少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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遅れて申し訳ございません。本来は1話で構成しようと思っていたのですが、文字数の関係で半分に分けます。
 やっと書き終わった……。これで閑話を書いたら香港編に突入。長かったなぁ。






Die Hard3 in Tokyo 西住さん、誤解です……

『こちら東京武偵高校所属YS-11。左方から接近する。…………イブキ、何とかやったようだな。』

 

‘‘笹井のナンパ’’が無限に続くと思われた時、武藤の声が機内放送に流れた。俺は左側の窓を覗くと……そこには側面に大きく『東京武偵高校』と描かれた、今や珍しいYS-11が飛んでいた。

 

 ……よくもまぁ、こんな古い航空機を保存してるなんて。

 

俺は救出に来てくれた安堵よりも、そっちの方を感心した。

 

「あぁ、何とかな。……よくそんなオンボロを飛ばせるな。」

『おう、車輛科(ロジ)の秘蔵っ子だからな。前に飛ばしたのは3年前らしいぜ?』

 

武藤は『どうだ』とばかりに、自慢げに言うのだが……俺達は不安要素にしかならない。

 3年も飛んでいない飛行機を平然と飛ばしているのは……車輛科(ロジ)の整備のおかげか、それとも武藤の技量によるものだろうか?

 

 ……まぁいい。製造されて60年は経っている機体でも、救援に来てくれたことには変わりない。

 

『あの後、調布から急いで戻って追っかけたんだ。……約束守れよ?』

「白雪の手料理だっけ?……頼んでみるけど期待はするなよ?」

 

俺は『Die Hard3 in Tokyo 『おねーちゃん』を探しますか……』において、武藤が白雪の手料理を望んでいたことを思い出した。

 

『やっぱり持つべきものは友だな!!……今ワトソンがそっちへ移動する。速度、高度、角度をそのままにしろよ?』

「了解。操縦系が全部いかれて、今は自動操縦だ。下手に操縦席のスイッチは触らねぇよ。」

 

武藤が弾んだ声でそう言うと、YS-11から一人空中に飛び出してきた。その人物はワイヤーで宙ぶらりんになりながらも、ゆっくりと俺らの機体に近づいてくる。あれは……武藤の言う通り、ワトソンのようだ。

 

Roseliaの皆さん(お嬢さん方)、テロリストの輸送機にご搭乗ありがとうございました。脱出するまでは気を抜かず、搭乗員の指示に従ってください……ってな。」

「「「「「…………」」」」」

 

俺は安心させるため、軽口を言ったが……いまいち受けが良くなかった。

 

「(英語)なんだ、日本じゃこういうのはウケないのか?」

 

 ……おっさん、傷に塩を塗り込むんじゃねぇよ

 

俺はため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

『‘‘白雪ちゃん’’って女性ですよね?武偵高の生徒も、先輩も知ってるって事は……女子高生ですか!?いいなぁ~、俺も‘‘白雪ちゃん’’の手料理食べたいなぁ~!!!!そう言えば俺、敵機を4機も撃墜したんですよねぇ~!!!!』

「……笹井、いい加減にしろ。」

「…………スイマセン」

 

とはいえ、笹井のおかげで助かったのは事実である。

 後日、‘‘外出止め&自室にて謹慎’’を喰らっていたのにも関わらず、脱走しようとしていた笹井を見つけてボコボコにした後、俺は『白雪特製弁当』を渡してやった。

 

 

 

 

 

 

 俺はコックピットを出ると、すでにワトソンが乗り移っていた。彼女はワイヤーのフックをこの機体に固定させていた。

 

「……ん?なんでワトソンが救出作戦に?」

 

俺は不思議に思った。

 ワトソンは優秀な万能型の武偵だ。彼女はテロリストが仕掛けた爆弾の捜索で忙しいと思っていたのだ(何個仕掛けられたか分からないため、首都圏全ての学校を捜索しなければならない)。

 

「空挺訓練や空中機外作業の訓練を受けたことがある武偵はボクだけらしい。……それにムラタがピンチだって聞いたから。

「……?そうか、とりあえずこっちだ。」

 

ただでさえ、エンジン音にプロペラ音、それに風の轟音によって大声でしゃべらないと意思疎通ができない。そんな場所でワトソンが小声で何か言ったようだが、俺は一切聞こえなかった。

 

 ……まぁいい。それよりもRoseliaの皆さん(お嬢さん方)の救出が最優先だ

 

俺は後ろで不機嫌になったワトソンの手を取り、コックピットへ案内した。

 

 

 

 

 

 

「…………ムラタ、コックピットで撃ち合いでもしたのかい?君は考えなしに戦うことがあるのは知っていたけど、コックピットで戦えば操縦不能になることくらい考えられなk……」

「これをやったのは俺じゃないから!!敵のテロリストが連射した結果、なっただけだから!!」

 

ワトソンはコックピットの悲惨な現状(多数の弾痕や破壊された機器)を見て一瞬茫然した後、俺をジト目で見てきた。

 俺は慌てて反論と弁明をするが……ワトソンは信用していないのか、その批判的な視線を止めない。

 

「それに酒臭いよ?」

「飲まなきゃやってられない事情があったんだよ。」

 

俺はため息をつき、笹井を睨んだ。笹井は『いいなぁ~』と指をくわえながらこっちを見てくる。

 

「…………分かった。それ以上は聞かない。……さ、皆さん。一人ずつこの機体から脱出します。僕の指示に従ってください。……武藤、救出を開始する。移動をしてくれ。」

『了解。移動するぜ。』

 

ワトソンは俺の苦労を察したのか……追及を止め、Roseliaの皆さん(お嬢さん方)の救出の準備を始めた。

 

 ……これでやっと肩の荷が下りたな。

 

俺がそう思った時、視線を感じた。俺はその視線を感じる方を向くと……Roseliaの5人(お嬢さん方)が不安そうに俺を見ていた。

 おそらく……ワトソンを信用してよいのか、そして(特殊刑事課の様な)‘‘変態’’ではないのか、と言う不安があるのだろう。

 

Roseliaの皆さん(お嬢さん方)、安心しろ。ワトソン(あいつ)は世界を股に掛ける優秀な武偵だ。それに月光刑事(デカ)の様な変態では…………」

 

その時、俺は『ワトソンは男装の麗人であり、 ‘‘女性としてのふるまい’’にトラウマを持つため、リハビリ(オママゴト)をやっている』という事を思い出した。

 

 ……確かに一般女性とはかけ離れているが、‘‘特殊刑事課’’の様な変態ではない……はず。うん、普段の言動からはそのような傾向はない……はず。

 

「変態では…………ない。うん、変態じゃないから安心しろ」

 

俺は少々考えた後、言葉を発した。

 

「ちょっと待って!!今の間は何!?」←茶髪ギャル

「あこ、あんな様な人は嫌だよ!?」←紫髪の少女

「村田さん、何とかなりませんか!?」←氷川紗夜

「「……!?……!?」」←黒髪巨乳少女&銀髪少女

 

それが悪かったのだろう。逆に彼女達の不安を煽ってしまったようだ。

 

「ムラタ!?君はボクを何だと思っているんだい!?」

 

ワトソンが顔を真っ赤にしながら俺の胸元を握って揺らしてくる。

 

「いいから!!時間が無いから早く脱出しろ!!」

 

俺はワトソンを引きはがし、Roseliaの5人(お嬢さん方)と一緒にをコックピットから追い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれ、先輩?あの‘‘ワトソン’’って子って……女の子ですよね?』

「違う!!ボクは……男だ!!」

 

笹井の戯言(ざれごと)に釣られ、ワトソンは思わず反応してしまった。

 

『この声や体形から考えて……やっぱり女性ですよね!?……ゴホン!!こんばんは、お嬢さん。これが終わった後、一緒に食事でもいかがでsh……』

「笹井、救出の邪魔だ。静かにしろ。……そう言えば、‘‘冬季の特別サバイバル訓練’’に空きがあるらしいg……」

 

『冬季の特別サバイバル訓練』とは……(着ている)衣服一着のみ持ち込み可の条件で、1~2週間ほど単独で山籠(やまご)もりするという訓練だ(時々追手アリ)。

 追手のみならず、野生の動物(主に熊)からの襲撃もあるため、とても厳しい訓練となる。

 

『ボクガ悪カッタデス。スイマセン。』

 

笹井はすぐに謝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、笹井の妄言を一蹴した後、この機体からの脱出が始まった。

 ワトソンとRoseliaの5人(お嬢さん方)のうちの一人がスカイダイビングのタンデム(二人一組)の様になった後、ワイヤーを伝ってYS-11に移動するという事を繰り返す。

 

 紫髪の少女(宇田川あこ)黒髪巨乳少女(白金燐子)銀髪少女(湊友希那)茶髪ギャル(今井リサ)という順番で移動が進み、最後に氷川紗夜が移動する順番になった。

 

「村田さん、助けてもらってなんてお礼をすればよいのか……」

「気にするな。氷川日菜(妹さん)の依頼だから。」

 

俺がそう言うと、氷川紗夜さんが引きつった笑顔を浮かべた。

 

 ……ん?どうかしたのか?そう言えば氷川紗夜(姉)・氷川日菜(妹)の二人は双子なのだが、学校が違う。今の表情から……氷川紗夜は氷川日菜(妹)苦手なのか?

 

氷川紗夜(姉)・氷川日菜(妹)の間に何か複雑な姉妹関係が見えた。

 

「今度相談に乗りますよ。氷川日菜(妹さん)との関係に悩んでるんでしょ?……じゃ、ワトソン。よろしく」

「え!?い、いえ!!そう言うわけでは……!!」

「…………。」

 

ワトソンはムスッとむくれながら氷川紗夜を抱え、YS-11へ移動をしようとした。その時だった。

 

  ウゥ~!!ウゥ~!!ウゥ~!!

 

サイレン音が機内で鳴り響いた。

 

 ……この音って!?聞き覚えがあるぞ!?

 

この音は前話で敵戦闘機にロックオンされた時になったサイレン音と同じ音だ。

 俺は嫌な予感がし、急いでコックピットに走った。

 

 

 

 

 

「(英語)おっさん!?」

「(英語)クソッタレ!!またロックオンだ!!」

「「え!?……え!?」」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は怒鳴るように答え、西住さんとかなめは慌てていた。

 操縦席の画面には『自动跟踪(ロックオン)』の文字が表示されていた。俺はレーダーの画面を見ると……ミサイルしか表示していない。敵戦闘機は近くにはいないようだ。

 

 ……クソッ!!どこから発射されたんだ!?

 

俺はコックピットを出るとワトソン達とは逆側、右側面扉から上半身を出して周囲を確認した。

 

 ……いた!!あいつか!!

 

2時の方向に1隻の小さな漁船から煙を吹き、俺達がまだ乗るこの機体へ真っすぐに飛んでくる小型ミサイルが見えた。そしてそのミサイルはすでに目と鼻の先にいる。

 

 ……チクショウ!!迎撃も回避もできない!!

 

  チュドーン!!!

 

「……ぐぁあああ!!」

 

小型ミサイルは右翼・内側エンジンに命中した。その破片が俺に降りかかり、体を切り裂いていく。俺は必死になってその痛みに耐えた。

 

 ベキベキベキ!!

 

ミサイルとエンジンの爆発により翼に亀裂が走り、そこに風圧が加わり、片翼がゆっくりともげる。それと同時に機体のバランスがゆっくりと崩れていく。

 

『……ッ!!ヤロウ!!よくも先輩を!!』

『待て!!待て笹井!!』

 

笹井が操縦するF-15が小型漁船へ急降下し、バルカン砲が火を吹いた。

 

 ……この機体は武藤が操縦するYS-11とワイヤーで繋がってるんだ。このままだとYS-11も道連れになっちまう!!

 

「二人とも!!早く出ろ!!!」

 

俺はワトソンと氷川紗夜へ怒鳴るように言うが、二人は動こうとしない。

「ムラタ!!君はどうするんだ!!」

「村田さん!!もしかして死ぬ気ですか!?」

「大丈夫だから早く!!」

 

俺は二人を蹴飛ばすようにして機外へ脱出させた。その2~3秒後、俺達の乗るこの大型輸送機は錐揉(きりも)み状態になって地球へダイブを始め、ワイヤーの固定具が吹っ飛んだ。

 

 ……機体の高度は約7000mほどだったはず。空気抵抗のない自由落下だと……地面まで35秒くらいか?実際は空気抵抗が加わり、もっと長い時間がかかるはずだ。その間に何とかしないと!!

 

俺は無重力状態になった機内を何とか移動し、コックピットへ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「アハハ……そう言えば、『東京で自殺しよう』って考えてたんだっけ……。ある意味(かな)ったかなぁ……」

「(英語)嬢ちゃん!!ブツブツボヤいてないで、さっさと探せ!!」

少なくても、あたしとイブキにぃ‘‘だけは’’助かるようにしないと…………あ、イブキにぃ!!」

 

 疑似宇宙空間(無重力状態の機内)を移動し、扉をくぐると……コックピット(そこ)は混沌だった。

 西住さんは虚空を眺めて笑いながら現実逃避をし、ジョニー・マクレー(おっさん)は必死に脱出装置を探し、かなめは何かを(たくら)んでいた。

 

 ……か、関わりたくねぇ。

 

俺はため息をつき、思考と感情を強制的にリセットさせた。

 

 ……残っているのは俺を合わせて四人。脱出用のパラシュートはないらしいが、脱出装置がないというのはおかしい。

 

俺は抱き着いてくるかなめを引きはがし、西住さんの頭をはたいて現実逃避を止めさせた後、何か脱出用の装置がないか探し始めた。

 

 ……搭乗員用の脱出装置はなくても、少なくても操縦員用の脱出装置は装備されているはずだ。

 

 その時、座席横にレバーを発見した。レバーには『弹射(射出)』と書かれている。きっと射出座席を発射させるためのレバーのはずだ。

 

「(英語)おっさん!!多分、座席横にあるレバーだ!!それが射出座席のスイッチだ!!……西住さん!!ボケッとしてないで座席に座ってくれ!!」

「こんな状態で席に座れませんよ!?」

「口答えするなら行動してくれ!!」

 

俺はジョニー・マクレー(おっさん)に脱出装置(?)を伝えた後、目の前に漂っていた西住さんを捕まえ、シートベルトで座席に縛り付けた。

 

「(英語)こいつかぁ!?……おい、嬢ちゃん!!いや、お前!!坊主の妹の方だ!!早く席に座ってベルトを閉めろ!!」

「何でお前に命令されなきゃいけないんだ!!アタシを縛り付けていいのはイブキにぃだけだ!!」

「(英語)テメェは死にたいのか!?さっさとしろぉ!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は文句を言うかなめに一喝し、そのまま座席に座らせてシートベルトをかけさせた。

 

 ……ま、間に合うか!?

 

俺は外を見た。すでに高度は3000mを切っていた。

 

「(英語)坊主!!座らせたか!?」

「(英語)準備万端だ!!いつでもできるぞ!!」

 

俺とおっさんは二人を縛り付けた座席の背にしがみ付いた。

 ところで、俺達が乗る大型輸送機は現在進行中で空中分解が進んでいる。

 

  パリン!!べキッ!!

 

たった今、コックピットのガラスが割れ、壁の一部がはがれた。

 

「(英語)射出座席なんて何時以来だ?……あぁ神様、お助けを……

「(英語)ジョン・F・ケネディ国際空港以来じゃねぇか?………行くぞ!!」

 

俺達は同時に座席横のレバーを引いた。

 

  バシュ!!

 

コックピットの天井が外れ、座席下にあるロケットブースターに火が付いた。

 

「「「「うわぁぁああああ!!!」」」」

 

俺達は強烈なGを受けながら、夜空に吹き飛ばされた。

 

  チュドーン!!

 

そして俺達が脱出し、パラシュートが開いたと同時に輸送機の残骸が大爆発を起こした。

 

「(英語)くそぉ!!日本になんてもう来てやるか!!」

「(英語)こっちから願い下げだ!!それにアメリカ(そっち)の方が危険だろうが!?」

「…………少なくても、東京にはもう来たくないなぁ。」

「やっぱりこのおっさんは危険……イブキにぃはやっぱり閉じ込めていた方が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西住さんの射出座席に俺がへばりつき、かなめの方にはジョニー・マクレー(おっさん)がへばりついていた。

 もちろん、射出座席は人間一人分で設計されているため、俺やジョニー・マクレー(おっさん)がしがみ付いていると重量オーバーとなる。なのでパラシュートは比較的早い速さで落下し、俺達は海面に叩きつけられた。

 

 ……クソォ!!叩きつけられた痛みなんて屁でもねぇが、海水が傷にしみる!!

 

俺はあまりの痛さに気絶しそうになったが何とか耐え、海面に向かって泳ぎ始めた。

 

「プハッ!!」

 

俺は海面に出て新鮮な空気を肺に入れ込んだ後、周りを見た。海面には二つの小型ゴムボートが浮かんでいた。おそらく、このゴムボートは射出座席についていたものだろう。

 

「おっさん!?かなめ!?西住さん!?」

「(英語)坊主……生きてるか~?」

「イブキにぃ!!よかった!!生きてた!!」

 

俺は叫ぶように言った。するとジョニー・マクレー(おっさん)とかなめの返事が聞こえたが、西住さんの声だけは聞こえない。

 

「(英語)おっさん!!西住さんは!?」

「(英語)嬢ちゃんは坊主と一緒に落ちたじゃねぇか!!知らねぇぞ!?」

 

俺は立ち泳ぎをしていたかなめとジョニー・マクレー(おっさん)に近づいたが……やはり西住さんは見えない。

 

 ……おい、嘘だろ!?

 

すでに日は落ち、‘‘真っ暗な海’’と‘‘星々がきらめく夜空’’がほとんどを占めている。‘‘燃え盛る機体の残骸’’が唯一の光源だ。

 こんな状態で一度はぐれたら……よほどの豪運がない限り、生存の確率は一気に狭まる。

 

 ……いや、俺と西住さんは同じ場所に落ちたんだ。だけど声や返事が聞こえないってことは、そもそも海中から這い上がっていないのか?

 

 俺は海面に浮いていた小型のゴムボートへ這い上がると、それに備え付けられていたサバイバルセットから懐中電灯を見つけた。

 

 ……よかった、懐中電灯(こいつ)は防水になってる。

 

「イブキにぃ…………ナンデ他ノ女ノ心配ヲシテイルノ?」

 

俺はヤバそうなオーラを出すかなめを無視し、懐中電灯を咥えて暗い海へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……海水が目にも傷にも染みる。クソッ!!西住さん、どこにいるんだ!?

 

俺は海水が目にも傷にも染みる中、暗い海の中で懐中電灯を振り回し、西住さんを必死に探していた。

 

 ……く、苦しくなってきた。いったん海面に……!?

 

その時、ゆっくりと海底に沈んでいく西住さんが見えた。

 

 ……いた!!気絶しているのか!?

 

俺は急いで西住さんの元へ泳いだ。西住さんの腕を掴んで一気に引き寄せたが、彼女の反応はない。

 

 ……とにかく、海面に戻らないと!!息が持たない!!

 

全力疾走中の時以上に心臓がバクバクと鳴る。意識が少しずつ薄れていく。

 俺は西住さんを抱え、真っ暗な海の中を泳いだ。

 

 

 

 

 

 

「プハッ!!ハッー!!ハッー!!!」

 

 着衣泳をしたことはあるだろうか?一度水を吸った衣服は重くなり、裸(正確には水着のみ)の時に比べて泳ぐのがとても困難になる。

 俺は息継ぎをした後、武偵高の上着を脱ぎ捨てた。そして多少身軽になった体を必死に動かし、西住さんを小型ゴムボートへ運び上げた。

 

「(英語)坊主!!嬢ちゃんは生きてるか!?」

「イブキにぃ……ナンデあたしジャナクテ、そいつナノ?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)とかなめは別のゴムボートに乗っていた。ジョニー・マクレー(おっさん)は心配そうに聞いてくる。

 俺は気絶している西住さんの気道を確保したが……腹が動いていない。

 

「おい、嘘だろ!?」

 

 西住さんは息をしていなかった。俺は西住さんの首に手を添え、脈を計るが……心臓の鼓動を感じない。

 

 ……クソッ!!息を吹き返してくれ!!

 

俺は‘‘四次元倉庫’’から銃剣を取り出し、西住さんが着ている上半身の衣服を全て切り裂き、開いた。そして上半身が裸になった西住さんの胸に手を当て、心臓マッサージを開始した。

 

「1、2、3、4……!!」

 

心臓マッサージ30回・人工呼吸2回が1セット。それを何回も繰り返し、明らかに蘇生したと判断できるまで続ける必要がある。しかも、心臓マッサージは肋骨を()る勢いでやらなくてはならない。

 

「18、19、20、21、……!!」

 

 しかし、ここは海に浮かぶゴムボート。押せば少し沈む柔らかい床に西住さんは寝かせられ、しかも海の波による揺れまである。心臓マッサージをやるにはとても難しい環境だ。

 

 ……でも、やらないよりはマシだ!!民間人なのに散々巻き込ませておいて、西住さんだけ死なす訳にはいかねぇ!!!

 

「27、28、29、30!!!」

「いいなぁ~。あたしも気絶すればイブキにぃにあんな事を……」

「(英語)なら俺がやってやろうか?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)とかなめが何かしゃべっているらしいが無視をする。

 30回の心臓マッサージを終え、人工呼吸を始めた時、西住さんの目がうっすらと開いた。

 

 ……よかった!!何とか息を吹き返sh……!!!

 

俺が口を離そうとした瞬間、西住さんはカッと目を見開いた。そして鳩尾(みぞおち)に強烈な衝撃を感じたと同時に、アッパーカット気味に(あご)へ鋭い鉄拳が刺さり、俺は空中を飛んだ。

 

 ……は?……え?……は?

 

空中を飛んでいる時、顔を真っ赤にしながら鋭い目つきで俺を睨む西住さんと目が合った。

 きっと……彼女は何か大きな、とても大きな誤解をしているに違いない。

 

  バシャン!!

 

 ……俺が何をしたって言うんだよ。今日丸一日、爆破やら銃撃やらで散々ボロボロになって最後はこの仕打ちかよ。俺はただ、西住さんを助けようとしただけなのにさぁ。

 

俺は暗い海の中へ再び強制ダイブをさせられ、意識を手放した。

 

「おいお前何やってんだよ!!イブキにぃ恩を仇で返しやがって!!」←かなめ

「……え!?あぁ!!!む、村田さん!!ごめんなさい!!」←みほ

「(英語)おい、坊主が動いてないぞ!?」←マクレー

 

 

 

 

 

 

 『Die Hard3 in Tokyo』 END

 

 

 エンディングテーマ:『ジョニーが凱旋するとき』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 笹井は西住みほの衣服が切り裂かれたのを確認した時、目を皿のようにして彼女の裸を観察しようとしたのだが、運悪く窓枠の死角に彼女が入ってしまった。慌ててF-15の姿勢を変えた時にはイブキの体で西住みほの体は隠れていた。

 笹井はF-15を旋回させ、(のぞ)きを試みるが……どうもイブキが邪魔だ。

 そして西住みほがイブキを殴り、破れた衣服で上半身を隠すまで、笹井は彼女の裸を拝むことは一切できなかった。

 

……いいなぁ~先輩。あんなに女の子に縁があって。やっぱり軍隊の様な閉鎖的な男社会よりも、一般の学校の方が…………。坂井隊長!!俺も村田先輩の様に武偵高校に一時転入とかできませんか!?将来的に考えて民間とのツテは重要だと思いますし、知見を広げるためにも必要だと思うんです!!」

 

笹井は己の欲望のため、嘘八百な理由をつけて上官の坂井へ願い出た。

 

「お前、声を小さくしても聞こえているんだぞ?そんな不純な理由で出来る分けないだろうが。…………まぁ、できなくもないが。」

「本当ですか!?」

 

坂井の言葉に笹井は食い気味に反応した。

 

「村田大尉は見た目に反し、とても優秀な人間だ。それほどの優秀な人間と判断されれば可能性は無いわけではない。343空(うち)だと……とりあえず模擬戦で‘‘太田’’を3分以内に落とし、俺か‘‘西沢’’から10分逃げ切れば一考に値するか?」

 

 空軍の超腕利きが集まる343空。

 その中でも‘‘二つ名持ち’’である坂井隊長(サムライ)西沢少佐(魔王)から逃げきる事。そして‘‘二つ名持ち’’ではないが、坂井・西沢(このバケモノ二人)と同じ小隊に所属する太田中尉を落とすのは困難を極めるだろう(坂井・西沢・太田・笹井で一つの小隊)。

 

「模擬戦で太田中尉を落として、坂井隊長か西沢少佐から逃げきればいいんですね!!言質取りましたよ!!」

「……一考であって、確定ではないんだが。」

 

 後日、笹井は模擬戦で良いところまで行ったのだが、最終的にボコボコにされたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁああああ!!!ふざけるな!!ふざけるなッ!!馬鹿野郎!!あぁあああ!!!」←笹井

 

汚い慟哭(どうこく)を尻目に、笹井の上官達は話し合っていた。

 

「たった一年でここまで成長するなんて。努力はしてますし、いいんじゃないですか?」←太田中尉

「確かに、能力に努力・伸びしろを考えたら外部への出向はありだと思うんだけど……」←西沢少佐

「日頃の行いがなぁ……」←坂井

「「「ハァ……」」」

 

 

 

 

『Die Hard3 in Tokyo』 END?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 YS-11は戦後初めて日本が作った旅客機で、日本では旅客機用途での運用は終了していて、自衛隊の極一部ではまだ現役だとか。


 笹井の一人称について。普段は『俺』ですが、ナンパなどでは『僕』になります。


 射出座席には操縦士が無事に生き延びられるように、ゴムボートや懐中電灯。多少の食料や水が備え付けられているそうです。

 

  Next Ibuki's HINT!! 「0uちゃん」
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