その名も尊き課金魔術《完結》   作:ゆっくり番目

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第三話 大当たり

 

 喫茶店アーネンエルベ。落ち着いた雰囲気で料理も美味しい、俺のお気に入りの店である。…たまにケータイらしきナニカと店員の少女が漫才を繰り広げているがそれもご愛嬌だろう。

 

 俺はそこで待ち合わせした知人を待ちつつ、優雅にティータイムを楽しんでいた。用事を終わらせるついでに昼食も摂ろうという算段だ。ソシャゲをプレイしながら、ローディング時間に紅茶を口に運ぶ。素晴らしい。これこそ文明的な休日というやつだろうな。

 

 しばらくそうしていると、誰かの来店を告げる音が聞こえた。待ち人来たれりか。振り向き見知った女性に手を挙げて一言。

 

 

 

 

 「先輩、お金貸してください」

 

 おっと、セイバーからの視線の温度が一気に下がったぞぅ。

 

 

 

 

 『大当たり(大外れ)

 

 

 

 

 呆れ顔でこちらを見下している女性は俺がいつもお世話になっている先輩である。紛うことなき『一般人』であるところの彼女は俺の生命線の一つであるのだ。金銭的な意味で。

 シャレオツな服装の先輩は長いため息を吐くと疲れたように対面の椅子に座った。

 

 「ハァ…、またソーシャルゲームで使い切ったの?アンタに計画性ってものは無いの?いい加減にしないとホントに身を滅ぼすよ?」

 

 「かの英雄の子孫、カキンシ・マックールとは俺のことです」

 

 先輩はもう一度深いため息を吐きつつ、財布を取り出すと諭吉さんが描かれた紙幣を二枚押し付けてきた。

 

 「…おお、俺が言うことじゃないかもしれませんが、お人好しも大概にしないと身を滅ぼしますよ?」

 

 「ホントにアンタが言うことじゃないね…」

 

 疲れ顔で先輩はなにかぼやいている。昨今は大変なことも多いからね。そんな疲れ気味の先輩には俺から少しばかりの心遣いをするとしよう。

 

 「昼もうすぐっスけど奢りましょうか?」

 

 「もともとアタシのお金なんだけど…」

 

 

 

 

 さらに疲れた顔になった先輩と適当に注文した昼食を食べ終えると、俺は先輩に会いに来たもう一つの理由を切り出すことにした。

 

 「先輩の古着ください」

 

 そう、セイバー用の私服である。ずっと霊体化させておくのもなんだし、彼女が外に出るための服が欲しかったのだ。だけど金がないから買えないので、先輩のいらない服が欲しかったんだけども…。

 

 「…えっ」

 

 先輩は錆び付いたブリキの人形のような緩慢な動きでこちらを向いた。

 

 「ごめん、もう一度言ってもらえる?」

 

 「先輩の古着ください」

 

 うん?ポケットからスマホを取り出して?電話ですか?110…

 

 「やめて!警察に連絡しようとしないで!れっきとした訳があるんです!」

 

 「何?何に使う気?」

 

 ゴミを見るような目をしている!そんな顔も素敵です!

 

 「いやぁ、その、女の子を拾いまして…、あ、やめてください!通報するのはやめて!」

 

  

 ▼

 

 

 紆余曲折を経て、諭吉さんを二枚借り受けることに成功した上に、なんとセイバー用の私服まで手に入れることができた今回の遠征は大成功と言えるのではないだろうか。ないだろうか!

 

 ギャラクティカセイバーは現代衣装に身を包んでおり、これなら普通に街を歩けるだろう。本人は疲れを隠しきれておらず、心なしか頭頂部のアホ毛も萎びているが。

 

 先輩に真実をぼかしながら説明したところ、件の少女に会わせろと脅され、邂逅した二人はなにやら話をした後、仲良く出掛けていったのだ。

 

 俺は留守番していた為に知らないが、どうやら生活していくのに十分な量の服を買うため先輩に連れ回されていたみたいだ。いやはや、お金を貸してくれただけでなく、セイバーの私服まで買ってくれるとはお人好しもここに極まれりだな。

 

 その後も色々としてくれた先輩は最後に家のポストに溜まっていた手紙を俺の目の前に積み重ねるとそのまま帰宅していった。ありがとうございます!お礼はいつか必ず(生きていれば)!

 

 「手紙か…。ほぼゴミだな」

 

 ふむふむ。…うん?これは?

 

 「懸賞か。当たるとは珍し…い…?」

 

 目を擦る。

 

 もう一度読む。

 

 「これは…!」

 

 当たった…。

 

 「当たったぞ…!」

 

 喜びのままに手を天に突き上げる。

 

 

 

 「海外旅行が、当たったぞぉぉぉぉぉ!」

 

 

 

 まさかこんな大当たりをするとは応募してみるもんだな。今日の俺はヤバいくらいツいてるな。明日死ぬの?まあいいや。さてと…。

 

 

 

 

 

 「よっしゃ。転売したろ」

 

 いくらになるかな。ガチャ何回できるかな。嬉しい。…ん?これ名前入りか。転売できんな。ゴミじゃん。

 

 あー、仕方ないからバイトしよ。

 

 「マスター?」

 

 「なんだい?」

 

 「どうしたんですか?」

 

 「これこれ」

 

 復活していたセイバーに懸賞結果の通知をふわっと投げ渡す。熟読し始めたセイバーを尻目にスマホを起動して召喚(ガチャ)の画面に移行する。おっと、無意識で行動してた。

 

 …しかし、ふむ。手元には先輩から借りた二万円があり、期間限定ピックアップガチャはまだ終わっていない。そして今日の俺はものすごくツいている。

 

 「…ふむ」

 

 これはもしや運命か?運命なら仕方ない。逝くとするか────

 

 「マスター」

 

 おおっと。

 

 「なに?なんか気になることでもあった?」

 

 「ええ、私のアンテナが反応しています。できればこの地に向かいたいのですが…」

 

 「そっかー」

 

 なら準備するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────向かうは南米、その奥地

  人類未踏領域『水晶渓谷』である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





主人公
オリキャラ。ガーチャー。
【悲報】クズだった。


先輩
オリキャラ。お人好しの女性。
主人公はお金を貸してもなんだかんだ多めに返してくれるので、まあいいかと思ってしまっている。
オリキャラ同士の会話が長くならないよう出番を大幅カットされた。




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