スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

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機体名:ナデシコC
分類:ナデシコ級第2世代型宇宙戦艦
建造:ネルガル重工
武装:グラビティブラスト、ミサイル、ディストーションフィールド
艦長:星野ルリ

ナデシコBの後継艦として、ネルガル重工が開発した新型艦。
歴代のナデシコおよびアキトに貸し与えられたユーチャリスから収集した戦闘データがフィードバックされており、重力ブレードが3本となったグラビティブラストの火力は理論上ではミネルバのタンホイザーに匹敵するといわれる。
しかし、この艦最大の武器は火力でもディストーションフィールドによる守りでもなく、搭載された最新鋭のセンサーやシステムによるハッキング、そしてそれを制御する星野ルリが艦長であり、オモイカネがメインコンピュータであることだ。
それらの連携によって敵システムの制御と掌握が行えるため、理論上では戦うことなく勝利することも可能。
ただし、ナデシコC建造時に入手したナデシコBの戦闘データは西暦世界におけるもののみであり、宇宙世紀世界や新正暦世界の制御システム等についてはこれからの戦闘や鹵獲機のデータ解析を行わなければハッキングできない。
また、サイコフレームのような良くも悪くも人の意思によって力を発現するようなシステムについてもハッキングは不可能となっている。



第69話 黒い一撃

-エリアD-

「ふふふふ!ハハハハハハハハハハ!!」

赤いオーラの夜天光とブラックサレナがぶつかり合い、命の削り合いの中で北辰は笑う。

度重なる損傷によって夜天光の装甲には数多くのひびが入り、左腕と右足を欠損しているにも関わらず、損傷した機体とは思えない圧倒的な機動力を見せつけており、ディストーションフィールドを突破した右拳が頭部を襲う。

強い衝撃がコックピットにも襲い掛かっており、モニターの一部がブラックアウトする。

その中でもテイルブレードが夜天光のスラスターを切りつけるが、それでも夜天光のスピードは落ちることがない。

これまで、北辰を護衛してきた北辰衆たちでさえ、今の北辰とアキトの戦いに入ることができず、リョーコたちと戦うことしかできない。

北辰が行った謎の手段によって再起動し、戦い始めた敵機を沈黙させつつ、万丈はアキトの戦いを見守る。

「なあ、万丈の兄ちゃん。いいのかよ?あいつは…」

「かまわない。…この戦いに介入することは僕にもできないさ。これは、アキトが終わらせるしかない」

この戦いはアキトの復讐を終えるためのものであり、アキトは自らの手で北辰を葬ることを望んでいる。

ここだけは、誰にも譲ることはできない。

 

(各種冷却システム完全稼働、リミッター解除、機体損傷率は…いや、それはもうどうでもいい。奴に食らいつければ…!)

発射不能となったグラビティブラストは強制排除し、ひび割れていく増加装甲で意味をなさなくなったものは迷うことなく強制排除していく。

外れていくことであらわとなっていくマゼンタの装甲。

それは3年前の戦いでアキトが乗っていたエステバリスのものだ。

「ハハハハハハ!楽しい、楽しいぞ、天河アキト!貴様との戦いは!!」

「北辰!!」

もはや使い道のない両手のハンドカノンを投げ捨てたブラックサレナがディストーションフィールドを全開にして夜天光に向けて突っ込んでいく。

「笑止!!」

対する夜天光もディストーションフィールドを全開にしてお互いにぶつかり合う。

だが、もはや今の夜天光の出力はブラックサレナを上回り、自由になったブラックサレナの右拳が夜天光に向けて襲い掛かるも、赤いバリアによって粉々となる。

更にそのまま零距離から発射された夜天光のミサイルがブラックサレナの胴体に命中し、爆発によってブラックサレナが吹き飛ばされる。

同じく零距離からのミサイルの爆発を受けたはずの夜天光だが、謎の力の働きによるものなのか、その攻撃による損傷はわずかで、もはや用のないミサイル発射口がつぶれただけだ。

吹き飛ばされていくブラックサレナの姿をモニターで見た北辰は笑い、夜天光の両拳が回る。

「滅!!」

あとはこの拳でコックピットを貫くだけ。

これによって、この天河アキトによる愉悦は完成する。

笑う北辰と夜天光が襲い掛かり、吹き飛ばされているブラックサレナにはもう姿勢制御を取り戻す時間も残されていなかった。

「アキト!!」

「アキトさん!!」

「終わりだ、天河アキト!!」

肉薄した夜天光の拳がブラックサレナの腹部を貫く。

ミサイル攻撃によって増加装甲が壊れ、ディストーションフィールドで守られていない今のブラックサレナに主を守るだけの力はもはや残されていなかった。

拳はコックピットでは飽き足らず、背中を貫通していた。

「嘘…」

「アキト…」

すべての北辰衆を倒したリョーコとヒカルの目が大きく開く。

北辰に敗れてしまったのか。

このようにコックピットを貫かれては無事であるはずなどない。

勝利を確信しようとする北辰だが、次の瞬間に襲い掛かったのはコックピットを貫き、自らの腹部につきささる衝撃だった。

「な…が、あ…!!」

血反吐を吐き、自らの体に突き刺さったものに視線を向ける。

それはブラックサレナのテイルブレードだった。

コックピットを貫かれる直前に機動したテイルブレードが距離を取り、勝利の確信という心に持っても油断が生じる瞬間を狙ってブラックサレナごと夜天光を串刺しのように貫いて見せた。

その瞬間はディストーションフィールドが弱まり、赤いオーラも薄まっていた。

致命的な損傷を受けた夜天光が最期に捕らえた生体反応。

それは近くにある小島に倒れていたアキトの姿で、どうにか起き上がったアキトがヘルメットを脱ぎ捨て、肉眼で北辰をにらむ姿だった。

「見事…だ…」

力を失った2機は海へ落ちていく。

落ちていくブラックサレナの頭部装甲が砕け散り、その中にあったエステバリスはオイルの涙を一筋流し、そのあとで2機とも爆散していった。

「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ…」

吹き飛ばされる中でとっさに思いついた、北辰を倒すための捨て身の手段。

より成功率を上げることを考えるなら、先行入力などせずにあのまま機体にとどまってテイルブレードを死ぬ寸前まで操作する方がよかっただろう。

だが、気づいたときには先行入力したうえで姿勢制御できていない状態での脱出をしていた。

仮に今のアーマー姿でない状態でこんなことをしていたら、間違いなく全身打撲で死んでいただろう。

爆発によって生まれた水しぶきがアキトを濡らしていった。

「これで…もう、俺には何も残っていない…」

北辰を倒したことに対して、アキトは何も感情を抱いていなかった。

殺したことへの後ろめたさも、成し遂げた喜びもない。

ただ、北辰を殺したという事実を感じるだけ。

そして、復讐の象徴だったブラックサレナもまた、3年前の愛機だったエステバリスとともに海に消えた。

北辰そして北辰衆がすべて倒れたことで、北辰の力によって制御されていた機体たちはすべて再度ルリのクラッキングによる制御下へと戻る。

そして、すでに戦意も何も残っていない彼らは次々とコックピットから出て投降を始める。

「終わりましたね、艦長」

周囲に敵影はなく、ようやく余裕を取り戻したハーリーが口を開く。

それに対してルリは何も答えず、クラッキングを続けながらモニターに映るアキトの様子を見るだけだった。

(終わりじゃない…そうですよね?アキトさん)

「アキト、ったくムチャしやがって!回収するから、待ってろ!!」

脱ぎ捨てたヘルメットからリョーコの通信が届く。

だが、アキトはそれにこたえる様子はなかった。

「か、艦長!アキトさんの周囲にボース粒子が!」

「アキト!!」

ユリカをはじめ、クルーたちの動揺が広がる中、ルリは表情を変えない。

彼女には最初から、再会した時からこうなることはわかっていた。

復讐を成し遂げ、昔に戻れないアキトはこういう道しか選べないことを。

アキトはヘルメットを手に取り、ナデシコCと通信をつなげる。

「俺は…もう、心残りはない。さよなら、ユリカ…君だけは、ルリちゃんと一緒に、幸せになってくれ…」

「何言ってるの!アキト!!こっちは心残りありありなんだから!!」

「…」

「眠っている間…私、ずっとアキトのことを考えてた。だから、こんなモニターごしなんかじゃ、全然満足できないじゃない!!」

眠りの中にいる、幻想の中のアキト以上に、今ここにいるアキトがユリカにとって何よりも求めている理想の男性。

今すぐにでも抱きしめたくて、顔を見たくでうずうずしている。

「でも…俺は、もうあの頃の俺ではない…」

彼女にとってのアキトと今の自分は大きく異なっているとアキトは考える。

これまでの戦いの中で心をすり減らし、3年前のような心を取り戻せる未来をアキトは想像できない。

血にまみれ、闇に染まった自分は白百合にように無垢な彼女をそばにいるだけで汚してしまう。

「はげちゃったの!?年を取って、おじいちゃんになっちゃったの!?」

「そういう問題じゃなくて…!」

「私は…私は全然気にしない!だって、どんな姿でも、アキトはアキトなんだから!!これからもずっと…私の大好きな旦那様だよ!」

「ユリカ…」

「確かに、アキトさんはあのころのアキトさんではないかもしれません。でも…アキトさんです」

「2人がそう言ってんだよ!女々しいこと言ってねえで、戻ってきやがれ!」

接近してくるリョーコのエステバリスがライフルをヒカルのエステバリスに預け、アキトの下へ降りると手を伸ばす。

「もう復讐、終わったんだろ?」

「だったら、もうそのコートを脱いじゃいなよ」

「あんたの大事な人がそこにいるんだ。その人を悲しませるな」

前線で彼の姿を見てきた3人の女性、帰る場所であるナデシコで待つ少女と妻。

誰もが今ここにいるアキトの帰りを待っている。

「アキトの兄ちゃん!今日だって、俺たちのことを信頼してくれたから、あいつらを倒せたんだろ!」

「そうだ、君は3年前と変わっていない」

「彼女を置いて去る…それがお前の本意なのか?」

「違うよね?」

勝平も、万丈も、刹那も、キラも、ただの人としての感性でアキトの本心を感じている。

だから、このままバッドエンドへ向かう彼に向って手を伸ばす。

それは決してか弱い蜘蛛の糸ではない。

「言っておくけど、逃げたら私…宇宙の果てでも異世界でも、どこまでも追いかけるわよ!」

「問題ありません。ナデシコCは最初からボソンジャンプシステムが組み込まれていますから」

「ってよ、戻って来いよ。アキト」

無理やり連れ戻すつもりなら、既にマニピュレーターで無理やり彼をつかんでいる。

あとはアキトの意思だけ、彼が無数に伸ばされている手をつかもうとするか、それだけだ。

「…負けたよ」

そうつぶやくとアキトはリョーコのエステバリスの手に乗る。

「しっかりつかまれよ!」

アキトを抱えたリョーコのエステバリスがヒカルとイズミとともにナデシコCへと帰還していった。

 

-ナデシコC 艦橋-

「アキト…」

アキトとユリカはお互いに見つめ合う。

そして、ユリカの手でアキトのバイザーが外される。

お互いの顔を見つめ合い、そのあとでユリカがアキトに抱き着いた。

「不思議だね…いっぱい、いっぱい話したいことがあるのに、言葉が出てこないよ…」

「時間ならある。だから…」

「うん…会えなかった時間を2人で埋めていこうね!」

まだ戦いは続くことになるのは2人ともわかっている。

だが、その中であっても、一緒にいるなら乗り越えられる。

そう信じられた。

「ちっくしょう…泣かせるじゃねえか!」

「よかったね…アキト君も、艦長も…」

「とりあえずハッピーエンドだね、お祭り気分で法被エンド」

「アキトさん…ユリカさん…」

リョーコとヒカルが涙ぐみ、イズミは元のテンションに戻っているものの、その瞳はぬれていた。

いつもは無表情のルリも口元を緩めている。

「ありがとう、ルリちゃん…みんな…みんなのおかげだよ」

「へっ…いいってことよ!」

「君が僕たちのことを信頼してくれた、それだけで十分だ」

その心がある限り、アキトは決して北辰やメガノイドのような存在にはならないだろう。

万丈はそれを確信していた。

「それで、ルリちゃん…勝手なことを言って悪いけど…」

「わかっています。レシピ、ですよね」

日本にあるイネスの墓で再会した時、アキトが決別の証としてルリに渡したラーメンのレシピ。

ユリカとルリと一緒にラーメン屋をし、新メニューとして考えていた特製ラーメン。

これがアキトの元へ戻ることで、ようやくアキトは日常へ戻ることができる。

「いや、それはまだ君が持っていてくれ。戦いが終わった時…」

「2人でラーメン屋を始めるときに必要だから!」

「はい…」

「いやぁ、悲劇はフィクションの中だけで十分。やっぱりリアルはこうでないと」

捕虜に関する手続きを終えたナガレがゴートやエリナらとともに艦橋に入ってくる。

「あ…落ち目の女たらし」

「落ち目になって、おちめえ…へへ…」

ナガレに対して何一ついい感情を抱いていたいヒカルとイズミの会長に対するものとは思えない侮辱と暴言。

初めてその様子を見る舞人にはやはり考えられない光景だ。

それらの言葉を一つも否定できないとしても。

「で、でも…アカツキさんのおかげで勝てたんですし…」

「気にしないでくれ、舞人君。こういう扱いには慣れている」

「今回は素直に感心しました。ユリカさんを保護して、ナデシコCを完成させて、草壁春樹を逮捕できたんですから」

「ありがとう、ルリ君。今回は…ていうのにはちょっと引っかかるけど」

誰からも慕われることのない会長。

だが、ナガレにとってはそれくらいが気楽でいい。

どんなに願っても、死んだ兄のようにはなれないのだから。

今のこれこそが自分らしい会長の姿でいい。

「これで火星の後継者は壊滅したけど、戦いはまだまだ続くだろう。だから…ナデシコCで頑張ってくれよ。テンカワ君にも新しい機体を用意している。無断退職は許さないよ。ナルガルのためにも」

「まさか…それを言うために来たのかよ!」

「私たちは広告塔扱いということね」

コスト度外視の高級すぎる広告塔ではあるが、ナデシコCの活躍によってネルガルは力を取り戻すだろう。

クリムゾングループは力を失い、もう邪魔をする存在はないのだから。

「しっかし、悪趣味な服」

大昔のスターであるエルビス・プレスリーばりのフリンジスーツを着せられている無様な会長。

そんな奴と3年前木連は戦っていたのかと思うと、ユキナはぞっとしてしまう。

「み、皆さん…」

「いいからいいから、憎まれっ子世に憚るってものさ」

「感謝しているよ、アカツキさん」

「いやいや、君には広告塔としてもテストパイロットとしても、見事の役割を果たしてくれた。もしあのままバックレたなら、総力を挙げて探し出すつもりだったさ。あと、ラピスについてはこちらに任せてくれ。ネルガルのスタッフとして、働いてもらいたいと思っていてね」

「頼む…そして、ラピスはもう戦いに巻き込まないようにしてくれ」

彼女には彼女の幸せがある。

これまでの失い続けてきた人生以上のものをこれから手にしていくべきだ。

それは戦いの中には存在しない。

「約束するよ、一応は。それと、これが君の新しい機体だ」

アカツキから手渡される端末にはナデシコCの格納庫の様子が映っており、アルストロメリアに黒い外装が装着されていくのが見えた。

アルストロメリアそのものがエステバリスの発展形であることもあり、その姿はブラックサレナに近いといえた。

「新しいブラックサレナか…」

「といっても、北辰はもう海の底だ。こうして戻ってきたなら、黒なんて柄じゃないだろう?マゼンタも似合わないから、勝手に変えさせてもらうよ」

外装装着を終えたアルストロメリアの塗装がすぐに灰色へと変えられていく。

「リアクトシステムを搭載しているから、使い勝手はブラックサレナと変わらない。ブラックサレナⅡ改め、グレイサレナ。テンカワ君なら、使いこなせるだろう」

「ああ…感謝するよ」

「ところで、アカツキさん。結局、火星の後継者は演算ユニットを持っていなかったのですか?」

火星での戦いで、確かに草壁は演算ユニットの入手に失敗したと言っていた。

だが、その言葉をはいそうですかと信じるはずがなく、ネルガルは裏付けの調査を行った。

基地から入手したデータも解析しているが、望みは薄いだろう。

「…現在、調査中だよ」

「今、おかしな間がなかった?」

「まぁ、待っていてくれ。ネルガルの総力を挙げて、演算ユニットの行方を追うつもりだから」

「だったら、さっさとしろよ!」

「あれを必要としている人たちがいるんだ」

本来ならば、誰の手にもわたらないようにすべき存在なのかもしれない。

だが、それがなければ失われる命が存在する。

それを救うためにも、1分1秒でも早くそれを手にしなければならない。

「でも、期待できないよね。落ち目のネルガルの総力じゃ」

「旋風寺コンツェルンに頼んだ方がいいんじゃないですか?」

「そうだな、世の中、お金だけではどうにもならないこともあるからね」

「って、言われてますけど…」

「金持ち…なめんなよ」

片方の鼻から鼻血を出し、どこか傷ついた様子のアカツキがナデシコCをあとにし、その様子に何とも言えない表情を見せるエリナ達も後にする。

「あ、アカツキさん…」

「ダッサイ捨てゼリフ!」

「背中に哀愁が漂っていたな」

舞人を除き、誰もアカツキのあの様子に対して心配する者は存在しない。

見送る万丈はここに来る前に通信でアカツキから受け取った情報を思い出す。

(アカツキ氏、月臣氏の話では…ドン・サウザーが遺した遺産についての情報は得られなかったと聞く。火星の後継者が持っていなかった以上、あれの存在はデマだったのかもしれないな)

最後のメガノイドといえる北辰は死に、この世界にもはやメガノイドは残されていない。

デマだと思うことで決着をつけようと決心を固める中、脳裏に浮かぶのは遺産について話したコロスの死に顔だ。

相手は憎むべき敵だというのに、その顔はとても嘘をついているとは思えなかった。

それがデマという結論に達することをためらわせる。

「何はともあれ、これで一件落着!今日から私もナデシコCのクルーということで、よろしくです!」

「歓迎します、ユリカさん」

(ユリカがいて、ルリちゃんがいて…みんながいる…)

3年前は当たり前だった光景が今再びよみがえった。

まだ心の中にはその幸せをかみしめる資格があるのかと問い詰める自分の存在を感じる。

多くの人を救えなかったのに、多くの人を殺したというのに。

(もう、心に黒衣はいらない。このナデシコが…俺の帰る場所だ)

 

-プトレマイオスⅡ改 格納庫-

「メイリン!」

「アスランさん!お久しぶりです!」

ナデシコCから移動したキャバリアーから降りてきたメイリンをアスランたちが出迎える。

「メイリン、どうしてここに…?確か、あなた…ターミナルで」

1年前の大戦後、メイリンはターミナルに所属することになった。

成り行きだったとはいえ、アスランとともにザフトから脱走しているメイリンはザフトに復帰することは難しく、ハッカーとしての実力を買われたことでターミナルに所属することになった。

「ターミナルからの要請で、モルゲンレーテ社でキャバリアーのテストパイロットをやっていたんです。そこで、ネルガル重工からの依頼が入って、ここに」

「キャバリアーアイフリッド…話には聞いていたが…」

「すげえ…こんなのが作れるなんて…」

アスランやオーブに出向している立場であるシンとルナマリアもこの機体については小耳にはさんでいた。

ただ、NジャマーやGN粒子の影響下が戦場では当たり前の状態になっていることを考えると、完成はずっと先とばかり思っていた。

少なくとも、ラクスが提唱する機構が設立し、正式に稼働したころに試作機が納品される予定だったはずだ。

「私はこのキャバリアーでこのまま皆さんと合流する形になります。ターミナルからは戦闘に参加しながらキャバリアーの実戦データを収集してほしいと」

「そうか…頼りにしている、メイリン」

「…はい。それから」

アスランの言葉に対して、嬉しそうに笑顔を見せるメイリンだったが、徐々に表情を曇らせていく。

メイリンがここにわざわざキャバリアーとともに来た目的がもう一つある。

それはアスラン、そして刹那にとって重要なことだ。

「実は…私がここに来た目的がもう一つあります。マリナ様とカガリさんのことです」

「ああ…二人は俺たちが別世界へ飛ばされる直前に始祖連合国と会談の予定が…」

「ええ…ですが、2人が入国してから始祖連合国からは会談について一切発表がなくて、そして…」

 

-アルゼナル 指令執務室-

火星の後継者を倒し、アカツキたちと別れたソウジ達はアルゼナルに戻った。

到着してすぐにアンジュとサリアがこの部屋に来ており、椅子に座るジルと対面する。

「2人で私を訪ねるとは…この1か月の旅で仲良くなったみたいだな」

「そういうことでは…」

「サリアも知りたがっているのよ、あのヴィルキスの正体を」

「…あれに、興味を持ったのか?」

「得体のしれないパラメイルだけど、役に立ってくれたからね」

「スメラギから話は聞いている。ヴィルキスが力を解放した、とね」

圧倒的な戦闘力だけなら、高性能な旧型試作機の類ということで不信感はあれど飲み込んでいただろう。

だが、あの赤いパラメイルとの戦いでヴィルキスが見せた瞬間移動や大出力のビーム刃の形成。

そのヴィルキスのおかげで皆、西暦世界に変えることができた。

そのことについては感謝しているが、それによって一層ヴィルキスに対して得体の知れなさを感じた。

そして、それらの力はいずれも指輪が光った時に見せている。

母から託された指輪とこのヴィルキスの関係と正体。

アンジュたちが思い浮かべる中で、それを一番よく知っているであろう人物はジル一人だ。

「アンジュ、お前が目覚めさせたのはヴィルキスの力の一部だ」

「あのモードが…力の、一部?」

一部となると、ヴィルキスの力にはまだ先がある。

そうなると、いったいヴィルキスの性能がどこまであるのか、サリアには想像できなかった。

「やっぱり…何か知っていたのね?司令」

「時が来れば、すべて話すつもりでいたさ」

「その時とは…」

「そう、リベルタスだ」

「リベルタス…」

サリアの緊張に満ちた面持ちから、重要なキーワードであることがアンジュにはわかる。

反逆に近い意味合いに感じられるその言葉は果たして誰に対してのものなのかはわからないが。

「それよりも、アンジュ。お前の祖国であるミスルギ皇国からニュースが入った。三日後、皇族であるシルヴィア・斑鳩・ミスルギを処刑するとのことだ」

「…!」

その知らせはヴィルキスなどに対する疑問をアンジュからすべて吹き飛ばすには十分すぎる衝撃だ。

体が震え、その場に座り込むアンジュの様子にサリアはただならぬ何かを感じた。

「司令!そのシルヴィアというのは…」

「アンジュの妹だ。報道によると、彼女はノーマである姉をかくまっていたことが処刑の理由だという。まだ年少であり、姉を慕うには十分な理由も存在しており、判断するまでに時間がかかったため、今になっての発表になったらしい」

「私の…私のせいで、シルヴィアが…!」




機体名:グレイサレナ
形式番号:不明
建造:ネルガル重工
全高:8メートル
武装:テイルブレード、ディストーションフィールド、グラビティブラスト、クロー、イミディエットナイフ、ラピッドライフル、フィールドランサー
主なパイロット:天河アキト

ブラックサレナの戦闘データを反映して開発された最新鋭機であるアルストロメリアにブラックサレナと同じく増加装甲を身にまとったもの。
素体となっているアルストロメリアについては増加装甲を装着することを想定し、なおかつリアクトシステムに対応する形で再設計されたものとなっているため、無理な改造とならず、なおかつ今後の戦いの中で新たな増加装甲に変更しても支障がないようになっている。
武装面はA3型とほぼ同じだが、両手が自由となっていることからかつてのエステバリスの装備の運用が可能となっており、これについては重装甲・高機動のみに特化したブラックサレナとは異なる。
本来であれば、A3型であっても北辰衆に勝利できなかった場合に提供される予定であり、名前はブラックサレナⅡとなる予定だったが、引き渡し直前に決着がついたため、アカツキの指示でカラーリングをグレーに変更するとともに上記の名前に変更された。
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