スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

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第73話 反抗

-神聖ミスルギ皇国 皇宮内-

「失態でしたな、ジュリオ陛下」

きらびやかな装飾で彩られた豪華な会議室においての第一声がジブリールの一言だ。

マナで生み出されたモニターに映る始祖連合国各国の代表たちも声には出さないものの、ジブリールと同じ意見だということが感情のこもっていない視線からよくわかる。

国が生まれ変わるという一大イベントを企画したにもかかわらず、処刑すべきアンジュを取り逃がしたこともあるが、それ以上の失態の方が大きい。

「まさか、ドラゴンの接近に気づかず、その存在を公にしてしまうとは…」

「あ…あんなものは、どこかのテロリストが造り出した生体兵器といえば…どうにでもなる!!」

「問題はあるパラメイル…ヴィルキスを取り逃がしたことですよ。あれの存在は許されない」

きっと、この皇帝にはヴィルキスの価値など分からないだろう。

どこまでを先代から聞いていたのかはわからないが、この様子では何一つ聞いていなかったのかもしれない。

少しでも聞いていれば、少なくともアンジュを追放する際には指輪も没収していたはずだ。

「口を慎め、ロード・ジブリール!!私は神聖ミスルギ皇国の皇帝であるぞ!!」

「世界を動かす始祖連合国の当主の一人…ですが、このお方の前では、そのような肩書には何も意味はありませんよ」

「ぬうう…」

「ミスルギが始祖連合国において最大の発言権を得ているのはあの暁ノ御柱の管理者であるため、そのこともお忘れなく」

その役割を全うしている間は、あのお方の信認の元、この男は始祖連合国という鳥籠で王様であり続けることができるだろう。

鳥籠の王など、ジブリールにはまっぴらごめんな話ではあるが。

形の違う宇宙の鳥籠において、王となった人間の中で無様な最期を遂げている二人をジブリールは知っている。

「き、貴様とて、あのお方がいなければここにいないどころか、既にこの世にいないではないか!!始祖連合国の使い走りのロゴスの残党め!!」

ロゴスをつぶされ、アロウズもファントムペインもないジブリールがなぜ皇帝である自分よりも大きい顔をしているのか。

かき集めた残党も兵器も、あの演習において役に立たなかった。

そんな人間が自分にとやかく言う資格などない。

モニターに映る彼らの冷たい視線など気にする余裕がない中で扉が開く。

「騒がしいね、随分と」

「え、エンブリヲ様…これは…」

入ってきた男、エンブリヲを見たジュリオは必死にのどから出かけた言葉を飲み込み、彼を見つめる。

モニターに映る彼らもエンブリヲの登場に静まり返る。

「しかし…騒ぐのも無理はない。由々しき事態だということは確かなのだから。ドラゴンは暁ノ御柱の存在に気付いた。だから、ミスルギに来たのだろう」

ドラゴンたちは逃走しようとするあの部隊によってすべて倒された。

仮にそうしていなければ、どうなっていたかわからない。

「も、もうしわけ…ございません…」

「かまわないさ、確かに危機だったが、この目でヴィルキスのメイルライダーを見ることができたのだから」

「アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギですか…」

「今は、アンジュと名乗っているがね」

「あの女は…あの女だけは許すことができません!私自らの手で始末してご覧に入れます!!」

その誓いとして、エンブリオは彼女が投げた手裏剣によってできた顔の傷跡をあえて残している。

彼女を処刑するまでは、たとえ消したとしてもうずくだけ。

だが、彼女の命を代価にすればこの屈辱も痛みも清算できる。

「そうか…では、その前に世界の今後を決めるとしよう。選択肢は二つだ」

エンブリヲがわざわざ足を運んだのはそれを決めるため。

ドラゴンの存在が公となり、そして暁ノ御柱の存在がドラゴンに知られた以上は今後ドラゴンはいかなる犠牲を払ったとしても、暁ノ御柱攻略に動くはずだ。

そして、始祖連合国の国民はドラゴンの存在によって動揺が広がっている。

「一つは…ドラゴンに全面降伏する」

「な…!?」

「もう一つは…ドラゴンを全滅させる」

「しかし…それを成し遂げるには、奴らの世界に侵攻しなくては…」

シンギュラーから現れるドラゴンたちが結局どこから、どの世界から来たのかはいまだに謎に包まれている。

どこに、そしてどれだけの数のドラゴンがいるのかわからない以上はドラゴン全滅もまた、現実的ではない話だろう。

全面降伏もあり得ない。

そんなことをしたら、始祖連合国がどうなるかわからない。

「だから…三つ目だ。世界を創り直す」

「なんと…!」

「害虫を殺し、土を入れ替え、正常な世界に…。すべてを、リセットするのだ」

「そのようなことが、可能なのですか!?」

「できるさ…。すべてのラグナメイルとメイルライダーがそろえば、の話だが」

「ラグナメイル…」

ジブリールの脳裏に浮かぶ、エンブリヲが持つ女王の名を持つ機動兵器たち。

その力がどれほどのものかを知っているため、世界を創り直すという言葉に現実味が感じられる。

「素晴らしい!!では、今すぐにでも創り変えましょう!!そもそも間違っているのです!!忌々しいノーマという存在も、奴らが生まれてくる、この世界も!!」

「それには私も賛成です。宇宙の化け物どもを根絶やしにするためにも、世界は一度破壊されるべきです」

一体、彼らにとっての世界の創り直しとは何か、エンブリヲの視線がわずかに変わる。

きっとその世界においても自分たちの安息は約束されているとでも思っているのだろう。

既にエンブリヲの興味は彼らから別の存在に代わっていた。

「では…準備を始めよう。さあ…どう動いてくれるかな?」

 

-アルゼナル 司令執務室-

「私は…反対です」

「この状況では、ある程度の情報を開示することはやむを得ない」

「あたしはジルに賛成だ。さすがに、ヴィヴィアンの件が知られたら、どうしようもない」

「仕方ないね。下手に黙ってりゃ、不信感でこれまでの準備が台無しになっちまう」

サリア一人の反対意見など、ジルとマギー、ジャスミンといった長らくアルゼナルを支えてきた大人にとっては無意味だ。

ジルの今回の判断はドラゴンとなったヴィヴィアンの姿と元に戻った姿を見られてしまった以上は致し方のないこと。

仮に見られたのが誰か一人だけなら、その人間の口を封じてしまえばいい。

事情の知らないメイルライダーであれば特にだ。

だが、その場にいた数多くのパイロット、特にイノベイターの刹那のような人間に見られたのはまずい。

それを穏便に済ますには、もはやこちらの隠しているカードを見せることだけ。

最も、これはいずれ見せることになったものでそれが早まったに過ぎない。

だからジル達は動揺を見せない。

「少なくとも、スメラギは乗ってくるさ。問題はない」

「…それについては、いいわ。でも…」

仲間を増やすことについては、始祖連合国で多くの兵器を実際に見ることになったためにやむを得ないとサリアは飲み込む。

ヴィルキスと複数のパラメイルだけで、ピレスロイドやモビルスーツ、モビルアーマー、戦艦と戦って勝利することは不可能と言える。

それならば、それらと戦える戦力を持つソレスタルビーイングなどを味方に引き入れることは自然なこと。

だが、一つだけサリアが何があっても譲歩できないものがある。

「でも…ヴィルキスは、あれは…!」

「あれのメイルライダーはアンジュだ。もう、バイオメトリクス認証している以上、もうあれはアンジュの言うことしか聞かないよ」

「どうして…!?どうして私じゃダメなの!?ずっと、あなたの力になりたいと思っていた!ずっと…ずっと頑張ってきたのに…!」

大人たちの隠し事について、今アルゼナルの少女たちの中で知っているのはサリアだけだ。

最もジルに近く、隊長として戦って生き延びてきたが故に実力については問題はないはず。

ヴィルキスを使いこなす自信もある。

だが、現実として今のヴィルキスの主はアンジュだ。

突然やってきた、メイルライダーになるには遅いノーマ。

「それでも、それでもアンジュなの!?アンジュなんて、ちょっと操縦がうまいだけで、器用なだけじゃない!!命令違反して、脱走して、独房に入っているのに、なんでアンジュなの!?」

「…」

「始祖連合国の…皇家の娘だから…?」

「そうだ」

「…」

唇をかみしめたサリアが部屋を飛び出していく。

アンジュにあって、サリアにはない唯一のもの。

どんなにあがいても絶対に手に入らないもの、越えられない境界線。

それを突き付けたなら、もう彼女は黙るしかない。

「いいのかい?」

理不尽で、そして自分の中で決着をつけきれないものを突き付けられた、神経質な彼女の心をおもんばかるマギー。

「既に決定事項だ」

背中を向け、一言だけつぶやくジルに呆れたマギーはその場で煙草を口にする。

ゆっくりと浮かぶ煙を見つけながら、口を開く。

「あの子…昔のあんたに似ているけどね…」

「まぁ…仕方がないさ。ヴィルキスの力を引き出すためには」

「皇家の血と、代々伝わる指輪…。そして、口伝される永遠語りの歌…」

そのピースが埋まるのを、ジル達は全員で待ち続けてきた。

ドラゴンと戦い、メイルライダー達を鍛えて、時には間引きながら。

そうした中でようやく埋まったピース。

「だが…それだけでは足りないのさ。…それは、私と、この右腕がよく知っている」

それゆえに、あの時は敗れて消えない傷を負うこととなった。

多くの仲間も失うことになった。

自分たちが生き延びたのも、幸運なのかそれともただ見逃されただけなのかは今となってはわからない。

 

-アルゼナル 食堂-

「…ヴィヴィアンの容態はどうです?」

「よく眠っています。眠らせているといった方が正しいかもしれませんが…」

エルシャが様子を見に行った時、マギーの手で睡眠薬をヴィヴィアンに飲ませていた。

今は落ち着いているが、脳裏にドラゴンになった時の記憶が強烈に残っている可能性がある。

その状態で目覚め、暴走したらどうなるかわからない。

その答えに安心したキラだが、このことで心に大きな重しがついたのが感じられた。

「あの子がドラゴンだったということは、私たちがこれまで戦ってきたドラゴンたちは…」

「人間だった、可能性があるね…」

そうなると、これまで人間と戦い、殺してきたということになる。

まだ可能性だけではあるが、それでもマリーやアレルヤだけでなく、ほかのメンバーも受け入れがたい可能性にどういえばいいのかわからなくなる。

「そもそも、ドラゴンって…何なの?」

戦いの中でチトセが感じてきたもの。

ヴィヴィアンに起こったことを考えると、あれは人の思念だったのかもしれない。

「それは…ジルの口からきくしかないわ」

ヴィヴィアンへのジルをはじめとしたアルゼナルの大人たちの冷静な対応。

そもそも、人間がドラゴンに、もしくはドラゴンが人間に変身するなど誰も想像がつかない。

肉体の大きさや構造も違う両者が同じ存在だと思う方が難しい。

「待たせたな、皆」

食堂にジル達が入ってくる。

静まり返ったソウジ達の視線が彼女に向けられ、その中でもジルは冷静さを保っている。

「全部…話してくれるわよね?」

アンジュのその言葉は確認でもあり、警告でもある。

少しでもはぐらかしたなら、アンジュだけではなく、ここにいる全員からの反感を買うことになりかねない。

「事を荒立てるつもりはありません。ですが、場合によっては現在の協力関係を維持できなくなります」

「そうなると、こちらとしては困ったことになるな」

「では…聞かせてもらいましょう。ジル司令。あなたの知る真実を」

ルリと万丈に釘を刺され、ジルは煙草を口に含む。

ライターで火をつけ、いったん吸い込んだ煙をゆっくりと吐き出した後で、ようやく口を開いた。

なお、アルゼナルで唯一蚊帳の外となっているのは監察官のエマ一人だけだ。

念のために、ジルによって監禁されている状態で、ほかのノーマの少女たちによって監視されている状態だ。

「そうだな…まずは聞くとしよう。何から聞きたい?」

「最初から…全部。ドラゴンの正体、私とパラメイルとお母様の歌、あなたとタスクの関係…そのすべてよ」

アンジュの求める真実はすべて、ジルの想定した通りのもの。

ほかのメンバーも同じく、それが知りたいと思ってここにいる。

「…むかーし、むかし…あるところに神様がいました」

「あんた…俺たちを馬鹿にしているのか!!」

「黙って、シン」

殴り掛からんとするほど怒るシンをキラが止める。

いきなり紙芝居で昔話を子供たちに読み聞かせているかのような言動をこのような場でするのがどういうことになるか、それはジル自身も分かっている。

だが、そういう口ぶりでなければ、少なくともここから話すことを感情抜きに語るのが難しかった。

「悪魔との戦いでボロボロになった地球に、神様はうんざりしていました。戦いは悪魔と神様だけのものではありません。平和、友愛、平等…口先だけは美辞麗句を唄いながら、人間の歴史は戦争、憎悪、差別の繰り返しです。そう…それこそが、人間の本質なのです」

ジルの言葉に対して、キラの脳裏に浮かんだのはクルーゼの姿だ。

彼はこのナチュラルとコーディネイターの醜い争いの果てに生まれた化け物であり、犠牲者。

ジルの語る人間の本質の果ての姿だろう。

それは、アキトが倒した北辰も同じで、舞人もこれまでの悪党の戦いで人間の本質が光だけではないことを知っている。

「だから、神様は自分たちの世界を捨て、新天地へ旅立ったのです。でも、誰かが何かをしなければ、新天地でも同じことが繰り返され、結局人類は滅びてしまいます。そこで…神様は考えました。ならば、新しい人類を創ればいいのだと。争いを好まない穏やかで賢い人間たち…あらゆるものを思考で操作できる高度情報化テクノロジー…それが、マナ」

「なんだと!?」

「マナを使える人間…つまり、始祖連合国の人間は誰かの意図で作られたというのか!?」

そうであれば、マナが始祖連合国の人間しか使えないことにも納得がいく。

一から作られた人間となると、ティエリアのようなイノベイドに彼らは近いといえる。

おまけに、マナを使える人類と考えると、遺伝子操作を行っただけのコーディネイターがかわいく見えてしまう。

「結果として、それによってあらゆる争いが消え、あらゆる望みがかない、あらゆるものが手に入る理想郷が生まれたのです。かれこれ500年ほど前の話です…しかし、世界のすべてを創りかえるには至りませんでしたが」

「それが、始祖連合国が突然生まれた理由と、それ以外の人類が存在する理由…」

万丈の集めた情報、そしてスメラギが閲覧したヴェーダの情報においても、始祖連合国が生まれたであろうと予測できるのはちょうどその時だ。

「あとは、新たな人類が発展していき、世界が平穏に満たされるのを見守るだけ…それだけでよかったはずでした。しかし、生まれてくるのです。何度システムを創りかえたとしても、マナが使えない女性の赤ん坊が、古い遺伝子を持った突然変異が…」

「ノーマ、ですか…」

「突然変異の発生は、人々に不安を与えました。しかし、神様が使った国以外では、それが当たり前の話でした。なので、自然な話と言えばそこまでです。ですが…神様は逆にその突然変異を利用しようと考えたのです。彼女たちは世界を拒絶し、破壊しようとする反社会的な化け物、ノーマであるという情報を植え付けたのです。共通の敵を作ることで、神様の創った国は団結を深めました。人々も、差別できる存在が現れたことに安堵し、安定しました。生贄、犠牲、必要悪…言い方はなんだって構いません。マナを使える人間は創られた人間。しかし、ノーマもまた同じです。世界を安定させるため、差別されるだけの…」

「なんだよ…それ…」

「そんなの、急に言われてもよ…」

勝平もリョーコもジルの言った言葉を整理するのが大変だった。

だが、それに類似しているものを既に経験している。

イノベイド達、アロウズ、そして彼らによって犠牲となった人々。

強いて言えば、4つの経済圏とプラントでいがみ合い、代理戦争を繰り返してかりそめの平和を維持していた3年前の世界システムこそがまさにジルの言う世界に似ていたといえるだろう。

「信じられないか?」

「ばかばかしい…よくもそんなくだらない話をおもいついたわね」

「聞く気がないなら出ていけ」

「…」

確かに、何も知らなければジルの言葉をそれで断じて、ためらいなくこの場を去るだろう。

だが、アンジュがそれをしないのはわずかながら、彼女の中にジルの話がつじつまが合うものを感じたからだ。

「つづけるぞ、こうして、マナの世界は安定し、今度こそ繁栄の歴史が始まると思われていました。しかし…それを許さない存在がいたのです。古の民、元々は神様と同じ時代に生きていた人々でしたが、神様の造った世界に住むことが許されなかった人々…。存在を抹消された彼らは自分たちの居場所を取り戻すために、何度も神様に挑んでは敗れました。ですが、その敗北と犠牲の果てに、ついに手に入れたのです。神の兵器…ラグナメイルの1機を」

「ラグナメイル…」

「なんか、パラメイルにゴロが似てるな」

パラメイルとラグナメイル。

ヒルダやロザリー、彼女たちが乗っていたパラメイルと何かつながりがあるように思えて仕方がなかった。

「そうだ…。破壊と創造をつかさどる機械天使たるラグナメイルこそが、パラメイルの原型となった絶対兵器だ」

「それが…ヴィルキスなの…?」

ほかのパラメイルとは一線を画す何かを持ち、分身や出力上昇といった例を見ない力でアンジュを救い続けてきたヴィルキス。

そのヴィルキスを元にして作られた数多くのパラメイル。

この機体こそが、戦いの始まりといえた。

「神様と同じ土俵で戦えるそれに古の民は乗り込んだ…。だが、古の民にはヴィルキスが使いこなせなかった」

「どうしてさ?」

勝平と宇宙太、恵子が乗るザンボット3の場合は、訓練されたことで3人ならフルスペックで使えるというだけで、実際にはビアル星人の末裔でなかったとしても使える。

そして、ヴィルキスについてはこれまでアンジュは使いこなしてきた。

ザフトで開発されているモビルスーツの多くはOSの問題からナチュラルには使いこなせないとされているが、それでも訓練次第では使いこなすことが理論上では可能だ。

勝平にはその使いこなせなかったという意味が解らなかった。

そもそも、古の民と現代の人々と比較するのが今では難しいかもしれないが。

「鍵のせいさ。虫けらごときが使えないようにな。そして、古の民は何度も解析し、各地を探したが開錠する手段を得られなかった。その中でも仲間が次々と死んでいき、生き残ったのはあとわずか…。彼らは、滅びの時を待つしかなかった。そんな時、彼らは知った。世界の果てに送られたノーマがパラメイルでドラゴンとたたかわされていると知ったのは…。そして、このアルゼナルで出会った。古の民とノーマ…捨てられた二つの人類が。彼らは手を組み、ただひたすらに待った。鍵を開く存在が見つかるのを…。そして、ついに見つかった。その名はアレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ。始祖連合国の皇族から生まれた史上初のノーマだ」

「それが…あなたね」

「そうだ」

ヴェーダや個人的な調査でジルの本名を知ったスメラギだが、驚いたのは彼女がおそらく、パラメイルを使っていたメイルライダーだったということだ。

そして、こうして生きて司令を務めているということは、かなりの実力を持っていたといってもいいだろう。

「司令が…始祖連合国の皇族の…」

「アルゼナルに送り込まれ、自暴自棄になったアレクトラだが、その血と皇族の指輪がヴィルキスの鍵を開いた。それによってそろった。ヴィルキスを解放する者、ヴィルキスを守る騎士、ヴィルキスを直す甲冑師、医者…そして、武器屋。そして、始めたのさ。神様への逆襲を、リベルタスを。地獄のどん底で得た力と仲間たちとともに、この造られたクソッタレな世界を破壊するという使命を胸にね」

「…タスクは、その古の民の一人ということか?」

「ああ。仲間はみんな死んでしまったけどね」

「こいつは当時はまだガキだった。だが、見込みがあったから、私の手足として使っていたが…」

「戦いに敗れて、仲間が死んで…何もかもが嫌になって、逃げだしていた…というわけさ」

だから、あの無人島にいた。

それが結果的にアスランとカガリにとっては幸いであり、無人島でのサバイバルについてはろくに訓練を受けていなかった彼らにとっては大きな助けになった。

特にアスランはまだ地球に降りて日が浅く、環境に慣れていなかった。

「ま、放置していたよ。野垂れ字ぬことはないだろうと思っていたからな。だが、どういうわけか自分から戻ってきた。早速、コキ使ってやったがな」

「彼が、あなたの情報源だった、ということね」

「古の民の最後の一人、か…」

それがタスクにどのような孤独を与えていたか、アスランには想像がつかない。

仮に何らかの原因でコーディネイターが全員死んで、自分だけ生き残ったとなったら、自分はそれに耐えられるのかわからない。

タスクのようにすべてから逃げたとしても、責められないだろう。

「タスクは直系、純血での最後の一人だ。だが、古の民の血は、様々な形でこの世界に生きているのさ。例えば、神様のマナに対抗するために遺伝子そのものに改造を加えたり」

遺伝子の改造、その言葉が稲妻のようにシン達の脳裏を貫く。

コーディネイター、ジョージ・グレン。

「ジョージ・グレンを生み出した研究者は古の民の末裔だったのさ。そして、ジョージ・グレンは見事彼らの期待に応えた、というわけだ」

わずか17歳で大西洋連邦のMITの博士課程を修了、オリンピックで銀メダルを獲得、アメリカンフットボールのスター選手にして、海軍および空軍のエースパイロットとしても活躍。

その他、理工学の分野においても若くして様々な業績を挙げており、世界中から万能の天才として注目される。

更に優れた容姿を持っており、世界中の女性も惹きつけた。

そして、自ら設計に関わった探査船ツィオルコフスキーにて、木星探査に出発するというタイミングでのカミングアウトと遺伝子操作の詳細なマニュアルの公開。

そのすべてがコーディネイターという神に対抗する戦士を生み出すための計画といえた。

「だが、遺伝子の改造に頼らない手段を模索する古の民も存在した。彼らは古の技術を解析し、髪を倒すための力を集めた。そして、同時に世界そのものを破壊しようとした」

「イオリア・シュヘンベルグのことか…」

「コーディネイターや、ティエリアさんをはじめとしたイノベイド、そしてヴェーダの存在は古の民によるものだったのですね」

「そういうことだよ、電子の妖精…。そして、その果てに生まれたソレスタルビーイングとスーパーコーディネイターは、いわばその副産物といえるものだ。だが、その大元はリベルタスのためだった、ということだ」

(そこから派生したメガノイドも…おそらくはそうなのだろう。確かに、奴も今の世界の仕組みを破壊することを望んでいた…)

ジルの言う神の力はおそらく、始祖連合国だけにとどまらない。

影ながらか、形を変えて今の西暦世界に侵食しているといえる。

「世界をゆがめる存在…それこそが、神と呼ばれる存在か…」

「その打倒が、イオリアのもう一つの目的…」

「理解したか、スメラギ。我々とソレスタルビーイング、プラントは同志というべき存在というわけだ」

「じゃあ、ロゴスやブルーコスモスが執拗にコーディネイターを亡ぼそうとしていたのは…!」

「神の意思、というわけだ。ロゴスは奴らの飼い犬だったからな」

「そんなのって…」

彼らにとっての青き清浄なる世界は神に操られた世界、神にとって都合のいい世界だったということなのか。

神の存在をブルーコスモスやロゴスがどこまで知っていたかは今となってはわからない。

だが、ジルの話を聞いたシンはどれだけ記憶をたどったとしても、その神の存在について知らされたり、それをにおわせる話を聞いたことは一度もない。

それはキラもアスランも同じだ。

コーディネイターの大多数がリベルタスや神のことを知らず、ただ日常を生きている。

それでも、存在そのものが神にとっては許せなかったのだろう。

「闇に潜み、自らの意思で世界を動かすもの…」

「そんなものは神様じゃない!ただの、巨大な悪だ!」

だとしたら、その悪を倒すことが自分の役割。

万丈と舞人は覚悟を新たにする。

「リボンズ達イノベイドも、神の傀儡だったのか?」

「いや…彼らは神に成り代わるため、計画の一部を引き継いで神を討とうともくろんでいた」

「となると、俺たちは神様野郎から見れば同士討ちをしていた…ということか?」

「それも奴の意図だよ。自ら直接、手を下すのではなく、より刺激的で劇的な展開を求める…奴はそうしてスリルを楽しんでいるのさ。自分の創った世界で退屈をしないようにね。我々がこうして接触していることも、当然奴も気づいている。だが…スリルのために泳がせているということだ」

そこにはたとえどんな手段を使ってきたとしても、そのすべてを覆して勝利できるという確信があるのだろう。

そうでなければ、それが実行される前か準備段階でいつでもつぶしにかかっている。

「ふざけるな!そんな奴の楽しみのために戦争が起こって、どれだけの人が死んでと思っているんだ!!」

「本当にそんな人間がいるなら…僕は、許さない」

運命をゆがめ、自由を封じ込める神。

眼に見えないその神を前に、シンとキラは戦争の中で失われた命を思う。

彼らの仇こそ、その神といえるだろう。

「そうだ、その怒りは大事にしろ。お前たちは本来、その怒りを抱く資格がある。そして、それを神にぶつけることが、生まれてきた理由だ」

「そうやって、私たちを自分の目的に乗せるようなことをするのは、あなたの敵である神と同じ手段ですね」

「なんとでもいえ、私は手段を選ぶつもりはない。お前たちが土下座を求めるなら、ためらいなくそうするさ」

「ジル…」

ジルの瞳からスメラギが見たのは闇。

かつて世界を変えるために戦ったソレスタルビーイングの仲間たちが抱えていた闇とは何かが誓う。

「リベルタスを終わらせるわけにはいかない。死んでいった仲間たちのためにも…。アンジュ、お前にも力を貸してもらうぞ。お前の死んだ両親のためにもな」

「なんで、ここでお父様とお母様の名前が出るわけ?」

「私たちに協力する者は実をいうと、始祖連合国内にも存在していた」

「存在していた…?」

「そうだ。彼らは高貴な身分でありながら疑問を抱いていたからな。ノーマの存在、ノーマをなぜここまで排斥するのかを…。改革をして認識を改めるにも、神がそれを許せない。そして…引き金を引いたのは自分たちの生まれた子供がノーマであったことだ。それからは何かと手を尽くしたが、それでもいつかは限界を迎える時が来る。それはノーマを迫害する立場である自分たちが一番わかっていた。そして、11年前にソフィアとジュライは私に接触してきた。このアルゼナルで…。最も、記録も何もないがな」

「お父様とお母様が…」

その当時の2人の表情は今でもジルの記憶に残っている。

彼女がノーマであると知られたら、どのような未来が待っているかわからない。

だが、それを話す相手が始祖連合国にいない以上、賭けになるが話せるのはアルゼナルにいる元皇族であるジルだけ。

悩み抜き、憔悴しきった2人をジルは今も覚えている。

「私の知るすべてを話してやったよ。始祖連合国やこの世界のことをね。そして、彼らもまた指輪を持っていた。私は言ったよ。指輪と彼女を私に預けないか、と」

まだリベルタスの準備段階の時期であり、失敗するつもりはなかったが、それでも不安要素があった。

だから、同じ指輪を持つ皇族のノーマである彼女を何かあった時の切り札にすることも手段として考えた。

そして、公には生まれてすぐに死んだことにすれば、ミスルギ皇国に危機が及ぶことはない。

「だが、二人は断った。戦いの中に、過酷な世界に娘を手放すことはできないと。だから…一つ、ゲームをすることにした」

「ゲーム…?」

「そうだ、16歳になると洗礼の儀がある。その時までにお前がノーマだということがばれなければ、お前のことは忘れ、たとえそのあとにばれてアルゼナルに来たとしても、ただの兵士として扱う。最も、洗礼の儀を終えれば、もう誰もお前がノーマだと思うまい。だが…それまでに小隊が発覚した場合は、お前をヴィルキスのメイルライダーにして、神と戦う運命を与えると。まぁ、私はどんなに見繕っても、4,5年でバレるものと思っていた。16歳になるまで、タイムリミットぎりぎりまで隠し通すとは思っていなかったよ。あれには、正直に焦ったさ。で、お前がどのような運命をたどることになるのかを分かっていたからこそ、指輪がお前の手の中にある、というわけだろう。最も、これは私の憶測に過ぎないがな」

「お母様…」

指輪を見つめるアンジュはあの日のことを思い出す。

死んでいくソフィアが指輪を渡すときに見せてくれた顔と言葉。

それは決してノーマとして生まれたアンジュを呪うものではなかった。

そして、ノーマとして産んでしまった母としての罪の意識でもなかった。

あったのは…。

「皇女アレクトラ、あなたには感謝しているわ。あなたのおかげで、どこまで自分が世間知らずか、甘ったれで、人生をなめていたのか、よくわかった…。それに、きっとお母様の本当の想いにも、気づかなかったかもしれない。だけど…私の答えはノーよ」

「何…?」

確かに、ジュライとソフィアに仕掛けたジルのゲームでは、ジルが勝ったかもしれない。

その結果として、自分は今ヴィルキスで戦っている。

そして、彼女の言う神と戦う運命が待っているだろう。

だが、それを決めるのは誰でもない。

「あなたのいうことがすべて真実だとしても、私の道は私が決める」

(あの子の運命を決めるのは、あの子です)

11年前のソフィアの言葉がジルの脳裏に再生される。

彼女は信じていたのだろう。

たとえ、ノーマとして生まれたとしても、アンジュには自分の未来を決める力があることを。

きっと、それはジュライも同じだ。

「アンジュ、それは…」

「ごめんなさい、舞人。私…ヒーローって柄じゃないから」

彼のようなヒーローの存在をアンジュは否定しない。

勇者特急隊とともにDG同盟と戦い、その中で彼がどれだけ人々のために戦い、感謝されてきたか分かった。

それに、それに貢献することに後悔したことはない。

「どんなに崇高な使命だとしても、自分の目で見て、聞いて、自分で決める。誰かにやらされるのはごめんなの」

「ふっ…まさに、ジュライとソフィアの理想を体現したというわけか…」

不敵な笑みを浮かべるジルだが、会話に割り込むように警報が響く。

シンギュラー反応感知、ドラゴン出現の警告だった。

 

 

 




機体名:マイトカイザー
建造:勇者特急隊
全高:23.5メートル
全備重量:82.4トン
武装:カイザービーム、カイザースパイク、カイザーバルカン、カイザーハリケーン、カイザードリル、
主なパイロット:旋風寺舞人

勇者特急隊で元々はマイトガインの強化パーツ兼特殊車両として開発されていたドリル特急・カイザー1~カイザー5を、単独で人型に合体できるよう設計を変更し完成したロボット。
先日のヴォルグガングとの戦闘において、ジャミングによって超AIが機能しなくなる事態が発生しており、その対策として今回の変更が行われている。
マイトガインと異なるのはフェイズシフト装甲を採用していないことで、全身を強固な対ビームコーティングでおおわれており、ヒリュウブレイザーのようなビーム兵器を受けても無傷なほどの防御力を誇る。
そのため、仮にマイトガインの強化パーツとなった場合はフェイズシフト装甲と併用することでビームと実弾双方で高い防御力が期待される。
ただし、AIが搭載されていないことと機体そのものの性能が飛行可能ではあるものの隠し玉となりえる強力な兵装が搭載されていないことからパイロットである舞人の純粋なパイロットとしての技量が試される機体となっている。
なお、イレギュラーな形で勇者特急隊の一員となったブラックマイトガインへの合体は想定されておらず、仮に必要となった場合は専用に調整された新たなマイトカイザーが必要となるだろう。

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