けて飛び去っていく。

「待て!!待ってくれ!ロックオンなのか!?どうして、死んだはずのお前が!!」

刹那の脳裏に浮かぶ3年前の光景。

ヤキン・ドゥーエ戦役の後、ユニオン、人格連、AEU、そしてASAが一つとなり、国連に代わる新たな国際組織である地球連合軍が結成され、現行の最大の脅威となっているソレスタルビーイングを撃破する作戦、フォーリンエンジェルズを発動した。

次期主力モビルスーツとして採用されることになった疑似太陽炉搭載型モビルスーツ、GN-Xで構成され、各国の腕利きのパイロットのみで構成したエース部隊で4機のガンダムを撃破する作戦だ。

最初の攻撃はどうにか退けたものの、その戦闘の中でティエリアをかばったロックオンは利き目を負傷してしまう。

戦闘後、刹那はとある理由で地球へ降りることとなり、次の攻撃が始まった時はティエリアとアレルヤの2人で抑えることになり、負傷しているロックオンは待機することとなっていた。

しかし、不利になる状況の中、敵母艦を沈める手が必要となる中でロックオンは無理やり出撃した。

結果として母艦のいくつかを沈めることに成功したが、利き目が使えない状況下では全力を発揮することができず、最期は自身の両親と妹の仇であるアリー・アル・サーシェスと相討ちとなる形で戦死してしまった。

そのことは刹那にとっては深い後悔となって残っている。

だが、時折どこかで生きているのではないかというどこか漠然とした希望も抱いていた。

彼の愛機であったデュナメスはハロの制御の元で帰還しており、コックピットにはロックオンは乗っていなかった。

誰もロックオンの遺体を見ていない。

「刹那!シナンジュを追うのはやめて、ユニコーンを!!」

「フェルト…」

自らも追いかけようとトランザムを発動しようとした刹那だが、フェルトの声でようやく正気に戻る。

そして、デュナメスと思われる機体はどんどん距離を離していき、その姿を消してしまった。

 

「くそ…!正気に戻ってくれよ!!バナージの兄ちゃん!!」

もはやモビルスーツで取り押さえるのは無理だと判断し、ザンボット3が両手で無理やりユニコーンを抑え込もうとする。

だが、己の三倍近い大きさを持つはずのザンボット3の両手に対してユニコーンは両足を踏ん張らせながら抵抗しており、逆にザンボット3を投げ飛ばしてしまう。

「くっそお!!ザンボット3がモビルスーツに力負けしたぁ!?」

「これが、サイコフレームの力なの!?」

「くっ…同士討ちはさせん!!」

続けてさらに巨大なダイターン3も同じように取り押さえようとする。

さすがに体格差の大きすぎるダイターン3を前ではユニコーンも抑え込まれるが、それでもガタガタとなおも抵抗しており、バルカンで攻撃も仕掛ける始末だ。

「止める方法はないのか!?」

「この機能を検証したデータでは、並の人間で専用のノーマルスーツを着用するという条件では最大5分が限度だ。だが、その場合はサイコミュの逆流によって、彼の脳に致命的なダメージを与えることになるだろう…」

バナージが着用しているノーマルスーツにはドラッグデリバリーシステムが採用されており、人体に最大限効果を与え、かつ負担が少ないように最適な状態で薬物を送られることで、デストロイモードによる急激なGに耐えることができる仕組みになっている。

それでも相殺しきれておらず、おまけにシナンジュと同じくインテンション・オートマチックが採用されており、パイロットの制御が失敗した場合、パイロットは受信した感応波を敵意として変換する処理装置としてNT-Dの制御下に置かれるなどの危険性も持ち合わせている。

過去にインダストリアル7でテストが行われた際、今のバナージと同じく暴走を起こしており、どうにかアルベルトの言う通り5分で収まりはしたものの、止めに入ったパイロット数名が犠牲となり、テストパイロットは専用ノーマルスーツのおかげか体は保っていたものの、脳の大半が損壊した状態で死亡していた。

不意にアムロの脳裏にカミーユの精神崩壊を起こした時の姿が浮かぶ。

彼の場合はユイリィの助けもあり、使われていたサイコミュが簡易的なバイオセンサーであり、デストロイモードのような暴走を起こす要因になりにくかったからこそ精神崩壊で済み、回復することもできた。

だが、アルベルトの説明が正しければ、カミーユの時以上の惨劇が起こることになる。

「そんなこと…させるかよ!!」

「ジュドー!!」

フロンタルとともにジオンが一時的に交代したものの、ともにやってきたガミラスの戦艦と戦闘機は攻撃を続けており、メランカの1機をダブルビームライフルで撃ち落としたジュドーはダイターン3に抑え込まれているユニコーンの元へ向かう。

「バナージ!!俺の声が聞こえるか!?正気に戻れーー!!」

接近しつつ、オープンチャンネルを開いてバナージに声を届ける。

その声が聞こえたバナージの目には接近するZZが映るモニターが見えていた。

万丈とは違い、ニュータイプである彼の感応波をユニコーンが受信する。

バナージの制御から離れたユニコーンにとって、この感応波を持つものはすべて敵。

ジオン・ダイクンが提唱したニュータイプ、過酷な宇宙に適応し、進化し、やがて到達する新人類であるニュータイプ。

スペースノイドこそがなれると提唱されたニュータイプ。

それを滅ぼすことこそがユニコーンの存在意義。

故にジュドーもまた、滅ぼすべき対象。

「何…!?ユニコーンの出力が上がった…!?」

急激に力を増していくユニコーンがダイターン3を持ち上げ始める。

やがては先ほどのザンボット3のように投げ飛ばされる可能性も否定できない。

「万丈さん!!」

「うおおおおおお!!!」

投げ飛ばされたダイターン3の巨大な体がZZに向けて飛んでいく。

どうにか機体を上昇させたジュドーはハイパービームサーベルを引き抜く。

ザンボット3とダイターン3でも抑えきれず、刹那を巻き込んでフロンタルを攻撃しようとまでしたユニコーンに対して、生半可な動きをしては逆に殺されてしまう。

(コックピットには当てない!それ以外でユニコーンを…!)

迫りくるZZに向けて、ビームトンファーを展開したユニコーンがハイパービームサーベルに匹敵する出力のビームの刃を生み出す。

互いにビームの刃をぶつけあい、そこでジュドーは改めてユニコーンの恐ろしさを感じる。

確かに暴走していて、焼けた刃のような鋭い殺意もあるものの、その中にはアイスピックのような冷めたものも感じられる。

暴走しているように見えて、確実に目の前にいるニュータイプであるジュドーとZZを殺そうというシステムの意志が感じられた。

そして、スペック上ではユニコーンの倍の出力を持っているはずのZZが徐々に押されていく格好になりつつあった。

「あのZZが力負けしかけるなんて…!!」

「警告します、キャップ。姉さん。あのユニコーンの反応からあの機体は近くでかつ接近してくるニュータイプに強く反応していると予想されます。今ヴァングレイが動いた場合、姉さんに反応する可能性が大きいです」

「私に…!?」

「そういや、チトセちゃんもニュータイプなんだよな。デカいだけに」

「キャップ…そういう下ネタをいう余裕があるなら、おひとりで頑張ってください」

「わ、悪かった…!悪かったから、機嫌直してくれよ!な、な!!」

後ろから感じるチトセの冷たい視線とナインからのジト目がソウジの心に突き刺さる。

そんな視線から逃れようと、ソウジは意識とZZとユニコーンに向ける。

そして、ヴァングレイをユニコーンに向けて飛ばすと、予想通りにユニコーンはヴァングレイにカメラを向けた。

「悪いが、痛いのは我慢してくれよ!!」

レールガンを発射すると、ユニコーンはZZから離れるために跳躍する。

周囲に放出されるサイコフレームの赤い光が一度手に凝縮され、それを後方へと下がるナラティブガンダムに向けて投げるように放つ。

「キャア!!」

「ヨナ!?なんだ、これ…!?」

ビームの光は何度も見たことのあるヨナだが、サイコフレームが生み出す光に対して困惑するとともに反応が遅れ、その光を浴びてしまう。

そして、その光が切れたケーブルへと伝わっていき、やがて地上に落ちているインコムへと到達する。

コントロール不能であるはずのインコムが勝手に浮き上がり、それがあろうことかナラティブへと攻撃を始める。

「なんでインコムが動いているんだ!?リタ…リタ!!しっかり!」

「はあ、はあ、はあ…」

ヨナとは違い、ニュータイプであるリタはその光の影響を強く受けてしまうようで、こみ上げる吐き気を必死に抑えている様子だった。

彼女に気を取られていたヨナだが、そんな彼に追い打ちをかけるようにコックピットの衝撃が走る。

インコムのビームが右手のビームライフルを破壊し、続けて放たれたビームが横っ腹をかすめる。

攻撃手段を失ったナラティブガンダムに目もくれず、インコムは新たな主となったユニコーンの周囲を飛ぶ。

「くっそぉ!指をくわえてみているしかないのか!!」

まるで戦う価値もないといわんばかりに見逃された格好となり、何の力にもなれず、おまけにリタにダメージを与えてしまったことを悔しく思い、拳をコンソールにたたきつけた。

 

-グレービビアン 艦橋-

「メリダ島からの乗員と物資の収容完了まであと5分です!」

「了解。敵の攻撃がおとなしい今のうちに終了させろ」

ブリックの指示が飛ぶ中、ミシェルがモニターで見ているのは暴走するユニコーンとそれによって制御が奪われたインコムの姿だ。

新たな攻撃手段たるインコムの登場、そしてビームマグナムを容赦なく使用してきたことでZZとヴァングレイは防戦一方となり、ナラティブは攻撃手段を失っている様子だ。

「あのインコムはユニコーンの力で奪われる…。なら、使えるわね」

冷静さを失ったヨナは気づいていないが、本来インコムはユニコーンに奪われるはずのない武装だ。

サイコミュはミノフスキー粒子の登場によって封じられた長距離無線制御への対抗手段となる精神感応波による遠隔通信技術のことを指す。

だが、サイコミュはニュータイプのような高い空間認識能力と精神感応波を持つ人間でなければ扱えないもので、運用には大きな制約がかかっていた。

それに類似する力を一般兵でも扱えるようにと開発されたのがインコムで、制御はモビルスーツで使われている光コンピュータで行い、パイロットの特定脳波をサンプリング・マシン言語に変換し、有線を介した非手動操作によって疑似的にサイコミュ的な挙動を再現することが可能になっている。

それ故に準サイコミュ兵器と称されてはいるものの、あくまでもファンネルやビットの真似を現行の人間の技術で行っているのに過ぎないことからサイコミュは使われていない。

ユニコーンが放った光がサイコミュの制御を奪うものだとしたら、本来はインコムは奪われるようなものではない。

だが、そのインコムが実際にユニコーンガンダムに奪われているのは大きな事態だが、これがミシェルにもう1つの確信をもたらすことになる。

「わかったわ…カーディアス・ビスト。あなたが利敵行為の真似事までしてナラティブを…サイコフレームを渡した理由が」

確かにナラティブにはνガンダムやZZ、ユニコーンのような圧倒的な性能を持ち合わせていない。

だが、そんな機体でもユニコーンを止めるための力がある。

通信兵をどかして席に座ったミシェルはナラティブと通信をつなげる。

「ヨナ、リタ!生きてる?!」

「ミシェルか!くそっ…リタが…」

「しっかりしなさい、ヨナ!あんた男でしょう!!いい…?これからいうことを聞いて!ユニコーンを止めるジョーカーはあんたなのよ!そのジョーカーの鍵をこれから外すわ」

「ジョーカー…?いったい何のことをいって…?」

「いいから!…一つだけ聞かせなさい。あんた…私を信じてくれる?」

「ミシェル…?」

幼いころからともに過ごし、シドニーがコロニー落としで消滅してからは家族を失った3人は一緒に生きてきた。

研究所に連れていかれたときも、そこから追い出されてストリートチルドレンになってからも。

大人になり、リタとミシェルがルオ商会に入り、ヨナがパイロットとなったことで一時的に離れることになったが、それでも関係は続いていて、昔から変わらない。

しっかり者で気が強く、一人で抱え込んでしまうところのあるミシェル。

そんな彼女に対するヨナの答えは一つだ。

「…もちろんだ、助けてくれるんだろ…?ミシェル」

「しっかりユニコーンを止めて、リタを守りなさい!ヨナ!!」

笑ったミシェルがコンソールを操作し、コードをナラティブに送る。

同時にナラティブのコックピット内が赤い光を放ち、ディスプレイが赤い光とともに表示される文字にヨナの目が行く。

「NT-D…」

「はあ、はあ、はあ…ニュータイプ・ドライブ…」

「そう…ユニコーンと同じものよ。ヨナ…いけるわね?」




機体名:ガンダムデュナメス
型式番号:GN-002
建造:ソレスタルビーイング
全高:18.2メートル
全備重量:59.1トン
武装:GNミサイル、GNピストル×2、GNスナイパーライフル、GNビームサーベル、GNフルシールド(GNシールドとの選択可)
主なパイロット:ロックオン・ストラトス(ニール・ディランディ)

3年前、ソレスタルビーイングに所属していたガンダムマイスターである初代ロックオン・ストラトスのニール・ディランディの愛機。
遠距離狙撃を得意とする機体で、補助コンピュータであるハロのサポートとコックピットに搭載されている携帯用ライフル型コントローラーをリンクさせることで正確無比な狙撃を行うことを可能としている。
また、緊急時にはGNビームサーベルによる接近戦も可能であり、GNフルシールドの存在もあって遠近攻防で優れた兵装を持つ機体といえる。
メリダ島での戦闘で刹那・F・セイエイがデュナメスに似た機体を目撃しているが、そのパイロットが戦死したニール・ディランディなのか、そして動力源が太陽炉なのか、そもそもなぜ宇宙世紀世界に存在するのかなど不明な点が多い。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。