少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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急いで次章を書かないと……


 ヱビスビールのエールが出て狂喜乱舞中の作者です。


閑話 極東戦役:極東編

1:新人歓迎

 

 これはまだ……イブキがHS部隊第二中隊に入隊し、一年目の新人だった頃の話である

 

 

 

 どこの職場にも‘‘悪しき風習’’という物はあるもので……ここ、HS部隊第二中隊に入隊一年目の人間は忘年会の余興で、一つ芸を披露するのが伝統だそうだ。

 

 ……クソ!!滅んでしまえ、そんな伝統!!

 

俺は思わずため息が出た。もちろん、そんな余興のネタなんて持ってない。

 

 ……‘‘影が薄くなる技’’のネタは使えないしなぁ。

 

‘‘影が薄くなる技’’は同じ部隊の狙撃兵:岩下一等兵曹もできるため……見慣れているだろう。

 

「……どうしたらいいんだ!!!」

 

久々の休みの日、俺は駐屯地のベンチで頭を抱えた。どうせあの鬼上官達だ。面白くなかったら訓練で半殺しにしてくるだろう。‘‘島流しからの遠泳’’か、‘‘冬山に置き去り’’か、‘‘登山道無視の直線行軍’’か、‘‘1対数百の数日間連続鬼ごっこ’’もあったっけ……

 

 ……最悪、裸踊りでもするしか……ない!?

 

 しかし、裸踊りなどしたことがない。

 

「どうした?村田?」

「……あ、ジミさん」

 

今日は清掃員の服装ではなく、ピエロの格好をしていた。また仕事変えたようだ。

 

「悩みがあるんなら聞くよ?」

「実は……」

 

 

 

 

 俺は……忘年会の余興のネタがない事をジミさんに相談すると。

 

「な~んだ、村田。そういう事か」

 

ジミさんはそう言って、一枚のチラシを渡してきた。

 俺はそのチラシをもらい、見てみると……

 

『君にも‘‘余興の芸’’がすぐ身につく!!忘年会前の特別講座』

 

という文字と共に、『ジミさんがマラカスを持ちながら大玉に乗り、額で皿回しをする』写真が載っていた。

 

「……なんです?コレ」

「年末になるとこういうので悩む人が多いんだよ。最近の仕事はこれ。」

 

そう言った後……ジミさんはジーッと俺を見た。

 

「……なんです?」

「……村田!!」

「は、はい!?」

「君には‘‘マラカスの才能’’がある!!マラカスをやらないか!?」

 

 俺はそう言われ、ジミさんに襟首を掴まれ……そのまま引きずられていった。

 

「……え!?ちょっと待って……マラカス!?」

 

 

その後、俺はなんだかんだあって週2回・1回2時間の授業をジミさんにしてもらい……マラカスを覚えていった。(なお月謝30万)

 

 

 

「では、村田少尉!!マラカスをやります!!!」

 

忘年会当日、俺は気合を入れてマラカスを握った。ジミさん曰く『プロは無理でもアマチュアならいいところまで行く』そうだ。

 俺はその言葉で自信をつけ、堂々と……壇上へ上がる。壇上へ上がると、部隊のみんなは‘‘可哀想なものを見る目’’で見てきた。

 

「お、おい……イブキ少尉?まさかお前……ジミに教わったのか?」

「……?そうですけど?」

 

田中さん(田中曹長)の質問に答えると……部隊の全員が大きなため息をついた。

 

「どのぐらい払ったんスか?」

「えっと……30万ほど……」

 

みんな入隊一年目の時……ジミさんに(そそのか)され、高い金を払って微妙な宴会芸を教わったらしい。

 

 ……アレ?言われれば、マラカスに月30万ってぼったくってるだろ。

 

俺は心がブルーのまま……マラカスを振り始めた。意外にもマラカスが好評だった。

 

 

 

 

 この3年後、イブキが武偵高校に出向した年の年末。あるテレビ番組:『紅白歌の祭典』においてジミさんがマラカスだけで出場し、一夜にして名声を勝ち取ることになるのだが……その話はいずれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

2: 果物の王様

 

 

 

 武偵高校男子寮の屋上で、俺・ジャンヌ・キンジ・中空地さん・ワトソン・リサは‘‘あるもの’’を中心に、円形なって座っていた。

 

「なぁジャンヌ。俺は‘‘これ’’を‘‘君のために’’プレゼントしたんだ。それを返品だなんひどいじゃねぇか」

 

ジャンヌは俺の言葉を聞くと、鼻で笑った。

 

「こんな高価なものを一人で独占するのはもったいないと思ってな。貴様もこんなものは食べたことがないだろう?」

 

 ……確かに、食べたことはない。食べようとも思わないが。

 

俺は‘‘それ’’を意識してしまい、思わず臭いを防ぐために鼻をつまんだ。

 そう、俺たちの目の前にあるものは……『果物の王様:ドリアン』だ。

 

 

 ドリアンとは……主に東南アジアで栽培される、栄養豊富な果物だ。その栄養豊富さから、昔の王が精力増強として食しており、そこから‘‘果物の王様’’となった……という説もある。

 

 

 目の前にある‘‘それ’’は……俺とキンジがジャンヌへのお見舞いの品として贈ったものだ。

 しかし、そのドリアンは送ったころよりも臭いがきつくなり、色も緑から褐色に変化し、割れ目も見えている。これらは熟している証拠だ。ジャンヌは見事に追熟に成功したようだ。

 

「呼べるだけ呼んでみたのだが……これしか来ないとは」

「友達少ねぇんだな」

 

 ……クソッ。ジャンヌの友達が多ければ、一人当たりのパイ(ドリアン)がさらに少なくなっt……

 

  ドスッ……!!

 

「ぐおぉ……」

 

ジャンヌの腹パンを受け、俺は腹を抱えながら苦悶の表情を受けべる。

 

「『緊急の話があるから』って聞いて急いできたんだが……帰っていいか?」

「キンジ、お前だけ逃げるなんて卑怯だぞ。」

 

急いで逃げようとするキンジの足首をつかみ、俺は逃げられないようにする。

 

「離せ!!イブキが送った奴だから俺には関係ないだろ!?」

「名義上は‘‘俺とキンジ’’なんだよ!!諦めろ!!」

 

俺がキンジを羽交い絞めにしている間……リサは黙々とドリアンを切り分け、小皿に分配した。

 

「皆さん、お好きなものを取ってください。」

 

リサの言葉に俺とキンジ以外は急いで量の少ない皿を奪い始める。俺とキンジは急いで喧嘩を止めるが……すでに量が多い物しか残ってない。俺達は渋々、量が多い皿を選ぶ。

 

「あ、イブキ様!!リサの分もどうぞ!!」

「え?ちょ、待っt……」

 

リサは自分の皿の半分を俺に分けてきた。俺はリサの顔を見ると、彼女の顔に悪意は一切ない。

 

「ドリアンは栄養豊富なんですよ!!最近お疲れのイブキ様にはもってこいです!!」

「お、おう……」

 

リサは悪意が一切ない、‘‘晴天の避暑地に咲くひまわり’’のような笑顔を俺に見せてきた。俺はその笑顔を見て、少しでも疑ったことへの罪悪感に襲われる。

 

 ……でも有難迷惑(ありがためいわく)なんだよなぁ。

 

俺はクリーム色の果肉を見ながらため息をついた。

 

「うっ……」←ジャンヌ

「ゴフッ……」←ワトソン

「……」←中空知さん

 

ジャンヌとワトソンは今にも死にそうな表情をしながら食べている。それに比べて中空知さんは無言で、しかも心なしか美味そうに食っている。

 

「……お?」

 

俺も意を決し食べてみると……口と鼻に異臭が広がっていくが、舌には癖になるような甘い味が広がっていく。

 

 ……臭いと味のギャップがひどい。

 

この匂いに耐えられた者にしか味わえない、最高の味だ。確かにこれは‘‘果物の王様だ’’。

 

 ……好んで食べようとは思わないが。

 

 何とか自分の分を完食し、貧乏性の俺は今にも死にそうなワトソン(衛生兵)ジャンヌ(騎士様)の分を『もったいない』と食べようと……

 

「……(ジー)」

「あの、中空知さん……食べる?」

「え……あ、むら……むたら君。い、いいの?」

「「……うっ」」

 

ジャンヌとワトソンは自分の皿を俺と中空知さんのそばに置くと、そのまま気を失った。

 

「ちょっと!?ワトソン!?ジャンヌ!?」

 

俺は二人を慌てて救護科(アンビュラス)へ連れていく後ろで……中空知さんが残ったドリアンをむさぼっていたそうだ。

 

 

 

 その後……月に1回、スキップをしながらドリアンを買う中空知さんが見られるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

3: ミニチュアボトル

 

 

 

「すいません、お届け物です」

「はい~」

 

俺は荷物を受け取ると……流暢なラテン語で書かれている。

 

「『Status Civitatis Vaticanae』?……バチカン市国!?」

 

 まさかラテン語を使うことがあるとは……と思いつつ、俺は箱を開けた。すると中には、弾頭がカラフルに塗装された10発ほどのライフル実包が入っていた。隠語が『ミニチュアボトル』だった理由も、ライフル実包特有の‘‘くびれ’’で理解できる。

 

 ……これが‘‘武偵弾’’か。

 

 メーヤが『支援物資を送る』と言っていたのを思い出した。アリアの.45ACP弾、キンジの.50 AE弾はすぐに届いたが……俺の分はなかなか届かなかった。

 

 

 俺は一発持ってその弾を観察してみると……自分が使っている実包と形が全く違う。俺は慌てて38式実包を出してみるがやっぱり形が違う。

 武偵高の教科書を引っ張り出し、その実包を調べると‘‘.303ブリティッシュ弾’’であることが分かった。

 

 ……こんな弾を使う銃なんて使ってねぇよ。

 

俺はパソコンを開き、メールでメーヤに連絡すると……パソコンにテレビ電話の通知が来ている。俺はそのアプリを起動させると……メーヤからだった。

 

 

 

『おはようございます……イブキさん』

 

メーヤは寝起きだったのか、あくびをしながら目をこすっていた。彼女はネグリジェを着ていたため、その豊満な体が……

 

 ……いいか俺?向こうはシスター。下手なことをすれば『HELLSING』のアンデルセンがすっ飛んでくるんだぞ?

 

俺は‘‘鉄の意志’’で男の欲をねじ伏せる。

 

「あぁ、おはよう。あのさ、メーヤ。武偵弾、届いたのはいいんだけど……」

『それは良かったです~』

 

メーヤは眠たそうにしながらも、聖母の様な美しい笑みでうなずく。その仕草(しぐさ)で彼女の豊満なものがたゆんと揺れ……

 

 ……おい、どうした‘‘鉄の意志’’!?

 

俺は急ぎ‘‘鉄の意志(ペラペラに薄い)’’で視線を戻す。

 

「あのさ……弾薬が違うんだけど……」

『……?ちゃんと武偵弾を送ったはずですけど……』

「いや、そうじゃなくて…….303ブリティッシュを俺は使ってな……」

 

  ゴーン……ゴーン……

 

パソコンから荘厳な鐘の音が聞こえる。その瞬間、メーヤはハッと眠たそう目を見開き、ネグリジェに手をかけた。

 

「え!?ちょっと!?」

『あぁ!!礼拝の時間なのでまた後でお願いします!!』

 

  プツン……

 

メーヤは急いで着替えながらテレビ電話を切った。

 

 

 

 

 ……これ、どうしよう。

 

 俺は武偵弾(ミニチュアボトル)に目を向けた。やっぱりその箱には.303ブリティッシュ弾が入っている。

 武偵弾は一発で数十万~数百万はするらしい。それを『もう一回送れ』というのも気後(きおく)れする。

 

 ……この弾を使うのは、『リーエンフィールド』・『ルイス軽機関銃』・『ヴィッカース重機関銃』とか。そう言えば『ウィンチェスター』も使えたっけ?

 

 機関銃は銃剣つけて振り回せないし、38式があるから『リーエンフィールド』も『ウィンチェスター』もいらない。

 

 

 

 結局薬莢を外し、弾頭を投げるか自爆かのどちらかになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

    極東戦役:欧州戦線にて

 

「これでどうやって戦えばいいんですか!!」

 

矢原嘉太郎(兄者さん)臨時少尉(野戦任官で昇進)がリバティーメイソンからの補給品である『リーエンフィールド(骨董品の銃)』を地面に叩きつけた。

 

「いつの時代の戦いだと思ってやがるんですか!?べらんめぇ!!」

 

 まだ『リーエンフィールド』ならいい方で、バチカンから『マスケット銃と黒色火薬』を送られてきたときは10分ほど呆然としてしまった。

 

「少尉、荷物が届きました。」

 

リバティーメイソン所属の少年が小包(こづつみ)を持ってきた。矢原嘉太郎(兄者さん)はさっきまでのいら立ちは何処へ行ったのやら、(作り)笑顔でその小包(こづつみ)を受け取った。

 

「なんです?コレ?」

 

その箱には……弾頭がカラフルに装飾された38式実包が10発ほど入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

4:新巻(あらまき)のお兄さん

 

 

 

とある商店街にて、少女たち5人が話しながら歩いていた。。少女たちは『Afterglow(アフターグロウ)』というガールズバンドを組んでいる。

 

「ねぇねぇ~、‘‘クリスマスカード発売中!!’’だって」

「「「「「あぁ~……」」」」

 

灰色の髪のマイペースな少女が声を上げた。‘‘クリスマスカード’’という言葉を聞き、4人があることを思い出した。

 

「ふふふっ、‘‘クリスマスカード’’と言えば……」

「そう言えば、昔はサンタさんにみんなで手紙を届けに行ってたっけ」

 

茶色気味の黒髪ショートカットの少女とピンク髪の豊満(何処がとは言わない)な少女が声を上げた。

 

「あはは!!そうだったな」

「そう笑っているけど……最初のきっかけは巴だからね?迷子になりかけて……その後、郵便局で強盗にも会って……。ほんと大変だったじゃん」

「え?あれは蘭だろ?」

「あれは巴が……!」

「はいはい、それまで~」

 

赤髪の長身少女と黒髪赤メッシュの少女が喧嘩になりそうだったので、灰色の髪のマイペース少女が止めにかかった。

 

「ふふ、懐かしいね。初めて5人だけでサンタさんにお手紙出しに行って、『新巻(あらまき)のお兄さん』に会った時の事」

「あの年に私達5人、友達になったんだよね」

 

茶髪少女とピンク髪の少女が話題を膨らませていく。

 

「そっか、あの年が色々と初めてだったんだ。」

「そだよ~。蘭とあたし達が出会って、友達になった年……。あたしは昨日の様にはっきり覚えているよ~」

 

黒髪赤メッシュ少女の言葉に、灰色のマイペース少女はあの時を思い出すような遠い眼をして答えた。

 

「クリスマスの日、『新巻(あらまき)のお兄さん』がテレビに映ってたよなぁ。確かテロリストを倒したんだっけ……」

「そうそう!!あの時はすごく驚いたよね!!」

 

赤髪少女の言葉に、ピンク髪の少女は激しく同意した。

 

「今思えば……『新巻(あらまき)のお兄さん』ってあたし達と同じくらいの年なんだよね」

「あの後、『新巻(あらまき)のお兄さん』にお礼を言おうと思っても全然会わなかったんだよね」

 

黒髪メッシュ少女と茶髪少女の会話を尻目に……灰色髪のマイペース少女は『新巻(あらまき)のお兄さん』のことを思い出した。

 

 ……『新巻(あらまき)のお兄さん』って名前じゃないし、そのあと何度かテレビでニュースになってたんだけどねぇ~

 

 

 

 

 

 

 

  約十年前、のちに『Afterglow(アフターグロウ)』を組む少女たちがまだ小学生になっていない頃の話。

  幼女5人はサンタさんへの手紙を書き、郵便局へ手紙を出しに行くことになった。

 

 幼女たちにとって郵便局までの道のりは長く、誘惑がいっぱいある。おもちゃ屋や文具屋の誘惑を我慢して進んできた幼女たちだが……食欲には勝てることができず、パン屋の前で道草を食べ始めた。

 

「わぁ~、パンのにおいがするよ~」

「ほんとだ!!みて、トナカイのパンがあるよ!!」

「何見てるの?あ、そりのパンだ!!」

 

灰色の髪幼女、ピンク髪の幼女、赤髪幼女はクリスマス限定のパンを見てキャッキャッと楽しく話し出す。

 

「みんな、ゆうびんきょくに行かないと……」

 

茶髪の幼女が道草を止めにかかるが……それでも3人の話は止まらない。

 

「モカちゃんはどのパンがいい?」

「モカはね~……」

「……グス、行かなきゃ……サンタさん……」

 

黒髪幼女が泣きだしそうになりながら、呟いた。

 

「らんちゃん、大丈夫?」

「はやくゆうびんきょく、行かなきゃ……しまっちゃう。……そしたら、サンタさんに手紙、渡せない……」

「「「「……」」」」

「う……グス…‥サンタさん来ない……え~ん!!」

 

黒髪幼女が泣き出したのにつられ……幼女たち全員が泣き出した。

 

「「「「ふえ~ん……やだぁ~!!!」」」」

 

幼女たち5人の鳴き声が商店街にこだまする。

 

 

 

 

 

 

 幼女たちが泣き出した時、彼女達より年長な少年が新巻鮭(あらまきじゃけ)を背負い、大きな白いビニール袋を持った少年がパン屋に向かって歩いていた。

 

「……ハァ。普通、小学生に12月下旬のアメ横に一人で買い物行かせるか?どう考えても小学生が持つ量じゃないだろ、コレ。」

 

 少年の持つビニール袋にはエビやコンブ・スルメ……それにオマケで付いてきたズワイガニ1杯が入っている。どう考えても小学生一人が持てる量ではない。

 こんな量を持ちながら、人があふれかえるアメ横での買い物は……想像を絶するものがあっただろう。

 

「と言うか……今時、袋詰めされずに藁縄(わらなわ)一本で吊るされている新巻鮭なんて初めて見たぞ?でも、なぜかそれが一番高かったんだよな……」

 

そんな大きなビニール袋を持ちながら、3キロは優に超える新巻鮭(そのまんま)を背負う少年は異様であった。

 

「……最後は‘‘山吹ベーカリー’’で『ナッツが入ったライ麦パン』か。……近場のパン屋で買ってもいいだろうに」

 

 少年の母親がそこの『ドイツパン』が好きなため、1~2ヵ月に1回は買っている。しかし、クリスマスに旅行を控えているため、荷造り中の母親に代わって少年が買い出しに向かったのだ。

 少年は母親から渡された‘‘メチャクチャヘタクソな地図’’を頼りに歩くと……やっと目当てのパン屋が見えてきた。

 少年は本日放送の『ドリ〇ターズ 再放送スペシャル』が始まるまでに帰宅したいので、必然的に早足になる。

 

「「「「「ふえ~ん!!!」」」」」

 

 少年がパン屋の前に付いた時……5人の幼女達が大泣きしていた。少年は幼女を無視して店内に入ろうと……できなかった。

 流石に幼女達が泣いているのを無視するのは、少年にはまだできなかったのだ。

 

「……お嬢ちゃん達、どうしたんだい?」

 

少年は重い荷物を地面に置いてしゃがみ、幼女達と同じ目線になって訪ねた。すると黒髪の幼女は少年の顔を一瞬見た後、さらに泣き出した。

 

「俺……そんなに怖いのか?」

 

自分の顔を見てさらに泣かれるという事に、少年は地味にショックを受けた。

 

「サンタさんにお手紙とどけなきゃいけないの~!!」

 

するとピンク髪の幼女が泣きながら理由を伝えるが……少年には全く意味が伝わらない。

 少年はため息を一つつき、地面におろしたビニール袋から好物のスルメを取り出した。

 

「ほら、泣き止んで!!スルメ上げるから!!」

 

幼女達は一瞬泣き止み、少年が手にしているスルメ(グロテスクな物)に注目し、再び泣き出した。というか、さっきよりも強く泣き出した。

 

「おにいさ~ん、ゲソちょ~だい?」

「え?あ、うん……」

 

灰色の髪の幼女は泣きださず、ゲソをもらって喜んでかじっていたが。

 

 

 

 

 少年が他の幼女達を必死になだめようとした時……後ろから大きな影が現れた。

 

  ガツッ!!!

 

「イッテェエエ!!!」

「君!!なにイジメてるんだ!!」

 

少年の脳天にゲンコツが落ちた。少年は頭を押さえながら声の方向を見ると……和服の男性がカンカンに怒っていた。

 

「いや、俺はイジメてなんかないですよ!?」

「イジメは良くないというのは知っているだろう!?」

「おにいさ~ん、もっとちょうだ~い」

 

叱る和服男に弁明する少年、泣きわめく幼女達とイカを食べる幼女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

「本当にすまなかった。てっきり娘を……」

「いえ、いいですよ。誤解も解けましたし……。それに見知らぬ子供を叱るって今時中々いませんよ。親の鏡ですね」

「しかし……」

「スルメ買ってもらってすいませんでした。それで充分です。」

 

何とか誤解を解き、‘‘山吹ベーカリー’’で『ナッツが入ったライ麦パン』を買った少年は乾物屋で『らんちゃんのお父さん』にスルメを買ってもらった。

 

「おいし~」

 

実は灰色の髪の幼女に食べられたスルメの補填も兼ねている。

 

 

 

 仲良し幼女5人組に『新巻鮭を背負った少年』・『らんちゃんのお父さん』は郵便局に向かっていた。

 

「君まで来て……いいのか?」

「まぁ、なんか嫌な予感がしたので……。」

「そうか……。じゃぁ君達、手紙を貸してくれるか?」

「「「「「ハイ!!」」」」」

 

郵便局に付いた時、『らんちゃんのお父さん』は幼女達から手紙を預かった後、郵便局の窓口へ向かった。そして『らんちゃんのお父さん』は窓口で‘‘年賀はがき’’を買っていた。

 

「まぁ、ワザワザ切手買うよりは直接親に渡した方が良いよな」

 

俺はそうつぶやいた後、ソファーに座った。

 

「ちゃんとサンタさんにとどくかなぁ~」

「お父さんならちゃんと届けてくれるもん!」

「えへへ、楽しみだなぁ~」

「おにいさ~ん、もうちょっと~」

「モカちゃん、それ、おいしいの?」

「…………もう2枚目だぞ?」

 

そんな時だった。目出し帽を被った黒服の青年3人が走って郵便局に入ってきた。

 見るからに怪しい黒服の3人組は窓口へドスドスッと向かい、ボストンバッグを置くとそこから拳銃を出した。

 

「「「動くな!!」」」

 

一人は窓口の女性、もう二人は他の客に向けて銃を構えた。

 

「おい、このバッグに詰めれるだけ金を詰めろ。」

「後そこの黒髪の少女。……そうだ、お前だお前。こっちにこい!!」

「お前……流石にあの年齢の子は可哀想だろ。」

 

一人は窓口の女性を脅し、二人は黒髪の幼女(らんちゃん?)を人質にしようとしていた。

 

「わ、私が人質になります!!だから娘は!!」

「いや、おっさんぐらいだと抵抗されたらアウトだもん。それにおっさんに近寄られるぐらいなら幼女の方が良いし」

「……お前、薄々思ってたけどロリ通り越してペドだったんだな。」

「違うからな!?」

 

『らんちゃんのお父さん』の奮闘も空しく、黒髪の幼女(らんちゃん?)が人質になってしまった。

 

 

 

 

「また強盗ですか?……ハァ」

「またってなんだよ……」

「今日2回目なんですよ、強盗」

「え……?」

「午前中に来て、偶々お客さんに警官と軍人がいたから何とかなったんですけど……もうお腹いっぱいなんですよ!!隣町にも郵便局あるでしょ!?そっち行ってくださいよ!!」

「いや、あの……」

「何で配属初日に2回も強盗が来るんですか!?なんかの祟りですか!?結婚できないのもこのせいですか!?」

「いや……はい、すいません」

「「「いいからさっさと金詰めてもらえよ!?」」

 

 

 窓口で漫才をやっているのを尻目に少年は壁にかかっている時計を見た。時刻は午後4時半前。‘‘快速’’に乗れない場合、6時半から始まる『ドリ〇ターズ 再放送スペシャル』に間に合わない可能性が出てきた。

 

 少年は意を決し、冷凍ズワイガニと新巻鮭を持って強盗(漫才師)3人組に死角から近づいていく。

 

 

 

 

「えーん!!え~ん!!!」

「ほら泣かないで!!アメあげるから。……ナオヤ!!早く金詰めてもらえよ!!‘‘カワイ子ちゃん’’が泣いちゃっただろ!?」

「‘‘カワイ子ちゃん’’ってやっぱりお前……」

「いや、分かってるって!!お姉さん……いえ、お姉さま。今回はスイマセンが我慢していただいて、お金を詰めて貰えませんか?」

「えぇ!!そんなチンケな銃なんて怖くはないわ!!2回目だから!!さっきの強盗なんて‘‘ランボー’’みたいな大男がバズーカやらロケット弾やら背負って、戦争で使っていそうなごっつい機関銃を向けてきたのよ!?」

 

 

こんな漫才をやっているため、少年は簡単に近づけた。

 ‘‘仲間を疑いの目で見ている強盗の一人’’が少年に気が付いたと同時に、少年は手に持った冷凍ズワイガニで顔面を殴った。

 

「ぐおぉおお!?……カハッ!?」

 

顔面が血だらけになりながら強盗は倒れた。少年は血だらけの強盗の股間を思いっきり踏み込み、落とした拳銃を拾いながら『らんちゃんを人質にする強盗』に新巻鮭を振るった。

 

  ドスッ!!

 

「ゴフッ」

 

3キロ以上の重りが振るわれれば……子供の力でも大人を昏倒できる。少年は昏倒した『ペドの強盗』の腹に銃口をくっ付け、発砲した。

 

「喰らいやがれ!!」

 

  シュタタタタタタ……

 

「イデデデ……!!!」

 

 強盗が持っていた銃は電動ガンだったようで、銃口からはBB弾が何十発も発射される。少年は電動ガンでは威力不足と考え、もう一度新巻鮭を振るった。すると『ペドの強盗』は大人しくなった。

 

「この野郎!?」

 

窓口で交渉していた最後の強盗が少年に銃を向けた瞬間、窓口の女性が机を飛び越え、強盗に飛び蹴りをした。

 

「ガハッ……ちょ、待って、ギブ、ギブ!!」

「2回も強盗が来てこっちは慣れてるよ!!」

 

窓口の女性は強盗に馬乗りになり、そのまま鋭い拳を浴びせる。

 

  バァン

 

「「「警察だ!!動くな!!」」」

 

 

それと同時に警察が到着し、『冷凍ズワイガニ』と『新巻鮭』の犠牲によって強盗はお縄になった。

 

 

 

 

「君!!強盗と戦うなんて危ないだろう!?」←らんちゃんのお父さん

「坊や!!勇気は認めるけど危なかったのよ!?」←窓口の女性

「よくやったけど、そう言うのは大人に任せなさい」←警官

「……ハイ、スイマセンデシタ。(早く帰りたい)」←少年

 

 なお、1時間の説教の後に少年の両親が現れ、その場で3時間ほど説教されたため……『ドリ〇ターズ 再放送スペシャル』が一切見れなかったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

  その年の日本時間12月25日19時ごろに速報が入った。

 

『ロサンゼルス、ナカジマプラザでテロリストによる人質事件が発生し、たった今、偶然その場に居合わせた警察官と日本人の少年の二人によって事件は解決されました。』

 

「あ、新巻のお兄さんだ。」←黒髪幼女

「ほんとうだ~」←灰色髪の幼女

「…………え?いや……え?」←らんちゃんのお父さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……その後も、『アメリカの空港でテロリストと戦った』のもテレビでニュースになってたし、最近だと『アメリカの中国総領事の娘の誘拐事件』を解決したってあったなぁ。

 

 灰色の髪のマイペース少女はそんなことを思いながらニヤリとし、ついでにスルメが食べたくなった。

 

「きっと今はイケメンになってそう!!」

「いや……そうなるかは分からないでしょ」

 

ピンク髪の少女の言葉に、黒髪赤メッシュの少女は突っ込んだ。

 

「でもすごいよね。一人で強盗と戦うなんて!!」

「きっと今は武偵高校に通ってたりしてな!!」

 

茶髪少女と赤髪少女がさらに話を膨らます。そしてこの5人『Afterglow(アフターグロウ)』はさらに話が弾みながら、家への帰り道を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 そのころ、『新巻のお兄さん』は……新幹線のトイレにこもっていた。

 

「ぐぁあああ……」

 

 札幌でシェフ和泉に食わされた‘‘エビチリ’’によって腸が大暴走していたそうだ。

 

 

 

 

5:人命救助の結果

 

 

 『黒森峰、決勝戦で敗北』

 

 黒森峰女学園はあの大会に優勝すれば、10連覇という前代未聞の金字塔を打ち立てることができたはずだった。

 少女はその試合中にフラッグ車を放置して川に落ちた仲間を助けた。『命を落としていたかもしれない仲間の危機を救った』というだけなら美談で終わっただろう。

 

 だが、皮肉にも『その仲間の命』の代償としてフラッグ車は敵に打ち取られ、10連覇を逃してしまった。

 その後、何ヶ月もの間、マスコミ・チームメンバー・OGなどからの批判に耐え続けていたが……少女にはそろそろ限界であった。

 

 

 

 

  『黒森峰、10連覇を逃し決勝戦で敗北』 

 

 

 

 久しぶりの休日、少女はずっと自室に引きこもっていた。この空間だけは……自分を非難しない、安寧で平穏な場所であった。

 しかし、少女は学生だ。いつまでも休むことはできない。学園艦が出港する10分前、少女は乗船用のタラップの列にイヤイヤながら並んだ。 足を一歩づつ踏みしめ、学園艦に近づくと同時に、批判され続けた数ヵ月を思い出す。

 

  『戦犯』・『裏切者』・『黒森峰の面汚し』・『西住流のできない方』

 

違う事を考え、気を紛らわそうとすればするほど……あの数ヵ月が頭の中で再生される。少女は頭が痛くなり、胃がムカムカし始めた。

 

「うぁあああああ!!!」

 

 

少女は叫び、無理やり思考を真っ白にした。少女はハッと周りを見ると……沢山の生徒・学園艦の住民に、絶対零度の視線による集中砲火を喰らっていることに気が付いた。

 

「ちょっとアンタ!!大丈夫!?」

「……え?あ、い、いや……いやぁあああ!!!!」

 

少女は同級生の手を払いのけ、一目散に学園艦から逃げた。あの大きな学園艦(鉄くず)が見えない場所へ……

 

 

 

 

 

 『黒森峰、西住みほ選手が原因で敗北』

 

 

「ウ……オェ……」

 

 少女は鉄道に乗り、学園艦が見えなくなるところへ向かった。途中何度か乗り換えをし、着いた先は……福岡は新門司港、また港である。

 少女は港に泊まっていたフェリーを見て、ターミナルのトイレへ駆け込み、胃の中の物を吐いた。途中でも吐いていた少女は……出るものは胃液ぐらいしかなかった。

 

「うぅ……」

「あんた!!大丈夫!?」

 

 トイレから出てきたボロボロの少女に、ターミナルの係員のおばちゃんが駆け寄ってきた。

 

「……だ、大丈夫です。」

「じゃぁ早く急ぎな!!もうフェリー出ちゃうよ!!」

「え……いや……」

「もう出港なんだから!!ほら、駆け足!!」

 

少女はそのままフェリーに乗せられ、そのまま九州を後にした。

 

 

 

 フェリーの風呂で体を清め、コインランドリーで服をきれいにした少女は近くのソファーで数ヶ月ぶりに安眠で来た。そのせいで徳島を通り越して東京まで行ってしまったのだが。

 

 

 

 無賃乗船で東京に着いてしまった少女はもう、どうでもよくなってしまった。もうどんな罪を犯しても怖くはない。

 戦車道に憑かれ、そして疲れた自分への最期のご褒美だ。東京を回った後、ここで死のうと……。

 

 少女はそう考えると少し楽になった。そして東京(自殺の地)へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 少女は知らない。東京に付いた日に、大規模なテロ事件が起こることなど。そして命の恩人二人と、‘‘自分のもう一つの可能性’’に見えた親友に出会うことなど……。

 

 

 




 1はイブキの数少ない特技『マラカス』習得の理由です。
 ジミさんは『やわらか戦車』の『ジミおじさん』をモデルにしています。


 中空知さんの好物にドリアンが加わったとか。


 矢原嘉太郎少尉は送られた武偵弾でブービートラップを作ったとか。


 『Bang Dream!』の『Afterglow(アフターグロウ)』が登場。この5人組は次章の事件では深くかかわりませんが、ある一人にとっては得難い親友ができるそうで……
 ゲーム内イベント 『追想、いつかのクリスマス』をモデルにしています。

 冷凍ズワイガニの甲羅で殴られたら……子供の力でも血まみれになりそう。花咲ガニじゃないだけマシだと思って下さい。
 
 
 Next Ibuki's HINT!! 「モントゴメリー将軍」 
  
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