9月前半はバイトがほとんどないので更新が早い……はずです。
翌日の朝、二日酔いのせいでいまだに頭が痛い理子のために、リサはシジミの味噌汁を作ってくれていた。
「うぅ……。ッ~~~!!!」
理子は頭がまだ痛いのだろう。頭を押さえていた理子は俺を見かけた瞬間、トイレに駆け込んだ。
……理子ってこんなに酒が弱かったっけ?
俺は疑問に思いながら、シジミの味噌汁を啜った。
後日聞いたところ、空きっ腹に強い酒を一気に飲んだことが原因だそうで……。ゴメンナサイ。
俺は
俺は基本、
……そもそもなぁ……教えられることなんてないからなぁ。
俺は今までの訓練を思い出した。落下傘なしの空挺から始まり、真冬の山のサバイバル訓練(衣服一着のみ可)、遠泳(訓練名:八丈島より泳 い で 参 っ た!!)、行軍訓練(辻さんが地図に定規で引いたラインの走破)、機銃掃射を避ける訓練(時々実弾)、……。これ以外にもキツイ訓練を山ほど思い出した。あんな訓練をさせられられない。
「イブキ、大丈夫か?」
キンジが怪訝な目で俺を見てきた。
「あ、あぁ……軍の頃思い出して……。」
俺はきっと今、遠い目をしているのだろう。よく生きてるなぁ、俺。
「軍の授業に比べたら簡単だったか?」
……あ、そっち?
「まぁ……初歩の初歩だからな。」
まだ授業は3回も超えていない。それなのに難しいことを講義はしないのは当たり前だろう。
俺は高機動車に乗り込み、エンジンをかけようとした時、隣の
「なっちー、後はヨロシクねー!!」
そう言って女子たちは商店区へ歩いて行った。
「……あ、は、はい……。」
林の中から声が聞こえた。この声は……
「中空知さん?」
「中空知、か?」
林の中の人影はその言葉で、ビクっと身震いをした。この反応を見ると、中空知さんなのだろう。
バサッ!!
「そ、そそその、その声は……む、むら、むた、むたら、むらた君!!!……と、おと、とおやま君!!!」
中空知さんはそう言いながら落ち葉の入った袋を落としてぶちまけ、尻もちをついた。
……気弱な中空知さんに
俺はため息と共に高機動車のエンジンを止め、ズカズカと林の中に入った。
「ひっ!!」
中空知さんは怯え、尻もちをついたまま、後ずさりをした。
……え?そんなに怖い?
俺はショックを受けながらホウキとチリトリを拾った。
「ちゃっちゃと終わらせようぜ。」
俺はそう言って、中空知さんがぶちまけた落ち葉を集め始めた。
キンジもホウキを一つ拾い上げ、
「武偵憲章1条だ、手伝うよ。」
その言葉と共に落ち葉を集め始めた。
「あ、あ!!いいんです!!別に、いいんで……ひっ、ひっく、ひくっ!!!」
中空知さんは緊張のあまりしゃっくりが出始めた。
「まぁまぁ、知波単の時の借りもあるし。」
辻さんによる知波単学園戦車道指導の依頼の人数が足りなくて、中空知さんには無理を言って来てもらった事がある。その借りをこんなので返せるとは思えないが……少しでも恩は返さないと。
……それに、‘‘義を見てせざるは勇無きなり’’だ。‘‘触らぬ神に祟りなし’’という言葉もあるが。
俺は集めた落ち葉をゴミ袋に詰めた。
「はひっ……ひくっ!!あ、ありがとうこいしますっ!!あいがと、ございましゅ!!」
中空知さんはスクっと立ち上がり、カラクリ人形のようにカクカクと頭を何度も下げた。
「チャチャッと終わらせようぜ。」
「は、はひっ、ひくっ、ひっく!!」
……大丈夫かなぁ?これ。
なお、5分もせずに落ち葉を拾い集めた。
落ち葉の処理が終わった後、‘‘乗りかかった船だ’’と中空知さんを高機動車に乗せ、送ることにした。
「今日はそ、その……ありがりございました……。」
……‘‘ありがとうございました’’の間違えか?
「ちょっと手伝っただけだろ?いいよ別に。」
助手席のキンジがそう言った。
「そこまで気にしなくていいよ。」
俺はそう言いながらハンドルを握りなおした。
……それに、サボりを見逃した罪悪感もあるからな。
ああいうのは、見ている第三者も気分が悪い。本当に止めてほしい。
「わ、私、誰かに、こ、ここ、こういうの、手伝ってもらったの……は、初めてでしたから……。と、友達とか、ジャンヌさん、ぐらいしか、いないので……。」
中空知さんは相変わらずビクビクしながら言った。
……そんな悲しいこと言うなよ。ってジャンヌか。
俺は
「……ジャンヌがどこにいるか知らないか?」
キンジが中空知さんに聞いた。キンジもジャンヌが心配なんだろうか?
「今、ですか?わ、私の部屋に、と、というか、私とジャンヌさんとの、女子りゅ、女子寮の、相部屋していて……いますよ?」
「え?」
「へ?」
「き、昨日帰ってきて……け、欠席、欠席しました。怪我をしていたので、へ、部屋に、います。」
ジャンヌは……帰ってきていたのか、しかも怪我をして……。
……なんだかんだあっても、心配だな。
「ちょっと、そこに寄っていいか?」
俺は中空知さんに聞いた。
「へ!?ひゃ、ひゃい!!」
俺は野菜や青果が売られている購買の前に高機動車を止めた。
「……一番高いの買ってたけど、これはどうなんだ?」
助手席のキンジが顔をしかめながら言った。
「……これ以外の果物が黒ずんだバナナしかねぇんだぞ!?……流石は武偵、リンゴやミカンぐらいあると思ったんだが……。」
高機動車の窓を全開にしても匂いが伝わってくる……。圧倒的に臭い。中空知さんはあまりの臭さに白目を向き始めた。
「中空知さん、ジャンヌの見舞いに行ってもいい?」
「え、あ、ひゃい……、ひゃう……。」
中空知さんはそう言って気絶した。
……とりあえず、許可は取ったな。
白目を向いた中空知さんと‘‘
異臭のする高機動車は、ジャンヌと中空知さんの部屋がある第3女子寮に着いた。
俺は異臭のする箱を持ちながら、二人の部屋に上がると……
「おぉ~……」
「うぉ……」
俺とキンジは思わず声を上げた。そこには……音響機器がびっしりと集められていた。
黒塗りの防音壁に大量の、種類の違うヘッドホンがかけられている。他にも古今東西の通信機、無線機、携帯電話すらある。
……モールス用の電鍵ですら10以上あるぞ!?おい、これはベルの発明した世界初の電話のレプリカじゃねぇか!?
失礼なことではあるが……多種多様な通信機に囲まれた部屋をキョロキョロと見ていた。すると、その部屋にある唯一の機械でない物……観葉植物と小さなサボテンを見つけた。観葉植物には‘‘トオヤマクン’’と書かれた小さなプラカードが刺さっており、サボテンの小さな植木鉢には‘‘ムラタクン’’と書かれた可愛いシールが貼られていた。
……見なかったことにしよう。
俺は視線をそらした。
「ちっちっ違います!!!しょ、植物に、話しかけたりとかしてましぇん!!!そ、そこまで孤独じゃありせんよっ!!!」
中空知さんはヘッドホンの空き箱で観葉植物を隠し、同時にサボテンを持って背中に隠し、涙目で弁明を開始した。
「……いや、珍しい種類の植物育ててるんだな。」
俺はそう言って目をそらした。
「ガサ入れしに来たわけじゃないから……ジャンヌは?」
「ジャンヌさんは!!そち、そちら!!です!!」
キンジの言葉を聞き、中空知さんは涙目でドアを指さした。そのドアは古城にでもありそうな、上品な雰囲気を醸し出す、木目調のドアであった。
……一目でジャンヌの部屋ってわかるな。
俺は‘‘
……寝ているのか?
俺は思わず抱えている箱を見た。相変わらず異臭がムンムンとする。
……枕元に置いたらどんな反応をするんだ?
俺はそんなくだらないイタズラを思いつき、そっとドアノブに手をかけた。
ドアを開けると、マホガニーの机、ガス灯のような古風なルームランプなど……一流企業の幹部や政治家が高級ウィスキーやブランデーを傾けていそうな、シックで洒落た部屋だった。
本棚にはフランス語に英語、日本語の歴史書や小説、少女漫画、〇―ガレット……。
……コスプレが好きだと知っていたけど、こういうのも好きなのか。
この部屋にはベッドが無い。どこにいるんだろう……と、キョロキョロすると、
ごそ……ごそ……
その音の方向を見ると、もう一部屋あった。そこで寝ているのか?
俺はそーっと開けると……そこには大量のフリフリな服がウォークイン・クローゼットの様にかけてあった。
……コスプレが趣味なのは知ってたけど、ここまでのガチ勢だとは思わなかったぞ!?
俺は戦慄を覚えながら‘‘衣装のジャングル’’を潜り抜けた。
「フフッ……やはり良いな。」
……おう、いきなりですか。
そこには、ジャンヌがウェイトレス姿で、キリっとした顔で立っていた。
全身が映る大きな鏡の前で、膝に片手をついて前かがみになったり、振り返りながら背中の大きなリボンの細かい調整したり、腰に手を当てたりしてポーズをとっていた。
「フッ……私はこんなにも愛らしい……フフッ……。ん?変な
鏡のジャンヌと目が合った。
「「……。」」
時間が止まったように感じた……。
数秒か、数十秒か、数分だったかもしれない。お互い鏡越しに目を合わしたまま、二人とも動くことができなかった。
ドスン!
俺は手汗のせいで、‘‘果物の王様’’の入った箱を落としてしまった。
「……やベっ!!」
「ッ~~~~~~~!!!!!」
銀髪美少女ウェイトレスは拳を握って俺に振り向いた。
「待て、落ち着け!?すごく可愛いから!!美少女待ったなしだから!!だから暴力系美少女になるのだけはやめよう!!……な!?」
俺は必死になって
チャキ……
背中から
「ちょ、ちょっと待て!!どうやってそんなでかいの隠せるんだよ!?物理的におかしいだろ!?」
……そんな細い体にどうやって仕込んだんだよ!?
「……この部屋を見た者はいない。ここは私だけの秘密の花園だったのだ……。そして……今後もこの部屋を知る者はいないだろう……。」
チャキ……
ジャンヌはスッと
「……私とて慈悲の心はある。辞世の句を聞いてやろう。」
……え!?マジで殺す気!?
「…………クールな美少女が顔真っ赤にして、コスプレするのっていいよね!!!このギャップがいい!!」
俺はサムズアップしながら、ここ数ヵ月で一番の笑顔をした。すると、ジャンヌは聖女のように、すべてを包み込むような笑顔をした。
「生者の為に施しを……
死者の為に花束を……
正義の為に剣を持ち……
悪漢共には死の制裁を……
しかして我等聖者の列に加わらん……
……サンタ・マリアの名に誓い、全ての不義に鉄槌を!!!!」
そう言って
「ちょっと待って!!それウェイトレスじゃない!!婦長だから!!!」
バキッ!!!
ベキ!!バキ!!ズドン!!!
俺は
「……お、おいっ!!大丈夫か!?」
キンジは俺が吹っ飛んできたのを見て一瞬固まった後、走り寄った。
「……フフフフ。」
ジャンヌは左手に
……おい待て!!
「待て!!落ち着け!!可愛い子がそんな物持っちゃだめだから!!」
「フフフフ!!」
ジャンヌが
「……ッ!!」
俺はドリアンを持ったジャンヌの左手に、自分の右の拳をぶつけるようにして、攻撃を防ごうとした。
すると、
そのドリアンは勢いよく俺に向かって……
ドスッ!
「ぐぅ……!!」
右胸に衝突した。俺はその衝撃や痛みを無視し、ジャンヌの左手を握り、一本背負いの要領で地面に投げた。
俺はジャンヌに馬乗りになり、四肢を動けないように抑えた。
「ジャンヌ落ち着け!!ジャンヌは可愛いから!!めっちゃジャンヌは可愛いから!!お前は可愛くないと思っていても、俺はジャンヌのことを可愛いと思ってるから!!だから恥ずかしくない!!」
……今は亡き我が母親の秘技‘‘褒め殺し’’!!!
俺は‘‘可愛い’’を連呼し、死んだ母親が良くやっていた‘‘褒め殺し’’を使って何とかジャンヌを無力化しようとする。
「わ、わかった!!わかったから!!もうやめてくれ!!!」
ジャンヌの顔は桃色から朱色に変化した。
何とかジャンヌを
「……見舞いに来てくれたのは有難いが、この手土産は酷いな。」
ジャンヌはそう言って、鼻を押さえながら
「これ以外の果物が‘‘黒ずんだバナナ’’しかねぇんだよ。
俺はため息をつきながら言った。
……流石に半額どころか‘‘7割引きのシール’’が付いた果物渡すわけにはいかねぇしなぁ。
「……まぁ、気持ちは貰っておく。」
ジャンヌもそう言ってため息をついた瞬間、
ピピピピピ……
ジャンヌのポケットから携帯の着信音が聞こえた。
ジャンヌはポケットから携帯を取り出し、発信者を確認した。
「……中空知だ。」
「中空知?中空知は隣の部屋にいるだろ?」
キンジは不思議そうに言った。
「あの中空知さんだ。面と向かって話せないだろ、あの性格だし。」
「……なるほどな。」
俺達はそんな話をしている間、ジャンヌは携帯に出てしばらく話していた。その後、
「うむ……わかった。村田、遠山、お前たちは向こうの部屋で待っていろ。お前たちを見ると中空知は本領を発揮できなくなる。彼女とはこの携帯で話せ。」
ジャンヌはそう言ってさっきまで話していた携帯を渡してきた。
「ん?あぁ、分かった。」
俺はそう言って、ジャンヌの携帯を受け取った。
「先週、中空知に何か以来したらしいが……それか。」
キンジはジッとジャンヌを見ながら言った。
……え?そんな事やってたの?
「そうだ。エル・ワトソンの会話を盗聴させている。私は奴を疑っているのでな。」
俺は二人が話している間、多人数で話せるように設定した。男二人が一つの携帯に耳寄せるなんてことはやりたくない。
設定した後、ジャンヌの携帯をキンジに渡し、俺は自分の携帯を耳に当てた。
「奴は動いたらしいぞ。アリアとリサが一緒に話している。」
……リサだと!?
俺は頭の回転が一瞬止まった。リサは昨日できなかった掃除をすると張り切っていたはずだ。仮に買い物に行ったとしても……リサには自衛能力が皆無だ。ワトソンはリサを簡単に拘束できる。
……あいつなら、人質にする可能性があるぞ!?
とても嫌な予感がする。
「ッ……!!!!」
「おい!!イブキ!!」
俺は血がにじみ出てきた胸を押さえながら、ジャンヌと中空知さんの部屋を飛び出した。
目の前の柵を飛び越えて一気に1階へ飛び降り、高機動車に飛び乗った。
俺は高機動車のエンジンをかけるとともに、携帯用のヘッドセットを起動した。
「中空知さん!!二人は何処にいる!?」
『今、店内です。台場1-9-1.ホテル日航東京3階、コンチネンタルレストラン、テラス・オン・ザ・ベイです。』
「了解!!!」
高機動車は白煙を巻き上げながら第3女子寮を後にした。
俺は運転をしながら、ワトソンの選ぶ戦場を考えていた。
……もし、ワトソンがこの辺でドンパチやるにはどこを選ぶ?ワトソンはすでに上野でやらかしている。人が多い場所でドンパチするとは思えない。
『……
……流石にワトソンも高級外車を短期間で2両も買えないか。
『ワトソン、アリア、リサに話しかけています。アリア、リサ、ともに返答無し。眠っている模様。』
すると、キンジが疑問を抱いたようだ。キンジはどんな眠りかを聞くと……投薬、麻酔などによるものである可能性が高いと中空知さんは答えた。
「やってくれるじゃねぇか。」
俺は思わず呟いた。
……なるほどな。‘‘イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない’’か。ダージリンの言うとおりだな。
『目的地特定できました。場所は建設中のスカイツリーです。』
「流石は中空知さん!!ありがとうよ!!!」
俺はさらにアクセルを踏み込んだ。
……その戦争、高値で買い取らせてもらうぜ?
高機動車はさらに加速する。その時、
プルルルル……
俺の携帯が鳴りだした。発信者は……メガネさん!?
俺はヘッドセット操作し、電話に出た。
『た、大変なことが分かりました!!!』
メガネさんは銃声や爆音をバックに慌てた声で言ってきた。
「どうしたんですか?」
『ひ、ヒルダが!!上野で事件を起こしたヒルダが逃げたんです!!!』
「……はい!?」
俺は思わず耳を疑った。
……え?あの近衛師団だぞ!?逃げたりしたら……東京はどうなるんだ!?
『昨日、警察に引き渡した後に脱走したようです!!今、近衛師団が血眼で探しているようです!!』
「……ほ、本当ですか?」
……下手したら、あの
『本当です!!見つけたらすぐに連絡してください!!最悪巻き込まれます!!』
「わ、わかりました!!」
ピッ!!ツー、ツー、ツー……
俺は今の状態を整理した。ワトソンとの戦闘、ヒルダの脱走、
「…………とりあえず、ワトソンが先だ。」
俺は……考えるのを止めた。
高機動車は急ブレーキによって、強力な慣性力が車内を襲った。俺はそれに耐えた後、車から降りた。
見上げた先にある東京スカイツリーは……魔王の居城のようにそびえたっていた。
この付近に人の気配はない……となると、ワトソンは上にいるのだろう。
「‘‘毒を喰らわば皿まで’’……か。」
東京スカイツリーの階段と、エレベーター乗り場に監視カメラがあった。
……流石に東京スカイツリーの柱を伝って登るのは無理だ。となると、階段かエレベーターしかない。
俺はエレベーターに乗り込んだ。
エレベーター内には監視カメラがない。……油断しているのか、それとも時間が無かったのだろうか。しかし、これは好都合だ。
俺はエレベーターの天井を外し、そこからエレベーターの外に出た。そして、紅槍を使ってボタンを押し、エレベーターを作動させた。
ボタンを押して少しすると、エレベーターは上に向かって加速していった。その加速のせいで強烈なGが体にかかる。それは
「グゥ……。」
……めっちゃ痛い。
たった数秒が、数十秒にも感じる。
チーン!!
その音と共にエレベーターが開いていく。
……俺なら、エレベーターが開いた瞬間に機銃掃射や爆弾を作動させるが……ワトソンはどうする?
エレベーターが開ききった。その瞬間、
ズドン!!ズドーーーン!!!
爆発音とともに数千発の鉄球がエレベーター内を襲った。
「ッ~~~!!!」
鉄球の数発はエレベーターの天井を貫通し、俺に当たる。
ダダダダダダダ!!!
そして、煙が収まる前に機銃掃射が始まった。
……うわぁ、予想道理かよ。チクショウ。
機銃掃射が終わると、俺は‘‘影の薄くなる技’’を使いながら、その階に降りた。
ダァン!
すると俺の目の前、30センチほどの場所に弾痕が新たに作られた。
……バレてるってことか。
俺は弾が来た方向に銃剣付きの38式を構えた。
「……出てこいよ。コソコソ隠れてねぇでサシで決着着けようぜ。それともエージェントはコソコソ戦わないと勝てねぇか?」
俺がそう言うと、柱の影からゴーグルをかけたワトソンが、H&K MP5を構えながら出てきた。そのゴーグルは暗視装置か、それに準ずる何かだろう。
「まさかムラタが先に来るとは、全くの想定外だよ。」
……想定外、ね。よく言われるな。
俺は38式を強く握った。
「リサに何をした?」
「どうしたと思う?」
ダァン!!
俺は38式を発砲した。
「……あ、危ないじゃないか。」
ワトソンの髪が数本落ちて行く。
「俺はリサの安否を聞いてるんだ。……なれない事はしない方が身のためだ、
俺がそう言うと、ワトソンはため息をはいた。
「君はバカか?……その古びた
カチャ……
ワトソンはそう言ってH&K MP5を構えなおした。
「それに……
「ゴチャゴチャしゃべるな、御託は良いんだよ。……どっちがここで生き残るか、それだけだろうよ。」
俺は空薬莢が薬室に入ったままの38式を構えた。
ダダダダダダダ!!
ワトソンは発砲した。
MP5は比較的早い発射速度、そして異常に高い命中率が売りの
……そのおかげで弾を避けやすいけどな!!
俺はジグザグに動き、体に当たりそうな弾は銃剣で弾きながらワトソンに接近していく。
ガチャ…ガコン!!
38式の装填は終わった。俺は突撃しながら狙いを定める。
ダァン!!
「うっ……。」
俺はH&K MP5に向けて発砲し、それを破壊した。
「うらぁあああ!!」
銃剣の突きをワトソンは右に避けた。
……右へ避けるのは悪手だぜ!!
俺は、右に避けたワトソンの頭に銃床を思いっきりぶつけた。
ベキッ!!
「ぐぁ……」
ゴーグルは割れ、ワトソンの頭から鮮血がほとばしる。
「
ワトソンは銃床で殴られたのと同時に、カウンター気味にククリナイフを突き出してきた。
……この距離では避けられねぇ!!
ザクッ!!
「チッ……!!」
すでにケガをしている右胸に、さらにナイフによる一本の線を刻み込まれた。
俺は痛みに耐えつつワトソンの腕をつかみ、38式でその腕を押さえ、肘を無理やり外した。
「あぁあああ!!!」
そして、その苦痛の表情を浮かべるワトソンの
体の軽いワトソンはそのまま数メートルほどぶっ飛び、そのまま動かなくなった。
……右胸が痛すぎる。
俺は軽く右腕を回しながらゆっくりと、動かないワトソンへ近づいていく。
「……よう、立てよ。寝る時間にはまだ早いぜ。」
ワトソンは動かない。……いや、動いていない。師匠や軍で鍛えられたおかげで、意識の有無ぐらいはすぐにわかる。
……こういう場合は、敵は奇襲を仕掛ける場合が多い。しかも、ワトソンは地力で負けていることぐらいは理解しているだろう。となると、毒などの薬品・爆薬を使うことが考えられるな。
俺は警戒しながら、ゆっくり近づいていく。
……千日手だな。
俺はワトソンの奇襲を警戒して動けず、ワトソンも俺が警戒しているせいで動けないのだろう。
俺はこの時、薬室にはまだ空薬莢が入っていることを思い出した。
ガチャン!!
俺がボルトを引いた瞬間、ワトソンは目をカッと開き、紅の唇をすぼめ、吹き矢のようなものを2本、俺に向かって発射した。
……なるほど、これか。
俺は首を傾けて、針のような矢を避け、もう一本はゲートルが巻かれている部分に当たった。。
ガコン!!
ジャキン!!
38式の装填が終わると同時に、ワトソンの袖からスリーブガンの要領で拳銃を出した。
ダダダダダダダ!!
ワトソンは拳銃を連射しながら距離を開ける。俺は38式を発砲し、ワトソンの拳銃を破壊した。
「……ハァ、ハァ。さ、流石その年でCIA、ペンタゴン、FBI、MI6、ロシアのSVR……それにRAF、FARCにマークされるだけあるよ。」
「マ、マジかよ……。」
それは知りたくなかったな……。
「
……辻さん、あんたどんだけ警戒されてんだよ。
俺は少し涙が出てきた。
「だが……実際戦ってみて分かった。その上で言わせてもらおう。……僕の勝ちは揺るがない!!!」
「……大丈夫か?」
確かに毒矢と思われるものは2本飛んできて、一本は顔へ、もう一本は足に向かってきて、足の方は刺さってしまったが……ゲートルに阻まれ、肌に刺さっていない。
「無味無臭無色の揮発性の毒さ……平衡感覚やあらゆる感覚を狂わせ奪う薬でもあ……あれ?」
ワトソンは、やっと俺が……毒矢が効いていないことに気が付いた。
「……え?あ?う、嘘だ!!針は刺さっているはずだ!!」
「確かに刺さったが……ゲートルに阻まれたがな。」
俺がそう言って一歩前へ出ると、ワトソンは後ずさりをした。
「う、うわぁあああああ!!!」
チャキチャキチャキ……!!!
ワトソンは全身から金属音を出しながら、肘、膝、ブーツの踵から短いナイフを出し、ククリナイフを持って俺へ突撃してきた。
俺は銃剣の先を使ってククリナイフを払い落とし、そのまま胸に銃剣を刺した。
ドスッ!!
鈍い音と共に、銃剣はワトソンの胸に突き刺さ……らなかった。
……防刃チョッキを着ているのはわかってたぞ!!
「ゴフッ……」
防刃チョッキを着ていても……そのエネルギーを防ぐことはできない。
ビリビリビリ……バタン
ワトソンはそのまま倒れていった。その際、銃剣に服が引っかかり、破れてしまった。
……あちゃぁ、防刃チョッキも破れちまった。
その結果、可愛いブラが露出したまま、仰向けに倒れていた。
……気絶してるのはわかるから、とりあえず武装解除か?
俺はワトソンの武装を解除しながら、こいつの戦闘能力を考察していた。
……戦った結果、ワトソンは強かった。強かったが……相性が悪く、しかも俺の土俵の上で戦った結果、こいつは持ち味を全く発揮できず負けたんだ。
こいつの戦い方は暗器や毒などを使った奇襲・ゲリラ戦法だろう。それを一切せずに、俺に正々堂々(?)戦えばこうなることはわかっていたはずだ。
毒矢はともかく、暗器やナイフのような短い得物で、銃剣をつけると160センチにもなる
本気で勝つのなら、序盤で使った
俺はそう考えながらワトソンの体を調べて武装解除をし、口に指を突っ込んで暗器がないか調べる。
……まるで変態だな。
俺はそう思いながら口内をまさぐると……
「うわぁ……。」
出るわ出るわ……。暗器が出てきた。
左手でワトソンの口を無理やり開け、右手で口内をまさぐって3つ目の暗器が出てきた時、ワトソンは意識を戻したようだ。
「……あ?へあ?……ッ!!ッ~~~~~!!!」
ワトソンは顔を真っ赤にして暴れ出した。
「……ちょっと待ってな~。これで最後か?」
口内から4つ目の暗器を摘出し、開放すると……ワトソンは一気に距離を取った。
「ムムムム、ムラタァ!!!き、君はなんてことをしたんだい!!貴族の、しかも未婚の淑女の口に!!あ、あんなことを!!!」
ワトソンは涙目で俺を睨んだ。
「……あぁ、とりあえずこれ着てから話してくれ。」
俺はそう言って‘‘四次元倉庫’’から上着を出し、ワトソンに投げ渡した。
ワトソンはゆっくりと自分の姿を確認し……
ビクッ!!
急いで上着を拾い、羽織った。
「こんな、こんなに傷物にして……お、お嫁にいけない……。」
ワトソンは俯き、ヒックヒックと嗚咽が漏れ始めた。ワトソンの足元には……ポタリポタリと水滴が落ちて行く……。
……え?ガチ泣き!?
「え?ちょっと待って!!裸になったのは戦闘での結果だし、口に手を入れたのは武装解除のためだからね!?」
「……エグッ!!ヒクッ!!」
‘‘八丈島より泳 い で 参 っ た!!’’のネタは、戦国武将、宇喜多秀家の鉄板ネタ。某〇ちゃんねる発祥。実際は、宇喜多秀家は泳いでいません。
このネタを知ったHS部隊幹部たちが面白半分にこの訓練(文字通り)をした結果、年に数回はやるようになってしまった……という設定です。
あと皮はトゲトゲで、しかもめっちゃ硬いです。あれで殴れば普通に人が死にます。
‘‘生者の為に施しを……’’のセリフは‘‘BLACK LAGOON’’の婦長:ロベルタのセリフです。ロベルタはベネズエラ出身でこのようなセリフを言うのでカトリックだと思われます。また、フランスも主な宗教はカトリックなので、ジャンヌも同じセリフを言うかなぁ……と。
ワトソンとの開戦シーンは‘‘ゴールデンカムイ’’の杉本VS二瓶鉄造をモデルにして書きました。
‘‘ゴールデンカムイ’’とても面白かったです!!‘‘Fate×二瓶鉄造’’を時間があったら書きたい!!(構想はある)
……昔、‘‘Fate×ドリフターズ’’を書きたいと言ってましたが……規約に引っかかりそうなので諦めました。え?いや……あのドリフですって、ドリフ。8時だy……
CIA、ペンタゴン、FBIにマークされている理由は……‘‘おっさん’’こと‘‘ジョニーマクレー’’と一緒にアメリカのテロを(軍や警察のメンツを潰しつつ)解決したせいでマークされています(辻希信の部下という理由はおまけ程度)。その(おまけの)情報を知ったMI6もマークしています。
SVR、RAF、FARCは逆に計画を潰されたため、マークしています。
なお、この小説はフィクションです。実在の人物、組織とは一切関係はありません。
あとがきがめっちゃ長くなりました。スイマセン。
Next Ibuki's HINT!! 「不利な相手」