スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

55 / 65
機体名:ネェル・アーガマ改
分類:強襲揚陸艦
建造:アナハイム・エレクトロニクス社
全高:380メートル
武装:2連装メガ粒子砲×2、サブ・メガ粒子砲×2、単装ビーム砲×2、ミサイルランチャー、ハイパーメガ粒子砲、対空機銃×48
主なパイロット:オットー・ミタス

ロンド・ベルで運用されている強襲揚陸艦。
ネオ・ジオン戦争において地球へ降下し、カラバへ譲渡されたアーガマに代替するエゥーゴの旗艦として建造されたもので、少人数での運用が可能となるように一部がコンピュータによって自動化されている。
アーガマの弱点であった火力不足を補うべく、様々な火器が搭載されており、特筆すべきはコロニーレーザーに匹敵する威力を持つといわれているハイパーメガ粒子砲の存在だろう。
しかし、戦艦そのものの向きを合わせなければならないうえに一度発射するとほぼ行動不能の状態に陥ってしまうことから搭載しているモビルスーツは周囲の戦艦のバックアップが必要で扱いも難しかったことから以降の戦艦に継承されることはなかった。
戦後はロンド・ベルへの発展とともにラー・カイラムが投入されたことで旗艦の座から退き、連邦の主力戦艦として採用されることとなったクラップの部品を流用する形で近代化整備が行われた上で運用されることになったものの、同型艦が存在しないことから基本的には単艦での運用が基本となっている。


第55話 恐れと抵抗

-メリダ島-

「ふうう…」

「ヨナ、大丈夫!?」

後ろからかすかにリタの声が聞こえる。

NT-Dの影響のせいなのか、頭を何度も打ち付けるような頭痛が走り、体中から冷たい汗が噴き出てくる。

頭痛とともに感じるのはユニコーンから伝わってくる感応波だ。

一度ヘルメットのバイザーを上げ、流れる鼻血をぬぐったヨナは操縦桿を握りしめる。

「リタ…力を貸してくれ。バナージを止める!」

「ヨナ…」

「バナージ…怖がる必要なんてないんだ!」

様子がおかしくなったナラティブに目を向けたユニコーンはまずしとめるべき存在をそれだと判断し、操っているインコムの照準をそれに向ける。

いずれも死角から狙う形でビームを発射し、全周囲モニターを採用していないナラティブにとっては嫌な一撃だ。

だが、ナラティブはそれらの攻撃がまるでわかっているかのように避けていく。

(位置はわかる…あとは!!)

赤く光るナラティブがインコムに手をかざすとともに光をそれに伝達する。

それらの制御がユニコーンからナラティブへと戻り、それらがユニコーンに向けて飛ぶ。

「まずは動きを止める!!リタ!!」

「うん、バナージ君!おとなしくしていて!!」

リタによって制御されたインコムの形状が四つ又のクローへと変形し、ユニコーンを左右から掴む。

掴んだ2つのインコムがわずかにユニコーンから距離を離すと、それらからキャプチャーフィールドが展開され、無理やり動こうとするユニコーンはその中で動けなくなる。

「う、ああ…ああああああ!!!」

全身を縛るような感覚がバナージを襲う。

その声はヨナとリタにも伝わるが、それでも今はこれを解除するわけにはいかない。

「バナージ!!デストロイモードを解除しろ!!マシーンに飲み込まれるな!!」

どうにか捕縛できたとしても、そこからどうすべきかの答えがヨナには出ない。

エネルギー供給を受けられない今のインコムの稼働時間は残り僅か。

その中で、新たな反応が現れる。

「ヨナ少尉、気を付けて!!」

「四枚羽根と…赤い彗星!!」

別方向から再び接近してくるクシャトリヤとシナンジュ。

クシャトリヤの四枚羽根は通常の物へ戻されていて、バックパックにはシナンジュに追随することができるように追加ブースターが搭載されている。

「興味深いな…。可能であれば鹵獲したいところだが」

「大佐、あの変身しているガンダムは私が!」

「任せる、マリーダ・クルス」

インダストリアル7での戦闘で彼女はユニコーンに煮え湯を飲まされている。

四枚羽根の蓋が開き、その中からファンネルミサイルが放出される。

「ファンネルミサイル!?まずい!!」

ミサイルはユニコーンを狙っていて、動けない今のユニコーンがそれらを受けたら無事では済まない。

迎撃したいところだが、今のユニコーンの様子では少しでも注意をそらすとキャプチャーフィールドを突破される可能性がある。

だが、シナンジュも黙ってこのまま見ているはずがない。

キャプチャーフィールドの維持で精一杯なナラティブを狙う可能性も否定できない。

「俺に任せてくれ!!」

ユニコーンとナラティブをかばうようにZZが前に出て、ダブルバルカンとミサイルでファンネルミサイルを迎撃する。

「ファンネルミサイルをジオンも使ってくるなんてな!でも…動きが甘いんだよ!!」

ジュドーが思い浮かべたのはかつての宿敵であったハマーンと彼女の愛機であるキュベレイだ。

彼女が使っていたファンネルは敏感に動いていて、小回りの利かないZZの痛いところを何度もついていた。

確かにジュドーはハマーンに勝つことができただろうが、彼はそう思っていない。

最後の戦いとなったコア3での1対1の真剣勝負で、彼女はほとんどファンネルを使ってこなかった。

彼女が対等な勝負を望んでいたためだが、もし全力でファンネルを使われていたら、勝てたかどうかはわからない。

そのファンネルと比較すると、クシャトリヤの制御するファンネルミサイルは重力下での運用の経験が不足していることもあってか、やや直線的だ。

「バナージ!!聞こえているだろう、バナージ!!マシンに…ガンダムに負けるなぁ!!」

「うわあああ!!」

ジュドーの声が届いたことがバナージの暴走をさらに促進させたのか、ついにキャプチャーフィールドを突き破ったユニコーンがビームマグナムを投げ捨て、ビームトンファーをがら空きになっているZZの背中に突き立てようとする。

「ジュドー!!」

間に合わないルーは彼の名を叫ぶしかない。

だが、ビームの刃はZZのバックパックに届かず、GNソードビットのバリアが受け止める。

「刹那さんか!!」

「正気に戻れ!バナージ・リンクス!お前の力はその程度なのか!」

「…」

どんなに外から力をぶつけてもユニコーンの暴走は止まらない。

νガンダムのサイコフレームは多くの人々の想いを受けたことで、アクシズを押し返す力となり、そしてアムロとνガンダムを別世界へと転移させた。

確かにそれによって、アムロは命を救われたかもしれない。

だが、アムロに生まれたのはサイコフレームへの恐怖だ。

シャアが生み出し、シャアによってアナハイムへリークされ、アムロがその力を過剰なまでに証明してしまったサイコフレーム。

ララァの死から生まれた確執と因果が巡り巡って生まれたメギドの炎。

そんな人の制御の届かない領域にあるであろうサイコフレームを機体全体に採用しているユニコーン。

2人のエゴの遺産によって生まれたもの。

いつの間にか、νガンダムのビームライフルの照準がユニコーンのコックピットの向けられようとしていた。

「…!!何をしてるんだよ、アムロさん!!」

アムロから何かを感じ取ったジュドーの声がνガンダムのコックピットに響く。

「…あきらめるしかないんだ、ジュドー。サイコフレームが暴走したらどうなるかわからないんだぞ」

そして、バナージもそれに操られることになる。

その悲劇を避けるためにも、引き金を引くしかない。

たとえ罪を背負うことになったとしても。

「何を怖がっているんだよ、アムロ大尉!!あの光を見たジオンの人たちはアクシズを止めようと頑張っていたし、ハサウェイだって自分を取り戻した!!どんな力だって使う人次第だろ!?だから、俺たちはそれに負けちゃダメなんだ!!」

サイコフレームの光に導かれるように、連邦もジオンも関係なく、多くのモビルスーツが地球を救おうとνガンダムとともにアクシズを押していた。

当然、そんなことをしていてただで済むはずがなく、押していた機体の中には大気圏の摩擦熱でオーバーヒートを起こして爆散してしまったものもある。

だが、それでも誰も逃げようとしなかった。

サイコフレームの力は確かに今は人知を超えたものかもしれない。

だが、それが生み出した奇跡をジュドーは知っている。

そして、その軌跡を生み出した根源が何かも。

「ジュドー・アーシタ!!ならば、まずは貴様から!!」

ファンネルミサイルで撃破するのが難しいのであれば、もう1つの武器を使うだけ。

クシャトリヤの胸部に搭載されている拡散メガ粒子砲がZZを襲う。

「させるかよ!!」

ジュドーの叫びにZZのバイオセンサーが反応し、機体が紫の光に包まれていく。

メガ粒子はそんなZZを襲うが、あの光の前に打ち消されていく。

「何!?これは…」

「マリーダ中尉が気圧されている…?」

「う、ああああああ!!!」

「止まれ、バナージ!!」

再びジュドーを襲おうとするバナージだが、再びサイコキャプチャーと化したインコムがユニコーンを拘束する。

動きを止めたユニコーンだが、インコムの損傷とエネルギー残量を考えるともう長くはもたない。

「止めてやるぞ、バナージ!!」

「だが、ZZのパワーでもユニコーンは…」

「そんなの、やってみなきゃわからないだろ!?」

たとえバイオセンサーの力がフルサイコフレームに劣っていたとしても、サイコミュを搭載していることには変わりない。

それに、止める手段と可能性がわずかでも残っているならやってみる価値はある。

「ソースケ!!ジュドー君のサポートを!!」

「俺が…!?」

急にアーバレストの通信に入ってきたかなめの言葉に宗介は困惑する。

サポートに回るとしたら、サイコフレームのあるνガンダムかナラティブが最適であり、ラムダ・ドライバはお門違いではないのか。

「できる!ラムダ・ドライバはそういうシステムだから!!」

確かにラムダ・ドライバはサイコミュではない。

だが、共通点があるとしたら、それを動かすのは人間の意志であること。

同じ意思を力に変えるシステムであれば、サポートできる。

「サガラ軍曹!カナメさんの指示に従って!」

「(そうだ…これまでも千鳥に俺たちは助けられてきた。今度も…!)了解!アル、ラムダ・ドライバだ!!」

「了解」

ラムダ・ドライバを起動したアーバレストが駆け出し、ZZの元へと向かう。

手助けしようとする動きがわかっている以上、邪魔をしないわけにはいかないとシナンジュが動き出すが、νガンダムのビームライフルがそれを阻む。

「アムロ・レイ…」

「貴様の相手は俺だ、フル・フロンタル!」

「受け取れ、ジュドー!!」

ZZの背後にたどり着いたアーバレストのラムダ・ドライバがもたらす光がZZへと移っていく。

その光はバイオセンサーの光と同化していき、同時にZZの出力を引き上げていく。

「これだけのパワーがあれば!!」

理屈はどうでもいい。

今ここにバナージを止めるだけの力がある。

光がZZのハイメガキャノンへと伝達されていき、ユニコーンに向けて放たれる。

圧倒的な力の奔流が迫るのを感じたユニコーンが身を守ろうとサイコフィールドを展開し始め、押さえつけていたインコムが爆散する。

光と光がぶつかり合い、両者が拮抗する。

「うおおおおおお!!!まだだああああああああ!!!!」

ジュドーの叫びとともにZZのパワーがさらに高まっていき、ユニコーンが押されていく。

「う、うう…!!」

「バナージ!!感じろ!!ガンダムっていうのはこういうものなんだよ!!俺たちが頑張れば、ガンダムは応えてくれる!!だから、負けるなぁ!!」

「目を覚ませ、バナージ!!」

「ガンダム…そうだ、俺たちは…!」

「刹那!今こそクアンタの力を使え!」

「うおおおおおお!!!」

ティエリアの言葉に答え、刹那の想いをくみ取ったクアンタがトランザムを起動し、放出されたGN粒子がメリダ島を包んでいく。

 

その光を遠くからデュナメスのカメラが撮影する。

「ほぉ…刹那の奴、少し目を離している間にこんなのを見せてくれるなんてな」

コックピットから出た緑色のソレスタルビーイングのノーマルスーツ姿の男がヘルメットを外す。

ライルと同じ顔立ちと髪と瞳の色。

違う点があるとしたら、右目部分に火傷の痕があり、その瞳の色がイノベイドと同じものになっていることだ。

「あの男が気持ち悪がるわけだぜ…」

 

「この光…アレルヤ!」

「そうだ、マリー…。あの時と同じだ…」

ダブルオークアンタが放出する高濃度のGN粒子。

イオリア・シュヘンベルグがGN粒子から見出した可能性。

それは垣根を超えた意思疎通。

イノベイターやニュータイプでなくとも、互いの意思を伝達し合う力。

GN粒子に包まれ、緑色の光に包まれた宇宙空間のような世界をジュドーは見る。

そして、その先にいる少女、マリーダの姿を見つけた。

「わかる…わかるぞ、マリーダさん。あんたは…」

GN粒子の補助とジュドーのニュータイプとしての力。

それが目の前の女性のことを理解していく。

それと同時に、ジュドーの瞳が潤む。

「こんなのって…悲しんでいる…」

「ジュドー・アーシタ。バナージに呼びかけろ」

「刹那さん!?ここは…」

「ここはGN粒子が作り出した空間…。意思を共有する空間だ。ここに来ることができたというなら、きっとバナージの心に触れることもできるはずだ」

「バナージが…!?」

後ろを向いたジュドーの目に浮かんだのは小さく縮こまっている状態のバナージの姿だった。

彼の背後にはデストロイモードとなっているユニコーンがいて、手から放つ赤い光が彼を縛り付けている。

「何やってんだ、バナージ!?ユニコーンに負けちまうのかよ!!」

どうにかバナージを解放しようとバナージの腕をつかみ、引っ張り出そうとするが、ユニコーンの光はそのジュドーにも伝達される。

「う、ぐうう…ユニコーンガンダムは、バナージだけじゃなくて…俺まで、飲み込むつもりかよ!!」

フルサイコフレームによってもたらされる強い圧迫感。

ジュドーは改めてバナージがユニコーンに乗ることで感じているものの重みを理解する。

「ジュドー!バナージ!!」

「俺たちも力を貸す!」

「ハサウェイ、ヨナ少尉!?」リタさん!?」

やってきた3人もまた、ジュドーを手伝うべくバナージをつかむ。

当然、赤い光が襲うものの、5人まとめて飲み込もうとしているためにその力は分散されつつあった。

「バナージ君、私たちの声を聴いて!」

「何をやっているんだ、バナージ!オードリーを助けるんじゃなかったのか!?」

「オードリー…」

「そうだ!ユニコーンは…そのための力じゃないのか!?」

「ユニコーン…俺の、可能性の扉…」

ゆっくりと顔を上げ始めるバナージ。

そこから見えたのは優しいほほえみを浮かべる男性と女性。

もう会うことのできない、バナージにとっての血のつながり。

「父さん…母さん…俺は…うおおおおおお!!!!」

母親の想いに背いてまで父親から託されたユニコーンの力を手にした。

すべてはオードリーを助けるため。

その思いをかなえるためにも、ここで立ち止まるわけにはいかない。

バナージの叫びとともに彼を捕らえていた光が消し飛び、ユニコーンのデストロイモードが解除された。

「ジュドー…俺はジュドーに教えられたのか…」

「アムロ・レイ…」

「お前か…フル・フロンタル」

5人の姿を遠くから見ていたアムロはフロンタルと対峙する。

対峙し、同時にフロンタルという男を感応波とGN粒子で感じ取る。

確かに彼の感応波はシャアの再来といわれるだけあり、シャアとよく似ている。

だが、どんなに似せたとしても、オリジナルであるシャアとは違う。

「赤い彗星を名乗るのはやめろ、フル・フロンタル。お前はシャアじゃない」

「君がなんと言おうとも、これが私に求められている役目だ」

「ならば、俺がお前を止める。それが、奴とともに人の心の光を顕現させた俺の役目だ」

一年戦争からのネオ・ジオン戦争の間に生み出された真実と虚構の混ざり合ったシャア・アズナブル、赤い彗星の伝説。

その伝説にすがり、それを終わらせないためにフロンタルが生み出された。

赤い彗星はアクシズとともに消えたことを証明するためにも。

 

-ネェル・アーガマ改 格納庫-

「プル、プルツー!?何をしているの!?あなたたちは待機のはずよ!?」

急にノーマルスーツ姿で格納庫に入ってきたプルとプルツーに困惑するチェーンをよそに、2人は格納庫に残っているモビルスーツに乗り込む。

ミシェルによってもたらされたモビルスーツの1機で、確かに2人が乗ることを想定はしているものの、調整をろくにしていない。

青いνガンダムという身なりのモビルスーツ、量産型νガンダムはνガンダム製造時に収集されたデータをもとに開発された量産検討機で、ネオ・ジオン戦争終結とロンド・ベルの前身であるエゥーゴの英雄としてのイメージの強いνガンダムの存在を危険視した上層部の圧力によって開発がとん挫し、アナハイムで死蔵されていたものだ。

「いかなきゃ…ジュドーを助けないと!いい、プルツー!」

「ああ…。いつまでも休んでばかりじゃいられないから!ファンネル制御は任せた!!」

ネオ・ジオン戦争でジュドーに助けられてから、プルもプルツーもモビルスーツに乗る機会が少なくなった。

ジュドー達の意向もあるものの、彼女たちが使用していたモビルスーツであるキュベレイMk-Ⅱがスクラップ同然だったことも大きい。

だが、この量産型νガンダムなら少なくともキュベレイ並に扱えるはず。

「大丈夫、2人で一緒に帰ってくるから!ハッチを開けて!!」

「はあ…もうどうなっても知らないわよ!!」

聞く耳を持たない2人に説得しても無駄だとわかったチェーンからの通信を受けたネェル・アーガマのハッチが開き、量産型νガンダムがカタパルトに乗る。

「プルちゃん、プルツーちゃん。わかっていると思うけれど、量産型νガンダムの調整は不完全よ。何かあったらすぐに戻ってきて!」

「ああ、こちらも無理をするつもりはない。量産型νガンダム、エルピー・プルとプルツーで出る!」

発進した量産型νガンダムはまっすぐにZZとユニコーンがいる方向へと飛んでいく。

その様子をモニターで見たオットーはフウウとため息をつき、眉間を指でつまむ。

「ああ…この聞かん坊め…」

「艦長、敵の四枚羽根のモビルスーツについてですが、データバンクと照合したところ、おそらくは…」

「ああ、ああ。わかっている!あいつらとのつながりを感じずにはいられんさ」

インダストリアル7での戦闘で数多くの搭載機を撃破される結果を招いたクシャトリヤ。

ネオ・ジオンの新たな象徴として、かつて連邦が開発したサイコ・ガンダムMKⅡと当時のジオンの技術をかき集めて開発されたモビルスーツであるクィン・マンサ。

それと戦闘経験のあるジュドーなら戦えるだろうが、戦いはそれほど甘くはない。

 

-メリダ島-

「ガンダムめ…貴様は!!」

ZZから放たれるダブルビームライフルを避けつつ、反撃のためにファンネルミサイルを放ちつつ、胸部メガ粒子砲を放つ。

迫るファンネルミサイルをミサイルやバルカンで対応し、ビームを避けるジュドーだが、やはりバナージを止めた際に機体もジュドー本人も大きく消耗していた。

「くそ…!このままじゃガスが…バナージ!起きてるなら、ここを…」

「大丈夫です!」

「何!?」

ユニコーンモードに戻ったばかりのはずのユニコーンのサイコフレームが再び光を放つと同時に、デストロイモードへと変形し始める。

「バナージ!?」

「大丈夫…制御できてる」

勢いのままに暴れまわっていた時とは違う。

頭が冷え、本来の自分でコントロールできる状態になっている。

「ありがとう…みんなのおかげで俺のすべきことを思い出せた」

「ほぉ…サイコミュの波にとらわれた状態から人々の声を聴き、自分を取り戻すとは…見事なものだな。バナージ・リンクスという少年は。その呪われたモビルスーツ…君になら使いこなせるかもしれないな」

「よそ見をして…!!貴様をここで倒して、戦いを終わらせる!」

「戦いは終わらんよ。私一人倒したとしても、再び新たなリーダーを祭り上げ続く。ハマーン・カーン、シャア・アズナブル、そして私がそうであるように。君たちのやっていることはまさしく、ただの徒労だ」

「そんなこと…!!」

「アムロ大尉!!」

フロンタルに苦戦するアムロを援護すべく、ヴァングレイから放たれたビームだが、着弾寸前に機体を大きく後ろに下がらせて回避し、さらにバックパックを展開させるとさらに加速していく。

「くそ!空を飛ぶ上にとんでもねえスピードだぜ!!」

「キャップ、通常の3倍の速度で飛び回るそのモビルスーツ相手では追いつけません」

「だろうな…てか、あれ…本当に人が乗ることを考えて作ってんのか?うわあ!!」

シナンジュを補足できず、飛んできたビームライフルをかろうじてシールドで受ける形となったソウジはこのままでは逆にアムロの足を引っ張るだけになる可能性を感じ、舌打ちする。

ヤマトに乗ってから、ニュータイプであるキンケドゥやトビア、イノベイターの刹那などと模擬戦を重ねてきて、たとえ相手が常人でないものであっても戦えるように備えてきたつもりだ。

また、シミュレーション上とはいえ、νガンダムに残されていた戦闘データをもとにシャアとも戦闘を行ったこともある。

だが、シャアの再来といわれるこのフロンタルの力はその想定をはるかに上回っている。

「ちっくしょう!!動きが、ちっとも読めねえ!!チトセちゃん、どうなんだ!?」

「わかりません!わからない、というよりも…」

チトセには目の前で戦っている相手が人間なのかわからなかった。

刹那が生み出したフィールドの中で、かすかにフロンタルという存在を感じることができたが、彼から感じられたのは冷たさ。

氷のようなという言葉では生ぬるいようなその冷たさからは何も感じられない。

そのためか、彼の動きを予測することができない。

冷たさが恐怖としてチトセを鈍らせる。

「ヴァングレイは下がれ!俺がどうにか抑える!!」

既にヴァングレイのコックピットに狙いを定めていたシナンジュにシールドで身を守りながら体当たりをすることで攻撃を阻止したアムロが叫ぶ。

アムロもアムロでフロンタルからは恐怖を感じているが、それ以上に怒りが芽生えていた。

(これ以上、シャアの…ライバルの名前を好きに使わせるわけには…!)

 

「そんな…馬鹿な…!?」

左手に握っているビームガトリングガンを放つマリーダは今目の前で起こっている現象に理解が追いついていない。

いま彼女が対応しなければならない相手はユニコーンでもZZでもない。

クシャトリヤが放ったはずのファンネルミサイルだった。

「うおおおおお!!!」

「くっ…!」

そして、ファンネルミサイルとともに突っ込んでくるユニコーンのビームトンファーによる攻撃をどうにか避けようと下がったものの、それでも回避行動が間に合わずにビームの刃がビームガトリングガンの銃身を切り裂く。

もう無用の長物と化したそれを投げ捨てたクシャトリヤは拡散メガ粒子砲を放つが、赤い光がバリアとなってユニコーンを守っていた。

「ガンダム…ガンダム、ガンダム!!」

追い詰められつつあるマリーダの脳裏に次々とガンダムの姿が浮かぶ。

大気圏の摩擦熱で燃え尽きようとする紫のキュベレイの盾となり、ともに大気圏に突入しているZ。

どこかの崩壊した都市で赤い光で身を包んだ状態で突撃し、こちらに切りかかろうとするZZ。

そして、オデッサやジャブロー、ソロモンなどで次々とザクやグフ、ドムを葬っていった白い悪魔、ガンダム。

浮かぶ光景のほとんどはマリーダにとって体験したことのない光景だが、なぜかいずれもどこかで知っている、実際に体験したように感じられた。

そして、同時に目の前の存在への憎しみの炎へと変質させていく。

「死ね、ガンダム!!!!!」

マリーダの叫びとともに、今度はクシャトリヤがユニコーンと同じ赤い光を放ち始める。

同時に、クシャトリヤを襲っていたはずのファンネルミサイルが一瞬だけ動きを止めた後で爆散する。

「ファンネルミサイルが自爆した!?」

「おおおおおおお!!!!!」

ビームサーベルを手にしたクシャトリヤが一直線にユニコーンに迫り、互いの刃がぶつかり合う。

デストロイモードとなり、測定不能という判定が出るほどの出力を発揮するユニコーンに対しているにもかかわらず、クシャトリヤがパワーで上回りつつあり、ユニコーンを押していた。

「これは…!!」

正面からぶつかるバナージはマリーダが放つ激しいプレッシャーを感じていた。

今までに感じたことのない一直線で自分をも燃やし尽くさん限りの憎しみ。

「くっ…!ユニコーンを援護する!!」

ラムダ・ドライバを維持しているアーバレストがユニコーンに敵意をむき出しにするクシャトリヤに向けて接近しつつ、ボクサーを連射する。

ラムダ・ドライバなしでも近距離で発射すれば、モビルスーツにも痛撃を与えることができるボクサーだが、赤い光が弾丸を受け止めた。

「ラムダ・ドライバが通用しないとは…ぐ、うう、あああああ!!!」

「緊急事態、緊急事態、軍曹に体調に異常発生。ラムダ・ドライバを緊急停止させます」

「あ、ああ…ああああ!!」

胃の中の物をすべて吐き出すほどの頭痛に苦しみだした宗介はアーバレストを操縦するだけの力がない。

アルによってラムダ・ドライバが停止させ、背中の放熱板も格納される。

ラムダ・ドライバ解除のおかげか、脳に直接感じるほその激痛は緩和された。

「く、そ…!!」

震える手でノーマルスーツについているポケットの中をまさぐり、ケースを取り出す。

ケースを開き、その中に入っている錠剤を取り出そうとするが、震える両手では無理な話で、一粒も手に乗らずに落ちていく。

 

「サガラさん!」

「まずいな…すぐにアーバレストを回収し、収容しろ!」

カリーニンの指示により、マオとクルツがアーバレストの回収に向かう。

モニターに映るアーバレストの様子を見たカリーニンは顔をしかめる。

「サガラさんにいったい何が…?」

「わかりません。ラムダ・ドライバの過剰使用の影響が出たわけでもないのに…」

 

「宗介さん!くう、俺は…まだ!!」

どうにか距離をとることができたユニコーンはバルカンを放つが、それは焼け石に水だということは既にアーバレストのボクサーが教えている。

ビームマグナムは手元になく、使える武装はビームトンファーのみ。

「バナージ!!」

バナージを援護すべく、ジュドーも残り少ないエネルギーを使い、ダブルビームライフルを放つが、それも光に阻まれてしまう。

「ガンダムは…敵!!倒す!!倒す!!」

後手に回るユニコーンとZZ。

それにとどめを刺すべく、ビームサーベルの出力を上げ始めたと同時に、その手首をファンネルのビームが襲う。

「何!?ファンネル!!」

「ジュドー!!」

「助けに来たよ!!」

「プル、プルツー!?」

ビームサーベルが落ち、さらにファンネルを叩き込みつつ、量産型νガンダムがZZをかばう。

「ジュドー、ZZが…」

「悪い…無茶しすぎちゃって、もうエネルギー切れだ。このままじゃ、バナージが…!それに…」

敵意をむき出しにして猛攻するクシャトリヤのパイロットの悲しい瞳。

このままでは暴走の果てに彼女の心が壊れてしまう。

なぜかジュドーはそれに目をつぶることができない。

「ジュドー、ビーチャ達が迎えに来るから、ネェル・アーガマへ戻って!」

「あのモビルスーツは私たちが止める!!」

「邪魔を…するなああ!!」

量産型νガンダムから放出されるファンネルを拡散メガ粒子砲が薙ぎ払う。

「ああ、ファンネルが!!」

「この火力、それにプレッシャーじゃ…近づくと私たちも危ない!!」

ビームライフルでは効果がなく、ビームトンファーしか現状兵装のないユニコーンも手詰まり。

それに、今のユニコーンはデストロイモードのおかげでどうにかもっている状態で、いずれ限界も来る。

必要なのはダブルビームライフルを上回る破壊力を持つ武器。

「…!!プルツー、あれ!!」

「そうか、あれなら!!」

プルが見つけたのはユニコーンが暴走中に投げ捨てたビームマグナム。

ユニコーン専用の装備ではあるが、同じアナハイム製である量産型νガンダムであればかろうじて使える。

それを回収した量産型νガンダムが銃口をクシャトリヤに向けるが、激しい動きを見せる彼女に照準を合わせることができない。

「また…ガンダムが!!」

「うわっ!!しまっ…!!」

殺気を感じたマリーダは邪魔なユニコーンを蹴り飛ばして量産型νガンダムに迫る。

助けに行きたいバナージだが、その前に限界を迎えてしまう。

「ま、ずい…デストロイモードが…」

バナージの体に限界がきて、同時にユニコーンのサイコフレームが輝きを失う。

損傷した右手の代わりに左手で握ったビームサーベルで量産型νガンダムに切りかかり、どうにか後ろへ飛んでかわそうとするものの、サーベルがわずかにコックピットハッチをかすめる。

「…!!」

壊れたハッチの中がモニターに映り、同時にマリーダの目が大きく開く。

そこに座っているのは自分と似た顔をした2人の少女。

厳密にいえば、一人残らずいなくなったはずの姉妹と同じ顔。

そんな彼女がどうして敵であるガンダムに乗っている?

戦うべき相手に乗っている姉妹という矛盾がマリーダの思考を凍り付かせる。

「プルツー!」

「ああ…止まってくれ!!」

願うような思いを込め、量産型νガンダムがビームマグナムを放つ。

放たれたビームはクシャトリヤの光を突き破り、左側の2枚の羽根を撃ちぬいていった。

 




機体名:量産型νガンダム(ファンネル装備型)
形式番号:RX-94
建造:アナハイム・エレクトロニクス社(ロンド・ベルによる現地改修)
全高:21.2メートル
全備重量:63.2トン
武装:60mmバルカン砲×2、ビームスプレーガン、ビームサーベル×2(ビームキャノンとして転用可)、ビームライフル(ニューハイパーバズーカと選択可)、シールド(ミサイル、ビームキャノン内臓)、ファンネル
主なパイロット:プルツー(メイン)、エルピー・プル(サブ)

開発がとん挫し、死蔵されていた量産型νガンダムをルオ商会が購入し、ロンド・ベルへもたらされたものを改修したもの。
量産型νガンダムは開発時はベースであったνガンダムと同様、サイコフレームを搭載していたものの、開発中断となった際にそれが取り外されていた。
メリダ島到着時の段階ではヤマトの万能工作機でもサイコフレームの製造を行うことができず、キュベレイMk-Ⅱなどで搭載されていたファンネルを搭載し、サイコミュ自体はバイオセンサーを流用する形となった。
ただし、バイオセンサーはあくまでも機体制御機能に特化したものであるため、ファンネルの制御は最低限であることから、それを補佐するパイロットが求められたため、プルとプルツーが乗り込むことが決まった。

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