少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

73 / 113
遅れて申し訳ございません。久々の難産でした。
人選を迷い、オチをどうつけようか迷い、書いたけど結局最初から書き直し……と。

 そして、北海道地震により被災された方々のご冥福を祈るとともに一日も早い復興を心からお祈りします。


獲物の横取り……

 俺は必死にワトソンに謝り倒し、何とか泣き止ませた。

 

 ……下手すりゃ訴えられるからな。それだけは勘弁してくれ。

 

「……で、リサは何処にいるんだ?」

俺を上着で上半身を隠し、女の子座りをしながら涙目で睨むワトソンに聞いた。

「……上にいる。安心してほしい、傷一つついてない。」

「そうかい。」

俺は38式を杖のように使い、立ち上がった。そして、階段の方へ歩きながら、‘‘四次元倉庫’’から実包を2発取り出して装填した。

「……ムラタ、君は聞かないのか?なぜ僕がこんなことをやったのか。」

ワトソンはポツリと言った。

「なんだ、聞いてほしいのか。」

俺がそう言いながら振り向くと……ワトソンはコクリと頷いた。

 

 ……確かに気になる。敵はもういないだろうし、いいか。

 

 

 

 

 

 

俺はワトソンの前まで歩き、ドカッと胡坐をかいた。

「何だって男のフリをしてアリアに近づいたんだ。」

俺は頬杖を突きながら言った。

「アリアをワトソン家にいれるためだ。僕と結婚すれば、アリアをワトソン家に入れられる。だから……僕はずっと男として育てられた。」

ワトソンは俯きながら、ゆっくりとしゃべった。

「……そんなのすぐバレるだろうに。アリアの事が好きなら、同性婚ができる国でやりゃぁいいのによ。」

「…え?」

「……え?」

空気が一気に固まった様な気がする。

「ワトソン、一つ聞いてもいいか?」

「うん、君は何か誤解をしている。」

「…………アリアのことが好きじゃねぇのか?もちろんLoveのほうな。俺はワトソンが百合か両刀かどっちかだと思ってたんだが。」

ワトソンの顔はゆっくりと赤くなっていく。

「そ…その、百合か両刀って……。」

「レズビアンか、バイセクシャルか……って言えば分かりやすいか?」

 

 ……この反応を見るとやっぱり

 

「ち、違う!!ぼ、僕は男装はしていても!!普通の恋愛感情を持ってる!!」

ワトソンは俺の襟首を持ち、揺らしながら叫んだ。

「わ、分かったから止めて……痛い、メチャクチャ痛いから!!」

握っている拳が傷に当たってるから!!

「……と、とにかく!!凋落(ちょうらく)傾向にあったワトソン家は、アリアの誕生を知った先々代の当主がホームズ家と密約を結び……ちょうどその冬に生まれる予定だった僕の許嫁にしたんだ。」

ワトソンはそう言って俺の襟首を話した。

「でも、生まれた僕は女子だった。リバティーメイソンの規則では養子は認められなかったから、結婚しかなかったんだ。……ハハッ」

ワトソンはそう言いながら……空元気を出すように笑った。

 

 ……それらをやろうとして、両想い(笑)であるキンジが邪魔だったのか。しかし、なぜ俺も狙った?

 

「なぁ、キンジを狙った理由はわかるが……なんで俺も狙ったんだ。」

「そ、それは……」

ワトソンは顔をさらに赤くし、俯いた。

「……トオヤマの次にアリアに近い男だから……」

 

 ……なんか嘘をついているような気がする。いや、嘘はついてないが本当の理由ではないような気がする。

 

「本当か?」

俺はワトソンの顔を覗き込んだ。すると、ワトソンは目をそらし、さらに顔は真っ赤になる。

「ち、近い近い!!!」

「は、はぁ……?」

ワトソンは両手で俺を無理やり遠のけた。

 ちょうどその時……作りかけの東京スカイツリーから一望できる世界最大の巨大都市(東京)の灯りが、ポツリポツリと消えていく。

「え?」

「……!?」

その代わりに……俺達の上、第二展望台付近に探照灯の光源のように、激しく発光しているものがある。

 俺はメガネさんの言葉が頭によぎった。

 

  『ひ、ヒルダが!!上野で事件を起こしたヒルダが逃げたんです!!!』

 

 

 そして発光体は……ゆっくりと俺達の方へ落ちてきた。

「Watch out!!High!!」

「うるせぇ!!逃げるぞ!!」

俺はワトソンの手を取り、抱え走り出した。

 俺達の体よりも大きい発光体はゆっくりと落ちて行き、地面に接触した瞬間……

  バチバチバチ!!

激しい放電音と共に視界が真っ白になる。

 

 ……ヒルダが、‘‘球電’’を使うだと!?

 

 球電とは、空中を発光体が浮遊する自然現象、あるいはその発光体だ。知名度があまりにも低いので、この現象をUFOなどと誤解することがある。メカニズムはわかっていないが、大きなエネルギーを持っている。直撃して死んだ人もいるそうだ。

 

 ……そんな事、士官学校での補修の時に雑談で言ってたっけ。

 

「「うわぁあああああ!!!」」

俺はそんなことを思い出した後、思考を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は戻り、その日の昼時。

 葛飾区にある公園前の交番に、角刈りで眉が繋がっている警察官が、あくびをしながらパトロール(笑)から帰ってきた。その警官は求人雑誌を脇に挟み、耳に鉛筆を挟んでいた。警官はそのままの姿でガラガラガラっと交番の扉を開けた。

「戻ったぞ~。」

その警官は自分の机にドカッと座り、求人雑誌を開いた。

「あぁ~、金がない!!……こうなったら新しいバイトを探すぞ!!」

警官はそう言って鉛筆で雑誌に何かを書き始めた。

「両ちゃんまた?」

婦警が呆れた目でその警官を見ながら言った。

「……先輩、まだ給料日から一週間も経っていませんよ。」

黄色い制服を着た警官も呆れながらそう言った。

 

 ダッダッダッ!!

すると、チョビ髭を生やした警官が紙を握りしめ、交番に駆け込んできた。

「「ぶ、部長!?」」

「ゲッ!!部長!?」

警官は急いで求人雑誌を背中に隠した。

「りょ、両川!!!貴様というやつは……まぁいい。今日は大目に見てやろう。」

ちょび髭の警官は、手に持っていた紙を机の上に広げた。

「なんです?これ?」

「皇居前でこの前テロを起こした犯人が……たった今、脱走した!!」

「「えぇ~~!!」」

婦警と黄色の制服の警官は驚いたが……眉毛が繋がっている警官は鼻をほじっていた。

「あんなの公安と軍が血眼になって探すに決まってる。そんなに慌てることはなぁい。」

眉毛つながりの警官は鼻糞をピンッと外へ飛ばした。

「バッカもーーーん!!!」

チョビ髭警官の怒号が交番に響く。

「貴様はどうして……まぁいい。この犯人は近衛師団が捕まえ、警察に引き渡した後、脱走したそうだ。後、言いたくないのだが……両川。」

「なんです?」

「捕まえたら……特別ボーナスが支給されるらしい。」

すると、その言葉を聞いた眉毛つながりの警官は目の色を変えた。

「と、特別ボーナス!?……この女ですね!!!」

「あ、あぁ……。」

「では、市民の平和のため!!パトロールに行ってきます!!」

眉毛つながりの男は自転車に(またが)り、ビューンと去っていった。

 

「……ただ事ではないですね。しかも捕まえれば特別ボーナスだなんて……。」

黄色い制服を着た警官はポツリと言った。

「そんな話、今まで聞いたことがないわ。」

婦警もそう言った。

「警察のメンツがあるからな。警察庁と警視庁に兵部省から抗議文が送られたらしい。」

「「うわぁ~……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、東京の某所。

 ある一室に、椅子に座り、パイプを咥えながら必死に机にかじりつく将校がいた。

「……全く、面倒なことになったねェ~。なんだい?HS部隊第1中隊(ここ)の中隊長になって数日で、こんな大事件が起こるなんて……。少しはこっちの都合も考えてほしいもんだねェ~。」

鈴木敬次(すずきけいじ)大佐はボヤキながら、地図にずっと何かを書き込んでいた。

「とは言っても……あんな大罪人、放っておくわけにもいかないしねェ~……。しかも、まさか‘‘あの’’近衛師団が頭を下げてくるとは思わなかったしねェ……。」

  プハァ~……

鈴木大佐はため息交じりの紫煙を吐き出した。

「しかも警視庁が特別ボーナス(懸賞金)を出すなんてねェ……。あの両川勘吉(暴走警官)を使うってことじゃぁない。東京がどうなってもいいってんのかねェ……。」

そして、地図の一部にグルッと円を描いた。

  

コンコン

「瀬島中佐、入ります。」

ノック音と共に、瀬島中佐の声が聞こえた。

「……入れ。」

鈴木大佐はダラッとした顔を引き締め、襟元を整えた。

「犯人の脱走後について報告しに来ました。」

瀬島中佐は敬礼をしながら言った。

「おいおい瀬島君、そんなに(かしこ)まらなくてもいいから。こっちまで緊張しちゃうぜ?」

鈴木大佐は笑いながら言うが……空気はとても重い。

「いえ、性分なので。……この報告書を見てください。」

鈴木大佐は張り付けた笑顔のまま、その報告書を受け取り、読み始めた。

「…………瀬島君、この報告書よくできてるじゃぁない。」

「ありがとうございます。」

「だけど、ここまでできるんだから、犯人の居場所や行動くらいすぐわかるだろう?」

鈴木大佐は報告書を机の上に投げ、咥えていたパイプを右手に持ち紫煙をまき散らす。

「……いえ。」

「そうかい?」

そう言って鈴木大佐はパイプを咥えた。

「本来であれば解説をしたほうがいいとは思うんだけど、時間が無いから……。……奴は深夜、ここに来る。……いや、正確にはここに誘導する。」

そう言って地図で丸を付けたところに鉛筆の先を置いた。

「しかし……私達には第2中隊ほどの力はありません。捕まえるのはm……」

「大丈夫だ。当てはある。」

鈴木大佐はスクッと立ち上がった。

「近衛師団を使う。こっちが工作をしておびき寄せるんだ。あとは向こうが勝手にやってくれるさ。」

再び紫煙がまき散らされる。

「ここまで高く喧嘩を売られるなんて、めったにないぜ?本当の謀略を奴に教えてやろう。……いや、奴は最期になっても気づかんだろうけど。」

 

 

 

 瀬島中佐が全員を呼ぶために退室した。それを確認した鈴木大佐は襟のボタンを外し、だらりと椅子に座った。

「……全く。瀬島の野郎は情報収集と分析能力がバカ高いのに、その後がまだできないんだよねェ……。2年、いや3年で使えるようにしなけりゃマズいねェ……。」

鈴木大佐は今まで吸っていたパイプを置き、新しいパイプに煙草を詰め始めた。

「それに第2中隊がいなくて助かったねェ……。あいつらは何をするかわかったもんじゃないしねェ~。全く、給料に対して仕事の量が多すぎるんだよねェ……。」

  シュボ!

鈴木大佐はマッチに火をつけ、そのマッチでパイプに火をつけた。

「……まぁいい。日本(俺ら)の最強戦力を叩きつけられて、訳もわからず消えちまえ。」

紫煙を囲まれながら微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は数秒気絶していたようだ。

「う、うぅ……。」

近くには気絶したワトソンがいた。球電の威力で気絶したのだろう。

「おい、起きろ!!」

俺はワトソンを揺さぶった。その時、

  チーン!!

‘‘エレベーターが階に着いた時の音’’が聞こえた。

 

 ……チクショウ、敵が降りてきたのか!?

 

エレベーターは確認できただけでも3つはある。例え、一つエレベーターがぶっ壊れても人や物の移動は普通にできる。

 

 ……上から敵が降りてきたのかもしれない。

 

 俺は急いでワトソンをコンクリートで囲まれた部屋に運んだ。

「うぅ……む、ムラタ?」

「ワトソン、ここで休んでろ。敵が来たかもしれない。」

俺はマル焦げのまま、14年式を取り出した。ワトソンはキョロキョロと周りを見る。

「あ、ありがとう……。そ、それより……アリアとリサは上だ。そこにはヒルダがいる。僕には……二人を連れてきた責任g……」

「静かにしろ。もう敵はこの階にいる。」

俺はワトソンの口をふさぎ、耳元でささやいた。ワトソンは顔が再び真っ赤になる。

「いいか、ここで休んでろ。」

  コクコクコクコク

ワトソンは頭をブンブンと振った。

「じゃぁ、行ってくらぁ。」

  カ…チャン……

俺は音がほとんど出ないようにボルトを引いた。

 

 

 

 

 

 

 俺は‘‘影の薄くなる技’’を使い音がしたほうへ向かうと……東京武偵高の制服を着た男がいた。

 

 ……こいつ、キンジか?

 

背格好はまんまキンジなのだが……雰囲気がまるで違う。

 俺は念のため、キンジ(?)の後頭部に銃を突きつけ、‘‘影の薄くなる技’’を解いた。

「手を頭の後ろへ置け。」

キンジ(?)はゆっくりと後頭部へ手を置いた。

「よし、ゆっくりこっちへ向け。」

 振り向いたその顔は……やっぱりキンジだった。

 しかし、雰囲気が全く違う。まるで……獰猛(どうもう)な獅子の様であった。

「なんだ、イブキか。」

そう言ったキンジの目は鋭い。

 

 ……念のため、カマかけとくか。

 

「キンジ、この前俺が奢ったステーキ、うまかったか?」

もちろん、顔面バレー(笑)の授業のあと約束したステーキはまだ奢っていない。

「……イブキ、何を言ってんだ?まだ奢ってもらってないぞ。」

「なんだ、本当にキンジだったのか。」

俺はそう言いながら14年式を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雰囲気が違うから誰かが変装したのかと思ったぞ。」

俺はそう言いながらエレベーターへ向かう。

「……まぁな。……ワトソンは?」

「俺が倒した。」

すると、キンジの雰囲気がさらに険悪になる。まるで……敵討(かたきう)ちに来たのに、その敵がもう死んでいるような……。

「だけど……」

  ビクン!!

キンジはその言葉で反応した。

「アリアとリサは上にいるらしいが……そこにはヒルダがいる。今さっき球電が落ちてきた。そんなことができるのは……ヒルダぐらいだろう?」

「……わかった。」

キンジの目はさらに鋭くなった。

 

 

 

 

 

 

 第二展望台へ行くエレベーターに俺達は乗り込み、さらに上の階へ行く。

 

 ……ヒルダは自信家だ。奴は指向性対人地雷(M18 クレイモア)や爆弾で一気に倒すなんてことはしないだろう。

 

 俺はそう思いながら金属物を全て‘‘四次元倉庫’’にいれ、代わりに紅槍を出す。

 師匠曰く、この紅槍は骨で出来ているそうだ。骨なら電気が通りづらいはずだ。

 

  チーン

第二展望台に着いたようだ。俺達はエレベーターを降り、しばらく歩くと……

「……キンジ、イブキ。」

アリアの声がした。俺達はその声の方向へ向くと……鉄骨の陰からアリアが出てきた。

「アリア!!」

キンジが声を上げた。

 

 ……いや、こいつはアリアじゃねぇ。

 

 ワトソンがアリアとリサをここへ置いた時……何かで二人を拘束するに違いない。起きて変な事でもされたら困るからな。

 そして、この二つが一番重要なのだが……アリアなのに胸がサラシのような物で抑えられているようで、しかも耳には禍々しいオーラを放つ蝙蝠のピアスがある。

「……理子、何やってんだ?」

  ビクッ!!

アリア(偽)はその言葉に反応した。

「……いや、だって胸がなぁ。やっぱり理子のその胸でアリアの変装h……」

「セクハラだよ!!!」

アリア(偽)はそう言った後、ハッと俺達を見る。

「「「……。」」」

 

 ……あぁ、やっぱり理子か。

 

 俺がそう思った瞬間、

  バチバチバチ!!!

「「「ぐあぁああああああ!!!」」」

(いなづま)が走り、俺達を襲った。

  バタタタン!

俺達三人は床に転がることになった。

「理子?何をしくじっているの?」

その言葉と共に現れたのは……ゴスロリ姿の大罪人(ヒルダ)であった。

「理子?お前には私にはない技術と能力があるわ?私はそれを評価し、お前を遺伝子としてではなく、我がドラキュラ家の次席に取り立てようと思っていたのに……。」

 

 ……理子が裏切った!?

 

俺は理子の目を見た。理子は……ヨロヨロと立ち上がった。

 

理子の目は……怯えていた。理子は……強制されているのだろう。いや、強制はさせられていなくても、そのような状態で交渉されたのだろう。

「理子、お前はうr……。」

キンジが口を開いたが、俺はそれにかぶせるように言った。

「理子……分かってるだろう?理子がそっちへ行ったら、俺は理子と戦わなきゃいけねぇ。」

俺は紅槍を杖代わりにし、ヨロヨロと立ち上がった。

「俺は理子ともう戦いたくねぇ。それに……これ以上そいつといれば、日本にすらいられなくなる。お前だってわかるだろう?」

俺は紅槍に寄りかかりながら……なんとか立っている。

「理子、もう過去を振り返ることはやめなさい。そのピアスは……ドラキュラ家の正式な臣下の証。外そうとしたりすれば……私が一つ念じれば弾け飛ぶ。そうなれば、中に封じた毒が傷口に入り……10分で死ぬわ。これはうr……」

「道理で醜いピアスだぜ。テメェのような化け物気取りの小悪党には十分似合う。だけど理子には似合わんなぁ。」

俺はヒルダの口上に被せていった。ヒルダは俺を睨む。

  バタン!!

 

俺は不自然にならないように、ワザと倒れた。 

「イブイブ……。」

理子は……無表情の能面を被ったまま、俺に言った。

「理子も……色々考えたんだよ?」

理子は無表情の能面のままだが……目は助けを求めている。

「理子はもともと、怪盗の一族。イブイブたちとは違う……闇に生きる、ブラドやヒルダ側の人間だったんだよ。それがいつの間にかイブイブ達のそばについていた。」

 

 ……全く、本心じゃねぇくせに。

 

 俺は二人に見えないように銃剣を取り出し、地面にルーン文字とヒエログリフを彫っていく。

理子は……目に涙が浮かんでいた。しかし……理子は気が付いていないのか、無表情の能面をつけたまましゃべる。

「ヒルダは闇の眷属。生まれながらの悪女だよ。でも……自分を貫いてる。ブラドが捕まって、最後のドラキュラ家になったのに…‥誰の庇護もなく、戦い続けてる。理子よりもずっと自分が何者か分かってる。それに……」

「もういい。」

 

 ……仕掛けは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は銃剣をしまい、ゆっくりと紅槍を持って立った。

「そんな表情で言われても……何にも説得力はねぇよ。」

俺はゆっくりと理子に近づく。

「それに生まれなんて関係ねぇよ。俺のご先祖様は江戸っ子になる前は、新潟で米作ってたってよ。その末裔が血生臭い軍人やってるんだぜ?一族云々言ってたら俺は農業高校に通っているはずだ。」

俺は理子の目を見た。

「あと……そんな目でしゃべるなよ。涙が出てるぞ。」

理子はやっと泣いていることに気が付いたようだ。

「あっ……」

俺は理子の目の前まで歩いた。

「……理子。こんな枷なんていらねぇだろ?」

俺は理子の耳についているピアスに触れた。

「……!?な、何故!?」

「対化け物用の結界だ。魔術関係は一切使えねぇぞ。」

俺はそう言ってピアスを外し、

  グシャ!!

それを踏み潰した。

  ブロロロロ……

「どうする?枷が外れても……向こうに着くか?」

「……イブイブ、酷いよ。」

理子はそう言って涙をぬぐった。

「死を覚悟してたのに……その決意を無駄にするんだもん。計画が台無しだよ。」

理子はそう言って拳銃を持ち、ヒルダに向けた。しかし、理子の足は……ガタガタと震えている。

  ブロロロロ……

「……よく言われるな。」

俺はそう言って紅槍をヒルダに向けた。

  ブロロロロ……

「おいおい……俺を忘れるなよ。」

キンジもそう言いながら拳銃を構えた。

  ブロロロロロ……

「そう……理子、あなたもムシケラと同じなのね。」

ヒルダ挑発的な笑みを浮かべながら棺桶を踏み台にし、

  バサッ!!!

大きく羽ばたき、照明をバックに3mほど飛び上がった。

  ブロロロロロ!!!

 

 ……さっきから何の音だ?

 

バイクの音のようだが……何故か近づいてきている。

 

 ……ここは東京スカイツリーの展望台だぞ?まさかバイクが来れるわけないしな。

 

 

 

 

 

 

 

俺は羽ばたいたヒルダに向かって槍を振り上げた。その瞬間、

「オラオラオラァアア!!!」

「いたぞ!!あれが犯人(ボーナス)だ!!!」

白バイに(またが)った二人組が展望台の外側(!?)から飛び出てきた。

  ギャリギャリギャリ!!

「ぎゃぁああああ!!!」

 ヒルダは空中で白バイに轢かれ、その白バイの運動エネルギーをもらい地面に激突した。そのままヒルダは何回もバウンドし、鉄骨にぶつかってやっと止まった。

 

「「「…………。」」」

 

俺達三人は……状況が理解できず、固まっていた。

 白バイも着地し、任侠漫画の主人公のような運転手が降りると、

「……せ、せんぱ~い。こんなことやって大丈夫なんですか~?」

いきなりナヨナヨしだした。

 

 ……え?本田さん?

 

 本田さんは葛飾署の交通機動隊に所属する白バイ隊員で、よく両川さんの下っ端としてコキ使われている。そしてバイクのハンドルを握ると人格や顔つきが変わり、ヤクザもビックリなぐらい攻撃的になる。

 ついでに、時々アクア・エデンのカジノに両川さんが行くときの足にされる。

 

 

亀有の平和のため、お前を逮捕する!!!(金金金金金金金金金金金金!!!)

両川さんは本音をダダ漏れにしながら、白バイから飛び降り、履いていたサンダルを飛ばした。

  ヒューーーーン!

  ベキッ!!

サンダルはヨロヨロと立ち上がろうとしたヒルダの眉間に当たり、ヒルダは転倒した。

  ヒューーーーン!!

「おりゃぁああああああ!!!」

両川さんは一気に距離をつめ、ヒルダと取っ組み合いを始めた。

  ヒューーーーン!!!!

 

 ……さっきから聞こえる複数の風切り音はなんだ?まるで爆弾や砲弾が落ちてくる音に似ているが……

 

 俺が疑問に思った瞬間、

  ドスドスドスドス!!!

「ぐぇええええ!!!」

「ゴフッ!!」

空から‘‘気をつけ’’の姿勢のままで、兵士たちが十数人‘‘文字どおり’’降ってきた。そのうち軍刀を()いた下士官は両川さんとヒルダの上に勢いよく落ち、二人をクッション替わりにしている。

 

「ヒャッハァアアアアアアアア!!!」

「ウヒャヒャヒャ!!!」

「畜生風情ノ化ケ物ガァアアアア!!!」

「死ネ、死ネェエエエ!!!」

「キィィェェエエエエ!!!」

 

 

 ……まさか、近衛師団!?

 

 ヨロヨロであちこち汚れているが、確かにこの軍服は近衛師団の物だった。

 近衛師団の兵たちは、『むしろお前らが吸血鬼じゃねぇの?』と思うほど目が充血している。その真っ赤な眼球で獲物(ヒルダ)を捉えると、一目散にそれに接近していき……

  バキ!!ベキ!!グシャ!!ベチャ!!

獲物(ヒルダ)にひたすら攻撃を加えていく。

 

「「「…………。」」」

 

 俺は……開いた口が塞がらなかった。

 視線を感じたので、俺はその方向へ向くと……さっきとは違う意味で助けを求める目をした理子がいた。

 

 ……ごめん、俺もどうすればいいか分かんねぇよ。アニメや漫画なら、ここは俺たち三人が戦って勝利した後、軍や警察が来るもんだろ?

 

「わしのボーナス!!!」

近衛師団に踏まれ、その後に蹴られて転がってきた両川さんは立ち上がり、近くに置いてあった棺桶を思いっきり投げた。

  チュドーーーーン!!

  ベキベキベキ!!

あの中身は爆弾だったのかは分からないが、両川さんが投げた棺桶は兵とヒルダのいる場所に着弾し、大爆発を起こした。

「待てぇええええ!!!」

そして両川さんは突撃していった。

 

 

「……うん、リサとアリアを探そう。」

「うん……。」

「……あぁ。」

俺達三人は現実から目をそらし、当初の目的であるリサとアリアを探した。

 

 

 

 

 

 

 二人はすぐに見つかった。俺達は拘束を解き、二人を起こそうと……

  ベキベキベキ……!!!

その時、異様な音と共に床が傾き始めた。

「な、なぁ……」

「おい……嘘だろ?」

「アハハ……」

ゆっくりとだが……確実に床が傾いている。

「ム、ムラタ!!」

ワトソンが体を引きずりながらやってきた。

「な、何が起こってるんだい!?」

「俺も分かんねぇよ!!」

 

 ……というか、わかりたくもねぇよ!!

 

このやり取りの間、両川さんと近衛師団の戦いは続いている。

  ベキベキベキ!!!

「「に、逃げるぞ!!」」

俺とキンジは気絶している二人(リサとアリア)を背負い、エレベーターへ走ったのだが……

「べらんめぇ!!この野郎!!」

「クソッ動かないなんて!!」

電気回路が逝かれたのか、エレベーターはウンともスンとも言わない。

 俺はエレベーターの扉に手を引っかけ、力任せに引っ張る。

「うぉおおおお!!!」

ドリアンでできた傷口が悲鳴を上げるが無視する。

 扉を開けると銃剣を2本取り出し、扉が閉まらないよう、ストッパー代わりにした。

「キンジ!!先に行け!!」

すると、キンジの表情はこわばった。

「……マジでやるのか?」

「それ以外にお前は方法があるのか?」

 

 ……俺は方法があるが、お前はできねぇだろ?

 

「……わかった。」

キンジはワイヤーでアリアを背中に固定し、エレベーターのワイヤーにしがみついた。

「うわぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……

  

 

 

  

  ベキベキベキ……ギギギギ!!!

キンジの悲鳴が聞こえなくなった時、大きな異音と共に一気に傾き始めた。

 

 ……ヤバい!!倒れる!?

 

俺はベルトのワイヤーを使い、リサを前で固定した。

「……イブイブ、もしかして」

理子は、(さと)った様な顔で俺に聞いた。

「理子は慣れてるし大丈夫だろ?」

ワトソンはこのやり取りを不思議そうに見ていた。

「……?ってうわぁ!!」

「……やっぱりかぁ」

 俺はそのワトソンと理子を抱え、エレベーターとは逆方向、真っ暗な闇夜が広がる外側へ走り出した。

「ちょっと、ムラタ!!何するんだい!!」

「うるせぇ!!ジタバタすんな!!」

  ギギギギ!!

東京スカイツリーは倒れていく。

 

  ダッ!!

俺は3人を抱えたまま、世界最大の巨大都市(東京)の夜空へ飛び出した。

「「「うわぁああああ!!!」」」

 

ズドーーーーン!!!

 

 俺達の後ろで、とうとうスカイツリーは伐採された(倒れた)ようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達が着地してしばらくすると、サイレンの音が聞こえてきた。警察や消防が来たのだろう。

 

「こらぁあああああ!!!両川ぁあああああああああ!!!」

この声は……大田部長!?

「ゲェ!!!部長!!!」

近くにいた両川さんはその声で立ち上がり、走って逃げ始めた。

「両川ぁああああ!!!貴様という奴はぁああああ!!!」

「ゴ、ゴメンナサーーーーイ!!!」

 

 

大田部長と両川さんの鬼ごっこが始まった時、もう一つ声が聞こえた。

「まてぇえええ理子ぉおおお!!!!」

パトカーから体を出し、拡声器で叫んでいる銭形警部がいた。

「げっ!!!銭形の叔父様!!」

理子の顔は歪んだ。

「逮捕だぁあああ!!理子ぉおおお!!!」

「イブイブ!!逃げるよ!!」

「え!?なんで俺もなんだよぉおおおおお!!!」

理子は俺の襟首を持ち、走って逃げだした。

 

 

 

「待てぇえええ!!!両川ぁあああ!!!」

「待てぇえええ!!!理子ぉおおお!!!」

 

「「「吸血鬼なんてもうコリゴリだぁああ!!!(だよ!!!)」」」

 

 




 巨大都市(メガシティ)とは、都市圏人口が1000万人を超える都市のことを言います。実際、日本の首都圏は約3800万人で世界一多いそうです。

 
 球電(きゅうでん)(球電現象)とは、空中で発光体が浮遊する自然現象、あるいはその発光体だそうです。自分も調べて初めて知りました。

 
 鈴木敬次大佐は南機関の機関長をモデルにしよう……としましたが、人物像が分からなかったため、名前だけモデルになってしまいました。人物像は空想です。

 以前書きましたが、両川さん(両川勘吉)は某漫画の不良警察官がモデルです。大田部長もその漫画の人物をモデルにしています。


  Next Ibuki's HINT!! 「ハッスルマッスル」
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。