少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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久しぶりに難攻しました。遅れたことをお詫び申し上げます。

 もう一話あげてから事件が始まりますので、もうしばらく辛抱を……




 あぁ~、この3月はできるバイトがどんどん辞めていく……。負担が増えるんじゃ~


形あるもの、いつか壊れる……

「チクショウ!!なんだってこんな目に!!」

 

俺は愛車である‘‘高機動車’’で必死に追手から逃ていた。

 

  ズダダダダダ!!

  ガンガンガン……

 

敵が銃を撃ってきているようだが……有難い事に拳銃弾を撃っている様だ。防弾板を貫通する心配はないが、それでも心臓に悪い。

 

「あんたの護衛をしてからヤケに襲撃が多いんだよ!!テメェは疫病神かなんかか!?」

 

 白鷺千聖の護衛を始めてから三日……ナイフで刺されたり、銃で撃たれたり、バンジーの紐が切れたりと、生傷が絶えない。

 

「あら、私を護衛してくれる契約でしょ?どんなことが起こっても守ってもらうわ?」

 

助手席に座る白鷺千聖(護衛対象)()ました声で話すが……目尻には涙が溜まっており、笑顔が引きつっている。

 

「な、なんで銃に撃たれるのぉおおお!?」

「あ、彩さん!?頭を下げてください!!」

「おぉ~……ルンッてしてきた!!」

「イブキさん!!ブシドーで頑張ってください!!」

 

後ろで白鷺千聖(護衛対象)以外の‘‘Pastel*Palettes(通称:パスパレ)’’メンバーが悲鳴を上げているが、あえて無視する。

 俺は車のサイドミラーをちらりと見ると……追手の車の屋根が開き、そこから対戦車ロケットを担いだ人間が……

 

「ウソだろ!?」

 

 ……ここは町中だぞ!?なんてものを出してやがるんだ!?

 

俺は慌ててハンドルを切った。横や後ろから悲鳴が上がるが無視する。

 

  バシュ!!

 

目の前にロケット弾が通り過ぎていった。何とか避けたようだ。

 しかし、急にハンドルを切ったせいだろう……スリップし、車体が回転(ヨーイング)(上下を軸にして回転)し始めた。

 

「「「「キャーーーーー!!!」」」」

「おぉ~!!!」

 

俺は何とか立て直そうとするが……なかなかうまくいかない。俺は車両科(ロジ)ではないため、運転技術は高くないのだ。そのまま俺の高機動車は路肩に止まっていた車にぶつかった。

 そして高機動車は宙へ跳ね上がり、ゴロゴロと10台前後の車の屋根を回転(ローリング)(前後の軸に対して回転)し、転がっていく。

 

「「「うわぁあああ!!」」」

「「キャーーーーー!!!」」

「すごーい!!」

 

 ……なんだってこんな目に。

 

俺はハンドルを握りながら、ここ最近で何があった振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と藤原さんは笹井を笑顔で送り出した後、適当な店で焼き鳥を頬張った。そして、結局最後は士官クラブで飲んで解散となった。

 

「ただいまぁ」

 

寮に帰り、ふとキンジの部屋の扉を見ると違和感を感じた。そうだ、普段なら『キンジ』と書かれた板切れがあったはずだ。

 俺は不思議に思い、ドアをノックするが……返事がない。そこで、俺はキンジの部屋に入ると、そこはもぬけの殻だった。

 

「…………俺には言わなかったか」

 

俺はこの部屋を見てすべてを理解した。キンジは武偵高を辞めたのだ。

 キンジが‘‘特秘任務(シールドクエスト)の準備’’としてコソコソと何かをしていたのは知っていた。だが、まさか退学準備だったとは夢にも思わなかった。

 

 ……キンジが特秘任務(シールドクエスト)の準備をしていた時、俺は酔拳の修行で『蝦夷テレビの招待』を忘れようとしてたからな。それで気が付かなかったか。

 

一応、幼馴染(自称)として一言は欲しかったなぁ……と思いつつ、元キンジの部屋に入った。

 部屋を見渡すと……備え付けの棚に、複数の小さな木箱と紙箱が置いてある。

 なんだ忘れ物か……と思いながらそれを持ちあげると、その箱には付箋が張り付いてあり、『イブキへ 要らないからやる』と書いてあった。

 

「なんだ?この箱?」

 

俺は木箱を開けると……そこには『米軍横流しの9㎜パラベラム弾』が入っていた。この弾はキンジの愛用していた物だったはずだ。

 

 ……本当に武偵を辞めたんだな。

 

俺はこの弾丸を見て、‘‘キンジが辞めた’’ことをストンと実感した。さっきまで頭では理解していたのだが……心のどこかでは納得していなかったようだ。

 キンジは近接戦専門で、近接戦では銃弾を大量に使う。そして予備の弾丸を置いていくという事は、キンジは自衛以外では銃を握らないという意思表示だ。

 

「俺も一応‘‘ワルサーP38’’を持ってるから、この弾は使うな」

 

 ……最近、ワルサーP38 (こいつ)は実戦で使ってないな

 

俺はそう思いながら紙箱の方を開けると……『鉄薬莢の9㎜パラベラム弾』が入っていた。

 

 ……あれ?この前の体育祭の景品として配られた安物弾丸じゃなかったか?

 

俺はここでやっと……‘‘処分が面倒な物’’を渡されたことに気が付いた(銃弾の処分は意外に高い)。

 

「き、キンジ!!テメェ!!!」

 

 

なお、後日射撃訓練で鉄薬莢を使ったら……見事に排莢不良(ジャム)を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺は階級章を外した第一種軍装を着て、白鷺千聖(護衛対象)との待ち合わせ場所に向かって高機動車を運転していた。

 

 

 今回の護衛は、白鷺千聖(護衛対象)の学校でも護衛をして欲しいそうだ。そのため、白鷺千聖(護衛対象)が通う‘‘花咲川高校’’へ偽装転校をする必要がある。

 そして、それらの手続きは白鷺千聖(護衛対象)の所属する芸能事務所が手配する契約だった。‘‘花咲川高校’’は最近女子高から共学になったため、比較的楽に転校工作はできたそうだが……制服までは手が回らなかったらしい。

 

 ……まぁ、第一種軍装でバレねぇだろ。

 

‘‘武偵高の制服’’では護衛だとバレやすい。しかし、俺は‘‘武偵高の制服’’以外の学生服を持てない。そこで、俺は第一種軍装を着た。

 以外なことに、第一種軍装に似た学生服の学校は結構ある。そのため、階級章を外せばバレないはずだ。着慣れた服なので戦闘の時に問題にならない……という理由もあるが。

 

 

 

 さて、待ち合わせ場所の小さな公園に車を止めると、すでに白鷺千聖(護衛対象)は待っていた。

 

「あら、遅かったわね」

「予定時刻の10分前には到着しているんですけど」

「護衛対象が到着する前には到着する必要があるんじゃないかしら」

「そんなこと言われても、書面上の待ち合わせは10分前だからなぁ……」

 

俺はため息をついた。白鷺千聖(護衛対象)は扉を開けて助手席に座り、シートベルトをつける。

 

 ……正直に言って、面倒臭い

 

 藤原さんが喫煙をする理由がよくわかる。ここでストレス発散として飲酒なんてもってのほかだが、喫煙なら‘‘まだ’’許される。

 

 ……実家の隣の‘‘吉田の爺様’’に美味い煙草でも教えてもらおうかな。

 

俺はため息をつきながら車を運転し、学校近くのコインパーキング車を止めた。

 

 

 

 

 さて、俺が白鷺千聖(護衛対象)と一緒に校門まで歩くと……今時珍しいことに、持ち物検査をやっていた。

 

「あら、まさか‘‘持ち物検査’’を今日やるなんて……」

「……お前、分かってただろ」

「あら、そんなことはないわよ?」

「その演技でわかるんだよ、べらんめぇ!!」

 

俺は白鷺千聖(護衛対象)の仕草を見て、ワザとこの日から護衛を始めただろうと予想が付いた。

 さて、校門では‘‘青緑色で長髪の少女(風紀委員?)’’が張り切って持ち物検査をやっている。銃や刀は学校の許可を得ているため、大丈夫だと思うのだが……心配だ。

 

 ……いや、念のために‘‘四次元倉庫’’の中に武器弾薬はしまっておこう。ん?そうだ、‘‘四次元倉庫’’か

 

俺はあるイタズラを思いついた。ポケットやカバンに‘‘四次元倉庫’’の出入り口を設けたらどうなるんだろう。あの風紀委員は必死になって最後まであさるのだろうか。

 

「何をニヤニヤしているのかしら?……気持ち悪い

「小さく言ったのも聞こえてるからな。……なに、『持ち物検査で予想外なものが出てきたらどう対応するんだろう』って思ってな」

「人には見せられない物でも持ってきているのかしら?変態ね」

「そんな想像をするお前の方が変態だよ」

 

俺は大きなため息をついた。護衛任務は両手の指で数えられるほどしかやっていないが、ここまで敵意むき出しの護衛対象は初めてだ。

 

 ……俺、何かコイツにやったか?

 

と言うか、顔合わせの時と朝以外にコイツと会ったことがない。なので、理由が見つからない。

 

 ……性格が元々こんなツンケンしているのか?

 

何か理由があるにしろ、素であるにしろ、面倒なことには変わりがない。今日何度目かのため息がこぼれる。

 

 ……そもそも女子が護衛対象なら、女子の武偵が護衛すればよかっただろうに。

 

俺は周りにジロジロ見られながら、持ち物検査の列に並んだ。

 

 

 

 

 

 

 この護衛依頼が来た時、酔った蘭豹と綴が回転式ダーツで生徒を決めたことは……イブキは一生知ることがないだろう。

 

 

 

 

 

 

 さて、並び始めて数分、ジロジロとみられる視線にも慣れ始めた時だった。

 

「あ、千聖ちゃーん!!」

 

‘‘肩にかかるほどの長さのピンク髪の少女’’が白鷺千聖(護衛対象)に声をかけてきた。

 俺は一瞬そのピンク髪の少女を警戒したが……すぐにその警戒を解いた。そのピンク髪の少女は白鷺千聖(護衛対象)が所属するアイドルユニット:‘‘Pastel*Palettes(通称:パスパレ)’’のボーカルだからだ。

 

「あら、彩ちゃん。どうかしたの?」

「千聖ちゃん!!今日転校生が来るんだって!!楽しみだなぁ」

「あら、そうなの?」

 

 ……君の後ろにその‘‘転校生’’がいますよ。

 

俺は周りの男子生徒を見るが……俺のとは全く違う制服を着ている。意外と気づかない物なのだろうか。

 

「あ、彩ちゃん?後ろにいる方がその人なんだけど……」

「え?そうなの!?」

 

ピンク髪の少女が勢いよく振り向いた。ピンク髪の少女は白鷺千聖(護衛対象)と違い、年相応な精神年齢をしていて、目も白鷺千聖(護衛対象)と違って夢に輝いている。

 

 ……このピンク髪の少女の護衛がよかったなぁ。こんな大人の世界を覗いて、黒くなった白鷺千聖(護衛対象)によりは断然……

 

俺がそう思った時、白鷺千聖(護衛対象)は拳を振るってきた。俺はその拳を余裕で避ける。

 

「何か変な事でも考えているのかしら?」

「おい、‘‘思想・良心の自由’’って言葉を知っているか?」

「え?……え?」

 

俺は白鷺千聖(護衛対象)に軽くチョップを入れ、強制的に黙らせた。白鷺千聖(護衛対象)は頭を押さえて涙目になる。

 

「転入生の村田です。よろしく。」

「え!?え、えっと……『まんまるお山に彩を!!丸山彩です!!』」

「お、おう……」

 

ピンク髪の少女は、今や懐かしい‘‘ゲッツ’’の様なポーズを取りながら言った。

 白鷺千聖(護衛対象)の所属する‘‘パスパレ’’に所属しているため、ある程度の情報を調べてある。そのため、ピンク髪の少女‘‘丸山彩’’の仕草もある程度知っているのだが……まさか、本当にこんなポーズをとるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 さて、俺が‘‘丸山彩’’の時調的なポーズ唖然(あぜん)とし、空気が悪くなって互いに手出しができなくなった。そして数分後、やっと持ち物検査の順番が来た。

 

 ……今時持ち物検査って、空港の手荷物検査じゃねぇんだからさ

 

俺はそう思いながら、カバンを風紀委員であろう生徒の前にある机に置いた。

 

「あなたは……今日転入する‘‘村田さん’’ですか?」

「はい、よろしくお願いします。先輩。」

「……あなたとは同学年ですよ?」

 

俺は先輩だと思って頭を下げると……青緑色の長髪少女は微笑みながら答えた。

 

 ……笑顔が美しいが、この子にイタズラを仕掛けるんだよなぁ。

 

俺は少し罪悪感を感じながら、カバンとポケットに‘‘四次元倉庫’’の扉を開けた。

 

 

 

 

「……イワシ?」

「大きなパーティー用サングラス……」

 

俺の目の前には玩具やらゴミやらが山のように積まれており、俺のカバンやポケットを必死であさる生徒や‘‘青緑色の長髪少女’’は顔が引きつっていた。

 

「これは……牛肉?」

「それは景品で貰った豪州産のステーキ用肉だ。そんなところにあったのか……」

「あ、網?」

「あ、訓練の時に拾った漁網だ。使うと思ってしまっといたんだよな」

 

俺のカバンやポケットからはありえない物が多数出てきて、風紀委員たちは驚いている。

 

「……なんであんなものが入っているのよ」

「あんな大きいものが入るんだね」

「ブシドーです!!」

「武士道と関係ないと思うんですが……」

「キラキラドキドキする!!」

「ハァ!?」

 

周りの生徒達も何が出るのかと注目している。

 

「音が鳴るゴムのニワトリ」

「……一時期、儀杖隊の訓練をやろうとしてたから隠したんだけど、ここにあったんだ」

「い、一升瓶!?日本酒!?」

「許可は貰ってますよ」

 

日本酒が出てきた所で予鈴が鳴った。それを聞いた生徒たちは急いで玄関口へ向かっていき、‘‘青緑色の長髪少女(風紀委員)’’は重いため息をついていた。

 

「村田さん、このようなものをどうやって入れるんですか?」

「……いやぁ、最近整理してなくて」

「ぶ、物理的に入らないと思うんですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、この花咲川高校への転入は特に変わったことがないので割愛する。強いて言えば、多数の生徒にジロジロ見られたことくらいだ。

 

 午前中は授業を受け、午後からはドラマの打ち合わせがあるらしい。なので俺と白鷺千聖(護衛対象)はその打ち合わせ場所である‘‘とあるビル’’に向かった。

 そのビルのエレベーターに二人で乗り込もうとすると、すでに先客がいたようだ。

 

「おはようございます」

「「おはようございます」」

 

先客は長袖のカラーシャツを腕まくりした、長身の好青年だった。その好青年は重そうな段ボールを持っている。

 

「白鷺さん、珍しいですね。マネージャー以外の人と来るなんて、しかも男性と。」

「えぇ、事務所に脅迫文が届いたので。私の護衛をやってもらっているんです。」

「そうなんですか。」

 

好青年は白鷺千聖(護衛対象)と話しながらちらりと俺を見てきた。俺はその好青年と目が合った時、思わず銃剣を握った。

 

 ……な、何だ!?こいつ!?

 

その好青年の目は、‘‘汚染しきった池のヘドロ’’の様にドロドロとしていた。ここまで狂った目をした人間は片手で数えられるほどしか会ったことがない。

 

 ……しかもこんな‘‘目’’をしたやつらは全員、重要抹殺対象だった。

 

俺が警戒している間も、白鷺千聖(護衛対象)と好青年は談笑を続ける。

 

「護衛さん……ですか、ディレクターの江戸門 健(えどもん けん)です。よろしく」

 

ある程度話した後、江戸門と言う男はその‘‘濁り切った瞳’’を歪ませながら、笑顔で握手を求めてきた。

 

「すいません、勤務中なので答えられません」

 

俺は護衛を理由にして、江戸門の握手を拒否した。

 

 ……こういう奴は何をしでかすか分からない。握手などの肉体的接触だけでどんな人間か分かる奴もいるんだ。

 

「そうですか、職務中に失礼しました。」

 

江戸門は‘‘濁り切った瞳’’をさらに歪ませ、申し訳なさそうな顔をする。俺はその‘‘濁り切った瞳’’を再認識し、鳥肌が立つ。

 

  キーン!!

 

‘‘エレベーターが階に付いた時の鐘の音’’が、俺には神の慈悲に聞こえた。

 

「じゃぁ、頑張ってください」

 

江戸門は笑顔でエレベーターを降りていった。俺は江戸門が視界から消えるまで、銃剣を離すことができなかった。

 

 

 

 

 

 そして無事に打ち合わせが終わり、俺と白鷺千聖(護衛対象)が再びエレベーターに乗り、扉を閉めようとした。

 

「待ってください!!乗ります!!」

 

江戸門が慌ててエレベーターに飛び乗ってきた。そして江戸門はポケットをあさり始めた。

 

「白鷺さん、忘れ物がありましたよ?」

 

そう言って江戸門が出したのは……特大の肥後守だった。流れるように刃を出し、白鷺千聖(護衛対象)へ刺そうと……

 

 ……刃渡り5寸(約15センチ)以上だと!?

 

俺は慌てて江戸門と白鷺千聖(護衛対象)の間に体を滑らせた。

 

  ドスッ!!

 

「チッ!!」

「……ッ!!」

「……え」

 

そして俺の腹に肥後守がめり込んだ。江戸門は不快な表情をする。白鷺千聖(護衛対象)は何が起こっているのか理解できないようだ。

 

 ……防刃チョッキ着てくればよかったなぁ。

 

俺は肥後守を持つ江戸門の右腕を上から握って動けなくした。もちろん、腹からは鮮血が溢れ出ているが、肥後守を抜いたら余計に血が出る。

 

 

 ところで、第一種軍装・第二種軍装は防弾・防刃処理は一切されていない。理由は金がかかるからだそうだ(なんでも防弾防刃にすると値段が3倍ほど上がるらしい)。

 そのため、危険地帯に行くときは中に防弾・防刃チョッキを着たり、外から着たりする。

 

 

「邪魔なんだよ、お前。白鷺さんのそばにいてよぉ。……白鷺さん、今この男から解放してあげますよ」

 

江戸門はそう言って狂おしそうに、その‘‘濁り切った瞳’’で白鷺千聖(護衛対象)を見た。白鷺千聖(護衛対象)は震えながら床に崩れ落ちていった。

 

「さっさとコイツを殺して、白鷺さんを老化から解放しないと……。まず腐りやすい内臓を……」

 

江戸門は‘‘濁り切った瞳’’を歪ませ、左ポケットから再び肥後守を取り出して俺の首に刺そうとしてきた。

 

「ふっざけんな!!この野郎!!」

 

俺は肥後守を叩き落とし、江戸門の喉元に鉄拳をくらわす。

 

「ゴフッ!!」

「……ッ~~!!」

 

 ……この野郎!?腹に刺さっている肥後守をグリグリとさせやがって!!

 

 しかし、江戸門はすぐに意識を回復し、俺の腹に刺さっている肥後守を無理やり抜いた。

 

「……ハハッ!!どうしたんですか武偵さん!!あんたは俺を殺せないでしょう!?でも俺はあんたを殺せるんですよ!?」

 

 ……確かに、実際殺すとなると面倒なことになる。それに、ここで殺して白鷺千聖(護衛対象)がトラウマになったらさらに面倒だ。

 

 こんな密室、跳弾の恐れがあるので拳銃は使えない。俺は懐から銃剣を抜き、肥後守を引き裂いた。江戸門は驚いた様な、楽しんでいそうな顔をする。

 俺はそして、柄頭(つかがしら)で何度も殴ると……

 

  キーン!!

 

鐘の音と共にエレベーターの扉が開いた。

 扉の外には……血まみれの男二人を見て、驚いている人が多数いる

 

「た、助けてください!!この人が襲ってきて!!」

「何言ってんだ、てめぇ!!」

 

江戸門は表情を変え、いかにも自分が襲われている様にふるまった。

 

 

 

 

 

 結局、エレベーター内の監視カメラと白鷺千聖(護衛対象)が携帯で録音していた音声によって江戸門は逮捕された。

 

「みんな!!奴を殺せ!!奴は女神をアガペーで納豆しようt……!!」

 

江戸門は明らかに心神喪失を(よそお)い、喚きながら警察に連行されていった。

 

 ……なんて胸糞わるい

 

 

「あ、あの……ケガをしているので病院へ……」

「仕事があるんで大丈夫です。応急処置と鎮痛剤打ってもらっていいですか?」

 

俺は救急隊員に応急処置と鎮痛剤を撃ってもらい、白鷺千聖(護衛対象)と一緒に次の仕事場へ急いで向かった。

 

 

 

 

 

 

 文字数の都合上、その他の事件を詳しくは書けない。

 

 一日目はその江戸門の事件の後、熱狂的なファンにナイフで切られるという事件が2件起こった。

 二日目は映画のロケに同行した。その時、スタントマンが体調を崩して欠席だったので、なんだかんだで代わりに俺が飛び降りることになった。しかし、その際にバンジーのゴムが切れるという事件が発生した(特に怪我はない)。そのほかに銃撃を受ける事件も発生し、さらにボロボロになった。

 三日目はパスパレの練習だけだったので、今日こそ何もないと思っていた。しかし、パスパレのメンバーを家まで送ろうとしたところ、最初にある通りカーチェイスが発生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……後半、雑過ぎだろ!?

 

俺は突っ込みながら、高機動車と一緒に転がっていく。

 

 ギギギ……ドスン!!

 

回転(ローリング)(前後の軸に対して回転)していた我が愛車(高機動車)は奇跡的にタイヤだけで接地して止まった。

 俺はアクセルをベタ踏みし(高機動車はAT(オートマチック))、今度は追いかけてくる車の方へ前進した。

 

「な、なんで敵の方に行くのよ!!」

「お前は‘‘島津の退き口’’って知ってるか!?」

 

隣に座る白鷺千聖(護衛対象)が涙目で反論してきた。

 

「関ケ原の島津は‘‘中央突破して撤退’’なんてしてないわよ!!!」

「誰が‘‘中央突破する’’と言った!?」

 

高機動車が敵の車(ロードスターか?)に正面衝突する寸前、俺はハンドルを思いっきり切り、脇道に突っ込ませた。

 

 

 

 

 

 脇道に入ると、我が愛車(高機動車)の両側面から‘‘ガリガリ削れる音’’が響く。そして………行き止まりの壁にたどり着いた。

 

 ……チクショウ。これ以上は進めねぇ。

 

俺の我が愛車(高機動車)が止まった瞬間、後にはトヨタ・2000GT(日本最高の旧車)が追い付いた。

 

 ……高機動車の意地、見せてやろうじゃねぇか。

 

俺はギアをR(リバース)にし、アクセルを踏み込んだ。すると、高機動車は全速力で後退を始める。

 

「え…………待てって!?2000GTを廃車にする気か!?」

「ウソだろ!?」

 

我が愛車(高機動車)は2000GTを踏み、その上を爆走する。もちろん2000GTは踏み台になるため、ボンネットや屋根が潰れていく。

 

  ベキ!!メキメキ!!

 

「「あぁあああああ!!!」」

 

外から聞こえる悲鳴を無視し、我が愛車(高機動車)は2000GTを乗り越えた。

 

「あ、あいつ!?2000GTの価値をわかってないのか!?」

「と言うか早く逃げろよ!!お前の車もあれと同じになるぞ!?」

「や、ヤバッ!!」

 

 高機動車は爆走し、2000GTの後ろにいたマツダ・RX-7 (もちろんすでに生産終了)を引き潰して悲鳴を上げさせる。

 

 ……なんで戦闘するのにそんな貴重な車で来るんだよ。

 

 車に詳しくない俺でも、 ‘‘潰した2両の車’’は珍しい車だという事は分かる。

 

 

 

 

 

 

 高機動車は脇道から這い出て、大きな道路で再び逃げ出した。

 

  ダダダダ……!!

 

後ろには4台ほどの車が追いかけ、銃撃を食らわせてくる。

 

「……(白目)」

「彩さん!?しっかりしてください!!」

「ルルルンッ!!てしてきた!!」

「これが‘‘ツリノブセ’’ですね!!」

 

後ろが騒いでいるがそれを無視し、俺は‘‘四次元倉庫’’からパンツァーファウストを取り出した。そして適当に撃つと、敵の1台の近くに着弾した。その1台は運転を誤ったのか蛇行運転を始め、近くの2台は巻き込んで爆発する。

 

 ……な、何て運がいい。神棚を磨いたかいがあったな。

 

 

 

 

 

安心したのも(つか)の間、最後の一台が急加速して高機動車の右に横付けしてきた。

 

 ……なるほど一騎打ちしようってか?

 

俺は‘‘四次元倉庫’’から大型の銃を取り出した。

 高機動車の隣に横付けしたスポーツカー(改造されていて最早わからない)と同時に窓を開け、銃を互いに突きつける。

 

「喰らえこのヤr…………は!?」

 

敵の車の助手席に座っていた男が拳銃を出して威嚇し……そしてこっちを見て驚愕した。

 

 ……当たり前だ。拳銃のような‘‘ちっぽけな銃’’なんて屁でもねェ!!

 

 俺の25ミリ機関銃の銃口が、敵の車に向いていたからである。敵の車は慌てて避けようとしているがもう遅い。

 

「イピカイエー・マザーファッカー!!」

 

  ダンダンダンダンダン!!!

  ボーーーン!!!

 

俺は戸惑いなく引き金を引いた。25ミリ機関銃の掃射を受けた敵の車は大爆発を起こした。

 

「うおぉぁああ!?」

 

爆発の熱風を俺はもろに喰らい、思わず目を閉じた。髪がチリチリと焦げていくのが分かる。

 

「ちょっと!?前、前!!」

「……なんだy、っうわぁああ!?」

 

白鷺千聖(護衛対象)の声に、俺が熱風を受けながら目を開けると……目の前に壁が(せま)っていた。俺は慌ててブレーキとサイドブレーキを使い、ハンドルを切る。

 

 

 この操作が悪かったのだろう、高機動車はいきなりブレーキを踏んで方向転換をしたせいか、再び回転(ローリング)(前後の軸に対して回転)して、ビルの壁に激突した。

 

「お、俺の車がぁああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 この日、とうとう俺の高機動車が廃車になった。

 

 ……おれ、次の日からどうやって移動すればいいんだよ。

 

消防や警察が来た時、俺はボロボロの高機動車を見てそう思った。

 ついでに、シートベルトのおかげでパスパレの皆さんは無傷、俺は軽傷ですんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高機動車が廃車になった翌日の早朝、武偵高の車輛科(ロジ)の倉庫を武藤と一緒に捜索し、倉庫の隅に眠っていた光岡・ビュートを見つけた。

 

  ボンッ!!!ドッドッドッドッ……

 

「お!?動いた動いた!!これなら使ってもいいぞ!!」

「……む、武藤?お前正気か?」

 

 このビュート、当時は藍色でレトロな感じの洒落た車だったのだろう。

 しかし、今の姿はホコリまみれ、多数の弾痕や穴が開いており、あちこち錆びつき凹んでいる。そして運転手側のサイドガラスには弾が貫通したらしい大きな穴とヒビがあり、助手席側のサイドガラスやドアには赤黒い物(インクであることを祈る)が多数こびりついている。

 

 ……あ、ある意味、武偵高らしい車だな。

 

「どうせお前、壊すだろ?」

「………………否定できねぇ」

 

 武藤は『何を当たり前な事を言っているんだ』とでも言いそうな表情で俺に言ってきた。

 俺は反論しようとしたが……実際に昨日は高機動車を廃車にしており、今日も襲われる可能性があるために反論ができなかった。

 

「別にこれなら壊してもいいからよ!!…………これ、乗ると死人が出るって(いわ)くつきなんだよな

「おい武藤!?今なんて言った!?」

 

俺は武藤に掴みかかった。

 

 

 

 

 

 しかし、『すぐに貸せて・壊してもいい車』はこれしかないそうで……。

 

 ……再び軍から貰うなんて無理だしなぁ

 

『高機動車をプレゼントするため、手回しが大変だった』と神城さんがぼやいていたのを思い出した。

 結局、俺はこの‘‘レトロと言うよりは退廃的’’なボロボロのビュートを借りた。

 

 

 

 

 

 

 

  ドッドッドッド……プスン、ドッドッ……

 

 ……ほ、本当にこの車は大丈夫なのか?

 

ボンネットから白煙を上げ、時々エンジンが一瞬止まるビュートを運転しながら、俺は不安になった。

 

 ……せめてラジオでも流すか

 

「え?……は!?つまみが取れた!?」

 

頭が痛くなったのは……二日酔いのせいではないと思う。

 

 




 カーチェイスのシーンは『ダイ・ハード/ラスト・デイ』を参考にしています。

 
 銃弾は火薬があるので処分が大変だそうです。
 ついでに、イブキは普段‘‘14年式拳銃’’を使っていますが、補給の都合上‘‘ワルサーP38’’も持っています。

 
 花咲川は共学になりました。異論はないね?

 白鷺千聖がイブキを嫌っている理由は、後ほど分かります。

 青緑色で長髪の少女は『Roselia』のギターの人です。

 『島津の退き口』……下手に説明するより、調べたほうが早いです。あんな撤退は異常です。


 江戸門はもしかしたら再び登場する……かも

 

   Next Ibuki's HINT!! 「0u(レイウ)ちゃん 」
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