仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
それでは、どうぞ。
校庭では、飛鳥と柳生、雲雀の三人がアライブ・エラーとの戦闘を展開していた。
後者を調査している時に、木の上でこちらを見ていたアライブを発見した彼女たちは忍結界を展開して戦闘を行っているのだ。
アライブは巨大な盾で攻撃するが、飛鳥はその盾を踏み台に跳躍して小太刀の斬撃を浴びせようとするが、それを回避する。
だが、柳生の番傘と雲雀が魔力の籠った攻撃を仕掛ける。
盾で防いだアライブと飛鳥たちは距離を取る。
『……ちっ、あの根暗野郎。失敗しやがったな』
「…?何の話をしているの」
『てめぇら牛女どもに話すほど俺はバカじゃないんだよっ!!』
雲雀に対して口汚くそう罵った彼はエネルギー弾を地面に着弾させて土煙を発生させると、それに紛れて姿を消した。
アライブが逃げたのを確認した飛鳥たちは忍装束を解くと、霧夜からの連絡が入る。
「戒君たちが戻ってきたみたい」
「…なら、オレたちも行くぞ」
忍結界を解除し、飛鳥たちは忍び学科の教室へと戻った。
忍学科の教室で、戒は痛む身体を必死に抑え込んでいた。
幸いにも骨折などは免れており痛み自体も次第に引いてくるだろう。
そんなことを思いながらも、彼は目の前にいる叔母にどう言い訳をしようかと考える。
「ねぇ、本当に…ほんっとーに、大丈夫なのね?」
「もちろん、ほらこの通り…あだだだだだっ」
美海の真剣な眼差しに戒は必死に腕を動かすが、それによって生じた激痛に悲鳴をあげる。
しかし、その態度に幾分か安心したのだろう…美海はため息を吐くと霧夜に話しかける。
「それで、怪しい人物は見つかりましたか。先生」
「いえ、残念ながら…しかし猿飛君から吹奏楽部は辞退することにしたそうです」
「それだけじゃない、吹奏楽部以外にも襲われた参加者たちもいる。中には楽器を壊されたり脅されたり…酷いことをするもんだ」
「でも、あんな怪物に襲われたら誰だって…」
二人と佑斗の会話を聞いていた琴音は辛そうに表情を歪めるが、痛みの引いた戒が口を開く。
「現時点で怪しいのは、光仁と佐藤だ。その中で動機がありそうなのは…」
そこで戒は思考を積み重ねる。
スポットの姿から最初に容疑者として浮かぶのは光仁だ、理由としては単純で彼が目立ちたがりだからだ。
根が善良な彼があのような蛮行をするとは思えないが、エラーカセットで人格を歪められたら話は別…自分が我先に目立つためにミスターXと名乗って暴れることで周囲への視線を集めようとした。
それなら筋は通るが…何処か釈然としない。
しかし、仮に佐藤だとしたら動機は何なのだろうか。
古い仲である光仁に怨みを持っていたから、ミスターXと名乗って彼に罪を擦り付けるために暴れたのだろうか。
「でも、姿が分からないからって酷いよ…相手を傷つけることに変わらないのに」
雲雀がそう呟いた途端、戒の頭に推理のパズルがぴたりと合わさる。
そして、今まで不鮮明だった犯人像がそのピースを中心に集まって形成されていく。
戒が顔を上げた。
「そうか、それなら…!」
彼は、スマホで柊介に連絡を取る。
『もしもし?』
「犯人が分かった、そこで頼みがある」
『えっ、えぇっ!?…そ、それで頼みって』
保健室に倉石を運び終えたのであろう柊介は戒から告げられた内容に驚くが、彼の要求に応えるべく、先を促す。
戒は少しだけ間を置くと、やがて笑みを浮かべた。
「……軽音部から楽器を貸してくれるよう手配してくれ」
スポット・エラーの融合者は不安気な生徒たちを見て楽しそうに笑っていた。
もちろん、周囲に怪しまれないよう心の中でだったが後半のステージが始まるのを今か今かと待ち侘びている。
参加者たちは全員、参加出来ないように妨害工作をしたし事態の報告を聞いて内心跳び上がりそうなほどの喜びを露わにしていた。
やがて、予定された時間へとなる。
「えー…ドーモ、ミナサン。猿飛柊介です。司会は喋栗先輩から変わり、一年の自分が担当することになりました。よろしくお願いしまーす!!」
司会交代を告げた新たな司会…自分のクラスメイトである柊介がテンション高くするが、怪物に襲われたという情報が流れている生徒たちのテンションは低い。
それでも、めげずに柊介は司会の進行を続ける。
「参加者たちは全員、不幸な事故によって事態となってしまいましたが……ここでニューチャレンジャーが参加してくださいましたっ!!」
「何っ?」と顔を上げる。
そんなバカな、『怪物が参加者を襲っている』と言う噂を広めたのにわざわざ参加をする奴が来たと……。
湧き上がる疑問を抑えながら、彼は司会である柊介の言葉を持った。
「それでは、登場していただきましょう!『Team JAINN』ですっ!!どーぞっ!」
その言葉と共に、顔の上半分をマスクで覆った四人のメンバーが楽器を持って現れる。
突然現れたマスクの男女に困惑している生徒たちを余所に彼らは楽器をセッティングしていくと、小柄な少女がスマホで予め打ち込んでいて専用の音楽ファイルをセットする。
「ワン・ツー・ワンツースリーフォー…!!」
そうして、演奏が始まる。
ギターベースの音からギターの音が重なり、そこからドラムと音楽ファイルの音が違和感なく溶け込み、奏でて行く。
更なる盛り上がりを見せる前奏の中、スタンドマイクを持ったボーカルの少年が口を開いた。
「~~~~simulation♪」
何処か、ゲームを彷彿させるような心を滾らせる歌が体育館にいる、気分の沈んでいた生徒たちや教師、参加者の心を躍らせる。
演奏が激しくなるのと比例するように、ボーカルの歌も盛り上がって行く。
やがてサビが入ったころには生徒たちは合いの手を入れるようになったり、拍手をする者もあらわれる。
最後のクライマックスには全員の心に歌声が広がっていた。
全員が、Team JAINNに拍手を送っていると司会である柊介も興奮した面持ちで現れる。
「サンキュー!Team JAINNッ!!優勝者はお前らに決まり…」
「ふざけんなああああああああああああああああああああっっっ!!!!」
彼の声をかき消すように、ステージから現れたのは……佐藤佳右だった。
全員が突如現れた彼に困惑する中、佐藤はポケットから取り出したエラーカセットを取り出してスイッチを入れる。
【LOADING…GAME START…】
スポット・エラーへと融合を遂げた彼は、ボーカルの少年を襲おうとするがそれよりも早く腕を絡めて関節技を決める。
その間に、体育館の端で待機していた美海と佑斗、そして霧夜が生徒たちの避難誘導を行い、誰もいなくなったを確認したボーカルは蹴り飛ばしてマスクを外す。
『なっ、ユーッ!?』
「その通りだよ、佐藤」
マスクを捨てながら、自慢げに笑う戒に続くように残りのメンバー…琴音と斑鳩、葛城もマスクを外して素顔を露わにする。
混乱する彼に対して、ステージの奥で待機していた倉石と光仁の二人も現れる。
「最初は、光仁かと思っていたけど…もしあいつが犯人だったら『ミスターX』なんて芸名は付けない。派手に行動しておきながら自分が犯人に繋がる物を残していない、だからこう思ったのさ…『犯人は普段、目立つことが苦手な人間』だってな」
「だから、猿飛君に頼んで私たちが参加出来るようにしたの」
琴音の言葉に、スポットはモノアイで睨みながら悔しそうに歯ぎしりをする。
そんな中で、ゆっくりと近づいたのは彼の友人でもある光仁だ。
「佳右、どうして?」
『決まってるだろっ!?小さいころからずっと思ってた、面白いことをして目立ちたいって!でも、何でも出来る目立ちたがりなユーと一緒にいるとそんなことすら出来ないっ!!小学校でも中学校でも高校に入ってもっ、ミーはずっと二番煎じ!もううんざりなんだよっ!だからこのコンテストで証明するのさ、ミーが一番だって、ミーの方が目立てるってっ!!ヒャハッ、ヒャッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』
完全に暴走を始めたスポットはモノアイを光らせて光線を放とうとするが、戒が彼を蹴飛ばしたことで未遂に終わる。
豹変した友人の姿に、光仁は崩れ落ちそうになるが柊介がそれを支える。
「なぁ、柊介。佳右は、佳右は良い奴なんだよ。誰よりも周りが見えてて…」
「知ってるよ、あいつはただ怪物になって暴走してるだけだ」
「そうよ、私の知ってる佐藤君は…周りの気配りが出来る優しい人よ。あれが本心だとしても、今までの彼のことを否定したくない」
そう話す彼らに、柊介はフォローをする。
エラーになった人間は人格が歪められてしまう、彼の言ったことは本心かも知れないが『目立ちたかった』と言う純粋な願望を歪曲させられたに過ぎない。
二人を安全な場所に避難させたのを見送った戒はアーサードライバーをセットしてマジシャンカセットを取り出す。
【MAGICIAN!!】
「本当のパフォーマンスって奴、見せてやるよ。変身っ!!」
【魔法、錬成!WHITE FANTASY!!】
白いパワー型の装甲とローブ、マジシャンリンクへと変身したアーサーに不意打ちするようにスポットはライトによる目くらましをするが気にせずマジッグローブで彼の右頬を殴る。
『がっ!?』
「まだまだぁっ!!」
【MAGICAL ARTS! PRISMA PRISM…SHOW TIME!!】
スポットの胴体を殴って水晶に閉じ込めた後、アーサーはチャージを行って砕く。
強烈なダメージを受けたスポットは舞い散る水晶の破片と共にステージから落とされる。
『ふざけるなぁっ!!ミーが、僕が一番なんだ!あいつより、あいつなんかより何倍も目立てるんだあああああああああああああああっっ!!!!』
「うるさいっ!!」
激昂するようにスポットは杖を振り下ろすが、水晶の破片を生成しながら演出を行うアーサーが顔面を殴り飛ばす。
パイプ椅子をなぎ倒しながら地面を転がる羽目になったスポットを横目にアーサーは、必殺技のホルダーにマジシャンカセットを装填する。
【CRITICAL ARTS! COMBO BREAK! MAGICIAN!!】
「舞台の幕から下りる時間だっ!」
緑のボタンを押したアーサーは低く腰を落としてからマジッグローブにエネルギーを集中させると勢いよく駆け出し、拳を叩き込む。
「はああああああああああああああああっっ!!!」
『ぎぎゃああああああああああああああっっ!!?』
マジシャンブレイクによる一撃を受けたスポット・エラーは一瞬だけ水晶に包まれると、すぐに爆散した。
「嫌だ、嫌だぁ…僕から、光を奪わないでくれよ……やっと、やっとあいつの影から出られたんだ……もう、誰にも見てもらえない自分に戻りたくないんだ……」
悲しげな声を出しながら、ステージを唯一照らすスポットライトへ覚束ない足取りで近寄る。
しかしエラーカセットが小さく爆ぜた瞬間、それに合わせるように倒れて気を失った。
翌日、半蔵学院の食堂で戒は窮地に立たされていた。
目の前には倉石が真剣な表情で見つめており、ややあって彼女はある物を取り出して見せる。
ある物、学校新聞には『謎の仮面バンド!?Team JAINN』の見出しで昨日の出来事が掛かれている。
「…てわけで、お願いっ!もう一度、あのメンバーでライブをやってくれない?」
「嫌だよ、俺だって必死だったし楽器だって琴音任せだった。需要なんてないだろ?」
「私たちがあるのっ!!あの興奮を、ねっ!?」
必死に詰め寄ってくる彼女に、戒はどう言いくるめようか頭を悩ませる。
別にライブ自体に問題ないのだが斑鳩と葛城は忍学生だし会場は体育館…何か拍子で正体がばれるかもしれないのでほぼ不可能だ。
「とにかく、俺はもうバンドをやらないし…琴音はともかく他のメンバーは忙しいから無理っ!」
「じゃあ、私と猿飛君が代わりに入るからバンドを…」
「しつこいっ!てか、それもう別物じゃねっ!?」
終いには本末転倒なことを提案する倉石に対して、戒は鋭いツッコミを入れたのであった。
一方、レッドゾーンは苛立たしげに近くにある物や筐体に当り散らしていた。
それで収まるはずのないストレスを発散するように彼は小さい身体からは想像出来ないほどの力で破壊衝動を満たす。
それを見ていたドラグハンターの肩に座っていたミケネが窘める。
『落ち着くニャ。レッドゾーン、今回は仮面ライダーの運が良かっただ…』
「うるさいっ!!」
近くにあった椅子を蹴り飛ばしてひしゃげさせると、荒い息を繰り返しながら血走った目で頭を掻きむしる。
「くそくそくそっ!!あいつぅっ、あいつがあんな姿にならなきゃ…!!」
「…レッドゾーン、そろそろお前も遊んで来たらどうだ?」
ドラグハンターから言われた言葉に、レッドゾーンは言葉の意味が分からず呆然としていたがやがて表情が変わる。
「本当に、『救済』に参加して良いのっ!!」
「もちろんだ。そろそろお前も自分のゲームを再開する時だ、そのためのプレイヤーも俺が用意した」
肯定したその言葉をはっきりと聞いたレッドゾーンは表情を輝かせると、楽しそうに笑う。
狂喜の笑い声をアジトに響かせながら、彼はレッドゾーンカセットを起動させた。
【LOADING…~♪!RIDE UP! RED ZONE! BAD and DEAD END! THE ERROR…!!】
『あっははははははははははっっ!!!やっとだっ、やっとこの時が来たぜぇっ!!覚悟しやがれゴミカスどもっ!!!今度はどん底になんか突き落とさねぇ…スクラップにして地獄に叩き落としてやらぁっ!!あーっはっはっはっはっっ!!!』
雄叫びをあげるように、狂気と狂喜が入り混じった憎悪の言葉を吐き出すレッドゾーン・エラーを見て、ドラグハンターとミケネは楽しそうに微笑むのであった。
To be continued……。
スポット・エラーの出番はこれで終了です。ホワイト・ラムさん、素敵なエラーを本当にありがとうございました!
シノビリンクの紹介については後々更新する予定です。そして、次回はレッドゾーンのゲームが始まります。それと同時に彼の動機も明らかになります。
ではでは。ノシ
スポット・エラー CV山口勝平(一人二役)
ホワイト・ラムさんからいただいたオリジナルエラー。イメージは『スポットライト』で裏モチーフは『パワースポット』
佐藤佳右の目立ちたい願望と友人の嫉妬心から融合変身した姿。紫と赤の光沢の有る派手な奇術師の衣装とピンスポ型のモノアイ、ピエロの様な仮面と赤いボール状の鼻を持つ。
攻撃方法は先端がフックとなった杖による格闘だが直接戦闘は心許ないので両手とモノアイを光らせた目くらまし、または光線で戦う。
常に笑い声をあげて、ひたすらハイテンション。