その名も尊き課金魔術《完結》 作:ゆっくり番目
しばらく歓喜と困惑に浸っていた男は、右手にはしった痛みによって意識を取り戻した。
「…あの?」
戸惑うような少女の声に、今まで彼女を無視するかのような行いをしていたことに彼は気付いて
「あっと、すまん…、じゃなかった。すみません。えー、貴女はサーヴァント、なのですか?」
「ええ、私は間違いなく貴方に召喚されたサーヴァントです。…一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」
「勿論」
少女は毅然とその問いを投げ掛けた。
「なぜ、服を着ていないのでしょうか?」
「ありがとう全裸教!!」
みんなもやろう全裸でガチャ!!
『ぼーい・みーつ・がーる?』
「麦茶で構いませんか?」
全裸でしばらく小躍りした後、私服を身に付けた俺は先程までの醜態をなかったことにしつつ、簡単な自己紹介をお互いに済ませると食卓の方へ彼女を案内した。
「ありがとうございます。それと、私に敬語は必要ありません。いつも通りに話していただければ」
「お、サンキュー。敬語って馴れないんだよなぁ」
目の前で綺麗な姿勢で直立する彼女に、作り置きの冷麦茶を差し出しつつ、俺は食卓の古くなってきた椅子に座り込む。
「そっちに座ってくれ。それで、これからの話をしたいんだが、いいか?」
「はい」
首肯する彼女を眺めながら、俺は重々しくその絶望の理を告げる。
「────金が、無いんだ」
「…は?」
可愛らしく目をぱちくりさせる彼女をじっくり眺めつつ、俺はもう一度その言葉を告げた。
「金が、無いんだ」
「…第一声がそれでよろしいのですか?もっと話すべきことがあるのでは?」
「分かっていないようだから言っておくが、俺には今日の朝食の備えすらないぞ。勿論朝食代も無いからな」
「バカな…!どういうことです?貴方は死ぬ気だったとでも!?」
驚愕に目を見開く彼女を尻目に、豪快に麦茶を飲み干すと、その容器を食卓に叩きつける。
「期間限定ピックアップガチャが悪いんだよ!俺は悪くない!」
「ゲームで使い果たしたんですか!?明日の食費さえも!?」
あー欲しかったんだけどなぁ。でもまぁそれ以上の超ド級レアが当たったんだからいいんだけどね。つーかこのサーヴァント、ソシャゲ知ってるんだな。…ガチャか、待てよ。そういやアレがあったじゃないか。
「朝食になりそうなものならあったことに、今気が付いた」
「…なんです?」
呆れ果てた顔つきでこちらを見る失礼なレディに、俺はドヤ顔でその指を突きつけた。
「────カボチャだ」
やはりガチャは俺を裏切らない!
▼
きっと召喚によって魔力が欠乏して意識朦朧状態になっているんだと進言してきたギャラクティカセイバーによって、俺は無理矢理床につかされた。遠回しに頭を冷やせと言われたのかもしれない。
数時間ほど睡眠をとった朝。カボチャの煮物を朝食として頂いた。味は普通だった。素材は良かったんだがな、調理がダメだったのだろう。作ったの俺だし。
「数少ない備蓄を私の為に割いていただいてありがたいのですが、…マスター?」
ペロリと朝食をたいらげたギャラクティカセイバーは、こちらをその星のような瞳で真っ直ぐに見据えている。
しょうがないので、本当は聞きたくないのだが、話を反らし続けていたいのだが、キレられたら怖いし、結局は先延ばしに過ぎないし、本当に仕方がないので観念して聞くことにした。
「それで…、世界を救うってなに?」
「え?」
「え?」
「…
「偶然だけど?いや、全裸神の思し召しだし必然とも言えるかもな…」
キメ顔で告げた俺を無視しながら、彼女はなにか考え込んでいる。
「…成る程。少々話しをする必要があるようですね」
彼女は今まで以上に真剣な顔つきでこちらを見据えてそう言った。
▼
話し合いはすぐに終わった。
「そうか。それじゃあこれからよろしく」
彼はまるで何でもないことのように頷いた。
────それは、彼と彼女の物語の、本当の始まりだった。
▼
ギャラクティカセイバーに協力することは決まったが、具体的にどうすればいいのかはまだ分からないらしい。
「私が召喚されたということは、
「知らん」
ということで調査から始めることになった、んだが…
「なにすりゃいいのか…。なんかそういうスキルみたいなの無いの?」
「えっと…、私の"
「俺?」
俺って…。
「金が無いし、金策に走ろうと思ってたんだけど…」
「では、そうしましょう」
「お、バイトとか手伝ってくれんの?」
「貴方が望むのなら。ええ、私は貴方のサーヴァントですから」
マジで?
使い魔とはいえ、英霊にバイトさせるとか多分前代未聞だよ?いや、どこかの世界線では自主的にバイトする英霊もいるかもしれないけどさ。マジで?八割方冗談だったよ?
「なら今度ちょっと手伝ってもらおうかな。しばらくの食費は、まぁうん、ちょっと出掛けてくるよ」
「どちらへ?」
「知り合いに頼ろうと思ってね。君はここで待っててくれ」
「私もお供します」
ギャラクティカセイバーは、真面目な顔でとんでもないことを言い出した。
「えぇ?だって…」
彼女の姿を盗み見る。
…うん、改めて見ても服装やべーな。ギャラクティカ感満載の装備のくせして…。
月光のように輝くその御髪は後頭部で束ねられ、
その碧い瞳は夜空の星のように美しく、それは彼女が身に付けているありえない程の神秘を秘めた星空を象ったマントにだって美しさでは負けてはいない。
両腕には黒の長手袋をはめ、左手には髪どめと同色の籠手を付けている。脚から下半身にかけてはタイツのようなものを身に付けているが──上半身は薄い布を胸元に巻いているだけだった。つまりほとんど裸だった。
裸だった。
顔立ちは十代半ばの無垢な美しい少女のそれで、その身体も無駄なものが一切ついていない少女としての究極を体現したかのようなスタイルであり、端的に言って彼女はギャラクティカな美少女だった。
それがほとんど裸だった。
やべーな。
「ま、マスター?どうしたのですか、こちらをそんな風にじっと見詰めて…」
彼女はわたわたしながら言った。どうやらじっくり眺め過ぎたらしい。
「いや、ほら、現代だとその服装は目立つかなって…」
するとなんだか呆れたように、
「そんなことですか。霊体化をすればいいだけなのでは?」
と俺の知らない単語をさも当然のように…いや、霊体化?聞いたことあるな。サーヴァントの基本的な能力の一つで、触れない透明人間になれるとか。
「そうだな。じゃあそうしてくれたまえ」
さて、まずは連絡だな。