リムジンが俺らの泊まるホテルに着いた時、マクレーのおっさんは急に俺と二人で話がしたいと言って、運転手と俺の両親、おっさんの嫁さんをリムジンから出した。
「俺、おっさんと二人きりで話すことなんかねぇぞ。・・・もしかしておっさん。若い男の趣味があったりして・・・。」
「くそ野郎!!そんな趣味はねぇ!!これだからませたガキは・・・。」
「冗談はこれくらいにしてマクレーのおっさんなんだ?」
「ったく、お前から冗談出したんだろうが。まじめな話をするとだな坊主、坊主は殺しっていうのは初めてか?」
「・・・・・・」
「この反応じゃ、初めてか。まぁその歳で初めてじゃなかったらおかしいか。坊主は正当防衛とはいえ人を殺した。それは一生ついていくだろう。坊主、今どんな気持ちだ。」
「なんか殺したって気がしないな。ぎりぎりまでリアルなゲームのゾンビを殺したって感じ。」
「今のガキって怖いねぇ。人殺してゲームと同じ感覚だとよ。おそらく、時間がたってから殺したって感覚が出るだろう。坊主はまだ幼い、このことに関してだいぶ気に掛けるかもしれねぇ。そういう時は俺に連絡しな、いつでも相談に乗ってやる。時差は考えろよ。」
そう言って、マクレーのおっさんは数字が書かれた紙きれを俺に渡してきた。
「それにしてもクリスマスパーティーがこんなクソのようになっちまった。残念だったな。」
「でも、俺はマクレーのおっさんからクリスマスパーティーじゃ学べない大切なことを教わったぞ。」
「ん?なんだ?」
「敵に イピカイエー・マザーファッカー って言って銃をぶち込むこと。」
「 イピカイエー・マザーファッカー か。」
「そう、 イピカイエー・マザーファッカー ってね。」
「「 イピカイエー・マザーファッカー 」」
マクレーのおっさんと俺はそう言って互いの拳をぶつけた。
俺はリムジンから降りて、両親と一緒にマクレーのおっさんと嫁さんを見送った。
「さぁ維吹、説教は終わってないわ。」
「さんざん心配かけさせたからな。」
・・・マクレーのおっさん、一緒にリムジンでもう少しドライブしたかったよ・・・。
マクレーのおっさんがこんなに気を遣うってことは何か企んでいることだ。当時の俺でも、この短い付き合いでもわかっていただろうに。マクレーのおっさんを疑わなかった当時の自分は考えなしだったんだろう。
翌日、起きるとホテルの前に大きな人だかりができていることに気が付いた。テレビ局員らしい人までいるし・・・。なんだ?このホテルに有名でも泊まっているのか?ホテルの部屋に備え付けてあるテレビをつけてみると
「昨日ロサンゼルス、ナカジマプラザでテロリストによる人質事件ですが偶然その場に居合わせた警察官と少年の二人によって事件は解決されました。」
あぁ・・・昨日のことは夢じゃなかったんだな・・・。お、マクレーのおっさんがインタビューに答えてる。あの人こういうこと苦手そうだけどなぁ・・・
「あの事件は少年によって解決されたといっても過言ではないです。少年に事件のことを聞いたほうがいいでしょう。本官は彼の手助けをした程度です。」
あのおっさん俺を売りやがった!!!!もしかしてこのホテルの前にある人だかりって・・・
「今、その少年が泊まっているホテルの前にいます。まだ少年は表れていません。情報によると、事件を解決した少年の名前はイブキ・ムラタというそうです。」
やっぱり俺だよね・・・。両親も苦笑い。・・・お父様、お母様、ロサンゼルス観光はどうなります?
「うん、旅行は中止にして、日本に帰ることにしたよ。」
「そうね、さっきホテルの人もタクシー代航空券代ホテル持ち、キャンセル料もとらないから帰ってほしいって言われたわよ。」
なんていうホテルだ・・・。そういえばマクレーのおっさんから電話番号もらってたな
「・・・ハァイ、ハロー、ただいまロン・ロジャー似のイケメンでナイスガイなジョニー・マクレーお兄さんは外出中だ。要件がある人はガチャッてなった後、要件を言いやがれ。」
おっさんふざけてやがる・・・。
「おい、マダオいるんだろ?」
「なんだぁ、マダオっていうのは。」
「まるで ダメな マクレーのおっさん 略してマダオだ。」
「・・・・・・俺が悪かった。おっさんでいいからマダオだけはやめてくれ。」
マクレーのおっさんマダオはやけに嫌がるな。
「まぁいいや、マクレーのおっさん、俺をマスコミに売りやがったな。」
「何言ってんだ。相談に乗るって言ったろ?その報酬さ。しかも、マスコミにちやほやされて英雄になれるぞ。」
そしてマクレーのおっさんは電話を切った。何度もかけ直したが出ない。あのおっさん電話線抜きやがったな。
「じゃぁ帰るか、ほら維吹、帰り支度をしなさい。」
こうして、初めての海外行きはたったの一泊二日で日本に帰ることになったんだ。 まぁ、日本でもマスコミに追い掛け回されたけど、ロサンゼルスのホテルで見た人だかりほどの量じゃなかったからよかったよかった・・・・・・・。
「イブキ、アメリカでテロリスト相手に大活躍したんだって?すごいな!!」
「おい、キンジ、マスコミに追い掛け回されたいなら、いつでも変わるぞ。」
「それならいいや。」
この野郎、他人事だと思いやがって・・・。
なお、日本に帰ってキンイチさん、キンジの両親、俺の両親によるステレオ説教はだいぶ辛いものがあった。
今思えば、怒ってくれる親がいるってのはありがたいことだ。なんだかって?それはな・・・
12歳のクリスマス、両親が死んだ。
あくまでジョニー・マクレーという人です