「うわぁ!なんか鋼鉄島ーって感じ!」
「いいな、こういうのは男心を擽られるぜ!」
「ここはなんて大陸だっけ?」
ラステイションに着くなり、ネプテューヌとリオは子供の様にはしゃぎだす。
「守護女神ブラックハート様が治め、守護者バイオレットナイト様が守護する大陸、ラステイションよ。重工業が盛んで工場なんかが多いの」
「こういうさ…ディテールって言うの?大陸ごとに建物が違ったり雰囲気がちがうのってさ、やっぱり女神様や守護者様の趣味なのかな?」
「違うと思うわ。確かに大陸を治め、守護するのは女神様と守護者様だけど、文明を築くのはあくまでも人だしね」
アイエフの発言にネプテューヌは不満そうに言葉を漏らす。
「むぅー…アイちゃんは夢が無いね。コンパはこの大陸どう思う?」
「工場とか煙突とかが目立っていて産業革命って感じがするです。でも、私にはちょっとマニアック過ぎるかもです」
「まぁ、あまり女の子が食いつきそうな感じではないかもね。私は好きだけど………」
「それより、教会に行って女神様と守護者様に会おうぜ」
リオがしびれを切らしたのか先を歩きながらそう言う。
「あ、リオ!待ってよ!」
「あ、ネプ子待ちなさい!」
「待って下さいです!」
「ねぇ、あいちゃん。教会にはまだ着かないの?」
歩き始めて数十分、最初は元気だったネプテューヌが疲れたような声でアイエフに尋ねる。
「おかしいわね…。こっちの方向だと思ったんだけど…」
「もしかして迷ったのか?」
「んー…暫く来てなかったからなぁ?とりあえず、誰か捕まえて訊いてみましょ」
「じゃあ、あのいかにも冒険者って人はどうかな?」
そう言ってネプテューヌは人影の方に走っていく。
「あのー、そこの赤髪の人ー!すみませーん!」
「ん?あたしに何か用かな?」
「ブラックハート様って女神様とバイオレットナイト様って守護者様に会いたいんだけど、どこに行けば良いか知ってたら教えて欲しいんだ」
「ブラックハート様?バイオレットナイト様?…あぁ、ノワール様とスワルト様の事か。それなら、この道を真っ直ぐ行って、突き当たりを右に曲がった所に教会があるよ」
そう言って丁寧に教えてくれる赤髪の女の子。
「どうやら、方向は合ってたみたいね。助かったわ」
「困った時はお互い様だからね」
そう言って女の子は笑う。
「ここで会ったのも何かの縁だし、名前を教えてよ!わたしはネプテューヌ!でこっちがコンパとアイちゃん。それからリオ!」
「あたしはファルコム。駆け出しの冒険家なんだ。こっちで会ったのも何かの縁だし、もし困った事があったら声を掛けてくれれば力になるよ」
「ほんと!?」
「助かるわ。それじゃ私達は急いでるから、これで失礼するわ。また会いましょ」
「うん、またね」
そうしてリオ達は教会へと急いだ。
「すみませーん!ブラックハート様とバイオレットナイト様に会いに来たんですけど、ブラックハート様とバイオレットナイト様いますかー?」
「誰だ貴様等は。生憎ここは子供が遊びに来るような場所ではない。帰れ帰れ」
教会に着くなり、教会の職員はそう言ってリオ達を追い返そうとする。
「えー。せっかくブラックハート様とバイオレットナイト様に会いにわざわざ来たのにー。ケチー!」
「ねぷねぷとリオ君の記憶を取り戻すのに、どうしても女神さんと守護者さんに聞きたい事があるです。お願いしますです!」
負けじと二人が食い下がる。
「…あ!もしかして“誰だ貴様等は”って聞かれたって事は、名前さえ言えば会わせてくれたりするのかな」
「なら、俺はリオディールだ。呼びにくかったらリオって呼んでもいいぜ」
「私、ネプテューヌ!こっちはコンパとアイちゃん!」
「名乗ろうがどんな事情があろうが関係無い。仕事の邪魔だ、さっさと出て行け」
鬱陶しそうに職員はリオ達を睨み付ける。
「教会って随分不親切なのね。女神様と守護者に仕える貴方達がそんなんじゃ、ブラックハート様やバイオレットナイト様も大した事無いんじゃない?」
アイエフは挑発気味にそう言う。
「なんとでも言え。たかが女神や守護者をどう言われようが痛くも痒くもないわ」
女神や守護者に対してこの言い方。
その良い方にアイエフは不信感を抱いた。
それはリオも同じだった。
「少しくらい会わせてくれたって良いじゃん。こんなに可愛い女の子がお願いしてるんだからさ、ちょっとだけ、ちょっとだけで良いから!」
食い下がるネプテューヌの肩を掴み、リオは引き寄せる。
「ネプテューヌ。帰るぞ」
「リオの言う通りよ。これ以上は時間の無駄」
「何でさ!アイちゃんとリオは此処で諦めちゃって良いの!?諦めたらそこで試合終了だよ!」
「良いから…さっさと帰るぞ!」
ネプテューヌをそのまま持ち上げ、肩に担ぐとリオ達は教会を後にした。
「あーもう!あったまくるなぁー!」
教会から少し離れた場所。
ネプテューヌは相当腹が立ったらしく、足をバタバタさせて言う。
「あの教会の人もそうだけど、アイちゃんとリオ!どうして引き下がっちゃうの!?」
怒りを爆発させ、リオに担がれたままのネプテューヌはアイエフに指を突きつける。
溜め息一つ吐きアイエフが口を開く
「気付かなかったの?あの人、女神様に仕える身でありながら女神様を呼び捨てにしていたわ」
「確かに…言われてみればあの人、女神さんを呼び捨てにしてたです。呼び捨てにするなんて絶対におかしいです!」
アイエフに賛同するように、コンパも口を開く。
「どうして?実は超仲良くてお互いを呼び捨てる、超フレンドリーな関係って可能性は無いの?」
「その可能性は無いわ。仮にそうだとしても人前で女神様を呼び捨てにはしない」
「それに、あの職員は女神様と守護者様を“たかが女神や守護者”って言ってた。大陸を治め、守護する女神様と守護者様をそんな扱い……普通なら有り得ない。そうだろ?」
「アイちゃんとは私達と会うまでは世界を旅していたですよね?何か知らないんですか?」
「ごめんなさい、コンパ。最近はずっとプラネテューヌに居たし、ここに来たのだって数年ぶりだからあまり詳しくないのよ」
「旅人キャラなのに、使えないなー。でも安心して!そんなことでノシするほど、ブラックなパーティーじゃないから!例えレベルが低くても、ラスボス戦も、次回作でもずーっと一緒だよ!」
「悪かったわね。って言うか、記憶喪失のアンタに言われたくないわ!」
「で、アイエフ。これからどうする?」
「そうね。取り敢えず、クエストを受けようと思うの」
「クエスト?………ああ、そう言う事か。じゃ、手頃なクエストでも受けるか」
アイエフの考えに納得し、賛成する。
「え?何々?二人して分かった様な顔して!私にも教えてよー!」
子供の様にリオの袖を掴んでぶんぶん上下に動かすネプテューヌ。
「はっ!もしかして、二人とも、私やコンパの知らない内に、使い込んでるとか!」
「ネプ子じゃあるまいし、プリンの買い食いなんかしないわよ」
「ねぷっ!?バレてた!?」
「むしろバレないと思ったか?」
「言っておくけど、リオ。アンタが内緒でチョコ買ってるのも知ってるから」
「何故バレたし………」
アイエフは溜息を一つ吐き、説明をする
「鍵の欠片はエネミーディスクがあった所で見つかったでしょ。なら、ラステイションでもモンスターの被害にあってる所を探して、そこを探せばエネミーディスクと一緒に鍵の欠片も見つかるかもしれないってこと」
「それに、ギルドに行けば、ラステイションの現状も分かるかもしれないわ。ゲームだと、冒険者の集まりには、何かしら情報があるもんだ」
「おおっ!?流石アイちゃん!さっきは使えないとか言ったけど、前言撤回だよー!まさしく、汚名挽回だね!リオも冴えてるね!そこに痺れる、憧れる!」
「ネプ子、そう言うなら、汚名返上か名誉挽回よ」
「ねぷねぷ……それは死亡フラグです…」
リオたちは、ギルドに向かいクエストを探すと、“モンスター討伐”のクエストがあったので、それを受けることにし、依頼人の家まで向かった。
クエストを受注し、待ち合わせ場所の工業区へと向かう。
「あ、きっとあの人です!モンスターさんを倒して欲しいって社長さんは!」
指定された場所へ行くと1人の女の子が立っていた。
「えー?そうかなー?社長って言うぐらいなんだし、もっと風格がある人じゃない?」
「あ、気付いたです。……顔を顰めたです……あ、手を振ってくれたです!やっぱり間違いないです!」
「向うの人もこっちと同じ気分なんじゃない」
「ま、傍から見れば女の子だらけのパーティーだしな」
「もしかして、仕事を引き受けてくれた女の子三人組とおまけってお前らか?「…本当に大丈夫なのかよ」
「見かけによらないのはお互い様よ。私はアイエフ、後ろのがコンパとネプテューヌ、それにリオよ」
「はは、確かにそりゃお互い様だな…私はシアンだ。この町でバッセって小さな工場の社長をやってる、立ち話もなんだし詳しい話はうちでしようか」
先を歩くシアンの後を付いてリオ達も歩き出す。
「あなた、さっき工場の社長って言ってなかった?ここ、誰がどう見ても食堂よ?」
着いた途端、真っ先にアイエフが口を開く。
そこは見るからに昭和の定食屋と言った感じの食堂だった
「うちは実家が食堂なんだ。工場はここの隣。話をするならお前らも機械と油だらけの場所より、こっちの方が良いだろ?ま、適当に座ってくれよ」
「じゃあ私、カウンター席とったーっ!」
「じゃ、俺も」
シアンが言い終わると同時に、ネプテューヌとリオが席に着く。
「それで早速だけど仕事の詳しい話を聞かせてくれないかしら?」
「あぁ。単刀直入に言うとアンタ達には、交易路のモンスターをどうにかして欲しいんだ。少し前まではモンスターなんて居ない安全な交易路だったんだが、最近モンスターが出るようになっちまってさ」
「なる程、それで商品の流通が滞ってしまったと?」
「あぁ…その通りだ」
「ビンゴね。良いわその依頼、確かに受けたわ」
「助かる。ただでさえアヴニールの所為でこっちは景気が悪いってのに、それにモンスターまで加わってたまったもんじゃ無かったんだ」
「シアンさん。そのアヴニールって何ですか?」
「何だお前ら、アヴニールも知らないのか?」
コンパの質問に呆れたような顔をする。
「悪いけど、ラステイションには今日来たばかりだからな。できたら、詳しい状況を聞かせてくれないか?」
「そうか、なら仕方ないな。アヴニールってのは実質このラステイションを支配している大企業だ。家電から兵器までなんでも作って、その製品ラインナップの多さと低価格で市場を独占していると言っても過言じゃないんだ。こっちの商品は種類も価格も負けて売れないし……今月に入ってから知り合いの工場も何件潰れたことか……」
そう言い、悔しそうにシアンは顔を顰める。
「ひ、酷いです。独占禁止法違反です!」
「女神様や守護者様には相談したの?」
「何度も相談しようとしたさ…けど、ブラックハート様とバイオレットナイト様の不在が長過ぎたんだ。教会の表向きはブラックハート様とバイオレットナイト様を信仰しているように見えるが、中身はアヴニールだらけさ…」
それを聞き、リオ達は教会での職員の態度に納得した。
「アヴニールはブラックハート様とバイオレットナイト様に会わせてくれないどころか、顔すら見せてくれないんだ!」
怒りのこもった拳を机に叩き付け、悔しそうにシアンは言った
「アヴニールは悪い会社なんだね。シアンも街の人もそれで困ってるんでしょ?」
「悪いなんてもんじゃない!バケモノみたいな会社さ!」
「…成る程。ラステイションはそういう事情を抱えていたわけね。それなら教会での事も頷けるわ」
事情を聞き、納得したようにアイエフは呟いた
「教会がそんな状況じゃ、女神さんと守護者さんに会う事なんて出来そうに無いですね…」
半ば諦めたような声音でコンパが言う。
「ならさ、ラステイションの女神様と守護者様…えっと、ブラックバード様とバイオレットライト様だっけ?その人の住んでいる所に直接乗り込んで話を訊いて貰おうよ!私達も鍵の欠片の情報が手に入って、シアンもお願いを聞いて貰えて、きっと二倍お得だよ!」
“名案が浮かんだ!”とでも言いたげにネプテューヌは叫ぶ。
「さすが、ねぷねぷ。良い案だと思うです。さっそく今夜にでもブラックバード様とバイオレットライト様のお部屋に忍びこむです」
「ブラックバード様じゃなくてブラックハート様な。そして、バイオレットライト様じゃなくてバイオレットナイト様。けど、ブラックハート様とバイオレットナイト様が普段居る部屋が分からないんじゃ、探してる間に捕まるのが関の山だろうな」
「俺も同じ意見だ。第一リスクが大きすぎる」
「そう?やってみなきゃ分かんないよ?やらないで後悔するより、やって後悔派の私としてはそれだけじゃちょっと諦めきれないかなぁー」
「今回は諦めときなさいネプ子。下手に動いて失敗したら尚更ガードが堅くなるだけよ。もし、そうなったらシアン達にも迷惑を掛けることになるわ。もしかしたら、シアンからの仕事のおかげで鍵の欠片が見つかるかもしれないし、この件はこの仕事が終わってから改めて考えましょ?」
結局、アイエフに説得される形になり、ネプテューヌとコンパは教会に潜り込む作戦は諦め、大人しくクエストを完遂するために向かった。