少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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 遅れて申し訳ございませんでした。
 言い訳をさせてもらいますと……競技会に参加して全身筋肉痛になったり、補講代わりのレポートが山積みになったり……それにネタの整合性のチェックに艦これの冬イベなどで時間が潰れました。

 ……それに今回の話、出来上がって20000字弱、校正して18000字。‘‘一日千字以上書く''こと目標にしているため……単純計算して二十日はかかる。『書いても書いても終わらないなぁ』と思っていたら、そりゃぁ中々できないはずですわ。

 それに最近一話当たりの文字数がインフレしていたため、次章からは一話当たりの文字数を減らす努力をします。


閑話 俺のいちばん長い日 with BanG Dream!

1:無駄知識の泉

 

 『CiRCLE合同ライブ』の数日前の事、『休日、友達と一緒に‘‘クラゲの特別展示をやる水族館’’と‘‘その近くにできた喫茶店’’へ遊びに行きたいから、護衛のお前も来いよ?(意訳)』とのお達し(メール)が届いた。そのため、俺は白鷺千聖を‘‘休日に’’渋々迎えに行くことになった。

 

 ……確かに契約の範囲内だけど、メンドクサイ。

 

俺はため息をついた。

 確かにあの事件の後、最近は襲撃など一切なかった。だが、それでも何かあって彼女に傷一つ付いたら俺の責任になるため……あまり外出してほしくないのが本音だ。(テロの時は(軍部)が俺を徴用したため、その時の違約金などは(軍部)が負担したそうだ)

 

 ……それに休日出勤だし。どうか面倒な事は置きませんように

 

俺はボロ車(ビュート)で白鷺家へ向かうと、白鷺千聖(護衛対象)は家の前でちょこんと待っていた。

 

 ……本当、外見は綺麗だから困るよなぁ。

 

俺は再びため息をついた。

 

 

 

 

「何だって休日に出勤させるんだよ。それに何かあったら困るから、外出は最低限にして欲しいって言ったよな?」

 

俺は助手席に乗った白鷺千聖(護衛対象)にボヤいた。

 

「あら?プライベートの外出時も契約範囲でしょう?」

 

彼女は黒いオーラを放ちながら‘‘見惚れるような笑顔’’で俺を脅して(説得して)きた。

 

「お前、今まで何回襲われたと思ってんだよ。」

「でも最近は何もないことだし、それにあなたが守ってくれるのでしょう?」

 

白鷺に何を言っても駄目なようだ。俺はため息をつき、ギアを入れた。

 

「ヘイヘイ…………。で、俺は何処へ行けばいいんだ。」

「そこを左に曲がって頂戴。」

「……了解」

 

ボロ車(ビュート)はガタガタ揺れながら、ゆっくり進み始めた。

 

 

 

 

 

「……なんで車変えないのよ」

「……『お前はすぐに壊すからこれしか貸せない』って言われたんだよ。」

「……ごめんなさい」

 

 

 

 

 

「ここで止めてちょうだい。」

「ハイハイ」

 

  キキッーー!!ピキッ……

 

住宅街の一角にボロ車(ビュート)が停車した。すると白鷺千聖は助手席から降り、目の前の家へ向かった。

 

「ち、千聖ちゃん?……こ、この車なの?」

「だ、大丈夫。見た目はこうだけど、腕利きの武偵だから……」

「ふえぇ……」

 

すると数分もしないうちに白鷺千聖は‘‘青髪ロングの少女’’を連れて後部座席に乗り込んだ。

 

 ……この青髪の少女。どこかで会ったような気が……あ。

 

「‘‘松原さん?’’」

「ふえぇっ!?……む、村田さん!?」

 

 ……この特徴的な口癖に慌てよう、やっぱり松原さんだったか。

 

白鷺千聖の友人、松原花音は『極東戦役:極東編 いつ撮ったんだよ……』でかなめと一緒に行った‘‘映画館のある総合ショッピングセンター’’で道案内をしたことがある。

 

「あら、花音のことを知っていたの?」

 

白鷺千聖は大きい眼をさらに見開き、俺を凝視した。

 

「以前、道案内をしてな。……改めて、武偵の村田です。よろしく。」

「ふえぇ!?……ま、松原 花音(まつばら かのん)です。」

 

 ……松原さんは白鷺ほど面倒な子ではない。いや、よかった。

 

俺は松原さんに握手をすると、なぜか白鷺千聖は少し不機嫌になった。

 

 

 

 

 1時間もしないうちに目当てのビルに到着した。駐車場にボロ車(ビュート)を停め、俺達はそのビルの中にある水族館へ向かった。

 

「クラゲの特別展、楽しみだなぁ。……付き合ってくれてごめんね。千聖ちゃん、村田君」

「いいのよ。あの事件のせいでスケジュールに空きができたから。」

「だからと言っても外出は控えてくれ……でも水族館か。何年ぶりだろう」

 

俺達はチケット売り場への列を並びながら雑談にふけっていた。

 

「村田君、水族館はあまり来ないの?」

 

松原さんは俺の目を見ながらコテンと首を傾げた。彼女の水色の髪がサラッと揺れる。

 

「小学生以来行ってないな。……築地や豊洲なら月1回くらいで行くけど。」

 

時々、俺はリサに連れられて築地や豊洲などで荷物持ちをさせられるのだ。そのおかげか、多少食材の目利きができるようになった。

 

「……それは水族館じゃないでしょう。」

 

白鷺は(あき)れるようにため息をついた。

 

「私、ここにはよく来てるから……色々教えてあげるね。村田君。」

 

松原さんは花の様な鮮やかな笑みを俺に向けた。俺はその笑顔を向けられ、一瞬ドキッとした。

 松原さんは一つ一つの動作があざとい……が、白鷺の様に‘‘裏がある行動’’ではなく、彼女は無自覚でやっているようだ。

 

「あぁ、よろしくな。」

 

 ……白鷺よりも松原さんの護衛をやりたかったなぁ。彼女には‘‘(いや)し’’がある。

 

 

 

「高校生、3枚お願いします。」

 

やっと順番になり、俺は3人分のチケットを買った。

 

「あ、村田君。お金払うよ?」

 

松原さんは慌てて己のカバンをまさぐる。

 

「いいって。ここで割り勘だと支払いが面倒だ。」

 

俺達の後ろには多数の人達が並んでいる。迅速に支払いをするために誰かが一括で払った方がいいだろう。

 それに女二人に男一人。しかも他人の目がある中で割り勘は……キツイものがある。

 

「なに花音には格好つけるのよ。」

「ふえぇ……でも、悪いよぅ」

 

白鷺が軽蔑するような目で、松原さんは申し訳なさそうに俺を見た。

 

「…………ほら、さっさと行こうぜ」

 

俺は誤魔化すため二人の手を取り、足早に水族館へ向かった。……久しぶりの水族館に少しワクワクしているという理由も無いわけではないが。

 

「え!?ちょっと!!」

「ふえぇ!?」

 

 

 

 

 

「すみません、大人5人で」

 

 ……ん?そう言えば俺達の後ろに並んでいた人達、格好が‘‘魚屋の店主’’のような恰好をしていたが……なんでだろう。

 

 

 

 

 

 さて、入館して最初に見えるのはイワシの大群がいる水槽だった。

 

「村田君、これがマイワシだよ。」

「へぇ~……脂がのって美味そうだな。」

 

飼われているせいか……イワシ一匹一が大きく、ふっくらと脂がのっている。しかもピンピン生きているため、とても新鮮なのは確実だ。生でも焼いても美味いのはすぐわかる。

 

「ここは水族館なのよ。そんな事言っちゃ……」

 

白鷺がそう言った時だった。

 

「イワシですよ。イワシ。」

「美味そうですね」

「ふっくらしてますね」

「生で食べたり、酢で(しめ)たり……」

「焼いてもいいですよね……いくらぐらいですかね」

 

ゴム長靴に前掛(エプロン)を身に(まと)う、まさに典型的な‘‘魚屋の親父’’の様な格好をした男達5人が俺達の横でイワシの水槽を観察し始めた。

 

「そうですね~、大小込々で1本250円くらいですかね。」

「でも、こんなに新鮮で脂がのってるからもう少し高くても……あ。」

 

俺はその‘‘魚屋の集団?’’の話に思わず反応してしまった。‘‘魚屋(?)の5人’’の視線が俺に集中する。

 

「……ん?あんた、リサちゃんとよく一緒に来る兄ちゃんじゃないか?」

「……え?」

 

その5人のうちの1人、皺枯(しわか)れた声でメガネの中年男性が俺に声をかけてきた。

 

 ……あれ?この親父、確か築地か豊洲で見たような。

 

どこの店かは覚えていないが、リサがこの親父と何度か値段交渉をしていたのを思い出した。

 

「リサちゃんって、‘‘あの’’リサちゃんですか?」

「交渉上手でよく泣かされるって……」

「だけど美人で巨乳だから憎めないって……」

「あぁ、そう言えばリサちゃんの荷物持ちしていた……」

 

どうも、うちのメイド(リサ)様は市場(その界隈)で色々と有名らしい。

 

 

 

 

「えぇ、あの時はどうも……」

 

俺はとりあえず無難に挨拶をして離れようと……

 

「兄ちゃんがいるってことはリサちゃんはいるのかい?」

 

その‘‘皺枯(しわか)れ声の親父’’が周りをキョロキョロしながら俺に尋ねてくる。

 

「スイマセン、今日は仕事できているので……」

「リサちゃんいないかぁ~……もうちょっと高いかい?」

 

‘‘皺枯(しわか)れメガネの親父’’は残念そうにした後、イワシを指さして言った。

 

「300円くらいですかね?……いや、これだと高いですよね」

 

個人的には、これほど良いイワシは300円出してもいいと思うが……イワシは大衆魚。300円は高すぎるかもしれない。

 

「兄ちゃん、それはちょっと高いですよ。」

「じゃぁ間を取って280円だな。」

 

‘‘魚屋(?)の5人’’は協議の結果、『イワシ1匹280円』と決定した。手板(魚屋で値段が書かれている木の板)にその値段を書くと水槽に張り付けた。

 

「花音、行きましょう。」

「……ふえぇ」

 

白鷺と松原さんは‘‘魚屋(?)の親父達と青年の怪しい集団’’から逃げるように次の水槽へ向かう。

 

 ……なんでここ(水族館)に魚屋の親父がいるか分からないが、一応今は護衛中だ。白鷺や松原さんから離れないようにしないと。

 

「じゃぁスイマセン、俺はここで……」

 

俺は一言伝え、白鷺たちを追う様に足早に離れようと……

 

「「まぁまぁ……」」

「兄ちゃんもある程度分かるんだから……」

「そうですよ。それにリサちゃんのことも教えてくださいよ。」

「家じゃどんな感じなんですか?」

 

押しの強い親父たちに囲まれ、俺は脱出することが出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 さて、次の水槽は多種多様な魚がいる大型の水槽だった。

 

「わぁ……沢山魚がいるわね。」

「あ……千聖ちゃん、あれ、エイだよ!!」

「あら……可愛いわね」

 

そんな風に魚を観察する白鷺と松原さんの横で……

 

「エイはヒレが貴重なんだよなぁ……」

「エイヒレって酒の肴でありますよね?」

「兄ちゃん、それにフランス料理でムニエルにするんですよ。……これだと一万円ぐらいですかね」

「「「そのぐらいじゃないですか?」」」

 

俺と‘‘魚屋(?)の5人’’が食べ方や値段を協議し、値段を書いた手板を水槽に張り付ける。

 

 

 

「見て花音!!これは何かしら!!」

「えっと……イヌザメみたいだね。」

 

白鷺と松原さんが一見食べなさそうな魚の観察を始めるが……

 

「イヌザメはフカヒレだな。」

「そう言えばすり身とか蒲鉾とかの材料にもなるんですよね」

「兄ちゃん、よく知ってますね。最近はヘルシーだとかで需要が上がってるんですよね」

「水揚げも減ってるし……このぐらいですかね」

 

白鷺と松原さんの目の前に値段が書かれた手板を張った。

 

「「…………」」

 

そのせいか……白鷺と松原さんの顔が引きつる。

 

 ……あれ?松原さんはともかく、あの白鷺の引きつった顔に……

 

俺はいつの間にか、白鷺のその表情で‘‘愉悦’’を感じ始めていた。

 

 

 

「あ、あれがヨスジフエダイよね!!」

「そ、そうだね!!」

 

白鷺と松原さんが‘‘黄色と赤の鮮やかな魚’’を見るが……

 

「あれね、魚自体に脂があまり乗ってないんだよね」

「でも、淡白な白身で美味いんですよね。」

「よ、良く知ってますね兄ちゃん。そう、フライとかにすると美味しいから、意外といい値段するんですよ。」

 

俺達がすぐにその魚の解説(食べ方、値段)をするため……

 

「……」

「ふ、ふぇえ~……」

 

白鷺の顔が歪み、俺が愉悦を感じるという循環が発生していた。

 

 

 

 

「バイカルアザラシ、可愛いわね。(まさかこれは食べないでしょう)」

「そ、そうだね、千聖ちゃん!!」

 

白鷺達は絶対に食べないであろう生き物がいる水槽へ向かうが……

 

「バイカルアザラシってロシアでは毛皮や肉のための狩猟を許可しているらしいですよ。一回食ったことがあるんですが……」

「どんな味だった、兄ちゃん?」

 

 ……ふっ。残念だったな、白鷺。

 

「……」

「……ふぇえ~」

 

白鷺が俺を睨むように見てくるが……その視線がいかに心地よいことか。

 

 

 

 

「わぁ~!!大きなクラゲ!!」

「こ、こんな大きなクラゲもいるのね」

 

特設展のクラゲでも……

 

「最近は大量に網にかかって邪魔だから、むしろ厄介者なんだよね」

「あれ?……でも中華とかベトナム料理とかで沢山使われてますし、最近では刺身とかアイスクリームにいれるって聞いたんですけど。」

「兄ちゃん、需要以上に獲れちゃうから面倒なんですよ。それに加工費がバカにならないんです。」

 

白鷺と松原さんの横でクラゲ(食用)の話をし、手板を張り付ける。

 

「クラゲってこれを食べてたの!?」

「ふぇ!?クラゲって食べれたの!?」

 

 ……なんだ、歪んだ表情が出ないのかよ。

 

二人は『クラゲが食べられる』という驚きの方が勝ったようだ。

 

 

 

 

 

 

 さて、やっと‘‘魚屋の親父たち’’と分かれ、俺達は‘‘最近できた喫茶店’’へと入った。

 俺は車の運転があるため……『カフェ・ロワイヤル』などの‘‘酒入りコーヒー・紅茶’’を泣く泣く断念し、普通の紅茶を頼んで(すす)っていた。

 

「久しぶりに花音と遊びに出たのに、何してくれるのよ……!!」

 

白鷺はテーブルの下で俺の足を蹴ってくるが……‘‘水族館での苦痛な表情’’の見物料と考えれば安いものだ。

 

「アハハ……。でも、色々と知ることができたし、よかったんじゃないかな、千聖ちゃん。」

 

松原さんは苦笑いをしながらも助け船を出してくれた。

 

「…………でも、護衛の仕事はしていたのかしら?私達から離れて……」

「い、いや。ちゃんとやってたぞ!!」

 

俺はあの‘‘魚屋(?)の5人’’と話をしながらも二人を監視し、何かあったらすぐに動けるようにはしていたが……仕事(護衛)をサボっていたと言われてもおかしくはない状況であったのは事実だ。

 

 俺は睨んでくる白鷺から顔をそむけると、視線の先に‘‘メダカが入った水槽’’があった。

 

「……そう言えば、メダカは‘‘佃煮’’が有名だよな」

「「!?」」

 

俺は多少‘‘魚屋の親父たち’’の影響を受けたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 数か月後、とある深夜番組において……

 

「投稿者さんの質問は……こういうことになります。『水族館の魚に魚屋さんが値段をつけると●●●円になる』。……いくらになると思います?」

「水族館によってはマグロが沢山いるところもあれば、全くいないところもありますから……分からん。」

 

‘‘サングラスをかけた男’’は見当がつかなかったようだ。

 

「じゃぁ見ていただきましょうか、こちらが確認のVTRです」

 

そのVTRに‘‘魚屋+少年’’が映っていたそうだ。

 

 

 

 

2:東〇Walker

 

 東京、羽田空港第二ターミナルの外に、男四人の怪しい集団がいた。

 

「皆さん、おはようございます。我々は今、東京は羽田に来ております。ただいま朝の9時を回ったところです。」

 

 その怪しい集団のうちの一人、鈴藤と言う男がカメラに向かって説明をした。

 

「昨日拉致(まが)いの事を村田君にやったせいで、報復が怖いから急に場所を移動するって……なら何であんなことをするんだい?」

「アッハッハッハ!!」

 

そして和泉のボヤキ、藤崎がカメラの外で大声を出して笑う。

 

「まぁ、あの後彼は許してくれましたし、東京武偵高校(彼の学校)にも許可をいただいておりましたから……。まぁ、そんなことはさておき!!今回、和泉君は珍しく企画の内容を知っております。」

「そうなんです!!企画を聞かされてますけど……一考に内容が見えてないんで、やけにドキドキしております!!」

 

和泉は顔を強張らせながらカメラに向かって言った。

 

「まぁ、そこまで勘繰らなくても大丈夫です。今回は楽しもうと、旅を満喫しようと、そういう企画ですから。」

「そうは聞いております。だけどね、君達はそんな事を言って何回僕を騙してきたんだい?」

 

鈴藤が和泉の緊張を(ほぐ)そうと、おどけて言うが……和泉はさらに警戒をした。

 

「とりあえず、最近は色々と御呼ばれされてよく来ますが……実は我々、東京をあまり知りません。」

 

鈴藤は規格の説明を始めた。

 

「そりゃそうだよ、行ったところって言ったら空港かバスターミナルか、あと武偵高校ぐらいだもの」

 

和泉は疑いの目で鈴藤を見ながら相槌を打つ。

 

「ですので東京を満喫したいと、存分に楽しもうじゃないかと、そう言う企画で御座います。……で、いつも和泉君はいつも何処へ行くか知らないでしょ?サイコロの出たところとか、海外もどこへ行くか知らされない……なので、和泉君が()きたい所に行こうと。和泉さんが全部行き先を決めてください!!」

 

鈴藤はそう言って‘‘東〇Walker’’と‘‘A1サイズの東京の地図’’を和泉に見せびらかす様に取り出した。

 和泉はこの番組において『行先を自分で決める』など初めての事であったため、目を白黒させている。

 

「疑ってるようだけど、君が全部決めるんだからね?」

 

ディレクター:藤崎がいまだに疑っている和泉を説得するかのように言った。後ろではカメラを構えた音野が首を縦に振って(うなづ)く。

 

「まだ迷っているなら、この‘‘東〇Walker’’で調べて貰ってもいいですから。」

 

鈴藤はそう言って手に持っていた‘‘東〇Walker’’を和泉に押し付ける。

 

「いや、疑ってはいましたけども、一応考えてきたので……」

「じゃぁ、さっそくその場所をこの地図に(しる)していきましょう!!何かあれば、この‘‘東〇Walker’’がありますから!!」

 

和泉は鈴藤や藤崎の言葉に‘‘嘘は’’無いという事を理解した。

 

「そうだねぇ~。僕が行きたいのは……」

 

そして鈴藤と藤崎に(おだ)てられるまま、和泉は持ち前の話術を駆使しながら五つほど候補を()げ、‘‘A1サイズの東京の地図’’にシールを貼っていった。

 

 

 

 

 

「まぁ、こんな所かな?」

 

和泉はドヤ顔をしながら全ての行き先を言い終えた。

 

「だいたい……行程70キロほどになりますかな?」

「じゃぁ行きましょう。東京を‘‘たっぷり’’満喫しましょう。」

 

ディレクター:藤崎と鈴藤の言葉で、空気が変わった事を和泉は気が付いた。

 

「この雑誌にもある通り、‘‘歩く人(Walker)’’でね。」

 

和泉は感づいた。今、自分の決めた場所を全てWalk(歩いて)行く企画だという事を……

 

「ハハハッ……た、タクシー!!!」

 

和泉の助けを求める声が羽田に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

「村田さんスイマセン、送ってもらっちゃって」

「気にしないでいいぞ。……悪かったね、色々と巻き込んじゃって……」

「えぇ、全く。」

 

今日、羽田発・熊本行きの便で西住さんが帰るため、俺は彼女をビュート(ボロ車)に乗せ、羽田空港へ来ていた。

 

「そう言えば西住さん、なんか色々と悩みがあったみたいだけど……大丈夫かい?なんか大会でやらかしたって聞いたけど……」

 

俺はそう言いながらターミナルの前に車を停めた。

 俺はバックミラーで西住さんを確認すると、彼女は爽やかな笑みを浮かべていた。

 

「なんか私……下らない事で、ちっぽけな事で悩んでたんだなぁって実感しました。村田さんとマクレーさんに巻き込まれましたけど、あの時の様に‘‘生か死か’’っていう訳ではなかったですし。」

「…………いえ、ハイ。スイマセン。」

 

俺は謝らずにはいられなかった。

 

「あっ!!村田さんを非難しているつもりは……多少はありますけど、」

「あるのかよ。」

「それはありますよ。……でも、冷静に考えられるようになりました。それに、心配してくれる友達がいるってわかりました。」

 

 ピコン!!

 

西住みほは自分のスマホを見た。スマホの通知には西住まほ・逸見エリカ・赤星小梅、そして東京で友達になった美竹蘭からもメッセージが来ている。

 

「じゃぁ村田さん、送ってくれてありがとうございました。」

「あぁ、気をつけろよ。また東京に来たら歓迎するぜ」

「あ、大丈夫です。村田さんに会ったらまた巻き込まれそうなんで。」

「おい!?」

 

西住さんは笑顔を浮かべながらそう言い放って車から降り、ターミナルへ向かって行った。

 

「……行くか。」

 

俺はその姿を見送り、そして車を発進させた。

 

 

 

 

 帰り道、俺は思わずため息をついた。

 

 ……今回の出費は痛いなぁ。

 

今回の事件で、自分の高機動車(愛車)がお釈迦になったのを筆頭に、日本刀・38式歩兵銃・多数の銃剣にスマホが犠牲となった。

 

 ……銃剣は安物だし、軍の倉庫に38式の予備は大量にある。車もビュート(ボロ車)をタダ同然で借りているからいいが……問題は日本刀だ。

 

 市場で出回っている日本刀のほとんどが安物の(なまく)らだ。俺が欲しい『蛮用に耐えられて、切れ味抜群』な日本刀となると……安くても数百万は下らないだろう。(そもそも、そんな業物(わざもの)は出回る数がほとんどない)

 

 ……最悪、安物を‘‘使い捨て’’で使用するか?

 

再びため息をついた時、道路わきの歩道に良く見知った男四人組を見つけた。

 

 ……そういえば『和泉が決めた場所を‘‘歩いて’’行く企画』って藤崎さんが言ってたっけ。

 

俺がそのことを思い出したと同時に、和泉さんは車道に向かって手を上げ、タクシーを呼び始めた。

 

 ……昨日の事もあるし、少しくらい揶揄(からか)ってもバチは当たらないだろ

 

俺はビュート(ボロ車)を4人組の近く、カメラに映る様に停めた。

 

 

 

 

 

どうでぃ班の前に一台の車が止まった。

 

「おいおいおい!?何タクシー呼んじゃってんだよ!?」

「うるさい!!『東京をすべて歩く』だぁ!?馬鹿じゃないの!?江戸時代じゃないんだ!!」

 

藤崎と和泉は声を荒げて口論を始めた。

 

「……あれ?これ、タクシーじゃないような……」

 

鈴藤は目の前に止まったレトロ……と言うよりは退廃的な車を見て疑問に思った。

 

  ギィイイイイ!!

 

その退廃的な車の窓が開き、よく見知った人物が顔を出した。

 

「「「「村田君!?」」」」

「和泉さん、徒歩での移動頑張ってください。俺は車で帰りますんで。じゃっ!!」

 

村田はドヤ顔で言って窓を閉め、車でその場を去っていった。

 

「……ま、待てこの野郎!!」

 

和泉は顔を真っ赤にしてその車ををかけるがもう遅い。

 

「「「アッハッハッハ!!!」」」

 

 

 

さぁ、どうでぃ班は東京約70キロを徒歩で縦断できるのか!?

 

 

 

 

 

 

3:私の妹がこんなに怖いわけがない

 

家出(?)をした西住みほは東京で散々な体験をした後、飛行機で熊本に戻ることになった。

 

 ……村田さんの前で見栄(みえ)張ったけど、やっぱり気まずいなぁ。

 

 西住みほは‘‘東京でのテロ事件’’に巻き込まれたせいで‘‘人並み以上’’の度胸を備えるようになったが……それでも、散々迷惑と心配をかけた実家に帰るのは気まずかった。

 

 ……また東京に行こうかなぁ。でも、どうせまた何かの事件に巻き込まれそうだし……

 

西住みほはため息をつきながら到着ロビーへ向かうと……

 

「みほ!!みほ!!」

 

自分の名前が呼ばれたと同時に……誰かに抱き着かれたようだ。そのせいで口と鼻がふさがれたため、みほは必死になって抜け出そうとする。

 

「良かった……。よかった……!!無事だったんだな!!」

「……!?」

 

みほは顔だけ何とか抜け出すと……目と鼻を真っ赤にし、涙と鼻水を流す(まほ)がいた。

 西住みほにとって‘‘(まほ)が涙を流す姿’’は数年ぶり……中学・高校では全く見なかった(まほ)醜態(しゅうたい)だった。

 

「いきなり居なくなって……!!見つかったと思ったら遠い所にいて!!しかもそこで事件が起こきて!!どれだけ心配したと思っているんだ、みほ!!」

 

(まほ)のその言葉を聞き、みほは抵抗する気力が失せた。何故だろう……(まほ)が苦しいぐらいに力いっぱい抱きしめ、涙と鼻水を(みほ)の服に垂らす事に嫌悪感を抱くことができなかった。むしろ、それが心地よい。

 

「ゴメンね、お姉ちゃん……」

「すまない……本当にすまない……」

 

(まほ)懺悔(ざんげ)をするかのように……みほに謝り続けていた。

 

 

 

 

 まほはひとしきり泣いた後、やっとみほを解放した。まほはいつも通りの凛とした顔つきに戻っていたが、目と鼻は真っ赤に腫れている。

 

「全く……いいご身分ね、平日に東京観光なんて」

「そう言うエリカさんが一番心配してましたよね」

「な、なに言ってるのよ!!」

 

まほ以外にも逸見エリカや赤星小梅も来ていたらしい。

 

「心配させてごめんね……ん?」

 

みほは二人に違和感を覚えた。

 ‘‘家出(?)する前の西住みほ’’では全く気付かなかったであろう、とても小さな違和感……。

 東京で幾度も‘‘生きるか死ぬか’’という環境に置かれために身につけた観察力と第六感がエリカと小梅に反応した。

 

 ……二人とも、体の一部をかばっている?

 

みほはズンズンとエリカの前まで歩くと、彼女のジャケットとシャツの(すそ)を掴んで一気に持ち上げた。

 

「……ッ!?ちょ!?あんた何すんの!?」

 

エリカの腹部が露出し、彼女のヘソと白い肌……そして、痛々しい青や赤の(あざ)が多数確認できた。

 

「……!?」

 

その様子を見ていた隊長(まほ)はエリカのその姿を見て息をのんだ。(あざ)を見て、何があったのか理解したのだろう。

 一方、みほは握っていた(すそ)を離すと、エリカは顔を真っ赤にしながら慌てて衣服の乱れを正す。

 

「くぁwせdrftgyふじこ!!!」

 

エリカがギャンギャンと(わめ)いているが……みほの耳には全く届かない。

 

 ……初心者なら、戦車の急停止・急発進で体をぶつけて怪我をする事はある。だけど、エリカさんがそんな事をやるはずがない。なら……

 

みほは膨れ上がる感情を押し殺し、何とか平静を保つ。そして‘‘回レ右’’の要領で小梅の方へ向いた。

 

「ヒィッ!?」

 

素人目でもわかるほど‘‘禍々しいオーラ’’を放つ、無表情のみほがグッグッと近づいてくるため、小梅は思わず悲鳴をあげた。

 みほは(おび)える小梅の手を取ると、彼女の腕をまくった。

 

「……」

「……!?」

 

みほは無表情の顔がさらに固まった。まほは顔が真っ青になる。何故なら……小梅の腕にも、痛々しい(あざ)が多数刻まれていたからだ。

 

 ……この(あざ)も普通じゃない。やっぱり、二人とも……

 

‘‘いじめ’’……この三文字がみほの脳裏をよぎった。つい最近まで、みほも引退した3年や2年生の一部にいじめられていたが……エリカや小梅まで受けているのは知らなかった。

 

 ……優勝を逃した原因の私はともかく、この二人まで被害が及ぶなんて……

 

みほは怒りよりも、『二人にまで被害が及び、その事を気づかなかった』自分の情けなさで一杯だった。

 

 ……へぇ~。私ならまだしも、二人にまで手ヲ出シタンダァ……。

 

今までのみほなら泣き寝入りをしていただろう。しかし、東京で散々‘‘死にかけた’’せいで彼女の度胸は強化され、危機感や恐怖心は限りなく鈍化されている。

 今の西住みほにとって‘‘銃や爆弾を持ったテロリスト’’や‘‘変態刑事’’に比べれば……上級生など何の脅威も感じない。

 

「……ククク、フフフフフ、アハハハハ!!」

「「「……ッ!?」」」

 

小梅の手を持ったまま急に笑い始めたみほに、迎えに来た三人は恐怖を覚えた。

 

「……み、みほ?」

 

(エリカ・小梅に目で(せか)かされた)まほは意を決し、みほに声をかけた。するとみほはグルンッと首を回し、ハイライトのない濁った瞳でまほを見る。

 

「お姉ちゃん?」

「……な、なんだ?」

「最近、散々『いじめはダメだ』って叫ばれてるけど……それでも‘‘人をいじめる’’ってことは、それだけの覚悟を持ってやってるんだよね?」

「……。」

 

まほは……みほの変わりように驚き、動くことができなかった。

 

 

 

 

 年明け早々、熊本のとある高校での‘‘いじめの動画’’がSNSにアップされ、大問題となった。

 その事件と連動しているかどうか不明だが……とある‘‘戦車道の強豪校’’に所属する生徒のうち、‘‘卒業間近の3年生の大部分’’・‘‘2年生の一部’’・‘‘とある1年の生徒’’が強制的(自主的)に転校することになったそうだ。

 

 

 

 

 

 東京でテロがあった翌年の春、とある少女は荷物を預けた後、熊本空港のロビーで連絡を取っていた。

 

「あ、蘭ちゃん?……うん、前にも言ったけど、そっちの方の学校に行くことになったんだ。まぁ、そう言っても茨城だけど。……今日には東京に着くから。……うん、演奏、楽しみにしてるね。じゃぁ…‥」

 

とある少女はそう告げた後、スマホの通話を切った。

 

「村田さんとマクレーさんは……また何かに巻き込まれそうだしいいや。お酒は送ってあるし。」

 

 そろそろ搭乗時間である。その少女はボーディングパスを握りしめ、羽田行きの飛行機に乗り込んだ。

 

 

 

 

4:一方そのころの第二中隊

 

赚钱!! 所以不要杀人!!(金は出す!!だから命だけは!!)

 

  タァン!!……バタッ

 

上海藍幇(ランパン)の本部にて、部屋に残っていた最後の一人が倒れた。

 

「クリア」「クリア」

 

神城中佐と鬼塚少佐の声が静かに響いた。

 

「我が国の宝物(ほうもつ)を盗むどころか、国民の誘拐まで(くわだ)てておいて命乞いか。例え天が許してもこの希信が許さん……!!!」

 

辻大佐は汚物を見るような目でギロリと見た後、硝煙けぶる拳銃をしまった。

 

 ……ヤバい、マジでヤバいですよ!?

 

辻大佐が率いるHS部隊第二中隊、その第一小隊に所属する堀上等兵(メガネ)(昇進済み)は冷汗をかきながらパソコンを叩き、上海藍幇(ランパン)の資金を片っ端から奪っている最中だった。

 

 

 

 HS部隊第二中隊は‘‘東京爆弾テロ事件’’及び‘‘刀剣窃盗未遂及び未成年誘拐未成年事件’’の報復として、上海藍幇(ランパン)の壊滅に乗り出していた。

 その結果、上海藍幇(ランパン)は殲滅。その日、本部にいた人間は全て動かぬ肉塊となっていた。

 

 

 

 ……確かに兵部省からは『上海藍幇(ランパン)の壊滅(再編成が不可能になるほどの被害。およそ5割の損耗)』という命令が来ていますが、『殲滅(皆殺し)』なんて聞いてないですよ!?

 

堀上等兵(メガネ)は『周囲の警戒』と言ってこの場を離れた狙撃手:岩下兵長を恨んだ。

 

 ……クソッ!!ストッパー役の村田大尉や田中曹長がいないから、上官達の暴走を止められない!!

 

極東戦役(FEW)という‘‘戦争’’であり、しかも敵が最初に‘‘ルール破り’’をしてきたとはいえ ‘‘殲滅(皆殺し)’’を行えば……戦後、面倒なことになるのは明らかだ。

 

 

 

 

「あ、あの……」

 

堀上等兵(メガネ)は意を決し、暴走する上官達に進言することにした。

 

「……民間人がいた可能性もありますし、殲滅(皆殺し)は……」

 

上官三人の視線が堀上等兵(メガネ)に集中する。

 

「何言ってんだメガネ?‘‘やられたらやり返す’’。当たり前のことだろうが」

 

鬼塚少佐は常識を問われたかのような、キョトンとした顔で言った。

 

「民間人とはいっても、ここにいるのは藍幇(ランパン)の構成員や関係者です。こいつらがやった‘‘無差別テロ’’ではないですし……そもそも藍幇(ランパン)犯罪組織(マフィア)です。ジュネーブ条約に値しません。」

 

神城中佐は鋭い目をしながらニコニコと笑顔を浮かべ、(なだ)めるように言った。

 

「日本国民に害を与え、我が国の宝を奪い、それに加え婦女子を誘拐し‘‘慰め物’’にしようとしていた奴らだ!!兵部省の命令なんぞ生ぬるい!!中国の文化と歴史を尊重し、‘‘三族皆殺し’’・‘‘九族皆殺し’’にすべきなのだ!!」

 

辻大佐は顔を真っ赤にして充血した目をひん剥き、メガネを湯気で曇らせ、唾を飛ばしながら……まるで狂信者が演説をする様に、声高に言い放った。

 堀上等兵(メガネ)はそんな‘‘ヤバい上官達’’の雰囲気に負け、現実から逃げるようにパソコンをさらに強く・早く叩き始めた。

 

「堀上等兵、責任は我々が取るんですから……君は己の職務に(つと)めてください。あ、‘‘電子系の証拠の隠滅’’も頼みますよ?」

 

神城中佐は人を殺せそうな鋭い視線をしながら、声色は優し気に言った。

 

 ……村田大尉は無理でも、せめて田中曹長!!早く戻ってきてください!!

 

 

 

 

 その日、上海藍幇(ランパン)は人的に、資金的に、物理的に消滅した。

 

 

 

 

 

5:年上の戦妹(アミカ)

 

 護衛任務が終わり、俺はやっと普段通りの生活を送り始めたのだが、俺は初日でグロッキーになった。

 

 ……やっぱり通学ラッシュはキツイなぁ

 

普段は車に全員を乗せての通学だった。しかし、高機動車(俺の愛車)が廃車になり、ビュート(ボロ車)では全員を乗せることができないため、渋々‘‘バス通学’’になった。

 

 ……こんなのを毎日とか流石にキツイ。だからと言ってビュート(ボロ車)だと誰かを置いて行かなきゃならないし……

 

俺は自分の机に倒れ込んだ。

 

「おいイブキ、そんなに顔を青くしてどうしたんだ?」

 

そんな俺が気になったのだろう。‘‘あのテロ事件’’の時に『海パン刑事(デカ)のイチモツをヒステリアモードで‘‘じっくり’’見てしまった』せいか、少しやつれたキンジが心配してきた。

 

「……いやな、前の車が廃車になったからバス通学になったんだが……通学ラッシュの‘‘洗礼’’を受けて……」

「日本のラッシュは酷いらしいね。大丈夫かい?」

 

俺は机の上でダラ~と体の力を抜きながら言った。するとワトソン(エッレ)(男装)が来て、俺の背を(さす)った。

 

「あれ?イブキって自転車を持ってたよな。」

 

 ……あぁ、そう言えばそんなのもあったな。

 

「自転車は数ヶ月前にニトに貸したら‘‘近代アート’’になって戻ってきたよ。強襲科(アサルト)棟の前に置いといたらこうなってたんだと。」

 

 

 

 修学旅行Ⅰ(キャラバン・ワン)の帰り・新幹線で曹操(ココ)姉妹と戦った数日後、‘‘考古学の教授による冒険譚’’の映画を見た影響か……ニトが珍しく『射撃訓練をしたい』と言い出し、自転車に乗って強襲科(アサルト)棟へ向かった。そして数時間後、強襲科(アサルト)棟の前に止めていた自転車は‘‘見事なオブジェ’’に変化していたそうだ。

 なお、後日俺は教務課(マスターズ)の許可を得た後、犯人達(一年達)超長距離遠泳(島流しの刑)に処したのだが……閑話休題

 

 

 

「どうせ新しく買いなおしてもすぐに壊れる(壊される)と思うと……なぁ?」

「まぁな……」

 

キンジは俺の前の席に座り、背もたれを抱き着くように座った。

 

「でも必要なら買うしかないんじゃないかい?」

「だよなぁ……」

 

ワトソンが現実を突きつけてきた。

 

 

 

 

 

 そんな風に話していると……

 

「あれ?村田君、遠山君、そんなに疲れたような顔をしてどうしたんだい?」

 

不知火はそう言いながら自分の席にカバンを置くと、俺達の席に近づいてきた。

 

 ……そう言えば不知火もバス通学、しかも俺よりも遅いバスなのに……

 

不知火の制服はアイロンをたった今かけたかの様にパリッとしていた。その制服に清涼感漂うイケメン顔……こいつがモテないはずがない。

 俺は思わずため息をついた。

 

「あぁ……久しぶりのバス通学でやられてな……」←イブキ

「不知火も任務で離れてたから……バスは久しぶりじゃないか?」←キンジ

「その代わり山手線に乗ってたからね、ここの比じゃなかったよ……。そう言えば二人は……」←不知火

「へぇ~村田、君はアイドルの護衛を……へぇ~!!」←ワトソン

 

俺達三人は会話が弾んでいった。

 

 

 

 

 談笑を続けているとホームルーム数分前になっていた。その時、廊下からドタドタドタっと大きな足音が聞こえてきた。

 

  バーン!!

 

教室の扉が勢いよく開き、武藤が顔を真っ赤にして教室に入ってきた。

 

「おい!!お前ら聞いたか!?一年に転校生が来るらしいぞ!?しかもボン・キュッ・ボンの‘‘パツキン美女’’らしい!!」

 

武藤は大声に出し、息を荒げながら俺達が集う席へ直行した。

 

「なんだぁ~、武藤は‘‘パツキン美女’’より‘‘黒髪美女’’の方が好みじゃないのか?」

 

俺は机に上半身を投げながら、ボケーッとしながら言った。

 

「そんなのどうだっていいだろ!!それよりもこの時期に‘‘パツキン美女’’だぜ!?気にならないか!?」

「だけどなぁ……‘‘この時期’’に転校だぜ?絶対何かしらの問題を持ってるに決まってる」

 

俺はウダぁ~と起き上がりながら言った。

 

 

 

 武偵高校でも、転校生は基本的に4月~5月上旬・9月・1月にやってくることが多い。

 要は学期や長期休暇の節目に来るのだが……その時期を外して転校してくる生徒は何かしらの面倒事を抱えていることが多いのだ。例としては、ジャンヌ(6月上旬)・ワトソン(10月上旬)など……

 

 

 

「この時期に転校か……」

「僕の方も情報が来てない……」

 

キンジとワトソンは顔をしかめながら言った。おそらく‘‘極東戦役(FEW)の関係者’’かどうか疑っているのだろう。

 

「でも、情報はあっても困ることはないんじゃないかな。武藤君、どういう子が来るのか教えてよ。」

 

不知火は苦笑しながら……しかし、鋭い目つきで武藤に尋ねる。

 

「何でもドイツからの転校生だそうで、飛行機がメインの車輛科(ロジ)らしい。それから……」

 

武藤は俺達だけに聞こえるように小声で、しかも早口で教えてくる。

 

 ……あれ?この人物、なんか知ってるような気が……

 

俺はその武藤の情報を聞けば聞くほど冷汗が噴き出てきた。気分が悪いのは……ラッシュの影響だけではないと思う。

 

 

 

  ガラガラガラ……

 

「ホームルームを始めるので席に付いてくださーい」

「……じゃぁ、ホームルーム終わってからな!!」

 

高天原先生が教室に入ってきたため、武藤は話すのを止めて自分の席に戻っていった。同じようにキンジや不知火・ワトソンも自分の席へ戻っていく。

 

 ……ま、まぁ、流石にハンナ・ウルリーケ・ルーデル(あの戦闘狂)ではないはずだ。そもそもハンナは俺よりも年上のはず……武偵高の1年に来るはずないか。

 

俺は頭を振り、‘‘転校生’’のことを忘れようとした。

 

 

 

 

「皆さん、‘‘修学旅行・Ⅱ(キャラバン・ツー)’’が近いので準備を忘れないでくださいね。毎年、飛行機のチケットを忘れる生徒が多いので注意してください。」

 

高天原先生は注意事項が書かれた紙を読み上げていた。。

 

 ……そうだ、チケットやホテルの手配は学校側では一切やってくれないんだった。チーム全員分のをリサに頼んでおくか?

 

俺はそんなことを考えながら頬杖をついて窓の外を見た。

 

  ブロロロr……

 

外ではプロペラ機が低空で大きく旋回していた。

 

 ……あ、あれ?あの機体って……

 

俺は暖房が多少効いた教室にいるのに寒気がする。

 

  ブロロロ……

 

プロペラ機は旋回を終えた後、ゆっくりと近づいてくる。そのおかげで……その特徴的な固定脚、液冷エンジン特有の鋭いカウル(エンジンカバー)、逆ガル翼などが良く観察できる。

 それらの特徴から……あの飛行機はJu87(スツーカ)としか考えられない。

 

「お、おい!?あれはなんだ!?」

「せ、戦闘機!?」

「Ju87 G-2……いやG-1 だな。‘‘操縦性が悪い’’って有名なのによく乗りこなせてる」

 

他の生徒達も気が付いたようで、高天原先生の注意を無視して窓にへばりつく。

 

 

 

  ブロロロ……!!

 

翼に鉄十字を描いたJu87(スツーカ)は校舎前の道路に見事な着陸を決めた。

 しばらくするとJu87(スツーカ)を操っていたパイロットが風防から這い出て地面に降り立ち、飛行帽を脱いだ。癖のない長い金髪(こぼ)れ落ちる。

 そして鼻の上には横一文字の傷痕があるのだが……その傷すらも芸術に思える、凛々しく美しい顔が(あらわ)になった。

 

 間違いない……アイツはハンナ・ウルリーケ・ルーデル。『高校生活一学期編 大量破壊兵器は使っちゃいけない・・・』で登場した魔女連隊(レギメント・ヘクセ)魔女連隊空軍(ルフトヴァッフェ)所属の、‘‘アカ’’を叩くのが趣味の『戦闘狂の女性パイロット』だ。

 

 ……いや、なんでこいつが!?いや待て……こいつが転校生と決まったわけではない

 

俺はハンナと目があったような気がした。するとハンナはニヤリと笑った後、俺達のいる校舎へ走り出した。

 

「皆さん?席に付いてください」

「「「「「「……!?」」」」」」

 

散々注意しても生徒達が席に戻らないせいか……高天原先生は笑顔のまま、ねっとりとした殺気を周囲に放ち始めた。

 席を立っていた生徒達は慌てて席に戻る。その事を確認した高天原先生は殺気を放つのを止め、笑顔で注意事項を伝える。

 

 ……何かすごく嫌な予感がする。

 

しかし、俺はハンナの事で頭がいっぱいだった。

 

 

 

 

「ではホームルームは終わりです。」

 

 ドタドタドタ……!!!

 

高天原先生はそう言って教室を出ると……入れ替わる様にハンナが入ってきた。

 ハンナは教壇に上がって教卓に手をつき、そして猛獣の様な瞳をギラギラと光らせて教室を見回す。

 

「君は……魔女連隊空軍(ルフトヴァッフェ)のハンナ・ウルリーケ・ルーデル!!」

 

ワトソンはいきなり現れたハンナを警戒し、いつでも銃を抜ける体勢を作った。

 

「お前はリバティー・メイソンの小僧か。……上層部は散々お前に煮え湯を飲まされたそうだな。」

 

するとハンナは得物を見つけたとばかりに目を輝かせ、猛獣が獲物に近づくようにゆっくりと、確実にワトソンへ近づいていく。

 

 ……あ、上手く行けば逃げられるか?

 

俺は‘‘影の薄くなる技’’を使い、教室を出ようとするのだが……

 

「私はワトソン(お前)なんぞに興味はない、退け……イブキ!!どこへ行こうというのだ!?」

 

 ハンナはいきなり進行方向を変え、チーターの様に急加速して俺へタックルを決めて押し倒した。

 

「な、なんで俺が分かtt……」

(まばた)きすらせずにイブキを見ていたからな。存在感を薄くしようが無駄だ!!」

 

ハンナはとても嬉しそうな獰猛(どうもう)な笑顔を浮かべるとスクっと立ち上がり、俺の襟首を掴んだ。猛獣が狩った獲物を引きずって移動するが如く、ハンナはそのまま歩き始めた。

 

「ハハハッ!!久しぶりに会えてうれしいぞ!?任務はすでに受領してある!!さぁ、出撃だ!!」

「いや、今から授業なんですけど!?ていうかなんでここにいるんだよ!?年齢的に大学生だろ!!」

 

俺は必死に抵抗するが……どこからそんな馬鹿力が出ているのだろうか、全く抜け出せそうにない。

 その様子を見ていた生徒たちは‘‘触らぬ神に祟りなし’’と俺とハンナを無視し、授業の準備を始めた。

 

ドイツ(向こう)の高校には通っていたのだが魔女連隊空軍(ルフトヴァッフェ)での活動が楽しくてな!!出席日数が足りずに中退してしまった!!だがそのおかげでイブキと同じ学校へ通うことができる。学年は違うが、なんと幸せな事か……。あぁ、学力の方は問題ない。 魔女連隊空軍(ルフトヴァッフェ)で学んでいたからな!!」

「お。お前、魔女連隊空軍(ルフトヴァッフェ)は……魔女連隊(レギメント・ヘクセ)はどうしたんだよ!!」

 

ハンナは俺を引きずったまま、スキップでもしそうなくらい速足で校舎を出た。

 

魔女連隊空軍(ルフトヴァッフェ)は辞めたぞ?なぜか追手が来るせいで日本へ行くのが遅れたが……まぁいい、行くぞ!!」

「へぶっ!?」

 

ハンナはJu87(スツーカ)の前までくると俺を後部座席に投げ込み、そして当の本人は操縦席に入り込んだ。

 俺が慌てて体勢を立て直し、脱出しようとしたときには……Ju87(スツーカ)はすでに地から離れていた。

 

「イブキ?逃げたらどうなるか……分かるな?」

 

ハンナは上半身をひねり、操縦席から俺を嬉しそうに見ていた。彼女の手には拳銃(ルガー)が握られており、銃口を俺に向けている。

 

「……はい。」

 

俺は抵抗する気が失せた。

 

「ハハハッ!!さぁ、任務はたんまりある!!戦闘(デート)を楽しもう!!」

 

 

 

 

 俺はハンナと数日間一緒に任務をする羽目になったのだが……あまりの激務のせいで記憶に無い。その記憶がない時にハンナは戦妹(アミカ)の申請をしていたそうで……いつの間にか俺の戦妹(アミカ)はハンナとなった。

 

 

 

 

 イブキが拘束された翌日の事……

 

「おいお前!!イブキにぃを独占してんだよ!!」

「お前がイブキの義妹か。私は将来の義姉(あね)だ。気軽に‘‘ハンナ義姉ちゃん(おねぇちゃん)’’と呼んでもいいぞ?」

「は?何言ってんだよお前……死にてぇのか?」

 

かなめは義兄(イブキ)を取り返すべく実力行使に出たのだが……子猫(かなめ)猛獣(ハンナ)に勝てるはずがない。

 ハンナは小動物と(たわむ)れるかの様にかなめの相手した後、猫を摘まみ上げるように義妹(仮)(かなめ)の襟首を掴んで引きずり始めた。

 

「ハハハッ!!義理とは言え姉妹だ!!仲良くしようじゃないか!!とりあえず互いを知るために……出撃だな!!さぁ、行くぞ!!」

「ふ、ふざけるな!!イブキにぃを返せ!!離せぇえええ!!」

 

かなめは手足をジタバタさせて抵抗するのだが……ハンナはその行動を『もっと構って欲しい』と言う意味でとらえていた。

 

 

 ハンナは必死に抵抗する(ワクワクしている)かなめと一緒にJu87(スツーカ)の前まで来ると、後部座席に座っている‘‘(なか)ば廃人化’’したイブキを引きずり下ろした。そして、ハンナはその空いた後部座席にかなめを投げ入れ、操縦席に飛び乗り、Ju87(スツーカ)を離陸させた。

 

「いやぁぁああああ!!助けて、イブキにぃ!!」 

「ハハハッ!!とりあえず東京にいるテロ組織や準テロ組織の壊滅に行くぞ!!」

 

 

 

その後、卒業に必要な単位をたった数日で取得したハンナと廃人と化した義兄妹(イブキとかなめ)がいたとか……

 

 

 

 




 無駄知識の泉……トリ〇ア、好きだったんですけどね。また再放送しないかな?

 クラゲって食べたことないんですよね。どんな味なんでしょうか。(バイカルアザラシも食べたことがありません)


  Next Ibuki's HINT!! 「Tea Time」 
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