その名も尊き課金魔術《完結》 作:ゆっくり番目
「魔術とは等価交換で成り立つものである」
それは魔術師なら誰もが知っている常識であり、当然の様に存在する世界の
────だが、ここに例外が存在する
その魔術は、一握りの
その魔術は、莫大な
その魔術は、あらゆる人々を阿鼻叫喚の渦に叩き落とした。
────その魔術の名は、課金魔術といった
『ある
時刻は午前2時間近、深夜と呼べる時間帯であった。外はもうすっかり暗くなり、辺りは人の気配も無く静まりかえっている。そこは何処にでもある一軒家であった。その一階にある居間に、一人の男が厳かに佇んでいる。
男は、何をも望まぬ無欲な聖者のように一心に祈りを捧げていた。
男は、何もかもを望む強欲な怪物のようにひたすらに欲していた。
そして、男は全裸だった
静かに目を見開いた全裸の男は、その手に握りしめたスマートフォンの画面に映るボタンに、高々と掲げていた右手人差し指を叩きつけた。
画面上に表出される魔方陣
「来い…!」
溢れ出る魔力が稲妻の如く辺りを照らす
「来い…!!」
そして、変転した運命は収束し、そのカタチを世界に示す
「来ぉい…!!」
男の叫びに呼応するかのように顕れた、闇を裂くその刃の名は────
────
「なんでだよぉぉぉぉぉぉ!!」
男は崩れ落ちた。そして泣いた。ドン引きするほどのガチ泣きであった。全裸の男が泣き崩れているという地獄絵図が其処には広がっていた。
「大ハズレじゃねえかクソったれがぁ!!いくらかけたと思ってんだ!」
彼は課金魔術の使い手だった。
課金魔術とは、端的に言えばソシャゲのガチャである。自らの資産──具体的には現金──を
そして人の夢とは儚いものである。
「なにが午前2時教だぁ!なにが全裸教だぁ!なにが単発教だぁ!もう何も信じない!神は死んだ!!」
彼はネットの海に氾濫するあらゆるオカルトを試した。なんだってやった。全裸なのもその一環だった。しかし結果はご覧の有り様である。
「黒鍵って……。黒鍵って代行者どものマイナー装備じゃねぇかよ…。そもそも俺魔術師なんだけど…。ゴミかよ…。ゴミだった…」
ちなみに一回前のガチャの結果はカボチャだった。…カボチャだった。
「はぁ…、爆死かぁ…。これ普通に十連回した方が絶対得だったな…」
男はため息を吐きながら傍らの通帳と財布を見つめている。ほとんど中身の無いそれらを穴が空くほど見つめた後に、なにかを決意した瞳で中空を睨んだ。
「…後一回はイケるな…。文字通りの一文無しになるが、まだ回し足りないし…」
彼は端的に言ってロクデナシだった。
「逝くか」
ボタンを押す。
まるで近所のコンビニに行くかのような気軽さで、彼は自らの人生を
────そして、運命は流転する
黄金色の魔方陣が浮かび上がり、薄暗い室内を輝きで満たし、
「…え?」
迸る魔力が幾重もの光の輪となって螺旋を描き出す。
「…な…んだ…?」
その周囲では虹色の魔力光が瞬き、螺旋の中央では極大の魔力が集束する。
「…これは…、いや…、でも、まさか…!」
魔力の吹き荒れるその中心に、それは閃光の如く顕現していた
それは、人の
────それは、美しい少女だった
輝く金髪は柔らかに揺れ動き、透き通った碧い瞳は彼女の清廉な在り方を映す鏡のようであった。顔立ちは十代半ばの少女のそれだが、その立ち姿は歴戦の勇士を思わせ、彼女がその手に持つ剣は、魔術を少しでもかじっていれば一目見ただけで途方もない神秘を秘めていると分かるであろう代物である。
「────まさか、
それは人類史に名を馳せた偉人達を使い魔として召喚する魔術、神域の天才が生み出した最高峰の奇跡の再現だった。
今までの爆死を覆す大当たりに歓喜する男を
「────ギャラクティカセイバー、召喚に応じ
「………は?」
現れたるは、遥か
ギャラクティカセイバー
カプさば登場キャラクター。…登場?
対宙宝具レーザー・エクスカリバー、召喚宝具クセっ毛ソードアンテナ、絢爛宝具スターライト・シャンゼリゼなど面白宝具満載だが、たぶん公式で今後出番はない。
ちなみにシャンゼリゼとはギリシャ神話でいうアヴァロンのようなもの。