少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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 試験が来週からなのに呑気に投稿する馬鹿がここにいます。

 前の閑話のせいでガルパン熱がヤバいです。

 


これは変装じゃないだろ……

 俺は山口少将・加藤大佐・辻さんを、迎えに来た第一師団の皆様に引き取ってもらった後、家に帰ることにした。

 ……あれ?俺って居る必要あったのか?

 

 

 

 俺は寮に着くと……その寮の入り口でウロウロしているシスター(めーや?)が見えた。 

 ……ウソだろ!?もう襲いに来たのか!?同じ‘‘師団(ディーン)’’の仲間だろ!?まさか、同じチームだから‘‘隣人を殺し愛(アイ)せ’’をしに来たのか!?

 俺は腰の日本刀に手を置きながらシスター(めーや?)に近づいた。

「あ!!ムラタさん!!」

彼女は重そうなコンビニのビニール袋を持っていた。

「……どうしてここに?」

俺は恐る恐る彼女に聞いた。

「キンジさんのお部屋に行かなくてはならないんですが……迷ってしまって……。」

 ……なんで俺とキンジの部屋に来るんだよ!!あれか!?今日の暴飲を咎めに来たのか!?

「なんだって部屋に行かなきゃならないんですか?」

「トオヤマさん達と今後のことでお話を……。」

 ……嘘はついていないようだ。無駄に警戒したなぁ。

俺はため息をついた後、

「キンジと俺は同室なんです。案内しますよ。……あとその袋は俺が持ちましょう。」

「え?そこまでしなくとも……。」

「まぁまぁ……。美女には格好つけたいんで。」

俺はそう言って袋をひったくるように取った。

 ……ないとは思うが、爆薬でも入っていたら目も当てられねぇ。

  カランカラン

すると、瓶の擦れる音が聞こえる。

 ……酒瓶?

その袋の中には、大量の酒瓶と菓子パンが入っていた。

「ふふっ……。」

するとシスター(メーヤ?)が天使のように頬を緩ませた。

「……どうしたんですか?」

俺は思わず聞いてしまった。

「いえ、私を女扱いする人は居ないものですから……。それもお世辞とはいえ美女だなんて……。」

「少なくとも、俺から見れば今までの人生の中でも5本指には入る美女ですけどね。」

 ……見てくれはな。

実際彼女は、‘‘外見だけは’’絶世の美女だ。イタリアだったら常にナンパされていそうだが……。

「そんな事、軽々しく言ってはいけませんよ。」

シスター(メーヤ?)は顔を真っ赤にしながら言った。

「そうですか……じゃぁ着いてきてください。」

俺は彼女を自分の部屋に案内した。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は部屋へ案内する間、シスター(メーヤさんというらしい)と互いに自己紹介をした。

「ただいま~。」

俺はメーヤさんの重い荷物を持ちながら扉を開くと……キンジがアリアをソファーに寝かしているところだった。キンジの隣には玉藻(?)とかいう幼女がいる。

「イブキ様、おかえりなさいませ。」

リサはまだ起きていたのか、エプロン姿のままでキッチンにいた。リサはキッチンでお茶と茶菓子の用意をしている。

 ……ごめん。どういう事?

 

 

 

 なんでも、アリアは山口少将が店じまい中に空き地島に突撃していたらしい。その時、敵に緋弾の‘‘殻金’’という物を外されてしまったそうだ。その‘‘殻金’’7枚のうち、5枚を敵に奪われてしまい。その5枚を奪い返さないといけないらしい。

 ……山口少将が店じまいしている間にそんなことがあったのか。

「ん~!!これは美味じゃのう。」

それらを説明してくれた玉藻とかいう幼女は今、リサ特製のプリンを食べて頬がとろけている。

「……おい。」

キンジは呆れたように、その幼女を睨む。

「そう急かすな、儂も疲れたんじゃ。少しぐらい甘いもんを食べさせぃ。」

そう言って幼女玉藻(?)はリサ特製のプリンを頬張った。

 

 

 

 幼女玉藻(?)がプリンを完食すると、今度はキンジの顔をジーッと観察するように覗いた。

「な、なんだよ。」

「これが今代の遠山か……。かつて那須野で会った遠山と瓜二つじゃのう。……ちょっと昼行燈(ひるあんどん)な根暗のようじゃが。」

 ……こいつ?今なんて言った?

「キンジの先祖を知ってるのか?」

「数代前の遠山侍、星伽巫女と少しな。」

 ……流石は妖怪化け物の(たぐい)。何年も生きてるんだな。

「ん?」

すると今度は、幼女玉藻(?)は俺の顔をジッと見始めた。

「う~む……。」

「ど、どうした?」

「あぁ!!」

幼女玉藻(?)は何か思い出したような表情をした。

「お主、名前は?」

「え?……村田維吹って言うが。」

「そうかそうか……、お主の先祖をチラッと見た覚えがあるわ。」

 ……へぇ~、俺の先祖をねぇ。

「誰なんだ?」

俺は思わず聞いた。

 ……ずっと前に理子が、俺の先祖に有名人はいないとか言っていたけど。まさか誰かいたのか!?

「謙信公の軍にお主に似た足軽がいたのを思い出したわ。」

 …………足軽ですか。当時、足軽は基本農民だから……ご先祖様はただの農民だったのか。

「確か……‘‘なんで俺がこんげな目に’’とか言って敵兵相手に無双していたのう。あの足軽の目におぬしはそっくりじゃ。」

 ……俺のご先祖様も苦労してたんだぁ。…とりあえず、俺のご先祖は新潟だったのか。

「……そうですか。」

 ……キンジは遠山の金さんの家系、アリアはシャーロックホームズ。白雪は脈々と続く神社の巫女さん、理子はリュパンの子孫……。そんな有名人の子孫に囲まれる、足軽雑兵の子孫が俺か。

「いいやい、いいやい……俺は飛び級卒業だから短剣貰ったし……。」

「お茶をお持ちしました。夜遅いので麦茶にしました。」

リサはそう言って俺達の前に湯呑を置いた。

「メーヤさんには栓抜きとコップをお持ちしましたが……。」

「いえいえ、お構いなく。」

メーヤさんはそう言ってリキュールの入った瓶を開けると、コップになみなみ注ぎ、一気に飲み干した。

「……あれ?メーヤさん結構いける口?」

彼女の飲みっぷりを見て、さっきまでの鬱は吹き飛んでしまった。

「……(おっしゃ)りたい事はわかります。確かに修道女(シスター)はお酒を飲んではなりません。」

「いや、別にいいんじゃない?」

 ……いや、酒飲んでることをとがめたわけじゃないし。

「え!?」

メーヤさんはギョッと俺を見た。

 ……そんなに驚くことか?

「だってワインは‘‘キリストの血’’なんだろ?ワインは良いのに他の酒はダメなんてちゃんちゃらおかしい……。まぁ痴態をさらさなきゃ、いくら飲んだっていいだろ。」

 ……どっかのシグナムのように、真っ裸になるとかなければな。

すると、メーヤさんは感極まったように両手を胸の前で祈るように組んだ。

「……まぁ、でも飲酒は二十歳以上か許可証が無いとだめだけどな。」

俺は恥ずかしくなった。

「ムラタさん、大丈夫です!!許可証は持ってますし、一切酔わない体質なので!!」

彼女はそう言って俺の手を両手で包み込みながら握った。

 ……今日は踏んだり蹴ったりな日だ。誰かと飲み明かしたい。

「……味も分かるんだな?」

俺はメーヤさんの目を見て言った。

「私達、Ⅰ種超能力者(ステルス)は戦った後は大量に何かを摂取しなければならないのです。私の場合はアルコールなので、お酒を大量に飲むのですが……ちゃんと味わって飲んでいます。」

メーヤさんは至近距離で俺の目を見て言った。

「へぇ~、そいつぁ楽しみだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッハッハッハ!!」

「ふふふ……。」

俺とメーヤさんとの酒宴が始まったのは言うまでもないだろう。

「この梅酒おいしいですねぇ~。」

「そうだろう!!流石はメーヤさんだ!!こいつぁ~(軍の)敷地の梅を使い、秘密裏に部隊(うち)が作ってる秘蔵の梅酒だ!!」

俺とメーヤさんは互いに酌み交わしていたら、いつのまにか意気投合していた。

「不思議ですねぇ~。私一度も酔ったことがないのに、村田さんと飲んでたらとても気分が良くなってきましたぁ~。」

彼女の目はトロンとしている。

「へぇ~、そいつぁ不思議だぁ。そう言えば日本酒飲んでみるかぁ?」

俺はそう言って、‘‘酒蔵部屋’’(空き部屋に酒を保管してたら、いつの間にか部屋満杯に酒が保管されたのでこんな名前になった)から日本酒の一升瓶を持ってきた。

「こいつぁ‘‘松乃井’’って言う新潟の地酒だ!!ちょうど俺のご先祖も新潟らしいしなぁ!!」

  キュポン

俺は‘‘松乃井’’の栓を開け、メーヤさんのコップにナミナミと注いだ。するとメーヤさんはそれをグッと飲み干した。

「うわぁ~。日本酒は初めて飲みますけど、おいしいですねぇ~。すっきりとした辛口に柔らかさがありますねぇ~。」

「さすがはメーヤさん!!ちゃんと味わってらっしゃる!!」

俺も自分のコップに注ぎ、飲み干した。

 ……美味い!!これはどんな料理にも合う、スッキリした辛口!!ここにリサの手料理が無いのが残念だ。

「私のことはメーヤと呼んでくださいねぇ~。……そう言えば村田さぁ~ん。」

 

 ついでに、キンジは酔っ払い二人に絡まれるのを避けるため、自室に引きこもってしまった。幼女玉藻(?)はメーヤさんに2つ3つ何かを伝えると部屋を出て行ってしまった。

 

「なんでぃ、メーヤ。俺のことはイブキと呼んでくだせぇ。」

俺はそう言ってメーヤのコップに再び‘‘松乃井’’を注いだ。

 ……俺もまぁまぁ酔ってるな。そろそろ飲むのを控えるか。

「イブキさんはぁ~まるで悪魔ですねぇ~。」

「あ、悪魔?」

 ……キリスト教の中で‘‘悪魔’’は結構ヤバい表現では?

酔いが少しさめたような気がする。

「ダメですよぉ~、修道女(シスター)をたぶらかしちゃ~。私は主に使えてるんですよぉ~。」

 ……多少お世辞言い過ぎたのかね。

「お世辞が過ぎましたかね。でも実際イタリア帰ったらナンパとか結構されるんじゃないんですか?」

「帰ってもされないんですよぉ~。それに修道女(シスター)は恋愛禁止ですし……。イブキさ~ん、私を連れ去ってぇ~。」

 ……この修道女(シスター)もだいぶ酔っていらっしゃるな。そろそろお開きにするか。

俺はコップに入っていた日本酒を飲み干した。

 ……今度、新潟に行ったときは絶対にこれを買おう。

俺はそう決心した後、口を開いた。

「バチカンの敵になんてなりたくないですよ。‘‘我らは神の代理人。神罰の地上代行者。我らが使命は……’’とか言いいながら襲われるなんて嫌ですよ。」

 ……『HELLSING』のアンデルセンはいないにせよ、そういう人はいそうだしなぁ。

「あれぇ~イブキさん何で知ってるんですかぁ~?言いましたっけぇ~。」

「マジでいるのかよ!!」

完全に酔いがさめた。

 ……いるんだ!!アンデルセンのような奴!!

 

 その後メーヤは酔いつぶれてしまい、俺とリサで彼女を寝室の空きベッドに運んだ。メーヤを運んだあと、俺とリサも眠気に耐えられなくなってきた。リサは寝室のベッドで寝て、俺は自室のハンモックで寝ることになった。キンジはアリアが心配なのでリビングで寝るそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エロキンジィイイイイイイイイ!!!」

俺はアリアの怒鳴り声で目を覚ました。

「相変わらず朝からうるさいなぁ。」

俺がのそのそとリビングへ向かうと……キンジがアリアにボコボコにされていた。

「……なんだ。いつもの事か。」

俺は部屋に戻ろうと……

「イブキ!!助けてくれ!!」

「……こんな言葉を知ってるか?‘‘触らぬ神に祟りなし’’」

そうは言っても、流石に助けないとヤバい。

アリアの声で起きたリサとメーヤも加わり、アリアに事情を何とか説明するまでキンジはボコられ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メーヤはリサの朝食を食べた後、成田空港行きのバスに乗り、バチカンへ帰って行った。

 その日の4時間目、俺はLHRが行われる体育館へクラスの皆と移動していく。

「あぁ……面倒だ。」

「どうしました?憂鬱なようですが?」

ニトが俺の顔を覗いてきた。

「あぁ……あの変装する奴…変装食堂(リストランテ・マスケ)だっけ。あれが面倒だなって。」

「そうですか?私は変装初めてなので楽しみです!!。」

そりゃぁ、ファラオが変装するなんて、お忍びで城下へ向かうぐらいの時しかないんじゃないか?

  ズガァアアン!!

「よォーし!!ほんなら文化祭でやる変装食堂(リストランテ・マスケ)の衣装決めやるぞッ!」

俺とニトが体育館へ着いたとたん、蘭豹先生が天井へ威嚇射撃をして、生徒達を静まらせた。

 ……そういえば、ジャンヌの奴がいないな。どこへ行ったのだろう。

「じゃあ、各チームで集まって待機ィーゴホッゲホッ!!」

綴先生の言葉に従い、俺のもとにネロ、牛若、エル、ニト、リサ、理子が寄ってきた。

 

 俺達は適当に無駄話をしていると、キンジ達のチームがくじを引く番になったようだ。

で、キンジが今引いてる箱の中には、文化祭でやる変装食堂(リストランテ・マスケ)各々(おのおの)が着る衣装を決めるくじが入っている。

 変装食堂(リストランテ・マスケ)とは、カッコいい名前がついているが、結局はただのコスプレ喫茶だ。しかし、変装食堂(リストランテ・マスケ)は生徒の潜入捜査技術の高さを一般にアピールする機会も兼ねている。真面目にやらないと教務課(マスターズ)オールスターでのお仕置きがあるらしい。

 

 

 そんなこともあり、俺は、あるお題だけは絶対にやりたくなかった。

 ……女装だけはやりたくない。

俺はおっさんとロサンゼルスにて一緒にやった女装を思い出した。

 

 ここで女装なんて引いたら……俺は文化祭をボイコットして制裁を受けるか、吐き気のする女装をしてお仕置きを受けるかの2択しかない。

 ……何この地獄。いや待つんだ、女装を引かなきゃいい話だ。

「神様仏様玉藻様……どうか女装だけは勘弁してください……。」

『ん?今なんでもとおっしゃいました?』 

「言ってねぇから。」

玉藻の声が聞こえたような気がするが……気のせいだろう。

「やったぁぁあああああっ!!!やったよアリア!!ある意味ハマり役だよ!!きゃはははは!!!」

理子がアリアの引いたくじを覗き見て大爆笑をしている。

 ……理子、アリアの足元で転げまわって笑うのはどうなんだ?その前にアリアは何を引いたんだ?

あの白雪も耐えられなかったようで、土下座するみたいに伏せて、忍び笑いをしながら床を叩いている。

「ぅぐ、くく……ハッ!」

キンジは一瞬笑ってしまい……急いで止めたが、もう遅い。 

俺が目を向けると同時、アリアはホルスターからガバメントを抜き取った。

「今のは無し!無し無し無し無ぁあああああああしッ!!!まずアンタは死刑!!」

風魔目掛けて二丁拳銃を突きつけたアリアを、キンジが飛びついて押さえる。

「止めろアリアッ!!蘭豹もいるんだぞ!?」

「諦めなよ‘‘小学生’’アリアちゃん!!理子が衣装作り手伝ってあげる!!ふっ!!ふひひひ!!」

理子はアリアを指さしながら、まだ笑い転げている。

 ……アリアは‘‘小学生’’を引いたのか、ご愁傷様。

「誰がアリアちゃんよ!風穴!風穴流星群!風穴ビッグ・バーンッッッ!」

ばたばた暴れているのにも関わらず、確実にガバメントの銃口をくじ引きの箱を持った風魔さんへ向けているその技術に俺は驚いた。

「風魔さん!!次は俺達だ!!早く来い!!」

「しょ、承知ッ!!師匠、しからばこれにて!!御免!!」

煙幕を展開しつつ、風魔は一目散に俺達のチームに来た。

 

「村田先輩、助けていただき、感謝申し上げます!!」

風魔さんは俺に土下座するように礼を言ってきた。

「いや……うん、お疲れ様。じゃぁ引かせて。」

「ははぁ~!!」

……うん、献上するように箱を渡さないでほしいんだけど。

「引き直しは一度だけ認められているでござる。……ではご武運を。」

 ……どうか、いい役が出ますように。

俺は箱の中から四つ折りの紙を一枚取り出した。

  『女装(ビキニ)』

俺は無言で箱に戻した。

 ……むさい野郎がどうやってビキニで女装すんだよ!!

「チェンジすると一枚目は無効。2枚目の衣装が強制になるでござる」

「……了解。」

俺は……最後のくじに全てを賭けた。

「こいっ!!」

  『ボディビルダー』

 ……確かに、女装よりはいいけどさぁ。

俺は思わず膝をついた。

「……ハハハッ」

目の前が真っ白になった。

 ……変装の前に体づくりしなきゃいけねぇなぁ。

 

 

 

 次に、理子が女子用の箱からくじを一枚引いた。

「泥棒?えー…コレじゃつまんなーい!」

 ……いいじゃねぇか。お似合いじゃねぇか。俺だって『海軍士官(第2種軍装)』が良かった。持ってるしさ。

理子は似合っているはずのくじ『泥棒(漫画・キャッツアイ風)』を戻し、新しく引き直す。

  『ガンマン(西部開拓時代)』

「おー!!やるやる!!」

 

 その後、ほかのメンバーもくじを引いていき、ネロが『体操服(ブルマ)』、エルが『女学生(大正浪漫風)』、牛若が『振袖』、ニトが『メジェド(エジプト神話)』、リサが『提督』という結果になった。

 ……俺の様にどうしようもできないお題は誰一人いなかった。チクショウ!!

 

 

 

 

 

 ついでにアリアはあの後、体育館で「小学生ヤリマス」と言い続けるロボットになるまで、何回も蘭豹先生にジャーマン・スープレックスを食らい続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はくじ引きが終わった後、部屋にすぐに帰った。というか、不貞寝(ふてね)しようと思った。

「ただいまぁ~。」

無論、部屋には誰もいない。

 ……今から鍛え直すしかないのか?

俺がそう考えた時、

  プルルルル

俺の携帯が鳴った。電話は……藤崎さんからだった。

「はい、もしもし。」

「やぁ~村田君!!比叡山以来ですねぇ~!!!」

 ……電話越しなのに、なんでこんなに声デカいんだよ。

「実はですねぇ!!今度のロケは羽田空港からなんですけど、ちょうど東京武偵高の文化祭の日に近いんですよ!!」

 ……え?もしかして。

「なので、我々も見に行かせてもらいます!!」

「いやいやいや!!待ってください!!」

俺は‘‘『ボディビルダー』の変装のせいで最悪死ぬかもしれない’’ということを伝えたところ……

「分かりました!!‘‘ボディビルダー’’にうってつけの物があるんで送ります!!では!!」

「え!!ちょっと!!」

  ツー・ツー・ツー……

電話は切れてしまった。

 ……ほんとにあの4人(5人?)が来るのかよ。

俺は憂鬱になった。

 

 なお、翌日に蝦夷テレビから新品の黄色のボディビル用パンツと『マッスルボデーは傷がつかぬ!!』というDVDが送られてきた(なお、主演は安浦憲之助(ヤスケン)さん)。

 ……これでどうしろと?いや、パンツ代が浮いたのはよかったけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 くじ引きの数日後、俺達は21時過ぎだというのに教室に残って作業をしていた。理由は、その衣装作成のためである。

 衣装が間に合わなければ、もちろん教務課(マスターズ)オールスターからのキツイお仕置きが待っている。なので、〆切前日には教室に集まって徹夜で衣装を完成させる風習・‘‘仕上げ会’’が創られたそうだ。だからこんな夜中にわざわざ学校にきて、皆で最後の仕上げをする。

 

 ……俺は衣装はほとんどいらないけどな。

俺はそう思いながら体に茶色い塗料を塗っていく。なんでも、筋肉の陰影をはっきりさせるためにボディビルでは褐色の塗料を肌に塗るそうだ。

 ……こんな傷だらけの体を見せつけなきゃいけない場面が来るなんて。

俺は傷だらけの体に塗料塗りたくっていた。

 

 

  ウィィイイイイイン!!

  ズダダダダダダッ!!

機関銃のような音が教室内に響き渡る。しかし、この音は理子とリサが凄まじい速度でミシンを自由自在に操っている音だ。

 ……流石はプロ。あんな速さのミシンを使うなんて俺には無理だ。

理子とリサはミシンを使って、ただの布切れを美しい装飾品や小物に変えていった。

「どうよイブイブ!!これが理子りんのぉ~ミシン技術!!恐れ入ったか!!」

「イブキ様!!これがメイドの力です!!」

理子はその豊満な胸を張りながらドヤ顔で、リサは細い腕の上腕二頭筋を叩きながらムフーとした顔で俺に言った。

「恐れ入りました。」

俺は、ハハァ~というように彼女達に頭を下げる。

 ……あの技術はもはや職人だ。

 

 実はこの衣装、自分で作るのがルールなのだが……我がチームではこの二人がみんなの分(一部は自作)を作っている。

 俺と理子にリサを除いたチームメイト、ネロ(皇帝)、牛若(武将)、エル(大地の分身)、ニト(皇帝(ファラオ))……この4人は裁縫と一切縁がない。そんなの人たちが体操服に振袖、袴、メジェド……そんなものを作れるわけがない。まぁ、ネロとニトは自力で頑張るそうだが……。

 

 なので理子とリサは合わせて4人分作っているのだが……4人分はすでに作り終わり、それどころか小物まで作っている。

 ……相変わらず器用な二人だ。

牛若とエルはこのプロ二人が作ってくれるからいいとして(材料費は何故か俺)、ネロとニトが心配だ。

 ……自分で作るって言っていたが……大丈夫か?だって二人とも皇帝だぞ!?

 

 

  バァーーーーーーン!!!

教室の扉が思いっきり開けられた。全員が扉の方向へ向く。

「体・操・服であ~る!!余も着飾ってはいられぬと用意したが……うむ!! 心身ともに軽くなったようだ!!どうだ、似合っているであろう!?」

ネロは赤のハチマキを頭に巻き、赤のブルマを履いて、胸のゼッケンには『ねろ』と書かれていた。

 ……誰だ?このコスプレ美少女?

その後ろには、ウサギ耳の生えたメジェド様がいた。

「私ハ、メジェド……。頭ヲタレナサイ、不敬デアルゾ!!」

 ……あれ?この二人皇帝だったよな?あれぇ~?

俺は二人の再現度の高さに口がふさがらなくなった。

「どうだイブキよ!!余は‘‘万能の天才’’ゆえに!!この‘‘体操服’’も美しくできているであろう!?うん!?」

「崇メヨ……。」

「お二人ともお似合いで御座います。」

俺はサイド・チェスト(横向きになって胸を強調するポーズ)をしながら頭を下げ、そう言った。

 ……俺も塗り終わったから、ボディビルダーの真似をしないとな。

 

 教務課(マスターズ)から、『教室で衣装を着る時は最低一時間その役を練習すること』とのお達しが来ている。だから、俺は衣装(塗装?)を着終わったので‘‘ボディビルダー’’の役を演じなくてはいけない。

 

  ガシィ!!

俺はボディビルのポーズ(モストマスキュラー)をとるが……みんな引いている。

「……イブキよ。余も様々な戦士や剣闘士を見てきたが……そなたほどの傷を負ったものはほとんど見なかったぞ。」

ネロは俺の右わき腹にある縫痕(ぬいあと)を指でツツ―となぞる。

 ……くすぐったいから止めてください。

「流石です!!主殿!!武士の勲章ですね!!」

牛若が褒めてくれるが……俺は武士じゃねぇ。

「……。」

エルはいつも通りの笑顔でニコニコ笑っている……いや、その笑顔は大分ひきつっている。

「……メジェド様のご利益がありますように。」

ニトは白い布越しに俺の背中をさする。

「……イブイブ、ゴメンナサイ。」

理子は俺に土下座した。

……まぁ、この傷の3割以上は理子のせいだし。

「うん、許してるから。俺キレイサッパリ水で流してるから土下座は止めてくれ。」

俺は無理やり理子を立たせる。

「……(ジー)。」

リサは俺の体をジッとガン見している。

 ……リサさん、その目つきが怖いです。

「……お前も苦労してるんだな。」

遠山警官(キンジが警官の変装をしている)がポンと肩に手を置いた。

「……そろそろ泣きそうになるから止めてくれ。」

 ……おかしいなぁ。なんだってこんなに怪我する事ばっかりに巻き込まれるんだよ。

俺はキンジの肩をガシッと掴んで言った。

「あ、あぁ……。」

キンジは相変わらず、不憫(ふびん)な物を見ているような目で俺を見ていた。

 

 

 

 

 

 さて、俺のボディビルダー姿は見るに堪えない事がよくわかり、そして牛若とエルも変装し終わった頃、

  バァーーーーーーン!!!

「みんな、おっはよー!!」

扉が勢いよく開けられ、ガンマン姿の理子がやってきた。

 ……理子の奴、外で着替えてきたのか?

理子の姿はテンガロンハットを被り、厚手のブラウスを胸の前で結び、ヘソは丸出し。革のチョッキとブーツを身に着けて、デニムのスカートの裾には短い革紐がビッシリ並んでいる。拳銃は見たところシングルアクションのリボルバーを使用。

 ……芸が細かいなぁ。俺なんて黄色のパンツと塗料だけだ。

我がチーム‘‘COMPOTO’’の面々は器用な奴が多い事が判明した。

「ほら早く!!絶対ウケるって!!!可愛いは正義だよ!!!!」

理子はドアの裏側に居る誰に声をかけながら、その腕を引っ張っている。

「ッーーーーーー!!!」

人の可聴域を超えた高音で叫んでいる人物の足がズルズルと見えてきた。

真っ赤な靴に、ピンクと白の縞々靴下が見えた。ソックスの上縁には、ヒラヒラした白いフリルが付いてるようだ。

 ……おい。もしかして。

俺はこの場にいないピンク髪の暴君が引いたお題を思い出した。

「や、や、やっぱり!!!い~~~や~~~よ~~~ッ!!!」

 ……あぁ、やっぱり。

理子に引きずられてきたのは小学生(アリア)だった。小学生(アリア)は左右の胸の上部にでかいボタンをつけたブラウスを着て、丈が非常に短いスカートを履いている。当の本人は腕関節が外れるんじゃないかという勢いで理子に抗っていた。

 ……アリアもここまで芸が細かいなんて。

我らが小学生(アリア)ちゃんは赤いランドセルを背負っている。これをアリアが作ったとは思えない。

 ……どっちが作ったんだ?

俺はリサと理子を見た。……二人とも俺と視線が合ったらドヤ顔した。二人が協力して作ったのだろう。

 ……この二人は計5人分の衣装と小物を作ったなんて……どんだけ器用なんだよ。

「アリア、諦めろ。それより衣装の細部を作り込んでおかないと、後で市中引き回しの刑をやられるぞ。その服で……オフッ」

キンジは思わず吹いてしまったが、すぐに咳き込むような手つきで誤魔化した。

 ……キンジ、どうなっても知らねぇからな。

アリアをもう一度見れば、ランドセルの右側に『4年2組 かんざきアリア』と書かれた名札を付けている。

「っ!!ククク……」

俺は思わず笑いだしてしまった。

「よ、4年2組……!!!」

俺は床をバンバンと叩いた。

 ……なんだって真ん中の4年生をチョイスしたんだよ!!もう笑うの我慢できねぇよ。

褐色のボディービルダー(傷多し)が床を叩いて笑っている姿をアリアはギロリと見る。

「ヘイ!!アリアちゃん!!!お裁縫箱はこっちでちゅよ!!アリアちゃん!!!」

理子は星伽の裁縫箱を勝手にアリアの足の上に乗せた。

「アンタね……それ絶対、‘‘アリアちゃん’’って言いたいだけでしょうが……ッ!!!」

  ツン!!

アリアの額を穏やかな笑顔で白雪(教師の変装か?)がつついた。

「ダメでしょ、アリアちゃん?小学生がそんな口調で喋っちゃ。」

星伽は聖母のような(でもなぜか黒い)微笑みを浮かべてアリアに言った。

 ……役作り1時間のことを言っているな。

「……ぅぐう……!!!」

「はい、それじゃあ、道具を貸してもらったら御礼を言いましょうね?」

 ……あ、あれ?白雪先生?アリアの眉間に置いた指、爪立ててません?

「……あ、あ、後で覚えてなさいよ……!!!」

アリアは地獄の底から響くような声を出すとともに、顔の筋肉を痙攣させ、サーベルタイガーのような笑顔をした。

「が、ぐ……は、はいッ!あ‘‘い’’がとうございますッ!せん、せーッ!」

「あ、あ‘‘い’’がとうございます……!!あっはははは!!!!ゴホッ!!カハッ!!」

 ……小学生(アリア)ちゃん!!あんたは笑わせに来たのか!?

「か、風穴ァアアアア!!!!」

「うわぁ!!」

アリアが殴りかかってきた。俺は床から飛びあがり、サイドトライセップス(背中で腕を組み、横から見た上腕三頭筋を含めた腕の太さと脚の厚みを強調するポーズ)をしながら走って教室を出た。

 ……一応この教室内は役を演じないといけないってのが面倒だ!!

 

俺は教室を出ると一目散に逃げたように見せ、実際は、‘‘影の薄くなる技’’を使って扉の真横で教室内を観察する。

 俺が恐る恐る教室内を見ると、キンジと白雪がアリアを羽交い絞めにしていた。

 ……キンジ、白雪、今度なんか奢るな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアが(しず)まった(誤字ではない)後、俺はノソノソと教室に戻った。

 その後、俺は傷痕(きずあと)を隠すために思考錯誤(パテを盛ったり、メイクで隠してみたり)したが、無意味だという事が分かった。

……どうやってお仕置きから逃げられるんだ?

俺はその事で頭を痛めることになる。

 

 




 ここにきて、やっとイブキのご先祖様が判明しました!!『謙信公の足軽』です!!……うん、村人Aとそこまで変わりない。
 一応補足しますと、ご先祖は感状をもらえるほどの武功を(足軽なのに)挙げたが、それでも農民であることを貫いた異例の人物という事に設定上はなっています(なお、空想上の人物です。モデルもいません。)
 さらに補足すると、その感状は江戸時代初期に紛失していて、感状をもらったことすら子孫は知らないという設定です。

 
 貰った短剣は‘‘恩賜の短剣’’に準ずるものです。流石に戦後は『恩賜』の文字は彫られてませんが、形式上‘‘恩賜の短剣’’と呼ばれています。
 ‘‘恩賜の短剣’’をもらえる人物は海軍兵学校の卒業席次上位数名の優等者と、飛び級卒が貰えます。


 シスターが酒を飲むことについて。‘‘キリストの血’’はワインですし、中世では教会がビールの醸造をしていた記録もあります(当時、水が飲めないという理由もあったが)。なのに、飲酒はいけないと言うのは無理があるかなぁと『個人的には』思います。
 個人的にですからね?


 メーヤの酔った理由は、重度の‘‘雰囲気酔い’’です。


 ‘‘松乃井’’というお酒はうまいですよ(あくまでも個人の感想です)!!皆さんも新潟県の十日町、特に松之山温泉に来てみてください!!日本三大薬湯が待ってますよ!!(‘‘松乃井’’は新潟県十日町市の地酒です)


 『マッスルボデーは傷がつかぬ!!』は‘‘ドラ〇ラ鈴井の巣’’より‘‘マッスルボディーは傷〇かない’’をモデルにしています。
 わざわざこの作品のために、作者は少ない小遣いを使って‘‘マッスルボディーは傷つ〇ない’’のDVD(新品)を買って鑑賞しました。(個人的には気に入りました。)


 
 Next Ibuki's HINT!! 「近衛師団」

 



 


 

 

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