スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

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オーブ首長国連邦の中立について

「オーブは他国を侵略しない、他国の侵略を許さない、他国の争いに介入しない」
オーブがこの中立を維持できたのは軍事力、そして経済力の高さ故だといわれている。
元は産油国であったが、石油の枯渇後はその資本によって工業国家へと転身しており、これについてはそれを見越したうえで、既に工業国家となっていた日本へ積極的に留学を行ったことが大きい。
それが可能だったのは再構成戦争の際に多くの日本系移民が入植しており、元々日本とこの上なく縁の深い国だったからともいえる。
また、火山列島であることの恩恵を受けた地熱発電でエネルギーを確保し、輸入した資源を加工輸出する傍ら、赤道直下という立地を生かし宇宙港の誘致に成功し、宇宙と地球の交易中継地となるとともに、技術力確保のために国家を上げてコーディネイターの受け入れを行った。
3年前の大戦において、オーブや日本をはじめとしたコーディネイターを受け入れている各国はプラントに代わり地球で多くの工業製品を地球各国に輸出するようになり、同時に軍事技術の輸出にも手を出した。
それにより、この大戦で大きな果実を手に入れることとなるとともに、オーブが戦火に巻き込まれる原因ともなった。


第74話 人VS人

-オーブ近海-

「各機、そのまま戦線を維持しろ!奴らを一匹たりともオーブに入れるな!!」

多くの戦艦と空母が水上でドラゴンたちを確認し、ミサイルとビームで迎撃する。

そして、上空では多くのモビルスーツがドラゴンの侵攻を阻止すべく交戦する。

出撃する機体の大半がムラサメ、もしくはそのマイナーチェンジ機であるムラサメ改だった。

だが、その中でひときわ目立つのが黄金のモビルスーツであるアカツキだ。

オーブのフラッグシップ機として開発されたものであり、パイロットは1年前の大戦でパイロットを任された男、ムウ・ラ・フラガだ。

「まったく、モビルスーツとか戦艦じゃなくて、まさかこんなものと戦うことになるとはなぁ!!」

大気圏内航空装備であるオオワシに搭載されているビーム砲でスクーナー級2機を撃ち抜くと、その後方にいるガレオン級の頭部に向けてビームライフルを発射するが、バリアによってビームを阻まれ、迎撃のために放たれる電撃の隙間を飛ぶ。

「ドラゴンはエリアDにしか現れないんじゃなかったのかよ!!」

アークエンジェルで指揮を執っているマリューとともに、ムウも事前にドラゴンやエリアD、始祖連合国についてカガリ、そして帰還したアサギ達から話を聞いている。

胸糞が悪くなる話であるとともに、心のどこかでは自分がかかわることのない話になるだろうと考えていた。

だが、その考えが大外れとなってしまった。

ムウの家はナチュラルであるにもかかわらず、先祖代々先読みという能力を備えている。

その能力ゆえに代々資産家として続いており、同時にムウが持つドラグーンを使えるほどの高度な空間認識能力もそこから来ている。

ふいに、死んだ父親のことを思い出す。

彼は自分のことを才能をろくに受け継いでいない出来損ないと呼んでいた。

能力があっても、人間性は最悪な彼のようにはならないと思っていたムウだが、今この時は彼のような才能が少しでもほしいと思ってしまう。

「お前ら、不用意に近づいたり、物理法則みたいな固定概念は捨てろ。相手はそういったものが通用しない存在だからな!!」

既にソレスタルビーイングにはドラゴン襲来についての連絡が入っており、おそらくはアルゼナルからここまでくることになっている。

到着まであとどれだけの時間なのか。

「隊長、ボース粒子反応確認!!」

「来たか…!!」

 

オーブ艦隊の正面に発生するボース粒子。

粒子が収まるとともにナデシコCとトレミー、マサアロケットJr.が姿を現し、カタパルトからは機動兵器の発進準備が開始される。

カタパルトに接続され、出撃しようとするスペースガードダイバーとバトルボンバーが口を開く。

「ヴィヴィアンがドラゴンになった…。もし、あのドラゴンたちの正体が人間だとしたら…」

「我々は…戦っていいのだろうか?」

何も知らないままなら、正体不明の怪物として迷うことなく戦っていたが、真実を知ってしまった以上はもう何も知らないヒーローに戻ることはできない。

真実、といってもジルが話したものすべてを飲み込むつもりはない。

中途半端な情報だけで戦えるほど、単純ではない。

「戦いたくないなら、引っ込んでなさいよ」

「アンジュ…」

「私は生きる…そのためなら、誰かを殺したとしても…世界を破壊したとしても…。今までだって、人間と戦ってきたわ。たとえ、ドラゴンが人間だったとしても、やることは変わらない」

舞人のようなヒーローでも、キラのような超人でもないアンジュにとって、戦う理由はそれで十分だ。

火星の後継者やジオン、アマルガムとの戦いがなければ少しは違ったかもしれない。

だが、既に人を殺している経験をしている以上、ドラゴンが人間だから戦わないなど、彼女にはあり得ない話だった。

「ヴィルキス、行くわよ!!」

ナデシコCから飛び立つヴィルキスはさっそくその言葉を実行に移すべく、アサルトライフルでスクーナー級の頭を撃ち抜く。

仲間を殺されたことに激怒したのか、数匹のスクーナー級が襲い掛かるが、ラツィーエルの刃によって切り裂かれた。

その近くではライジングフリーダムの姿があり、空母に近付くスクーナー級の集団をバルカンで攻撃し、羽にダメージを与えて海へ落とす。

ガレオン級やガレオン級よりも巨大なフリゲート級に対しても、ビーム砲やレールガンの火力をぶつけて注意を自らに向けてから接近し、ビームサーベルで羽を切り捨てる。

「キラさん…」

インパルスspecⅡをルナマリアに預け、再びデスティニーに乗り込んだシンはキラのドラゴンへの戦いの変化を見ていた。

殺さずに無力化、もしくは戦線からの脱落をドラゴンに対しても行っていた。

それは効果があり、ほかのドラゴンが海に落ちたりしたドラゴンの救助を優先する動きを見せていた。

それは刹那も同様で、刹那はGNソードⅤのソードモードとGNソードビットのみでドラゴンたちをキラと同じように無力化して回っていた。

「刹那、君はどうする?」

既に彼の中で答えは決まっているだろう。

あくまでもティエリアのこの質問は確認作業でしかない。

「まずは…対話を試みる。すべてはそれからだ」

すべてを理解したうえで戦いそのものを止める。

今のダブルオークアンタでは難しく、今はオーブを守るために戦うしかない。

だが、それでも対話することだけはあきらめない。

矛盾しているようだが、成し遂げるためにも死ぬわけにはいかない。

「私もキラと刹那に賛成ーーー!!」

「ヴィヴィちゃん!」

出撃準備をしていたエルシャはライダースーツ姿のヴィヴィアンに驚きを隠せず、そんな彼女を無視してレイザーに乗り込む。

「ヴィヴィちゃん…いいの?」

いつも通りのように見えるが、エルシャには彼女に違和感を感じていた。

確かにヴィヴィアンは明るく人懐っこいが、今の彼女はいつも以上に思える。

「ここでクイズでーす!!人間なのにドラゴンなのって…なーんだ!」

「え…?」

「あれ…?あ、違うか…。ドラゴンなのに…人間、あれ??あれれ…?自分でも、わからなくなっちゃった…」

徐々に声が震えだし、ヴィヴィアンの視界がゆがむ。

レイザーの動きが鈍くなっているのが見えたスクーナー級の1体がビームを放とうとするが、側面から飛んできた弾丸で頭部がつぶれ、海へ堕ちる。

「ヴィヴィアン!!」

「ナオミ…」

ナオミに助けられ、安堵感と同時に堕ちていくスクーナー級に抱く哀れみ。

思い出してしまうドラゴンとしての自分の姿に頭がおかしくなりそうだった。

「分かるよ、ヴィヴィアン!!」

ガレオン級を凍結バレットで沈めたアンジュには出題者ですらわからないその問題に胸を張って応えることができる。

出題されようがされまいが、答えは変わらない。

「あんたはヴィヴィアン!ドラゴンでも、人間でも…あんたはヴィヴィアン!!私たちの仲間よ!」

「アンジュ…」

「おかえり、ヴィヴィちゃん」

「ただいま…エルシャ…みんな、ただいま!!」

涙をぬぐい、視界が戻ったヴィヴィアンはブンブン丸を投擲してドラゴンたちを追い払う。

仲間と言ってくれたことで、彼女の中から迷いがなくなった。

「あいつ…ガラもなく気にしてやがったんだな」

ガトリングガンで弾幕を張るロザリーはヴィヴィアンの意外な姿を笑ってしまう。

そんなことを気にする必要なんてどこにもないのに、と。

「ここにはいろんな種類の人たちがいるんだ…。そして、みんな…仲間なんだ」

キラの脳裏に浮かぶ自分を友と呼んでくれた、今は亡き友達。

彼とはもう話すこともできないが、それでも今キラの周りにはコーディネイターやナチュラルと分けることすら野暮と言わんばかりの多くの仲間がいる。

それがキラのこの3年間を肯定してくれる。

「…」

「ヒルダ…」

ジルの命令でアンジュと同じく処分が解除され、グレイブで戦うヒルダだが、いつもしているはずのロザリーとクリスとも連携が目に見えてできていない。

前に出ているヒルダをかろうじてロザリーが後方支援することができているものの、クリスに限ってはロザリーはともかくヒルダへの支援は何一つできていない。

あの場にいなかったナオミだが、アキトから3人に何が起こったのかという話は聞いている。

アキトからはヒルダにアドバイスを送っているが、果たしてそれが為されるかどうか。

そして、このわだかまりがコンディションにも影響を与える。

ガレオン級が放つ電撃がヒルダのグレイブのバックパックをかすめる。

いつもなら難なく避けられるはずの弾幕を受けてしまったことに衝撃を受けるヒルダだが、そんな彼女にスクーナー級が口を開けて襲い掛かってくる。

「くっそぉ!!」

避けられない、そうおもったヒルダ。

だが、攻撃するはずのスクーナー級がアサルトライフルの弾丸でハチの巣にされて海に落ちていった。

機体を失ったロザリーはジルから支給されたノーメイクのグレイブに乗っている。

あくまでもレンタルのため、アサルトライフルと凍結バレットが装備されているだけで、アスランから出撃を止められたものの、ロザリーは出ることを選んだ。

「大丈夫かよ、ヒルダ!!」

「ロザリー…」

ヒルダのグレイブに支えられ、その間に復旧したヒルダのグレイブが彼女の下を離れる。

「なんで…」

「ちゃんと聞いてないからだよ!!お前の口から、ちゃんとな!!」

それを聞かないまま死なれたら、後味が悪すぎる。

言わなきゃいけないことは、ヒルダでもわかっていることだろう。

「…ごめん、ヒルダ…クリスも…」

自分の過去と強がりのために、傷つけてはならない2人を傷つけてしまった。

今になって、あんなことを言ってしまった自分を思い切り殴りたくなってくる。

そして、殴ってくれなかったアンジュへの理不尽な逆恨みも。

「許してやるよ」

「え…?」

「へへ…ヒルダが謝るなんて、友達やってて初めて聞いたかもしれねえな!!」

些細なケンカに対してかのようなさっぱりした謝罪の受け入れ。

そんなことでは許されないくらいの裏切りだったのに、あっさりとした決着に拍子抜けするヒルダ。

だが、家族の裏切られた悲しみをいまだに宿すヒルダにはありがたいことだ。

「ありがとな、ロザリー…」

「ハハハ!!今度は感謝まで、こいつは天変地異でも起こるな!でも、巻き込むのはドラゴンだけにしてくれよ!」

「うるせーよ…」

「…」

ロザリーとはこれで問題ないだろう。

だが、クリスは一人で戦い続け、ヒルダのロザリーの話を聞いているにも関わらず、何も話そうとしない。

「無駄話はしない!今はドラゴンに集中しなさい!!」

「ちっ…うるせーよサリア!」

(サリアもサリアで…なんだか、おかしい…)

あの新種のドラゴンとの戦いでようやくできたと思われた輪が崩れかけているのをナオミは感じる。

ヒルダのことについてはクリスがまだ許していないが、これは3人の中の問題のため、彼女たちの心で決着をつけないといけない。

だが、問題なのはサリアだ。

本来すべき隊長としての役割を果たさず、単独でドラゴンと戦い続けている。

ヒルダ達への注意についても、隊長としてトラブルを防ぐというよりも戦う邪魔をされたくないだけ。

そして、彼女の目は常にヴィルキスを追いかけている。

(こうなったら、アンジュ以上の実力を見せて、認めさせるしかない!!)

リベルタスのことを話したということは、アンジュたちも計画に巻き込むつもりだということは目に見えている。

確かにアルゼナルの戦力だけでリベルタスを起こしても失敗は見えているだけ、戦力を増やすことには異論を唱えるつもりはない。

だが、アンジュをそれに加えること、それだけは認めたくない。

たとえ、ヴィルキスに乗れなくても自分にはジルを守るという役目がある。

それを譲るつもりはない。

「サリア…」

損傷している戦艦の援護を行うシンも、サリアの異変を感じ取っていた。

というよりも、彼女からは既視感を覚えていた。

あの戦い方と様子はまるで…。

「ルナ、ここを頼む!」

「え…?わかったわ、シン」

彼女に任せたシンはデスティニーをサリアのアーキバスの下へ飛ばす。

接近してくる何も関係のない男にサリアはいらだつ。

「何よ、別に助けなんていらないわよ」

「サリア…お前はいったいなんのために…誰のために、戦ってるんだ?」

「…どういう意味?」

「いや…忘れてくれ…」

嫌な予感を感じずにはいられない。

シンにはサリアが今のままではとてつもない過ちを犯してしまうように思えた。

1年前の自分と同じように。

だが、それを止める力がないこともシンはわかっていた。

(今の俺に…こんな状態の俺に、誰かに何かを言う資格はない…)

 

「シン…」

シンがサリアに何かを伝えようとしていることをドラゴンをバルカンで攻撃するキラも感じていた。

サリアの異変についても。

だが、止めることができるのは自分ではなく、同じ痛みや苦悩を抱えていた人間かジルだろう。

だからこそ、見守るしかない。

「大した戦いよね、キラ。まさかドラゴンを殺さずに無力化しつづけるなんて…」

スクーナー級はバルカンのみで攻撃し、ガレオン級についてはビームライフルやシールドブーメランを使って羽根を攻撃して飛行能力を奪うにとどめている。

無論、味方が命の危機の場合はやむなく命を奪う形をとっているが、それでも行動不能となるドラゴンの方が圧倒的に多く、そのドラゴンたちは仲間によって救助されて戦線を離れている。

「ただ、あなたの優しい考えをあの血に飢えたドラゴンたちが理解してくれるとは思わないけど…」

たとえ姿かたちが人間だとしても、中身が化け物ということもよくある話。

それを既に経験済みのアンジュで、アンジュ以上に長く戦ってきたキラも、そういう経験をしているはず。

「うん…」

「死ぬかもしれないわよ、それも…あいつらに食い殺されるっていう最悪な終わり方で」

「それでもだよ、わがままな自己満足だといわれてもね」

少なくとも、1年前の戦いはそんな甘い戦いをしていた。

一時はザフトに復帰したアスランからも厳しく指摘されたことを思い出す。

しかし、誰かに与えられたものではない、自分で勝ち取った答えを捨てるつもりはなかった。

「自由なのね、キラは」

「…ジル司令の話を聞いて、分かったことがあるんだ。僕のフリーダムは君のヴィルキスをベースとして開発されたってことが。だからこの機体にはフリーダム…自由って名前が付けられたんだ」

開発を計画していたアスランの父親であるパトリック・ザラがその時、戦うべき存在や始祖連合国のことをどれだけ知っていたのかはわからない。

あくまでも、コーディネイターに自由をもたらす存在という意味合いだけかもしれない。

だが、ほんのわずかでも願いが込められていることをキラは信じたい。

フリーダムが決して憎しみだけで生まれたものではないことを。

「とびっきりのパイロットを見つけたというわけね…そいつは」

「ヴィルキスは違うの?」

「どうかな…?」

「ナデシコよりヴィルキスへ!赤いパラメイルが来ます!気を付けてください!!」

ハーリーからの通信と送られた座標。

急ぎフライトモードへ変形したヴィルキスがそこへ飛んでいく。

「キラ、任せるわよ!!」

「アンジュ…」

「ジルは信用できない。話すなら…あいつから!!」

赤いパラメイルはオーブ軍のムラサメやシュライクを装備したアストレイを手にしているビームライフルで次々と撃破していた。

最も、攻撃したのはムラサメのバックパックやアストレイに装備されているシュライクだけで、先頭不能にしているだけの状態だ。

キラと同じような戦いをしているあの機体に違和感があるが、そんなことを気にしている場合ではない。

「聞かせてもらうわよ!いろいろと!!」

「来ましたわね、ビルキス…」

こちらにアサルトライフルで攻撃を仕掛けながら接近してくるヴィルキスに赤いパラメイルのパイロットは以前の戦いを思い出す。

右腕を切り落とされ、帰還後はせっかくの機体をここまで傷つけたことに説教されてしまった。

「このまえのお礼…させていただきますわよ!」

踊るようにアサルトライフルの弾幕から逃れ、ビームライフルで反撃する。

ちょうど直撃コースのところへの発射のため、いくら凄腕のパイロットでも完全な会費は難しいだろう。

だが、ヴィルキスは装甲を青く染め、同時にその場から最初からいなかったかのように消えてしまう。

次の瞬間に現れたのは背後で、アサルトライフルを手放したヴィルキスがラツィーエルで切り付けてくる。

「その動きはもう見ました!!」

同じ手に2度やられるつもりはないと赤いパラメイルが左腕のビームガンから発生させたビームの刃でそれを受け止める。

「ビームトンファー!?」

「これだけ近づければ…!!」

アンジュがやりたいのはこの赤いパラメイルを倒すことではない。

オープンチャンネルに切り替え、更には音量を引き上げたうえでアンジュは叫ぶ。

「赤いパラメイルのパイロット!!聞こえているでしょう!!聞こえているなら、返事をしなさい!!」

「何!?」

耳に突き刺さるように声がコックピット内に響き渡る。

スピーカーからだけでなく、おまけに装甲を介して外からも聞こえてくる。

「ええっと…チャンネルを言うわよ!チャンネルはA-277!!聞こえているなら、つなげなさい!そうじゃなきゃもっと音を上げるわよ!!」

相手の機体にチャンネルの類が通用するのかはわからないが、何もないよりはましだろう。

それがだめなら、今の手を何度でも使うだけ。

別に相手にそれを納得してもらおうとは思わない。

ただ自分がすっきりしたいだけだ。

「あのパイロット…しかし!!」

赤いパラメイルはヴィルキスに蹴りを入れて距離をとる。

蹴り飛ばされたヴィルキスは上空で態勢を整えつつ、コックピットの中でアンジュは回りかけた目を覚まさせて赤いパラメイルをにらむ。

「逃がさないわよ!!」

「聞くつもりはありませんわよ!あなたの話など!!」

「人間の声…?」

通信機から聞こえてきた、聞いたことのない人間の女性の声。

チャンネルはアンジュが指定したもので、相手がそれに対応している。

ドラゴンとともに戦っているということは、彼女もまたドラゴンということなのか。

だが、通信をつなげながらそんな返答をされては腹が立つもの。

「あっそう!!だったら、力づくで聞いてやるわよ!!」

要求をのまない、もしくは話を聞かない相手への対応のやり方をかなめから聞いたことがある。

その相手の肉親を人質に取り、吊り下げたうえでロープを1本1本切るというもので、聞かなければその肉親は真っ逆さまに地獄へ落ちることになる。

それだけで恐怖感が足りなければ爆弾を仕掛け、どのスイッチで爆発するかわからない状態で1つずつ押していく。

なお、仮に彼女が将であり、周囲への面目を保つ必要があるのであれば、その周囲の詳細なプロフィールと大切なものを言い当てて、戦意を落としてしまえばいい。

なお、これらはどれもかなめのアイデアではなく、あのふも野郎がやったことだという。

ある不良グループに捕まったかなめはそれによって助けられたが、正直釈然としなかったという。

あくまでも彼のとった手段としては相対的に平和的な方法だったからそうなっただけで、一般人がこんな手段を問ったら警察のお世話になることは言うまでもない。

ちなみに、その時宗介が人質にしたのは不良のリーダーの弟で、彼とはすでに話を済ませており、ロープで吊り下げた際もワイヤで固定するなど安全には配慮していた。

そして、作戦終了後は協力してくれたお礼として彼が欲しがっていたラジコンをプレゼントしている。

ただ、今のアンジュにその手段をとるためのカードがない。

力づくで捕まえて、より古典的なやり方をとることくらいだ。

(対話か…)

ドラゴンに対応するティエリアだが、今の状況では難しいことを理解している。

アンジュはともかく、それ以外のアルゼナルの面々はこれまでの戦いで多くの仲間をドラゴンに殺され、彼女たちもまた多くのドラゴンを殺している。

赤いパラメイルのパイロットにとって、ヴィルキスは多くの仲間を殺した仇とみられている可能性も高い。

だが、それで諦めては前に進めない。

そして、ここには現状を覆す可能性が存在する。

「刹那!!」

「了解、クアンタムバースト!!」

ソードビットが周囲に展開され、2つの太陽炉が連結すると高濃度のGN粒子が周囲に展開されていく。

今の太陽炉の調整では、クアンタムバーストの出力をこれ以上引き上げることはできない。

ティエリアがモニタリングをするが、やはり想定を超えた数字には至っていない。

だが、高濃度のGN粒子の中に2機のパラメイルも入っていき、緑の粒子で満たされた白い宇宙のような空間がアンジュの周囲に広がっていく。

 

「これって…」

ヴィルキスのコックピットにいたはずなのに、なぜかこの空間に立っている状態で、しかも何も身に着けていない状態だ。

目の前には、自分と同じくらいの年齢で長い黒髪の少女が自分と同じような状態で立っていた。

「あなたは…?」

「…私はサラマンディーネ…この龍神器、焔龍號の操者です。あなたが…ビルキスを駆るものですね?名前を聞かせてもらえませんか?」

目の前の彼女からは敵意が感じられない。

先ほどまであれだけ戦っていたのに。

こちらも、力づくでどうにかしようという気持ちがこの空間のせいなのか消えている。

これがGN粒子とイノベイターの力というのか。

ヴィルキスではなく、ビルキスと呼んでいることは気になるが。

「…アンジュ」

「初めまして、というべきでしょうか。不思議ですね、このような空間は…あなたと自然と話すことができます」

「ええ…私も、同じ気持ちよ。でも、きっとそれだけじゃないと思う」

「私と、あなた…私たちの時空を超えた因縁…」

「何よ、それ」

「うまく言うことはできませんが…」

サラマンディーネの背後に焔龍號が現れ、彼女の身体がそれに引っ張られていくようにアンジュから離れていく。

「待って、まだあなたに聞きたいことが!!」

「あなたの聞きたいことにこたえることはできません。あなたは…いえ、この世界に住むものたちは、私たちの敵だからです」

露出度が高いピンクの着物に身を包んだサラマンディーネを焔龍號がコックピットを開いて出迎える。

アンジュもいつの間にかメイルライダーの姿に戻っており、背後にはヴィルキスが待っていた。

 

「今…確かに、はっきりと聞こえた…。これが、ドラゴンたちの声…」

「ああ、チトセちゃん。ニュータイプじゃない俺にも、ちょっとだけだが聞こえた気がするぜ」

頭痛を促すような声にならないものではない、人と人との会話のような声。

高濃度のGN粒子はチトセやティエリア、刹那のような特別な人間だけでなく、ソウジのような一般の人間をも対話の扉へと導いていた。

「これが…GN粒子の力…」

「イオリア・シュヘンベルグが言っていた、異種との対話…。GN粒子がその力になる」

フェルトとスメラギにも聞こえたドラゴンの声。

そして、GN粒子の中から感じた刹那の対話を求める思い。

今の段階のクアンタムバーストでもここまでのことができるとしたら、本当に戦いそのものを止めるためのガンダムがダブルオークアンタで実現するかもしれない。

(そう…これがイオリアの計画、僕たちはその入り口にいる…)

ティエリアがヴェーダで見たイオリアの計画、異種との来るべき対話のための準備。

宇宙へ進出した人類が外宇宙で異種の生物に遭遇するまでに、人類はある程度意思統一をしている必要があり、計画としてはその遭遇が始まるのがさらに数百年先となる。

外宇宙ではなく、異世界からの来訪者であるドラゴンが相手というイレギュラーがあるが、当初の計画よりも早まったようにも思える。

先ほどまで攻撃を仕掛けてきていたドラゴンたちはGN粒子のせいなのか、動きを止めていた。

(サラマンディーネ様…)

「皆は攻撃を止めなさい。ここから…邪魔立ては許しませんよ」

(承知いたしました、ご武運を)

「ありがとう…いざ!!」

「勝負よ、サラマンディーネ!!」

静寂を突き破るのは刃を交える音。

刃がぶつかり合い、ビームと凍結バレットが交差する。

「待てよ、アンジュ!わかり合ったんじゃないのかよ!!」

まだGN粒子が残っていて、ドラゴンたちは動きを止めているのにどうしたのかシンには分からない。

分かり合ったのなら、もう戦う必要はないはずなのに。

「それとこれとは話が別!そういう問題じゃないのよ、あいつとは!!」

「そちらがその気なら、迎え撃つまで!!」

ライフルのエネルギーが切れ、新たなEパックを装填した焔龍號。

既にアサルトライフルを手放し、凍結バレットももう弾切れのヴィルキスに飛び道具がまだあり、あの嵐のような兵器も持つ焔龍號を相手にするのは難しい。

「アンジュ!!これを!!」

アンジュの下へ飛んできたタスクのアーキバスが手にしているアサルトライフルをヴィルキスに向けて投げる。

ライフルを受け取ったアンジュはビームを紙一重でよけつつ、アサルトライフルを連射する。

「ああなっちまったら、とことんやらせるしかないな…。幸い、ドラゴンたちは戦うつもりがなさそうだしよ」

(気を付けてください、キャップ!姉さん!)

「所属不明機、接近!データ照合…これは、アールヤブです!!」

ナインとハーリーからの通信、そして同時に別方向から襲い掛かるビームの雨あられ。

動きを止めていたドラゴンやオーブ軍のモビルスーツや戦艦が巻き込まれ、撃墜されていく。

「ガーディム!!」

「ソウジさん、見てください!あの機体…!!」

アールヤブの大群たちよりも前に出て飛ぶ複数のプラーマグ。

そのプラーマグの部隊の中央にいるのは灰色のウィングバインダーがついたブラーマグ。

「よう、叢雲総司…如月千歳」

オープンチャンネルで飛んできた声はもう聞くことはないと思われたものだった。

「グーリー!生きていたのか!?」

あの機体の爆発の中で生きていたとは到底思えない。

だが、通信モニターに表示されているのは幽霊ではない、グーリー本人だ。

「何をそんなに驚いてやがる?あの戦いは俺の勝利で終わったはずだろう?で、お前がどうにか逃げ伸びたんだろうがよ」

「どういうことだ…?」

嘘をついている様子はなく、まるでそれが真実のように語るグーリーにソウジとチトセは混乱する。

彼に腹芸のようなことはできると思えず、仮に本気でそう思っているなら、爆発の中で生き延びたのはいいが頭を強烈に打って、記憶があいまいになったのかとも思ってしまう。

「お前らを確実に仕留めると上に言ったら、機体をパワーアップしてくれたぜ。こいつなら、更にスピードを追求できる」

 

「何者ですか?彼らは!」

「ガーディムよ。それ以外は何もわかってない、迷惑な奴ら!!」

「同胞を傷つけるとは…許しません、ガーディム!!」

フライトモードへと切り替わった焔龍號が飛び、そのあとを同じくフライトモードとなったヴィルキスが追いかける。

焔龍號にビーム砲で仕掛けてくるアールヤブにアサルトライフルを打ち込んで注意を引き付ける。

「助太刀は無用です!!」

「そうはいかないわ!あんたとは…決着をつけなきゃいけないんだから!!」

「ならば…!」

いつの間にか周囲に展開されたアールヤブ達に、ヴィルキスと焔龍號がアサルトモードとなって背中合わせに構える。

そして、焔龍號がヴィルキスに装備していた予備のビームライフルを差し出す。

「そのライフルでは無理です。こちらのライフルを使いなさい!」

「礼は言わないわよ」

 

「どうしたどうしたぁ!その程度のスピードか、お前らは!!」

近づいてはビームカッターで、離れてた両腕のビーム砲と火星でも見せた遠隔操作式のクローで攻撃を仕掛けてくる。

攻撃手段そのものは火星の時と変わらないが、最大の問題はプラーマグの動きだ。

以前の戦闘データからシステムを再構築し、どうにか動きが終えるようになったにもかかわらず、レールガンもビーム砲もかすりすらしない。

おまけに、プラーマグが分身しているようにも見える。

「キンケドゥの旦那が乗っていたF91かよ!!」

「ドラゴンどもとは一時共闘か…。下等種族どもが、節操がない上に始末が悪い!」

プライドを捨てて、生存のために殺し合った相手と手を組む。

そういった存在を数多く見てきたが、いずれも必ずほころびが出て、互いにつぶし合って最後はそろってガーディムに敗れる。

そういうケースを何度も見てきた。

「ソウジさん!!」

救援のために急速に接近してきたフリーダムがシールドブーメランをクローにぶつける。

ぶつかり合ったそれらが爆発し、残り1基のクローが襲い掛かるが、ビームサーベルであしらい、そのままプラーマグに突っ込む。

襲い掛かるビームの刃をブラーマグがビーム砲から発生されたビームソードで受け止める。

「てめえ…!!」

「共闘して何が悪いですか!!お互いに憎み合って…殺し合ってきた相手であっても、分かり合うことができる!僕たちは過ちを犯すけれど、それを省みて、やり直すことだってできる!それの何が悪いんですか!!」

「キラ…」

「キラさん…」

2度の戦いで、キラもアスランもシンも、多くの過ちを犯した。

その中でニコルやトール、フレイ、ステラ、レイなど、多くの大切な人たちを失ってしまった。

死んだもの、失ったものは戻らない。

だから、今残っている大切なものをこれ以上失わないためにやり直している。

この世界も同じだ。

「ミスなんて許されねえんだよ!一度でもミスを犯したらデリートされる。それが…ガーディムのやり方だ」

自由になっているもう片方のビーム砲を撃つが、既にフリーダムは距離をとっていて、ビームライフルで牽制する。

「失格なんだよ、お前らは!!」

「誰かが…誰かの生命や運命を決めることを、僕は認めない!!そのためなら、命を懸けて戦う覚悟がある、それをあの人に誓ったんだ!」

崩壊しつつあるメサイアの中で銃を向けた、1年前の戦争の黒幕となった男、ギルバート・デュランダル。

彼に銃を向け、彼と対話をしたことでキラは覚悟を決めた。

彼の未来を否定した自分には戦い続ける責任があるのだから。

(キラ…)

「きれいごとを!!そんなもの、弱者のたわごとだ!!」

プラーマグのバックパックの各部パーツが光ると同時に数多くの分身が出現する。

フリーダムのレーダーは現れては消える分身もすべてプラーマグと識別しており、キラはメインカメラだけを頼りに動きを追う。

「それでも!!」

「黙れ!それ以上は時間の無駄だ!!」

「それでも、僕は!!」

「黙れと…言っているんだああああああああ!!!!!」

後ろを取ったグーリーはビーム砲の照準をフリーダムに合わせる。

この一撃でこのわからずやを仕留めることができる。

だが、新たに接近してくる反応がそのチャンスを奪う。

「うおおおおおお!!」

「新手か!!」

急速に接近してきたデスティニーのアロンダイトの刃が襲い掛かり、その場を離れつつ分身を展開する。

「シン!!」

「グーリーとかいうやつ!さっきから聞いていれば…綺麗事の何が悪い!!理想のために戦って、何が悪いんだ!!もうゴチャゴチャ考えるのはやめだ!!俺も、キラさんと一緒に戦う!!」

「何を言ってやがるんだ、こいつは!!」

わからずやは一人で十分だというのに、また増えた状況に頭を抱える。

そして、こんなわからずやにてこずる自分に腹が立つ。

「シン…」

「キラさんが命を懸けて自分の意思を…自由を、通そうとしている…。やっと、その覚悟がわかりました。さっきの、GN粒子のおかげかな…?」

「違うな、シン」

グーリーの援護のために接近しつつあるアールヤブの2機が接近してきたジャスティスのビームサーベルで切り裂かれる。

「本当は、ずっと前から答えが出ていた。おまえは、それをようやく認めることができたんだ」

「…そうかもしれません。だから、俺も戦います!綺麗事と言われても、正面から相手に向かっていくキラさんみたいに!!俺はもう逃げない…!自分の中の負い目から、過去から!!」

 

「スメラギさん!大気圏に突入する艦が1隻、こちらへ接近しています!」

「来たわね…」

フェルトから接近する艦の情報をもらわずとも、スメラギはその艦が何かはわかっていた。

アールヤブ達もそれに気づいたようで、一部が迎撃のために向かっていった。

降下してくるのはミレニアムで、艦橋には2度の大戦で活躍したエターナルのクルーたちが乗り込んでいた。

「艦長、無人機が接近しています」

ミレニアムの情報解析を行う新参者、アルバート・ハインラインの早口が艦長であるコーヒーを飲むバルドフェルドに伝わる。

白い髪で左目に通信機能付きの赤いレンズの片眼鏡を付けたこの男はミレニアムの技術責任者としてラクス達に協力してくれている。

苗字からわかるように、プラント国防委員会管轄の下でMSや戦艦の開発を行う行政機関である設計局の一つのハインライン設計局に関係している人物で、その設計局はジンなどのザフトの汎用量産型モビルスーツの開発にかかわっている。

そんな彼が有能なのはわかるが、それと引き換えとなったのかとてつもなく早口で、とてつもなく人当たりが悪い。

有能さ故にかろうじて反乱が起こっていないが、いくら実力主義のプラントであっても扱いづらい人材ということでラクス達への協力を認める形で追い出された経歴を持つ。

最も、彼自身はそんなことは気にしておらず、むしろわずかながら敬意を払うことのできる人物であるキラとラクスの元で働けるということで喜んで荷物をまとめて出ていったのだが。

「誘導砲塔を使え!ミレニアムに近づけるな!対空防御!!」

「了解」

アルバートの操作により、艦首下部側面から有線で分離した4基の連装砲が接近してくるアールヤブに襲い掛かる。

四方八方から襲い掛かる連装砲の弾丸、更に対空機銃の嵐がアールヤブの接近を許さず、鉄くずへと変えていく。

「ミレニアム…!」

キラ達はマリューからこの艦についての話を聞いていた。

アークエンジェルとミネルバの血を感じるということで、気に入っていた様子だ。

「お待たせいたしました、キラ」

「ラクス…来てくれたんだ」

モニターに映るミレニアムの艦橋の様子とラクスの笑顔。

ようやく再会できたことへの安堵がキラの中で満たされていく。

「ジル司令から、ここでの戦闘についてのお話を聞きました。そして…時が来た、とも」

「え…?」

ジルの言う『時』というのはおそらく、リベルタスのことだろう。

だが、なぜそれをラクスが知っているのか?

そもそも、ラクスとジルには何も接点がないはずなのに。

「キラ、ラクス姫はコーディネイター誕生の真相を知っている、数少ない一人なんだ」

「タスク…」

「父であるシーゲル・クラインから、その秘密の一部を聞かされていたのです。ですが…何をすればいいのかは私も分かっていません…」

本当であれば、シーゲルはそのすべてを娘に伝えるはずだった。

だが、3年前の大戦で強硬派のパトリック・ザラに実権を奪われ、パトリックの指示を受けた特殊部隊によって射殺されてしまったことで、ラクスが教わることができたのは一部のみ。

かつてキラがプラントで治療を受け、そこから地球へ戻るときにラクスの手引きによってフリーダムを手に入れたが、実際のところはそれの強奪計画を練っていたのはシーゲルだった。

実権を奪われたシーゲルはザラ派の脅威を感じたことから議員職からも身を引いており、過激化していくザラ派にNジャマーキャンセラー搭載機やそれに関係する装備や機体を1つでも多くザラ派に渡さないために強奪計画を練っていた。

彼と理想を同じくする一部の上層部もそれに賛同してくれて、そのおかげでキラはフリーダムを手にすることができた。

また、フリーダム以外にも試験機の確保にも成功しており、これについては秘密裏にマルキオ導師の元に紆余曲折の末に送られたという。

これはエイプリルフール・クライシスを引き起こしたことへのケジメだったと思われる。

「だからこそ、何をすべきかを少しでも真実を知るものとして、見つけます」

何も知らない状態へは戻れない以上、それしかシーゲルの想いにこたえることはできない。

そのためにも、まずは力をキラに届けた。

「行こう、シン!」

「はい、キラさん!!」

二人の脳裏に種が砕け、その中に隠された何かが解き放たれるビジョンが浮かぶ。

「こいつら…まずはてめえらを始末してやる!!」

ブラーマグがいくつもの分身を生み出してフリーダムとデスティニーに襲い掛かる。

分身と本体が生み出す弾幕をかいくぐり、デスティニーのアロンダイトが本体に振り下ろされ、グーリーはビーム砲から放出したビームサーベルで受け止める。

「こいつ…!」

デスティニーの動きの迷いのなさ。

あの機体は分身に対して一切攻撃する様子がなく、ピンポイントに本体を見つけてこちらに襲い掛かっている。

「そんな寝ぼけた分身が、俺に通用すると思うなぁ!」

「お前、獣かよ!!」

本体を見つけ出すシンだけでなく、キラとソウジまで相手にしなければならない事態。

己の不利を感じるグーリーに暗号通信が届く。

その内容は不本意なもの、だが応じるしかなく、唇をかみしめる。

距離をとったブラーマグが付近のアールヤブにカメラで光通信を送る。

すると、交戦していたアールヤブ達が次々と後退していく。

「…勝負は預ける」

それだけを言い残して去っていくグーリーとガーディムの軍勢。

レールガンを向けていたヴァングレイが銃口を下げ、フリーダムとデスティニーがその後ろ姿を見送る。

「キャップ、敵は何かの通信を受けたものと思われます」

「あいつらを命令している奴か…」

あくまでもグーリーは戦闘員でしかなく、指揮官がどこかにいる。

ガーディムの秘密を解き明かすには、グーリーだけでなく指揮官も見つけなければならない。

(ガーディム…か…)

 

 




装備名:フォトン・エフェクト・スラスター
グーリーのプラーマグに採用された試作バックパック。
バックパックの各部に発光するパーツが搭載されており、それが発光するとともに残像が見えるほどのスピードを実現する。
ヴァングレイ及び交戦したフリーダムとデスティニーの戦闘データによると残像についてはかつてのコスモ・バビロニア建国戦争でリミッター解除したガンダムF91が見せたという質量を持った残像といえるものであり、仮にヴァングレイ単体で戦った場合はそれに惑わされて撃墜されていた可能性が高い。
なお、質量を持った残像についてはバイオコンピュータの最大稼働による排熱が追い付かないことで高熱を帯びた装甲表面を剥離させる「MEPE」(金属剥離効果=Metal Peel-off effect)という現象が発生し、装甲そのもので強制冷却した状態であり、欠陥といえる。
それを装甲表面の剥離なしで行い、戦術としていることはガーディムが高い技術力を持っていることの証明と言えるだろう。
そして、同時にそれを使いこなすグーリーの粗暴な容姿に見合わぬ高い技量の証明ともいえる。
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