「なんだ、ここ?やけに暗いな?」
リオは気付くとなにやら黒い空間、もとい暗闇の中にいた。
「なんだ?電気代でも払ってないのか?いや、周りが暗いのに自分の姿ははっきりと見えてるし、どうやらただの暗闇じゃなさそうだが………おーい!誰かいないかー!」
取り敢えず大声で誰かを呼んでみる。
だが、誰一人としてその声に返事する者は居なかった。
「居ないなら居ないって返事してくれー!歩き回るぞー!作り掛けのプラモとか蹴っ飛ばしても知らないぞー!」
そう叫びながら、リオは歩き出す。
「うおっ!?なんか踏んだ!?え?何コレ?見えないから余計コワイ!」
得体の知れない何かを踏んでしまい、リオは騒ぎ出す。
「遅くなってしまって申し訳ありません」
すると、突如何処からか声が聞こえて来た。
「誰だ!?」
「私は史書イストワール。リオディールさん、下界に落ちた貴方にお願いがあってこうして呼び掛けています」
「シショ?シショ……シショ………死書?もしかして、名前を書いたら40秒後に心臓麻痺になるノートか?」
「いえ、違います」
「そんなマジレスしなくても………てか、下界ってなんだ?冥界より下の世界か?……あれ?でも、それってつまり俺って死んだって事?」
一人で話を進めて行くリオに、イストワールと名乗る声は困ったように言う。
「リオディールさんはまだ死んでいません。ただ、気を失っているだけです」
「あ、そうなのか。てか、イストワールさんは、一体何者?声しか聞こえないけど」
「申し上げた通り、私は史書イストワール。ゲイムギョウ界の記録者にして女神様と守護者様を補佐する者です。時間も無いので本題に行きます。リオディールさん、お願いです。私に力を貸してください」
「え?何?力がなんだって?良く聞こえないぞ?」
「お願いします!彼女を……マジェコンヌを止めて下さい!そして、貴方達の運命を操る
「あん?ここは………」
リオが目を開けると、そこは見知らぬ部屋だった。
リオはベッドに寝かされており、持ち物であろうヘッドフォンは外され丁寧にベッド近くの棚に置かれていた。
「あら?目が覚めたのね」
声がした方を向くと、そこには茶髪のロングヘアに緑の若葉型のリボンを付け、青いコートを着た女の子が居た。
「おはようって言いたいとこだけど、あいにくもうお昼を回ってるわ」
「えっと……ここは俺の部屋じゃないよな?てか、君は誰?」
「私はアイエフ。ゲイムギョウ界を旅する旅人よ。そして、ここは私が今泊まってる宿屋よ」
「つまり俺は今、君のベッドで寝てるって訳か……なんで?」
「それは、貴方が空から落ちて来たからよ」
「は?どう言う意味だ?」
アイエフの言葉に思わずリオは聞き返す。
「文字通りよ。昨日、私がクエストの帰りに、貴方は空から落ちて来たのよ。流れ星の様にね。で、私の目の前に落ちて来たから見捨てることも出来なかったから、ここまで連れて来たって訳」
「つまり、お前は俺の命の恩人って訳か。そいつは助かった」
リオは頭を下げ、アイエフに感謝する。
「そうだった。自己紹介がまだだったな。俺はリオディール。言いにくいだろうからリオでいいぞ」
「分かったわ。それじゃあ、服脱ぎなさい」
「え?……何?まさか、そう言う目的?」
リオは自分の方を抱き、後ろに下がる。
「違うわよ!変な想像するな!自分の体をよく見なさい!傷だらけでしょ」
「ん?………おお!よく見ると結構ボロボロだ!」
「寝ている状態じゃ、満足な手当ても出来なかったから、しっかりとした手当てをするだけよ」
「そう言われると、なんか一対三でフルボッコにされた揚句空から落されたような気がするが、まぁ、擦り傷だけ出しそんなことはないな」
「やけに具体的に言うわね……じゃ、背中見せなさい」
アイエフに言われる通り、リオは来ていたパーカーを脱ぎ、シャツを捲る。
アイエフは慣れた手つきで、リオの背中に傷薬を塗り、包帯を巻く。
そして、腕の傷にも同様な手当てを施していく。
「手慣れてるな」
「そりゃ、旅人だもの。自分の怪我位自分で手当てできなきゃ。はい、終わりよ」
「サンキューな」
アイエフにもう一度お礼を言い、リオは服を着替える。
「所で、なんで空から落ちて来て地面に突き刺さってたのよ」
「ああ、それな。俺も何が起きたのかさっきから思い出そうとしてるんだが、全然思い出せないんだよ。ぶっちゃけると、アイエフに助けられる前の記憶が殆ど覚えてない」
「そう……多分、落ちたショックで記憶喪失になってるのね」
「ああ、なるほど」
「記憶喪失だって言うのに、ずいぶんとのんびりね……」
「慌てたって記憶が戻るわけじゃないしな。ま、気長に戻るのを待つさ」
リオがそう言うと、リオの腹から空腹を訴える音が鳴る。
「そう言えば、今日はまだに何も食ってなかったな。アイエフ、すまないけど、なんか食べ物持ってないか?」
「食べ物?えっと……疲労回復用にチョコならあるけど、これでもいいかしら?」
「チョコ?」
「どうしたのよ?……まさか、チョコの事まで忘れたの?」
「いや、チョコがどういう物かは分かってる。ただ、どんな味だったかまでは覚えてないだけだ。それでいいからもらえるか?」
アイエフからチョコを受け取り、一口齧る。
「うおっ!甘っ!」
「そりゃ、チョコだからね」
「でも、うまいな!」
リオは笑顔になりながら、チョコを一気に平らげる。
「うまかった!チョコってこういう味なのか……いやぁ~、いいこと覚えたぜ!」
「それは良かったわね。で、リオはこれからどうするのよ?」
「そうだな。捜査の基本は現場からって言うし。昨日、俺が落ちたって言うところまでいくつもりだ。もしかしたら、記憶に繋がる手掛りがあるかもしれないしな」
「なるほどね。じゃあ、私も一緒に行くわ」
「いや、でも助けられて宿にも泊めてもらっちまったしこれ以上迷惑を掛ける訳にはいかないから、一人で行くよ」
「何言ってるのよ?リオが落ちた場所を知ってるのは私だけよ。それに、ここまで面倒見て放って置けるわけないでしょ。最後まで付き合うわ」
確かにリオが落ちた場所を知ってるのはアイエフだけ。
さらに、アイエフの意思も硬かったこともあり、リオが最初に折れた。
「分かったよ。じゃ、その言葉に甘えさせてもらう」
「決定ね。じゃ、行きましょう」