俺達がこの紅鳴館に到着してから七日が過ぎた。うん・・・完全に暇。俺の仕事は小夜鳴先生に朝と夜に肉の串焼き(これだけでいいらしい、米食えよ!!)を出す、あとキンジ、アリア、エルにご飯(朝昼夜の三食)を作るそれだけ。
エルは時間があるから、ということで鬱蒼とした森に間違えた庭を日本庭園に変えて時間を潰している。ここ洋館なのに、なぜ日本庭園なのかと尋ねたところ、
「日本庭園のほうが、植物たちが伸び伸びできていいからね。」
だそうだ。小夜鳴先生に許可を取ったので木を伐採し、石を置き・・・と結構楽しんでいる。小夜鳴先生は最初冗談だと思っていたみたいだが、翌日木を伐採し、池を作っているところを見て苦笑いしていたのは見間違いではないと思う。
キンジとアリアは作戦のために信用を得ようとしているのか、広い館を隅から隅まで掃除、洗濯をしている。なので、この館で俺だけが暇なのだ。
そこで俺は暇な時間、この屋敷のことや小夜鳴先生のことを調べていた。すると、色々なことが分かってきた。到着してから五日目までは、監視カメラの類は地下への廊下にしかないことが分かった。(六日目以降から監視カメラが増えた。)また、小夜鳴先生は京大卒と聞いていたが京大に問い合わせたところ、そのような卒業生はいないと返答された。なので、小夜鳴先生に変装し役所で戸籍をもらってきて、出生地の役所に出生届があるかどうか聞いたところ、
「小夜鳴 徹 さんの出生届はありませんね。」
と帰ってきた。
怪しさいっぱいである。
これらの材料が集まった昨日の夜、ある仮説がひらめいた。「小夜鳴=ブラド ではないか?」という仮説だ。
小夜鳴先生の話から、ブラドはこの横浜の郊外の屋敷にはある程度は戻ってくるようだ。だが、あの巨体の毛むくじゃらがここを出入りすればSNSなどで話題になるのではないか?車で隠れて館に来ているならバレないが、屋敷のタイヤ痕を調べると俺の車と小夜鳴先生のクラウンのタイヤ痕しかなかった。(後日、小夜鳴先生に聞いたところ、今までの人たちは電車で通勤しているらしい)だけど・・・、もし「小夜鳴=ブラド」ならお互い話したことがないのも分かる、会ったことがないのも分かる、すべてが説明つく・・・。人化はどこかのやつに教えてもらったとすれば説明がつく。・・・・・・面倒なことになった。
「イブキ、できたか?」
「ん?あぁ、後はわさび擦って、肉炙るだけだ。」
「イブキ、深刻そうになにか考え事してたみたいだけど・・・相談にでも乗ろうか。」
キンジに心配されるほど考えていたか。
「いやぁ・・・こいつぁ面倒なことに巻き込まれたなってな。」
「盗人計画に巻き込まれるのは、災難だよな。」
「まったくだ。あとでこいつで一杯やるかい?」
俺はそう言って、一升瓶を持ち上げた。
「イブキ!!武偵は‘‘女、酒、毒’’に気をつけろって教わってないのか!?それに俺らは未成年だろ!!」
キンジは焦ったように言った。
「まぁまぁ、冗談だって。あと五分もしないでできる。もうちょい待ってくれ。」
俺はそう言ってキンジを追い払った。武偵は大変だな、酒の一杯にも気をつけなきゃいけないなんてな。
実は未成年の軍人(正確には軍属)は16歳以上であれば軍医の診断次第で飲んで良いことになっている。(酒の味も知らずに死ぬのはかわいそうだろう、という事らしい)だけど買うことはできない。だから、最近ご無沙汰だったんだけど、この台所には沢山の酒が置いてある。引き継ぎ書には、「台所にある物は好きに使っていい」と書いてあったために色々と拝借している。(俺が死んだらもしかしたら返す)「マッカラン1926 60年物」と「グレンフィディック1955 55年物」のウイスキーを見つけた時は驚いたね。前者は600万、後者は810万もするんだ。今、旅行中のコックさんに電話したら
「やけに古いビンだったから捨てようと思ってたんだ。よかったらあげるよ。」
これを聞いた瞬間、俺は急いでバックの中にしまった。後日、ゴミ箱の横に置いてあった「1762 Gautier Cognac」(三世紀前のコニャック、一本650万)を見つけた時は、前のコックは全く知識が無いんだな、なんて思ったっけ。
「キンジー、運んでくれー。」
俺はキンジを呼び、小夜鳴先生以外の夕食を作り始めた。
最終日の夕方、キンジとアリアは作戦を実行したようだ。アリアが小夜鳴先生と外で話している間にキンジが盗むということをしていた。二人はその作戦が終わった後、二人は即座に帰った。おい・・・小夜鳴先生が帰っていいよって言った瞬間、すぐ帰ったよこいつら・・・。俺とエルもキンジ達が帰った後、荷物を片付けて、車に乗った。
「いやぁ、助かりましたよ。ありがとう。」
小夜鳴先生がワザワザ見送ってくれるようだ。
「すいません。串焼き作るだけでこんなに(お酒を)もらっちゃって。」
俺は結局、20本くらい酒を頂戴した。いやぁ~、あんな高級酒をありがとうござます。
「いえいえ、(給料は)これくらいが正当なんですから。」
「そうですか?では(酒を)有難く頂きます。では、失礼します。」
俺とエルを乗せた車は、洋館と日本庭園がある敷地から出ていった。
敷地から出て少しした後、GPSでキンジ達がどこにいるかを調べた。キンジ達が帰るときに、俺は二人に発信機を着けておいた。紅鳴館を昨日調べたところ、警備はさらに厳重になっていたが、不自然に警戒していないところがあった。これは絶対怪しい。こいつはワザとその形見とやらを盗ませようとしているに違いない。ということは、あの3人が危なくなるだろう。それらのことから、俺は二人を追いかけることにした。
「イブキ、何しているんだい?」
エルがカーナビを覗いてきた。
「いやぁ、実は・・・」
おれはここで初めてすべてを説明した。
「・・・というわけで、二人を追おうと思っているんだ。」
「イブキ・・・なんでもっと早く、僕に教えてくれなかったんだい?」
エルが頬を膨らまし、俺に言った。
「いや、今も確信はしてないよ。あくまで保険だよ保険。無駄な気遣いでよかった、で済めばバンザイですよ。あとね・・・もしかしたら、そいつがガトリングを俺にぶっ放した原因のやつかもしれなくてね・・・。」
そう言った瞬間、車の中に殺気が一気に充満した。
「フフフフ・・・。」
「・・・エルさん。こうなるかもしれないと思って言わなかったのよ。それにあくまでも憶測だからね?」
すると、エルは殺気を出さなくなった。
「さて、キンジ達は横浜に向かっているようだな。」
俺は横浜へ車を走らせた。
キンジ達のGPSの移動が止まった。止まった場所はランドマークタワー。
「人目がないところは・・・・屋上くらいか。じゃ、エル一緒に行こう。」
「わかったよ。」
エルはうれしそうに俺の手を握った。あれ?俺、手出してないんだけど・・・。
屋上にはキンジとアリア、理子がいた。
「この十字架はただの十字架じゃないんだよ。これはお母様が、理子が大好きだったお母様が‘‘これはリュパン家の全財産を引き換えにしても釣り合う宝物なのよ’‘って、ご生前にくださった・・・一族の秘宝なんだよ。だから理子は檻に閉じ込められてた頃も、これだけは絶対にとられないように・・・ずっと口の中に隠し続けてきた。そして・・・」
理子の髪はまるで意思を持つように動き始めた。
「イブキ、彼女が原因かい?」
「いや、理子じゃない。」
俺がそう言った瞬間
バチッ!!!
雷のような音が聞こえた。音が鳴った後、理子は倒れ、後ろに小夜鳴先生がいた。
「遠山君、神崎さん。ちょっとの間、動かないでくださいね。」
小夜鳴先生は拳銃を抜き、倒れた理子へ銃口をむけた。これは・・・当たりか?
「前には出ないほうがいいですよ。お二人が今より少しでも私に近づくと襲うように仕込んでありますので。」
小夜鳴先生の後ろから狼が2匹出てきた。これは面倒だな・・・。「影を薄くする技」は匂い誤魔化せないぞ。
「イブキ、あいつかい?」
エルが訪ねてきた。
「まだ確定じゃないけど、黒に最も近い灰色。原因の姿は2本足の獣だけど、もしそいつが人化できるなら確定だ。エル、いつでも襲撃できるように配置に着こう。」
エルは小夜鳴先生の正面に隠れて待機、俺は後ろ側へ移動し「影の薄くなる技」を使った。
「教育してあげましょう、4世さん。人間は、遺伝子で決まる!!優秀な人間は、いくら努力を積んでも・・・すぐに限界を迎えるのです!!今のあなたのようにね!!」
そう言って小夜鳴先生は理子の胸元から十字架を奪い取った。そして明らかに偽物であろう安物の十字架を口に押し込む。俺はその瞬間、狼を襲った。狼たちは、匂いはあるが姿が見えないせいか狼狽していた。おかげで楽に気絶させることができた。
「い、いい加減にしなさいよ!!理子をいじめて何の意味があるの!?」
アリアが叫ぶ。チクショウ!!小夜鳴=ブラドの証拠さえ掴めれば理子を助けられるのに!!
「絶望が必要なんです!!彼を呼ぶにはね。彼は絶望の詩を聞いてやってくる。この十字架も、ワザワザ本物を盗ませたのは・・・こうやって小娘を一度喜ばせてから、より深い絶望に叩き落とすためでしてね。ついでに、‘‘不死の英霊’‘のおかげで計画が破綻したところを楽しもうと思っていたんですが、彼は何もしませんでしたね。全く見当違いです。・・・まぁ、これだけでもいい感じになりましたよ。」
あの野郎、俺は計画を破綻させるための人間かよ!!今までのは偶然だぞこの野郎!!小夜鳴先生がまたしゃべりだした。
「遠山君、よく見ておいてくださいよ・・・」
小夜鳴が話に集中している。俺はその隙に理子を回収した。
「理子!!大丈夫か!!」
俺が「影の薄くなる技」を解き、話しかけた瞬間、理子は目を思いっきり開け驚いた。
「イ・・イブキ・・・どうしてここに・・・。」
「小夜鳴が怪しいと思って念のためついてきたらこうなってたんだよ!チクショウ!!」
そう言って俺は理子の脈を計ったが正常・・・よかった。俺は小夜鳴のほうを見た。まだあいつしゃべってる・・・。
「脈は正常だけど、後で病院行けよ。それにしても、あんな猛獣用のスタンガン喰らって無事ってのはすごいな。」
すると理子は俺を睨んだ。
「なんで・・・追ってきた・・・。無視しても・・・いいはずなのに・・・。わ、私は・・・お前を殺そうと・・・。」
「てやんでぇ、それはもうチャラだろうが。それに友達が心配で来ちゃ悪ぃか、べらんめぇ。・・・友達じゃねぇとか言うなよ。すごく悲しくなるから。」
こんなセリフ言って、友達と思ってないとか思われたら悲しいものがあるから・・・。
「理子、これからどうするんだ。計画は破綻、約束は守られない。このままだと、ずっとブラドに縛り付けられたままになるぞ」
「・・・・・・」
だんまりかよ・・・。
「俺は今、結構頭にきてる。あいつは、家族に親友虐めてたって聞きゃぁ頭に来ないほうがおかしい。だから、俺はブラドにちょっと挨拶しに行きてぇんだ。だけど理子、お前ブラドに恨み辛みあるだろ。どうする?そこで引きこもっているか、それとも一緒にやりに行くか。」
「なんで私にそこまでする。」
普通に話せるようになったようだ。回復早いな。
「友達だから・・・っていうのじゃ納得しないよな。お前、一緒に東京湾泳いだ時、いつでも俺をやれたはずだろ?なのに何もしなかったから・・・。あと一年の時の貸し、まだ返してもらって無いだろ?これでも足りないか?」
俺は一年の頃、任務で2〜3回ほど理子と組んだ。その時、理子が爆発に巻き込まれたが俺が間一髪で助け出した。その時の事を貸しにしておいた。
「安心しろ。引きこもっていても、ちゃんと形見は返してもらうかr・・・
「イブキ、あたしに協力しろ!!」
理子はバッと立ち上がり、その、力強い瞳で俺を見た。
「親友の大事なものが盗られたんだ。協力しろ。」
「てやんでえ!!あたぼうよ!!」
「でもイブイブ。理子はまだ処女で初恋もまだだからね。」
「こんな状況で下ネタ言えるとは・・・お前、だいぶ元気だな・・・おい。」
理子がとても難しく、理子との話でだいぶ難航しました。
艦これの占守だけが出ない・・・・・・なぜ・・・・・