少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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(テスト実施の日にちを間違えたせいで)一夜漬けをし……結果、寝坊したせいで一教科落としました……。
 皆さん、テストの日にちは間違えないように……




くさいセリフは似合わない……

 さて、運命の昼休み……俺は覚悟を決めて体育館裏に向かった。

 

 ……さて、誰が待ってるんだ?

 

俺は刀の柄を強く握り、気合を入れた。その時、道中にある学食から……空腹を誘う、旨そうな香りが漂ってきた。

 

  グゥ~~~……

 

 ……腹が減ったな。

 

 昨日は夜分遅くに第二中隊の隊舎に行ったため、俺の朝食は用意されていなかった。

 みんなは自分たちの分を少しずつ出し合い、俺の分を捻出しようとしていたが……流石にそれは気分が悪い。俺は断り……近くのチェーン店で朝食を食べた。

 

 ……久しぶりに朝○ック食ったが、やっぱり足りなかったなぁ

 

俺は……下駄箱に入っていた手紙を再度読んだ。

 

 ……細かな時間を指定してないし、飯食う時間はあるよな。

 

宮本武蔵も巌流島の戦いでワザと遅刻したらしいし(諸説あり)、これも戦術だ、戦術。それに‘‘腹が減っては戦ができぬ’’って言うし、兵站で一番大事なのは食料だ。

 

 ……今日のメニューはなんだろうなぁ~

 

俺は学食へ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

「……遅いなぁ」←金髪少女

 

 

 

 

学食で腹いっぱい食べ、時間を見ると……昼休み終了まで残り30分。

 

 ……飯を食ってすぐ動いたら腹を痛めるな。ここは少し休んでから行くか。

 

俺は温かいお茶を買い、ティータイムを優雅に過ごす。

 

 

 

 

「……お腹すいた(体育座り)」←金髪巨乳少女

 

 

 

 

昼休み終了まで残り10分。俺はイヤイヤ体育館裏へ向かった。

 

 ……さて、そろそろ真面目にやるか

 

俺はため息をついた後、感覚を研ぎ澄ませていく。

 

 ……半径50m以内には4人。全員殺意無し。

 

俺は警戒しながら歩んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそのまま体育館裏へ向かうと……かなめ(?)がいた。

 

 ……こいつ、かなめにしては胸が大きい。しかも、今のこの状態でも大きいのに……サラシか何かで胸を無理やり抑えているのが分かる。

 

「イブキにぃ……来てくれたんだ。」

「………理子、何やってんだ?」

 

俺はかなめ(モドキ)の正体がすぐに分かった。理子は変装の才能があるが……その豊満なものに、その声色ですぐわかる。

 

「イブキにぃ、何を言ってr……」

「バレバレだぞ?……毎回言ってるが、理子が貧乳に化けるのは無理があr……」

「セクハラだよ!!!!」

 

かなめ(偽物)はそう言った後……慌てて口を押えた。

 

 ……やっぱり理子か。

 

俺は警戒を解いた。周りには理子の気配意外にはないし……手紙を出した理由も予想できる。

 何か俺に直接会って話したいことでもあったのだろう。何故‘‘果たし状’’したのかは分からな……揶揄(からか)ったな、こいつ。

 

「理子、こんな手紙を送るなんて珍しいじゃねぇか。直接言ってくれればいいのに。」

「……かなめの件でな」

 

 ……裏理子か。裏理子で来るときは……だいたい面倒なことが起こる。

 

理子はかつらとフェイスマスクを破り捨て、素顔をさらけ出した。

 

「……理子なら調べればすぐわかるだろ?かなめは‘‘師団(ディーン)’’の会議によって敵対しないことが決まった」

「……それは分かってる。だが……あたしはどうなる?」

 

 ……?

 

「何のことだ?」

「‘‘COMPOTO’’の事だ。……あの中で、あたし‘‘だけ’’が部外者だ。そこにかなめが加われば……部外者のあたしはどうなる?」

「どうもこうもないだろ?……理子はいつも道理に、‘‘COMPOTO’’の副隊長だろ?」

 

 すると……理子は一気に近づき、軍用ナイフを一気に抜刀した。

 

  ギィイイン!!!

 

 俺は銃剣を抜き、峰でそのナイフを防ぐ。

 

「……違う!!かなめが来れば……あたしはどうなる!!部外者のあたしが居なくても回る!!」

「……」

「あたしはもう……一人になりたくない!!」

 

  ギィイイン!!

 

俺は……理子の半生を思い出した。彼女の両親が死に……一人になったところをブラドによる虐待を受けたのだ。彼女にとっては……孤独がトラウマに違いない。

 それに俺は身内には甘いから……『かなめのわがままも許し、理子を排斥する』と思っているのか?

 

「……お前が居なければ!!一人を、孤独を耐えられたのに!!お前が居なければ!!こんな思いをせずに済んだ!!」

「てやんでぇ!!べらんめぇ!!」

 

ギィイイン!!バキッ!!

 

俺は理子のナイフを弾き飛ばし、その勢いのまま理子を掴み、投げ飛ばした。

 

 ……流石に身内には甘くても、仲間を捨てるなんてクズに成り下がることはしねぇぞ!?

 

「誰がてめぇの様ないい女を捨てるって言うんだ!!」

「でも、お前は……!!」

 

理子は立ち上がり、俺に殴りかかってきた。

 

「あたしはもう一人になりたくない!!一人になるくらいなら……お前を殺し、あたしも死ぬ!!」

「だったら俺が一緒にいてやらぁ!!」

 

俺は理子を再び投げようとし……足がもつれて一緒に転んでしまった。

 

「誰が理子を一人にするかってんだ!!俺が一生一緒にいてやらぁ!!!」

「……!?」

 

地面に倒れた理子に覆いかぶさるような体勢のまま……俺は勢いのまま言い放った。

 

「理子がイヤだって言おうがなんだろうが!!俺がずっといてやる!!後悔すんじゃねぇぞ!!」

「………ッ~~~!!!」

 

 

 

 

理子に覆いかぶさったまま宣言して、長い時間がたった時……理子は顔を真っ赤にし、抵抗しなくなっていることに俺は気が付いた。

 気が付いた後……俺は冷静になり、さっき勢いで言ってしまった事を思い出した。

 

 ……ヤバい、勢いに任せてすごく恥ずかしい事言ったぞ!?

 

思考回路が全く機能していない。それに……もう11月下旬なのに猛暑日並みに暑い。

 

 

『では、‘‘ギムレットには早すぎるが、テキーラにはちょうどいい’’さんのリクエスト、‘‘QUEEEN’’の‘‘I Was Born To Love You’’』

 

『I…Was Born, Tooooo Love You……♪』

 

あぁ……校内ラジオのBGMのせいで余計に恥ずかしい。

 

 ……クソッタレ!!なんだって俺の好きなバンドの曲がこんな時に!?しかも理子はフランス系だぞ!?なんだってイギリスの歌手の曲が!?

 

 

 

 

 

 

「「……」」

 

俺と理子は自然に離れていき、2mほど離れた位置でお互い体育座りをした。

 

「……い、イブイブ、さっきの言葉って……こくはk……」

「……わ、忘れてくれ」

 

実際、なんだかんだで多少性格が歪んでいるが……理子は、自分の意見はちゃんと言い、それでいて気遣いができて優しく、器用で家事も平均以上、それに外見もよし。これほどの好物件はなかなか見つからないだろう。

 

 ……ヤバい、すごく恥ずかしい。

 

余計に意識してしまう。まて、落ち着け……

 

「……まぁ、さっきのは無かったという事で」

 

俺は急いでこの場から逃げようとし……理子に腕を掴まれた。そのまま理子は何処にそんな力があるのか……力任せに俺を引っ張って抱き着き、腹に顔をうずめた。

 

「……イブイブ、あたし……ちゃんと聞いたから。一生離さないって……凄くうれしかった。」

「……いや、だから……さっきは勢いで言ってだな……」

 

言い訳する自分が情けない。何だってあんなこと言ったんだよ!!……確かに本心だけどさ!!

 

「なぁ~んて!!あれぇ~イブイブゥ~、何焦ってるのぉ~?」

 

理子は顔を上げ……面白がるように、からかう様に俺を見てきた。

 

「りこりんが~イブイブのことを~あんな風に思ってるって勘違いしたのぉ~??」

 

  プツン……

 

「……帰る」

「え……?ちょtt……」

「帰る。」

 

俺は脱兎の如く、その場から逃げ出した。

 

 ……自分だって最低ってことは分かってるけど、この場にいたくねぇんだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『一生一緒にいる』かぁ……。あの表情から考えるに、きっと……」

 

頬が熱くなっていくのが自覚できる。

 

「あたしは泥棒の娘で……イブイブは高潔な軍人……。でも、やっぱり……」

 

思わず……お母様の形見のロザリオを握りしめた。

 

「それでも……あたしは……」

 

 ……さっきのイブイブの言葉はスマホで録音しておいた。うまく録音しているか確認しないと……

 

 思わず自分の股間を触り、そこでやっと下着を洗濯しなければならないと気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は強襲科(アサルト)棟で、25ミリ機関銃の射撃訓練(八つ当たり)をしたあと、寮へ戻った。

 

 ……神城さんの考察は、理論上合っているのだが……やっぱりやりたくない。

 

『故意にかなめを‘‘性的興奮’’させることにより、彼女の性格を一転させ、己を守る』……どこかのエロゲーでありそうなネタである。

 

「……ただいま」

 

本日はスパイスの香りはしなかった。そして、リビングには電気が付いているから誰かはいるはずだ。

 

 ……ん?廊下が濡れてる?

 

水滴は脱衣所からリビングへ向かって落ちていた。

 

 ……またネロが良く拭かないで風呂を出たのか?

 

俺はため息をついた後、リビングの扉を開けた。

 

 

 

 

 

「ネロ~またちゃんと拭かないで出てきたr……!?」

「…………あ」

「あ……」

 

そこには……バスタオルで頭を拭きながら‘‘ガリ〇リ君’’をかじる、パンツとブラ姿のかなめが居た。

 

「「……」」

 

かなめは目を見開いて驚いた後……クスリと笑い、妖艶な雰囲気を出し始めた。体中の血の温度が一気に上がるような気分になる。

 

「か、かなめ……お前……」

「……イブキにぃ、何を考えても無駄だよ?体と心は別物だよ?」

 

かなめはペタ…ペタ…っとゆっくり俺に近づいてきた。

 

「イブキにぃ……考えなくていいんだよ?ただ……イブキにぃがやりたいように押し倒せb……」

 

かなめはブラのホックを外し、肩の紐も外して……腕だけでブラを押さえる状態になった。俺は……もう我慢できなくなった。

 

 

 

「べらんめぇ!!それは俺のアイスだろうが!!!」

「そっち!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ……うん。理性を保つために、さっきの言葉を放ったが……煽情的なかなめの前でどれだけ耐えられるか……。

 

俺はため息をついた後、覚悟を決めた。

 

「……とりあえず、これ着ろ」

 

俺はそう言って制服の上着を渡した。

 

「う、うん……」

 

かなめがそれを羽織ったのを確認した後、‘‘影が薄くなる技’’を使ってかなめの後ろへ移動した。

 

 ……やるしかない、か

 

 

 

 

俺は‘‘影が薄くなる技’’を解き……‘‘あすなろ抱き’’をした。

 

「ッ~~~!!」

「……どうしたかなめ?そんなに固くなって……。お前がそう願ってたんだろ?」

 

俺はかなめの耳元で……‘‘HSS’’になったキンジが言いそうな言葉を、少ない語彙から引っ張り出していく。

 

 ……いいか、俺は‘‘HSS’’になったキンジだ。

 

俺は身近なモデルを必死に演じていく。

 

「そんなに緊張してたら……何にもできないぞ?」

 

俺はクルッとかなめを半回転させ、そのまま右手で‘‘壁ドン’’をし、左手でかなめのアゴを軽く持ち上げた。

 

「イブキにぃがあたしだけを見てる…‥イブキにぃ、怖い、怖いよ……。あたしが…‥あたしが消えてくような……」

「安心しろ……俺がいる。怖がらなくてもいい……ゆっくり受け入れていけ」

 

俺は左手で唇を触り……そこからうなじ、肩、わきの下、脇腹、腰へゆっくり移動させた。

 

「ッ……」

 

左手が太ももにまで移動したとき、かなめのトロンとした目が急に見開いた。そして、自分の胸の前で組んでいた手を……俺の胸に当てて抵抗してきた。

 

 ……予想はできていたから耐えられるが、何の対策も無かったら……最悪、かなめに溺れていたかもしれねぇ。

 

「だ、ダメ……ダメだよ……イブキにぃ、こんな事したら……」

 

かなめは抵抗していたが……彼女は乾燥した小枝のような抵抗だった。俺がそのまま押し倒そうとしても……簡単にできるほどの抵抗だ。

 

「たとえ義理でも……兄弟でそんなことしたらダメだよ……」

 

かなめの目から涙がハラハラと落ちて行く。

 

「ヒクッ……グスッ……」

 

かなめは崩れ落ち、手の甲で涙をぬぐうが……それでも彼女の慟哭(どうこく)は止まらない。

 

 ……仮説通りの結果になったか。

 

俺はかなめを見下ろした。かなめは……弱弱しく、静かにシクシクと泣いているが……心の慟哭がひどく伝わってくる。

 ……しかし、今のかなめは……贔屓(ひいき)目に見ても、狂おしいほどに可愛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 ……『恋愛では弱者』か。言い得て妙だな。

 

 俺はかなめを寝室に放り込んだ後、‘‘酒蔵部屋’’の酒を手にしながら思った。

 

 

 異性の前になると‘‘違う性格’’……いや、‘‘他の人格’’になり、それによって異性に好かれる。

『本来の自分を好きになってくれないかもしれない』、『こんな異常を受け入れる以前に、理解されないかもしれない』……これらの気持ちを抱きながら生きるって言うのは、どれだけ辛い事なのだろう?

 常に異性を疑っていないといけない……ってこともあり得るか。

 

 

 ……それらを代償にし、最高の戦闘力が得られるキンジに対して……かなめは……

 

 『‘‘ハニートラップ’’などのスパイ活動には有益だ』と思う、軍人としての俺に……吐き気がする。

 

 ……今日は飲もう。

 

リサへメールで『夕飯はいらない』と送った後、寝室を覗いた。そこには……触れたら壊れてしまいそうなほど可憐な美少女が、ベッドの上で体育座りをし泣いていた。こんな状況……普通の男性なら絶対に彼女に声をかけるだろう。

 

 ……よくもまぁ、手を出さなかったものだ。

 

俺はそう思った後、酒瓶片手に寮を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで仕事中の僕を無理やり連れてきたのかい?」

 

そう言って、第一中隊所属の藤原石町少佐はため息を吐きながらウィスキーを傾けた。士官クラブのカウンターにカランと氷とグラスがぶつかる音が響いていく。

 

「いいじゃないですか、残ってた仕事は ‘‘来週までに提出の書類にサインする’’だけでしたし」

「……そうだけどさぁ。……それにしても、村田も(第二中隊に)染まってきたねぇ。」

「…………否定できないです。」

 

俺の言葉に……藤原さんは眉をひそめた。

 

「いつもは否定するのに……それに今日だって『奢りますから来てください』って……。そんな言葉初めて聞いたよ?」

「……あれ、そうでしたっけ?」

「そうだよ?いつもは『奢ってくれないんですか?』って揶揄(からか)うじゃないか」

 

確かに……。いつもそう言った後、割り勘にするんだっけか。

 

「……何かあった?」

「えぇ……まぁ……」

 

 

 

 

 俺は事の顛末を藤原さんに話すと……

 

「……簡単な話だ。君は兄なんだろ?どっしり構えて受け入れてやればいい。」

「ですが……」

「村田、それ以上は同情になる。遠山君も彼女もそれは求めてない。」

 

 ……確かに。

 

「……………ハァ。なんかウジウジしてたのがバカバカしくなってきましたよ。」

 

俺はダークラムのロックを一気に飲み干した。多少の罪悪感もあったが……この仕事柄、罪悪感を忘れるのは慣れている。

 

 ……面倒な仕事についたなぁ

 

 思わず大きなため息が出た。こりゃぁ……いい死に方しないな。

 

「村田、ここでウジウジしている時間はないぞ?」

 

 ……全く、この先輩には頭が上がらない。

 

「藤原さん、ありがとうございました!!この酒は貰ってください!!」

 

俺は‘‘酒蔵部屋’’から持ってきた戦利品の(ブラドから貰った)酒と諭吉二人を置き、俺は寮へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

「……‘‘俺’’はいい死に方しないだろうな」

 

思わずため息が出た。

 

 

我々は……前大戦の事もあり、アメリカの御威光を無視できない。今回の件……双極兄妹(アルカナム・デュオ)はともかく、かなめ(GⅣ)の‘‘HSS化’’は絶対だった。

 そのために……村田と遠山君をあてがう(人柱にする)事は政治家達によって決まっていた。最悪……彼らはアメリカへ連れ去られても文句は言えない状況ではあったが……遠山君はともかく、村田はその状況を覆した。

 

 ……相変わらず、運がいい奴だ。

 

 上手くいけば軍の力を弱めるための布石の一つにするつもりだったのだろうが、その計画も潰れたようだ。本当に計画を潰すのが得意だな。

 

 

 

さて、さっさと‘‘僕’’に戻ろう。いつまでも罪悪感に縛られてはいけない。

 

  ……そう言えば村田が置いていった酒はなんだろう?

 

  『響 30年』

 

「……ファ!?」

 

 ……年に2000本しか売られない高級品だったはず!?

 

‘‘俺’’は……余計に胸が痛くなった。

 

「早く、‘‘僕’’に戻らないと……」

 

 それでも……貧乏性なのか、‘‘俺’’はその瓶をずっと離さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  ガチャ……

 

もう0時前、みんなは寝ているようだ。俺は音をたてないようにリビングへ向かうと……目を真っ赤に腫らしたかなめに会った。

 

  グゥ~~~……

 

二人同時に腹の虫が鳴った。かなめも夕飯を食ってないのだろう。

 

「……そばでも食うか?」

「……(コクッ)」」

 

俺は冷蔵庫から‘‘茹で蕎麦’’を取り出し、電気ポットのお湯を鍋に入れて茹で始めた。

 

 

 

 数分後には簡単な‘‘かけそば’’を二つができ、その一つをかなめの前に置いた。

 

  ズルッ……ズズズ……

 

 そばを啜る音だけがリビングに響いている。

 

「イブキにぃは断り切れない性格だと思ってたんだけど……違うんだね」

「……俺はこう見えても、ちゃんと断るときは断るぞ?」

 

でも、だいたい上官命令だから断り切れないけど。

 

「そうなんだ……。実は……イブキにぃが‘‘あすなろ抱き’‘してから記憶が無くて……。」

「‘‘HSS’’ってそうなるんだな。」

「……うん」

 

  ズルズル……ズズッ……

 

「……いきなり、迷惑だったよね。いきなり戻ってきて、イブキの人間関係メチャクチャにして、大事なもの壊されて……」

「……まぁ、強いて言うなら『帰る』の一言は欲しかったな。迎えの一つもできやしねぇ」

 

 俺は‘‘かけそば’’の汁を啜った。安物の麺つゆにしては良いダシを使っている。

 

「あたし……恋愛ってよくわからなかったから、他の女を遠ざけて独り占めしたら愛してもらえるのかなって……」

「…………映画、好きなんだろ?せめてそれで勉強して来いよ」

「……そうだよね」

 

かなめは丼ぶりを持ち上げ、汁をチュルチュルと飲み干した。

 

  ドンッ!!

 

「……あたしってどうすればいいかなぁ」

 

かなめは強めに丼ぶりを置いた。その丼ぶりの中に滴がポタポタと落ちて行く。

 

 ……義兄の仕事でもするか

 

 

 

 

 

俺はため息をついた後、かなめに近づき……頭を乱暴に撫でた。

 

「……え?……あ、え?」

「悪いことしたんなら謝りに行くぞ、明日朝一で。一緒に行ってやるから」

「……え、でも……あたし、イブキにぃにこれ以上迷惑かけらr……」

「バカ言うんじゃねぇよ。家族なんだろ?多少迷惑な方が可愛げがあるってもんだ。」

「…………」

「……」

 

静寂が俺の心に砲撃をかけてくる。

 

「……あ、あのかなめさん?なんか反応してくれない?勢いでくさいセリフ言って恥ずかしいんだけど……」

 

 かなめはスッと顔を上げた。……無表情だった。

 

 ……黒歴史決定、ありがとうございました。なぁキンジ、俺はお前のように‘‘くさいセリフ’’は無理だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『銃剣で腹切れるかなぁ』などと考え出した時、かなめは急に俺に抱き着いた。そのまま……俺の服を濡らし始めた。

 

「……グスッ。イブキにぃ……イ゛ブギに゛ぃ!!!!」

「……」

 

俺は泣きついてきたかなめの頭を撫で始めた。

 

 ……兄らしいことはできてるのかな

 

神棚の鏡が、兄妹を淡く映していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あ、最近忙しくて神棚の掃除してねぇや

 

神棚の鏡は……ホコリのせいで兄妹を淡く映していた。

 

 ……明日、掃除したら高級酒を置いておこう。

 

心なしか……神棚の鏡はキランと光ったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 泣き止んだかなめは……目も顔も真っ赤に腫れていた。

 

「ほら、さっさと寝るぞ。明日は早いんだから」

「……うん」

 

かなめは寝室に向けて歩き出し……数歩歩いたらクルッと半回転。俺の方に向いた。

 まだ顔と目は真っ赤だった。

 

「イブキにぃ……あたしのわがままだってわかってるけど、もう一回言わせて?」

「なにをだy……」

 

かなめはダダッと助走し、俺に飛びついてきた。

 

「あたし、イブキにぃの事が好き……」

 

かなめは頬に触れるだけのキスをしてきた。

 

「おぉ~、さすがイブイブ。義理とはいえ妹も攻略したなんて!!」

「「……!!!」」

 

 リビングの扉には……トランクケースを持った理子が、ニヤニヤとそこに立っていた。

 

「‘‘かなめちゃん’’だっけ~、理子の事は‘‘お姉ちゃん’’ってよんでいいからね~!!」

「……なんだよ、ぶりっ子。」

「イブイブと理子は~『一生一緒にいる』って誓い合った仲だから、‘‘かなめちゃん’’は理子の‘‘義妹’’になるのかな~って」

 

俺は慌てて理子を見ると……目が合った。

 

 ……こ、こいつ!?完全に面白がってやがる!?

 

『なんて日だ!!!』って思わず叫びそうになった。今日一日で何個の黒歴史ができた事か……。

 

「さぁ、言ってごらん!!『理子お姉ちゃん』って!!!」

「イブキにぃ……あそこに頭の狂った女がいるから、楽にさせるね!?」

 

  

 

 

 

 

  バァーーーン!!!

 

「三人とも!!うるさいですよ!!!今何時だと思っているのですか!?」

 

 扉を勢い良く開け、寝間着姿のリサが勢いよく入ってきた。

 

「……り、リサお姉ちゃん、こいつが……」

「え、えっと……挨拶しよっかなぁ~って……」

「……え、俺も?」

 

「朝ごはん抜きにしますよ!?」

 

  バー―ン……

 

リサは勢いよく扉を閉め、寝室に向かっていった。

 

「……寝るぞ」

「……はい」

「……うん」

 

 ……ベッドとは言わねぇ。何時になったら布団で寝れるんだろ。

 

俺はため息を吐きながら、寝床(ハンモック)の用意を始めた。

 

 

 

 




 理子の下りは……ちょっと無理があるような気がしないでもないですが、これで行きます。

 
 ギムレット……ジンにライムジュースを3:1でシェイクしたカクテル。
『ギムレットには早すぎる』は説明すると長くなるのですが……簡潔に言うと‘‘別れ’’という意味。(深い意味があるので、調べることをお勧めします)
 テキーラ(正確にはテキーラのショット)……『極東戦役:極東戦  男装バレバレなんだけど……』より、‘‘嫌な過去は忘れろ’’または‘‘和解’’という意味(この小説では)。


 あと2話でG兄弟編が終了。やっと東京編だぜ!!

  Next Ibuki's HINT!! 「BO〇S」 
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