目が覚めた俺は、周りを見渡した。やけに大きな部屋にいるらしい。部屋の窓からは曇天が見えるから、夜ではないだろう。隣のベッドにはアリアが寝ている。他にもベッドがあって、みんな寝ているようだ。自分のベッドを見ると、メヌエットが俺のベッドに寄りかかって寝ていた。あれ?どういうこと?なんで知らない部屋にいるんだ?そういえば「知らない天井だ」っていうの忘れた。などと考えていると部屋のドアが開いた。
「いよぉ坊主、こんなに早く起きるとは思わなかったぜ。」
包帯だらけのマクレーのおっさんとマリーさんが来た。
「おっさん静かにしろ。」
そう言って、俺はメヌエットのほうを見た。
「悪かったよ。」
そして、俺はマクレーのおっさんから、俺が撃たれ後のことを教えてもらった。あの時、敵の生き残りが、道連れとばかりに空港内に入って銃を乱射したらしい。ちょっと待て、そういえば、別の空間のような穴が見えたよな・・・。あれはただの幻覚か、そうだよな。
「一応、そういう事になってるが・・・。」
なんか嫌な予感がする・・・。
「お前を貫通し、あの嬢ちゃんの体にある弾だけ、口径が違うんだ。」
うん、あれは幻覚じゃないらしい・・・。
「あのテロリスト共が使った銃の口径じゃない。古い銃の弾だ。だが、これ以上捜査を混乱させないため、このことは隠すことになった。だから、お前と嬢ちゃんはテロリストに撃たれた、ということになってる・・・。」
そして、おっさんの顔が曇った。
「どうしたおっさん、気分でも悪いのか?」
「・・・いや。じゃぁ、聞いてくれ。お前の両親が死んだ。」
はい?
「おいおい、さすがにそんな冗談、面白くねぇぞ。」
「今、俺が冗談言っているように見えるか?」
マクレーのおっさんの顔が深刻だ。
「死因は?」
「銃弾を頭に食らって即死だ。」
この世界に来て約12年。色々世話してくれた両親が・・・そうか・・・。
おかしいな、涙が出ない。そういえば、転生する前の世界でも、いつも世話してくれてた爺ちゃん、婆ちゃん死んでも、あまり涙が出なかったな。人間相当ショックを受けると涙が出ないらしい。そうなのかもしれない。
「なぜか、涙が出ないな。」
「最初、事実を事実として認識しなく、その後少しづづ受け入れてく人間はこういう人の死であまり涙を流さないらしい。坊主はそうなのかもな。」
「なるほど。マクレーのおっさんは詳しいな。」
「俺は刑事だぞ?人の心のことも頭に入れなきゃいけねぇんだよ。」
そういえば、マクレーのおっさん刑事だったな。職業、リアルスタントマンと勘違いしてたよ。
「坊主、お前の爺さん、婆さんは死んでいるし、叔父、叔母はいねぇ。これからどうする。」
天涯孤独になっちまったわけかぁ・・・
「イブキ君、よければ・・・」
「マリーさん、俺3月から寮暮らしなんで大丈夫ですよ。それに、入寮までの2ヵ月くらい一人暮らしなんて平気です。あと、ジョニー・マクレーさんと一緒にいたら、毎日なんかの事件に巻き込まれそうです。」
さすがに、マクレー家に世話になるのはなぁ。実際子供もいるみたいだし。
「坊主、俺のこと疫病神かなんかと思ってねぇか?」
「え?違うの?」
「俺にしちゃ、坊主のほうが疫病神だ。」
両方、疫病神なのかね。
その後、ある程度話をしてからマクレー夫妻は帰っていった。
「ところでメヌエット、どこから聞いてたんだい?」
「お兄さん、おはよう。お兄さんの両親が即死したってこと。」
だいぶ前から起きていたようだ。アリアのことについては聞いていなかったみたいだ。だけど、メヌエットは賢い。すぐに気づきそうだな
「お兄さん、こんなに沢山ケガして心配したんですよ!!」
そう言って俺を叱り始めた。その後、起きたアリアも加わってしまった。そういえば、俺の両親も帰ってから説教って言ってたっけ・・・。
「イブキ!!(お兄さん!!)聞いてるの!!(聞いてるんですか!!)」
「ちゃんと聞いてるから!!」
そういえば、飛行機の主翼で戦っていたところをばっちり取られたため、俺とマクレーのおっさんはまた、マスコミに追いかけられた。ナカジマプラザの事件の解決のことも持ち出され、「ナカジマプラザの人質を救った英雄達」から「もっとも不幸な、不死身の二人組」になっちまった。しかも、俺とマクレーのおっさんに二つ名までつけられた。マクレーのおっさんは「
まぁ二つ名は、その後ちょっと変わるんだけどな・・・。
マクレーのおっさんと神崎かなえさんはありがたいことに、書類のことをやってくれた。そうして俺は一週間後、マクレー夫妻と、かなえさん、アリア、メヌエット、バーン爺さん、清掃員のおっちゃん、あとなぜかハゲの署長が見送ってくれ、日本へと帰っていった。さんざんなクリスマスに年末だったぜ・・・。
今でも、よく生きていたなぁって思うよ。
日本に着いた後、最初に行ったのは携帯ショップだった。まぁ、あんな事件に巻き込まれて、俺の携帯は見るも無残な状態になってしまったからだ。データを取り出せないほど木端微塵に・・・。
携帯を買い、キンジの電話番号とメールは覚えていたからよかったけど、他なんて覚えてない・・・どうしよう・・・と思った瞬間、俺の携帯が鳴りだした!!相手の番号を見ると見覚えがある・・・。恐る恐る出たら。
「お兄ちゃん!!大丈夫!?心配したんですよ!!!」
粉雪か・・・。
「あぁ、だいじょうb・・・・」
「銃撃たれたんですよね!!それで大丈夫なはずがありません!!」
また、前回のように俺は怒られた。俺、海外に行かないほうがいいのかなぁ・・・。
「聞いてるんですか!?」
「ハイ!!聞いてます!!」
叱られながら、我が家に着いた後、俺は必要書類などの処理をしようとした。だけれど、天涯孤独になった身、保護者などいるはずがない。必要な書類も作れない。そこで幼年学校にそのことを連絡すると、後日、軍のほうからある人が来た。
「テロリストと戦い!多くの人を救ったのに!!天涯孤独になるとは!!!この希信!!悲しみでいっぱいだ!!!!(号泣)」
来てくれた人は辻希信陸軍大尉という人だった。涙もろく、感受性が人よりもあり、理性より感情が先に行く人であったが、有能な人間だった。てきぱきと必要な書類を全部用意してくれ、後は読んでサインするだけの状態にしてくれた。
今でもほんと感謝してますよ、辻さん。ただ、感情をもうちょっと抑えてくれると嬉しいんだけどな。
これが辻さんとの初めての出会いだった。
書類整理や遺品整理をして、入寮まで残り2ヵ月弱。俺は遺品を整理していたら出てきた、ある物がとても気になっていた。虹色に光るトゲトゲの石と、十字の楯、黄金の高坏(?)、そして本。 俺はあの時、転生前の知識を少しでも憶えていれば、これが何かわかっただろうなぁ・・・。
これらの物によって俺は濃い性格の人達と会うことになった。
辻希信大尉のモチーフは誰だかすぐわかるか。この人は「有能だけど理性より感情が先に出て、フットワークが軽すぎるために、有能さをつぶしてしまっている人」という設定。
虹色に光るトゲトゲの石と、十字の楯、これで次回は何が起こるか・・・
次回で民間人編が終わったら・・・・いいなぁ・・・・