少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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 前回、『Next Ibuki's HINT!! 「義妹(いもうと)」 』と書きましたが、「鍋」に変更いたしました。誠に申し訳ありません。
 えぇ、そこまでいかなかったんですよ。

 
 プロットの大幅変更と学校の授業や課題のせいで、だいぶ時間が空きました。お待たせして申し訳ありません。


お前も食べるんだから……

「「「「かんぱ~い!!!」」」」

 

俺とジョニー・マクレー(おっさん)、それに鈴藤・藤崎・音野・安浦の蝦夷テレビの4人、黒髪の美女と金髪の美幼女(チビ)、そしてカラフルな髪の色をした5人のアイドル(?)達は、その声と同時にグラスを高々と掲げた。

 

 

 会場はクリスマスの装飾が施された洋館。外は吹雪いているようだが、会場はとても暖かい。

 

  Oh, the weather outside is frightful……

 

ヴォーン・モンローの‘‘Let it snow! Let it snow! Let it snow!’’がBGMで流れ、(すい)な雰囲気を(かも)し出す。

 

「いやぁ~とても華やかですなぁ~」

 

蝦夷テレビの‘‘髭’’はケーキをガツガツ食べながら(つぶや)いた。

 

「女の子なんて出ないからねぇ~」←鈴藤

「いつも出るのはおっさんだけでしょ?今日は華があるじゃない」←安浦

「……(コクコク)。」←音野

 

鈴藤・安浦は美味そうにワインを飲み、音野さんはカレーを飲みながら(間違いに非ず)カメラを回す。

 

「……ったく。何だってこんなところに……。」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)はそう言ってタバコをふかしているが……頬は緩んでいる。

 

「おっさん、なんだかんだ言っても鼻の下が伸びてるぞ。マリーさんはいいのかよ?」

 

俺はそう言ってラム酒の瓶を飲み干した。

 

 ……銃弾やナイフが全く飛んでこない美少女達が大集合しているんだ。目の保養になる。

 

俺はそう思いながら女の子たちの会話を盗み聞きする。

 

「初めまして!!まんまるお山に(いろどり)を!!丸山彩でーす!!」

 

 髪がピンク色の少女はそう言いながら変なポーズをとった。

 

「の、ノンナ!!」

「はい、カチューシャ。」

 

すると金髪の幼女(チビ)は黒髪の美女に肩車してもらい、そのまま自己紹介をする。

なんとまぁ、微笑ましい彼女たちの交流だろうか。

 

  バタタン!!!

 

「は?」

 

 

その時、洋館の壁は崩れ落ち……吹雪の中に立たされてしまった。俺は周りを見渡すと……みんな口から ‘‘何か’’を垂れ流しながら倒れていた。

 

「やぁ村田くぅ~ん」

「しぇ、シェフ和泉……」

 

俺の目の前に、シェフ和泉が立っていた。彼は‘‘何か’’を盛った皿を手にしている。

 

「パイ食わねぇか?」

「う、うわぁあああ!!!!」

 

そう言ってシェフ和泉は……俺の口に無理やり‘‘何か’’を詰め込み………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イブイブ、イブイブ!!起きて~!!!」

 

理子はそう言って膝の上で寝ている犠牲者(イブキ)を揺さぶる。

 

「いやぁ~よく眠ってますなぁ~……」←藤崎

「パイ二つ食べたくらいで気絶するなんて……根性が足りないんじゃないかい?」←和泉

「いやいや!!パイ食べるのに根性が必要ってのはおかしいよ!?」←鈴藤

「……そろそろ飛行機出るんで先に帰ります。お疲れ様です。」←安浦

「「「「お疲れ~」」」」

 

安浦はそう言って車から降りた瞬間……

 

「うわぁあああ!!!!」

 

 ベキッ!!!

 

「「ッ~~~~~!!!!」」

 

飛び起きたと同時に、額に強い衝撃と激痛が走り……俺は悶絶(もんぜつ)することになった。

 

 

 

 

 

 

 痛みが多少引き、俺は額を押さえながら周りを見ると……そこはハイエースのようなワンボックスカー内だった。

 その車内には蝦夷テレビのメンツ(和泉、安浦、鈴藤、藤崎、音野)が爆笑している。

 

「うぅ~…………」

 

俺の隣には、理子が(うめ)きながらアゴを押さえている。時計を見ると……夜の7時。

 

「……あ、あの。なんでここに?」

 

目の前には『東京国際空港』という文字が書かれた建物がある。

 

「俺は確か……武偵高で料理をして……。その後……そ、その後……」

 

俺は何があったかを思い出そうとすると……激しい頭痛と吐き気がし、冷汗が止まらない。心臓が不規則に鼓動を打ち、息が荒くなる。平衡感覚が失われていき、視界が歪む。

 

「おめぇのせいでトラウマになってるじゃねぇか!!」←藤崎

「……い、いやね。ぼかぁここまでだとは思わなかったよ。」←和泉

「あれね……人間が食べられるものじゃないよ……本当に」←安浦

「い、いや……思い出さなくていいから……」←鈴藤

「大丈夫かい?」←音野

 

 

 

 俺は思い出すのを諦めると、さっきまでの体調不良は一気に消えた。こんな体調は初めてだ。

 

「で、なんでここにいるんですか?」

 

 ……何故、俺と理子は羽田なんかにいるんだ?

 

「実はですねぇ~。これからロケがあるので序盤だけ手伝ってもらえないかなぁと思いまして……」

 

 藤崎さんは和泉さんを車の外に追い出した後、説明を始めた。外では和泉さんがぼやいているが……無視する。

 

「明日、用事があるんで……そこまで長くは付き合えませんよ?」

「あ、イブイブ。それは大丈夫だよ?」

 

理子はそう言って、ガサゴソと車の荷物をあさり……

 

「これを引くだけでいいって。」

 

‘‘はがき(?)’’が大量に入っている透明な箱を出した。

 

「え?」

 

俺は思わず藤崎さんを見た。藤崎さんはコクコクと顔を上下に振っている。

 

 ……え?何のロケなの…これ?

 

 

 

 

 

 

 

「さて、和泉さん。我々の恩人である『武偵高の生徒さん』に料理をお見舞いしたのですが……そっちがメインではございません!!我々は旅に出ます!!」

「僕はもう満足だから帰ってもいいかい?あのヒゲも東京名物の甘味を大量に買い込んでるんだよ?」

「アッハッハッハ!!」

 

鈴藤さんと和泉さん、藤崎さんの掛け合いが始まり、その様子を音野さんが撮っていく(安浦さんはラジオがあるために帰った)。

 

「‘‘木曜どうでぃ’’を長い間続けてますが……我々、何か忘れていることがあるんじゃないかと。」

 

   ダダン!!

  『忘れていること』

 

 ……今、テロップかなんか出ただろうなぁ

 

俺と理子は音野さんの後ろに待機している。……実は他のお客さんにジロジロ見られる。

 

「‘‘木曜どうでぃ’’と言えば旅番組です。」

「もちろんです。」

「もちろんですよぉ~!!」

 

鈴藤さんの言葉に二人は(うなづ)く。

 この時、俺はこの番組が旅番組であることを初めて知った。

 

「旅と言えばやっぱり……美しい風景。美しい風景を楽しみたいわけですよ。」

「……やっとこの番組は、そこに気が付いてくれたんだねぇ。僕は一番最初から言ってましたよ?『なんで乗り物しかのらないんだ』って……。今までがチャンチャラおかしかったわけだよ。唯々(ただただ)乗り物に乗ってね、疲れたタレントを映して、ヒゲが笑うなんて……旅じゃないんだよ。ぼかぁ君たちのk……」

 

和泉さんは今までの愚痴を吐いているいるが……俺は気が付いた。

 俺は車に戻り、透明な箱に入っている‘‘はがき(?)’’を一枚とり、裏返した。そこには……『美しい棚田の中に、よくわからないアートが置かれている写真』があった。隅には『新潟県十日町市 大地の芸術祭』と小さく書かれてある。

 

 ……この写真の場所に行くのか!?

 

中には小笠原諸島の写真もある。たった3日で小笠原に行って帰れるのか!?

 

 

 

「イブイブ……そろそろ行くよ?」

 

理子が俺の肩を叩き、伝えた。

 

「わかった。」

 

まぁ、俺は行かないし……別にいいか。

 

 

 

「今回はですね。お見舞いしてしまった彼らに最初の一枚を引いてもらおうと思います!!」

「いえ~い!!」

「あ、どうも。」

 

鈴藤さんの紹介の元、俺と理子はカメラの前に躍り出た。

 

「こいつの料理、酷かっただろ?」

 

藤崎さんが聞いてくる。

 

「アハハ……イブイブはともかく、キー君はヤバいらしいから……」

「理子はトイレへ何度も往復していt……痛い、痛いから!!」

 

  ベキ!!バキ!!ドスッ!!

理子は本気で俺を殴り続ける。

 

「アッハッハッハ!!」←藤崎

「お、女って怖いなぁ~……」←和泉

「流石にデリカシーはないけど……村田君は尻に轢かれそうだねぇ~」←鈴藤

 

 

 

 

「さて、では気を取り直して二人に引いていただきましょう!!」

「りょ~~かい!!」

「…………はい。」

 

鈴藤さんの言葉に、笑顔いっぱいの理子とボロボロの俺(後で確認したら、顔に青あざができていた)が透明な箱に手を突っ込んだ。

 二人で『絵はがき』を混ぜながら、「あーでもないこーでもない」と選んでいると……

 

「流石に『時計台』は抜いてあるだろ?」

「もちろん入ってます!!」

 

和泉さんの言葉に、藤崎さんは威勢よく返事をした。

 

「それ引いちゃったら……ただ‘‘武偵高の皆さん’’にお見舞いして帰るだけですよ!?」

「我々もね、シェフ和泉の攻撃で満身創痍ですから……。時計台を引いたら…さすがの僕達も企画、辞めちゃいますよ!!」

 

鈴藤さんと藤崎さんはそんな冗談を言いながら笑い合う。

 

「イブイブ、これがいいんじゃない?」

「……紙質もいいし、これにするか。」

「じゃぁ、いくよ~」

「「せーの!!」」

 

  ダン!!

俺達が引いた『絵はがき』は……

 

「「「…………アッハッハ!!!」」」

 

  『雪化粧の札幌時計台』

 

 ……あ、やっちまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて……一悶着会った後、蝦夷テレビの皆さんは札幌へ帰った(旅立っていった)

 

 

 次の日、俺はフリーなのでみんなと文化祭を楽しもうと思っていたのだが……異常なほどの腹痛が発生。血便まで出たのだが……何とか後夜祭までには回復することができた。

 

 ……おっかしいなぁ?俺は昨日そんな変なのは食べてないはず……はず……

 

 頭痛と吐き気がしたため、それ以上思い出すことは中止する。

 

 

 

 

 さて、武偵高(ここ)では文化祭の打ち上げで‘‘武偵鍋’’という物を囲むのが習慣だそうだ。

 ‘‘武偵鍋’’とは……各自食材を持ち寄り、それをまとめて煮る。要はただの闇鍋。チームの親睦を深めるために毎年、必ずチームごとで行わなければいけないらしい。ここまでだと、楽しそうな鍋大会なのだが……

 

 普通の具材を持ってくるアタリ担当、普通は入れない具材を持ってくるハズレ担当、この二つに分かれて具材を持ち寄るそうだ。ついでに、持ち寄る具材は直前まで秘密にするそうで……

 

 ……うん、馬鹿じゃねぇの?

 

苦しみを共有し、親睦を高めるのは理解できる。軍ではよくある手法だ。しかし……食べ物はマズいだろ、食べ物は……。

 

 

 

 

 

 

 さて、今回のアタリ担当とハズレ担当、そして調味料担当(奇数人の場合のみ有り)だが……

 

アタリ担当

   ・ネロ

   ・牛若

   ・エルキドゥ

 

 

  ハズレ担当

   ・イブキ()

   ・ニトクリス

   ・リサ

 

 

  調味料担当

   ・理子

 

 

  特別ゲスト(一人の打ち上げは寂しいだろう……という事で道連れ(特別参加)

   ・ワトソン

 

この8人で‘‘武偵鍋’’を囲むのだが……我々『COMPOTO』常識人すべてがハズレ担当なのだ。

 正直言って……牛若は万に一の確率で普通の具材を持ってきてくれるかもしれないが、ネロ・エルの二人は一切期待できない。

 それに加え……調味料係が理子なのだ。理子が自重するとは思えないので……道連れ(衛生兵)としてワトソンを連れてきた。ワトソンは嬉しいやら恥ずかしいやらで頬を赤めていたが……うん、ゴメンナサイ。

 

 

 

 

 はやてとウォルケンリッター・玉藻を急いで帰し(犠牲者を減らすため)、体育館へ向かうと……全員集まっており、リサが鍋を軽く炒めていた。

 

 ……え?炒める?鍋だろ?

 

「あ、イブキ様!!」

 

リサは俺に気づいたようで大きく手を振る。すると、彼女の胸も大きく……いや、何でもない。

 

「汁、少なくないか?」

 

土鍋で具材を炒めているのだが……大丈夫か?

 

「あの……理子様がだし汁を少なくするようにと言われました。」

 

 ……え?あの理子が?そんな指令を!?

 

俺は理子を見ると……‘‘ムフー’’豊満な胸を張っていた。

 

「何でも、火を入れた後に煮るとおっしゃっていましたよ?」

 

リサはそう言って水筒を取り出した。その中にはだし汁が入っていた。

 

 

 

「イブイブも来たことだし、そろそろやるよぉ~」

 

理子はそう言って瓶を取り出した。その瓶には……『SPIRYTUS』。……す、スピリタス!?

 

 スピリタスはポーランド原産のウォッカだ。こいつのアルコール度数は96度。世界最高純度の蒸留酒であるため、火気厳禁である。

 

「え~まずはですね、フランベします。(和泉の声を真似る)」

 

理子はそう言ってコンロの火を切り、スピリタスをドバドバ入れ、ライターで火をつけた。

  ボン!!!

巨大な火柱が上がった後、メラメラと火は燃える。他のチームは俺達を見てギョッとしている。

 

「くふふ……!!火は消さないとねぇ~」

 

理子は‘‘生クリームのスプレー’’5本で消火をしようと試みるが……余計に火の勢いが強くなる。

理子は鍋に(ふた)をして消火をした。そして黄色のボトルと小さな小瓶を取り出し……

 

「ここにですね、よくわからないスパイスとレモンを入れます。(和泉の声を真似る)」

 

ドバドバッと‘‘よくわからない文字(インドかタイか?)で書かれたスパイス’’とレモン汁を鍋に投入する。

 

「「「「「「……」」」」」」

 

我々『COMPOTO』(+1名)は口がふさがらない。

 

「だし汁ちょ~だい!!」

「は、はい!!」

 

理子は水筒を受け取り、だし汁を鍋にぶち込むと……色は茶色と黄色に……これ、人が食えるものなのか?

 

「ぼ、ボク……用事を思い出しちゃったよ!!今日は招待してくれてありがとう!!じゃぁ!!」

「おい待てワトソン!!」

 

俺は帰ろうとしたワトソンの手を掴んだ。

 

「む、ムラタ!!離してくれ!!ボクはまだ死にたくない!!」

「何のためにお前を呼んだと思ってるんだ!!お前は道づr……衛生兵としても呼んだんだぞ!!」

「今『道連れ』と言おうとしただろ!!ボクは帰らせてもらう!!」

「待て待て待て!!!」

 

俺はワトソンの腕を思いっきり引いた。するとワトソンの軽い体は簡単に動き、俺の胸元にストンと収まる。ワトソンと俺の目が合った。

 

「お前がいなきゃ……ダメなんだ(道連れ&衛生兵として)!!!」

「え…………」

 

ワトソンの頬は赤くなり……そして、耳まで赤くなっていった。

 

 ……あれ?ワトソン何か誤解してるんじゃねぇか?

 

 ワトソンは顔が真っ赤のまま、その場にペタンと割座(女の子座り)をした。そのままモゴモゴと独り言を呟いている。

 

「「「「「「…………。」」」」」」

「ッ……!!」

 

俺は殺気を感じ、その方向へ向くと……『COMPOTO』全員からの殺気であった。

 

「…………味が足りないので、もう少し追加します(和泉さんの声真似)」

 

理子はそう言いながら笑顔で(目は笑っていない)レモン汁・スパイス・白ワインをドクドクと加えた後……

 

「く~さ~や~液!!!!」

 

異臭を放つ濁った醤油の様な液体を鍋の中に投入した。鍋からはくさや特有の臭いを放ち、体育館にその匂いが充満していく。

 理子はその匂いをモロに喰らっているはずなのに……顔色一つ変わっていない。

 

「くふふ……!!!そして~シュールストレm……」

「もういい!!もういいから!!」

 

理子は‘‘黄色と赤で塗装された缶詰’’と缶切りを持っていたので、俺は慌てて拘束した。

 

「理子待てって!!これ以上はマズいから!!」

「イブイブ……」

「な、なんだよ……」

「人間はね……意地でもやらなきゃいけないことがあるんだよ!!!」

「こんなことで意地張るなよ!!!」

 

 

 

 

 

 何とか理子を諦めさせた後、リサは塩と胡椒・砂糖を使って何とか味を整え……

 

「すいません……リサには、これが精いっぱいです……」

 

そう言って、器に全員分を平等によそった。俺の器の中には……よくわからない肉(2種類)・丸焦げの御飯・焦げた何かが入っていた。臭いをかぐと……激しい異臭の中にアルコール臭が混ざっている。

 俺は恐る恐る箸をつけ、口に入れると……

 

「……あれ?」

 

 

 ……確かにくさやの激臭とアルコール臭さがあるが、味はそこまでマズくはない。奇跡的に俺達の持ってきた食材がお互いに邪魔し合っていないのだろうか……食べれる料理だ。

 

「リサって凄いんだな……」

 

俺は思わず言った。だってあんな混沌とした(カオスな)料理を塩・胡椒・砂糖だけで食える物にしたなんて……

 

「いえいえ……私はほとんど手を加えてませんよ!?」

 

リサの仕草を見る限り……謙遜ではないようだ。俺は思わず理子を見ると……

 

「イブイブ~褒めてもいいんだよぉ?」

 

 

 ……なんか(しゃく)だな。

 

「そう言えばみんなは何持ってきたんだ?」

 

俺は理子を無視しながら、インスタントのマーボー丼の袋を出した。鍋に入れても辛うじて食べれるだろう(おじやのようになると思って)と思っていたのだが……まさか最初にフランベされるとは誰が思っていただろうか……。

 

「うむ、余はロマーノチーズを持ってきたぞ!!」←ネロ

「私は‘‘ちらがー’’とやらを持ってまいりました!!」←牛若

「ボクはコレ。(エンドウ豆とその他野菜を見せる)」←エル

 

意外なことに、不安な3人(アタリ担当)が(まだ)真っ当な物を持ってきているとは……予想外だ。

 

「私はハト肉を……」←ニト

「リサはマッシュポテトを……」←リサ

 

 

 ……あれ?以外にみんな、まともな物を持ってきているぞ?

 

「え~、みんなつまんな~い」

 

理子がそう言って不貞腐(ふてくさ)れる。

 

 ……こいつがいなければ美味い鍋が食えたのか

 

何故だかわからないが……少し腹が立ってきた。

 

「……え?イブイブ?ど、ドウシタノ?」

「いやぁ~な、食いもので遊ぶ悪い子にはお仕置きが必要だなぁ……と。」

「ちょ……い、イブイブ?今日はお祭りだよ!?少しぐらい羽目(はめ)を外してm……い、イタイイタイ!!!」

 

俺は理子にヘッドロックをかました。

 

「料理対決の料理よりはまともじゃん!!!」

「あっちは悪意がないから怒れねぇんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ごった煮(武偵鍋)食べ(処理し)終わった後、ネロのリクエストにより‘‘トマト鍋’’をつつくことになった。

 無論、鍋をつつきながら酒盛りに発展。ほどほどに楽しんだ後、解散となった。

 

 その翌日11月1日、文化祭の片付けのため俺は学校に行ったのだが……片付けは1年生の仕事という事を初めて知った。お役御免(やくごめん)な俺はさっさと退散しようと……

 

「お!?村田ぁ~、ワザワザ手伝いに来るなんて良い先輩やなぁ~!!」

「……え!?い、いや……偶然学校に用があっただけで……」

 

蘭豹に捕まってしまった。俺は何とかやり過ごそうと……

 

「え!?本当ですか!!」

「流石は村田先輩!!」

「ありがとうございます!!」

「村田先輩、一生ついて行きます!!」

「さすが村田先輩!!そこにシビれる!あこがれるゥ!」

「…………お、おう。」

 

出来なかったよ。

 懇願する様な瞳を持つ、大量の1年生たちに‘‘NO’’という事ができず……結果、夕方まで俺もこき使われることになった。

 

 

 

 

 

 俺は片付けでボロボロになった後、学校から寮へ高機動車(くるま)で帰っていた。憎たらしいぐらいに強い夕日の光が運転を阻害してくる。

 

 ……サングラス、壊しちゃったしなぁ。

 

この前、俺が間違えて踏み潰してしまった。思わずため息が出る。

 高機動車(くるま)を駐車場に置き、階段を登る。自分の部屋の前に着いた時……

 

  パパパーパーパーパッパパ……!!!

 

携帯から‘‘艦〇れ’’の『昼戦』が流れ出した。この音となると……神城さんか。

 

「はい、村田です!!」

「村田君!!すぐに武装して1時間以内に目黒地区に来てください!!復唱はいりません!!」

 

電話の主は神城さんだった。神城さんは焦りが3割、興奮が7割という荒ぶった声だった。

 

「は、はい!!!」

「急いできてください!!!」

 

  ツーツーツー……

 

 ……神城さんのあの興奮具合から考えるに……本格的に始めるのか、極東戦役(戦争)を……。しかし、あの焦り度合いはなんだ?どんな無理や無茶な状況でも、どんな予想外・想定外が起こっても笑って過ごしていた化け物が……何に焦る?

 

 俺は急いで部屋に戻ると、戦闘服に着替えながらこの状態を考察する。

 

 ……もしかして、敵による侵攻か!?日本の総人口1億人のうち、首都圏(東京=横浜)で3800万人……。約4割弱がいることになる。それに加え、日本の経済・政治が一極集中している。ここを攻められ、落とされたりしてみろ……日本は死ぬぞ!?

 

 俺は部屋から急いで出て、一気に1階まで飛び降り、車に飛び乗った。エンジンをかけ、サイレンを鳴らす。

 

 ……いや、本格的な侵攻だったらあれ以上焦っているはずだ。となると……

 

 高機動車は一気に加速し、目黒へ向かう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 電話から30分もしないで目黒地区についた。すでに門の前で第二中隊第一小隊(辻さんたち)が待っていた。

 

「以外に早いじゃねぇか。」

 

鬼塚少佐は腕を組みながら、威圧感を出しながら言う。

 

「少しは背が伸びたんじゃねぇか?イブキ大尉殿?…いや、イブキ武偵?」

「田中さん、揶揄(からか)うのは止めてくださいよ……」

 

田中さんはそう言って俺を揶揄(からか)う。

 

……ッケ、この中で一番背が低いのは俺ですよ。

 

俺はそう思いながらも、久しぶりのこの空気に懐かしさを覚えた。

 

「では……我々希信達は全員そろった。」

 

辻さんの一言によって、隊の空気が一気に締まる。

 

「希信達の前に客が来た……手厚く‘‘おもてなし’’しよう!!!」

「「「「「「ハッ!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 俺達はトラックに乗せられ、品川方面へ向かっていた。トラックの中、第一中隊の藤原さんが連絡将校として来ており、今回の件の説明を開始した。

 

「第一中隊の藤原少佐です。今回の敵は『ジーサード・リーグ』、‘‘GⅢ’’をトップとした独立組織で、今はアメリカに飼われています。ですが……今回は独断で動いているようです。‘‘GⅢ’’についての情報ですが……4年前にロスアラモスの被験者を第二中隊(皆さん)が救出した時の生き残りの一人です。今はアメリカの最先端科学を集約した武器を使い、戦うそうです。」

 

 藤原さんはそう言った後、写真付きの書類を渡してきた。書いてあるのは‘‘GⅢ’’やその部下の写真・経歴だ。その書類を見ると……アメリカやロシアの特殊部隊出身がとても多い。

 

「また、近々違う複数の組織が攻勢をかけてくるそうです。その時にはまた皆さんの力を借りることになりますが……よろしくお願いします。」

 

藤原さんがそう言って頭を下げたと同時に……トラックはゆっくりと止まった。目的地に着いたようだ。

 俺は音が出ないようにトラックから降りると……目の前には成金趣味が漂うビルが目の前にあった。近くには見慣れたクラウンが置いてある。

 

「敵はこのビルの七階、屋外劇場にいます。……では、皆さんの武運を祈ります」

 

藤原さんはそう言ってトラックに戻ろうと……

ガシッ!!!

藤原さんの肩に……佐官連中(化け物共)の手が置かれた。

 

「ん?藤原は何でトラックに戻ってるんだ?」←鬼塚

「連絡将校なんですよね?我々の事は詳細に伝えてもらわないと」←神城

「ここまでついてきたのだ。希信達と一緒に行きたかったのだろう?」←辻

「え!?……いやいやいや!!!僕は戦闘服じゃなくて、ただの軍服ですよ!?装備だって刃引きされた軍刀と拳銃だけですし!?」←藤原

 

藤原さんは顔を真っ青にし、佐官連中(化け物共)から逃げようとするが……

 

「第一中隊もある程度訓練してんだろ?()ける()ける」←鬼塚

「なぁ~に、勇気と気合があればどんなことだってやれますよ」←神城

「大和魂さえあれば弾ぐらい避けられる!!希信達の後ろにいればいいのだ!!どうにでもなる!!」←辻

「それで何とかなるのはあなた達だけですって!!僕は戦闘じゃなくて情報収集や工作が専門ですから!!……いや、ほんと足手まといになって野垂れ死ぬだけですから!!む、村田ぁ!!助けてk……」←藤原

 

藤原さんは懇願するように俺を見てくるが……

 

「……無理です。勘弁してください。……今度美味い物ご馳走します。」

 

俺はそう言って藤原さんに合掌。どうか……藤原さんが死にませんように。

 藤原さんは俺の行為(合唱)を確認すると、ヤケになったようで……

 

「だから任務が知らされた後、みんながやけに優しかったのか!!飯を何度もおごってもらったり、遺書を書いとけとか言われたし!!チクショウあいつら!!覚えてろ!!!」

 

藤原さんは……神城さんと鬼塚少佐に肩を組まれ、逃げられそうになかった。

 

 ……藤原さん、あなたの犠牲は忘れません!!

 

俺は……藤原さんの雄姿(ゆうし)に思わず敬礼をした。

 

「僕はまだ死んでないよ!?」

 

藤原さんの声が聞こえたような気がしたが……気のせいに違いない。

 俺はビルに向かって歩きながら刀を()き、38式にゴボウ剣(黒塗りの銃剣)を着剣した。

 




 5人のカラフルな髪の色のアイドルで『まんまるお山に(いろどり)を!!』どこの‘‘バンドリ’’の子達か……
 現在のプロットでは出てくる予定ですが、今そのプロットの書き直しをやっているのでもしかしたら出ないかも……
 『金髪の幼女(チビ)と黒髪の美女』はほぼ確定で出ます。


 さて、蝦夷テレビの4人組は『絵はがき』で何をやろうとしているのでしょうか……。
 あくまでも『四国R-14』の登場人物たちが違うロケをやっていたら……という事ですので。


 『第一中隊』は主に国内担当で、情報や謀略・工作によって問題を処理する部隊です。なので海外担当で武力で問題を処理する『第二中隊』ほどの戦闘能力はありません。
 その任務に善意で(強制に)連れていかれる藤原少佐……彼の運命はいかに!!




 全く関係ない話ですが……最初の頃と今では書き方も文章も全然違うなぁ……。いつか全体の書き直しが必要だなぁ……と。
 とりあえず、この作品が完結したら修正しようと思っています。

 
  

  Next Ibuki's HINT!! 「義妹(いもうと)の帰還」
 

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