少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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何とか一週間以内に投稿成功。しかし、次話は一週間以内に投稿できるかどうか……努力はします!!








Die Hard3 in Tokyo  爆風は避けられない……

『村田!!ちょうど僕も東京駅に着いた!!』

 

無線から藤原さんの声が聞こえてきた。

 

『鶯谷までは消防車で僕たちが先導する!!目的の車両は4番線の9時59分発の列車だ!!』

「了解です!!」

 

  キキーッ!!

 

車が急停止し、東京駅に着いた。東京駅の目の前には消防車が多数止まっている。‘‘サイモン’’から警察の車は使ってはいけないと言われたため、消防車で先導するのだろう。

 

「(英語)ハハハッ!!『新宿御苑』から『東京駅』まで11分、ダントツの新記録だぜ!!」

 

俺はジョニー・マクレー(おっさん)の言葉で時計を見た。今の時間は9時56分。59分発の列車に間に合うはずだ。

 俺はそう思いながらセンチュリーから出ようとした時、鶯谷駅での電話の事を思い出した。

 

 ……あ、爆弾を外す事だけ考えてて、電話の件を忘れてた。

 

 俺は思わず頭を抱え……西住さんが戦車道をやっている事を思い出した。戦車道をやっているなら、車の運転もできるかもしれない。

 

「西住さん、『戦車道やってる』って言ってたよな!?」

「……え!?あ、はい。」

 

俺は怒鳴りつけるように西住さんに聞くと、彼女は慌てだした。

 

「車の運転できる!?」

「えっと、う、運転ですよね。あ、あの……」

「出来るのか!?出来ないのか!?」

「で、できます!!」

 

西住さんは覚悟を決めたのか、キッと俺の目を見ていった。

 

「この車を運転して鶯谷駅の2番ホームにある公衆電話まで向かって電話に出てくれ!!‘‘サイモン’’は『三人で』とは言っていなかったから大丈夫なはずだ!!」

 

俺はそう言って、センチュリーから降り、ドアを閉めた。すると、慌てて西住さんはドアを開けて外に出た。

 

「な、なにをする気ですか!?」

「列車に乗って爆弾を外す!!」

「死ぬ気ですか!?」

「分業だ!!どっちか失敗してもカバーし合える!!とにかく西住さんは鶯谷の公衆電話まで行け!!」

「りょ、両方失敗したら……」

 

西住さんが地面を向いた。きっと、戦車道大会での失敗を思い出したのだろう。

 

「大丈夫だ!!死んでたまるかよ!!いいから西住さんは早く鶯谷へ!!消防車が先導する!!2番線だから!!」

「(英語)坊主!!何やってるんだ!!」

「(英語)あぁ、今行く!!」

「……やっぱり熊本にいたほうがよかったなぁ。」

 

俺はジョニー・マクレー(おっさん)と一緒に山手線へ走り出し、西住さんは‘‘座った眼’’をして車を発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

「「……あ」」

 

西住みほは車を出発させた後、‘‘黒髪赤メッシュの少女’’を見つけた。

 

「え?あの……爆弾って?」

「ア、アハハハ……」

 

西住みほは答えに詰まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達は東京駅の改札を飛び越え、エスカレーターを駆け上って4番線のホームへ向かった。

 4番線のホームに足をつけた時、山手線の列車のドアが閉まるところだった。

 

「ウソだろ!?」

「(英語)クソッ!!」

 

ホームの‘‘黄色い線’’を踏んだと同時に列車の扉とホームドアが完全に締まり、発車し始めた。

 

 ……クソッ!!やるしかねぇ!!

 

「うわぁああ!!」

「(英語)最悪だ!!」

 

俺とジョニー・マクレー(おっさん)はホームドアを足場にし、何とか最後尾の列車の屋根に飛び乗った。

 

「(英語)おっさん!!さっさと行ってくれ!!」

「(英語)分かってる!!」

 

おっさんは車掌席の窓を蹴破り、無理やり車内に入った。俺も後に続いて車内へ入る。

 

「イッテ!?」

 

車内にはいる時に割れたガラスを引っかけ、左脇腹を切ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、アンタら何もんだ!?どうしてここに!?」

「(英語)警察だ!!爆弾を探させてもらう!!」

 

30代はいってない若い車掌はいきなり列車に入ってきた俺達に驚いて腰を抜かした後、ギャンギャンと(わめ)き始めた。

 

「武偵です!!『この列車に爆弾が仕掛けられた』と連絡がありました!!『そして運行を止めると爆発させる』と言っています!!」

「え!?…………は?」

 

若い車掌は床に崩れ落ちたまま、目を白黒させていた。

 

「もう一回言います。この列車に爆弾が仕掛けられたと連絡がありました。そして運行を止めると爆発させると言っています。くれぐれも列車を止めないでください!!」

 

  バン!!バン!!ベキッ!!

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は車掌席の扉を蹴破り、客のいるほうへ向かう。

 

「(英語)坊主!!早くしろ!!」

「(英語)分かってる!!」

 

俺は急いでジョニー・マクレー(おっさん)を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

「Excuse me, excuse me!! (訳:どけ!!どいてください!!)」

「すいません!武偵です!!そのバッグの中身を見せてもらう!!」

 

俺達は焦る心を押さえつつ、爆弾を探していく。

 

『次は上野、上野。お出口は左側です。』

 

 ……クソ!!早すぎる!!

 

俺は時計を見た。時刻は10時5分、ちょうど御徒町駅を過ぎたところだ。

 俺とおっさんはがいるのは一番後ろから数えてまだ三両目。通勤ラッシュの時間は過ぎたとはいえ、それでも乗客が多い。そのため、爆弾探しが遅々として進まなかった。

 

『上野、上野です。お降りの際は……』 

 

列車が止まり、ドアが開いた。乗客が行き交うため、さらに爆弾探しが遅れる。

 

「(英語)残り2分だ!!」

「(英語)クソッ!!人が多すぎる!!」

 

 ……とうとう次が鶯谷(うぐいすだに)だ!!

 

 

 

 

 3両目をほぼ調べ終え、4両目に行こうとした時だった。優先席の横に大きな青のスーツケースが置かれていた。近くには老人が二人だけ。

 

「武偵です!!このスーツケースはあなた達のですか!?」

 

俺はそこに座っていた老人二人に大声で尋ねた。

 

「何だって?」

「もう一回大声で言ってくれないかい?」

 

 ……クソッ!!(らち)が明かねぇ!!

 

俺が老人二人を訪ねている間、ジョニー・マクレー(おっさん)はそのスーツケースを慎重に調べる。

 

「このカバンはあなた達のですか!?」

「何だって?」

「4年前に近所の鈴木さんが持っていたカバンに似てるのぉ」

 

 ……あぁ、面倒な!!

 

俺は老人二人を無視し、ジョニー・マクレー(おっさん)がスーツケースを開けるの見守った。

 中身は……‘‘透明な液体’’と‘‘赤い液体’’が入った大きな筒と、電子機器だった。

 

「(英語)……当たりだ。」

「(英語)時間が無い!!おっさん解除できるか!?」

 

『ドア閉まりまーす。』

 

俺よりもジョニー・マクレー(おっさん)の方が爆弾や爆弾処理についての知識や経験がある。

 俺はジョニー・マクレー(おっさん)が爆弾解除できる事を期待するが……

 

「(英語)こんな短時間でできるわけないだろ!?」

「(英語)……クソッ!!車掌席から投げ捨るぞ!!」

 

俺とジョニー・マクレー(おっさん)でスーツケースを持ち上げ、来た道を戻り始める。

 

「じいちゃん!!ばあちゃん!!危ないから今すぐ前の方の車両に移動しろ!!早く!!他のお客さんも早く!!」

 

『次は鶯谷(うぐいすだに)鶯谷(うぐいすだに)です。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたし、戦車道やってるんですけど、その大会で失敗しちゃって……。それもあって九州から家出して東京まで来たら、爆弾テロに巻き込まれちゃって。」

「ば、爆弾テロ!?」

「そうなんです。わたし、その犯人を怒らせちゃって……。そのせいで巻き込まれちゃって」

 

西住みほは『黒髪赤メッシュの少女:美竹蘭』に事の顛末(てんまつ)を説明しながら、車を運転をしていた。西住みほの運転技術は戦車道のおかげか、さっきまで運転していたジョニー・マクレー(おっさん)よりも上手だ。

 

「‘‘西住さん’’でしたっけ?」

「はい。」

「家出するほど……辛かったんですか?」

 

美竹蘭の質問に、西住みほは苦笑いを浮かべた。

 

「わたしのせいで10連覇を逃しちゃったんです。その事をお母さんにも、チームのみんなにも非難されたんですけど……今のように‘‘命の危機’’にあってるわけじゃないから。アハハ……どうしてあんなことを……」

 

そう言った後、西住みほはカラ笑いをした。虚しい笑い声が車内に響き渡る。

 

「友達とかは……」

「仲が良かった子はいたんですけど……友達とかは……。アハハ………」

 

西住みほのカラ笑いが再び車に響き渡る。

 

 ……なんか、あたしに似てる。

 

美竹蘭はそう感じた。

 美竹蘭も、中学の時、幼馴染4人と違うクラスになってしまったことがあった。‘‘クール’’・‘‘ぶっきら棒’’・‘‘言葉足らず’’な彼女の性格もあり、知り合いもいないクラスで孤立してしまったのだ。

 

「あたしも、中学の時……」

 

美竹蘭は思わず、自分の中学の頃の事を話し始めた。

 

 

 話し始めて数分後、美竹蘭は色々と西住みほに暴露していたことに気が付き、思わず口を閉じた。美竹蘭は自分の頬が熱くなるのを感じる。

 

「「あの!!」」

 

西住みほと美竹蘭が同じタイミングで喋り出し、そして口を閉じる。

 

「美竹さんが先に……」

「西住さんが先に言って……」

 

一瞬、静寂が車内を占拠した後、笑い声が響き渡った。

 

「美竹さん」

「西住さん」

「「友達になってください!!」」

 

 

 

 

 

実家(戦車道)と向き合い、そして逃げ出した少女:西住みほ。実家(華道)に反発して逃げ、今は向き合う少女:美竹蘭。この二人の少女が出会った時、今度こそ何かが起こる……?

 

 

 

 

 

その時、目の前の消防車が停車した。鶯谷(うぐいすだに)に着いたようだ。

 

「蘭ちゃん、行ってくるね」

 

西住みほはそう言って車を飛び降り、藤原少佐と合流して改札を飛び越え、走って公衆電話を探し始めた。

 

 

 

 西住みほが鶯谷駅の改札を飛び越え、間違えて3番線のホームに向かおうとした時……

 

「みほ!!2番線はこっち!!」

「蘭ちゃん!?」

 

美竹蘭は西住みほの手を掴みんだ。

 

「あ、あたしも……と、友達だし……」

 

 

美竹蘭は顔を赤くさせて伏せながら……しっかりと西住みほの手を取り、2番線のホームまで案内する。

 

「何をしているんだ!!早く!!」

 

そして、青年将校(藤原少佐)の大きな声が構内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ビーッ!!ビーッ!!

 

「(英語)嘘だろ!?」

「(英語)おっさんどうした!?」

 

スーツケースの電子機器からブザー音を発し始めた。

 

「(英語)爆薬が混ざり始めた!!」

「(英語)嘘だろ!?」

 

俺はジョニー・マクレー(おっさん)慌ててスーツケースを覗き込むと……赤と透明の液体が混ざり始めていた。

 

「(英語)なんでもう混ざり始めるんだよ!!」

 

ついさっき上野から出たばっかりだ。上野~鶯谷間の半分も来ていないだろう。

 

「武偵です!!皆さん早く前の方へ移動してください!!爆弾が爆発する!!」

 

 ……あと20m弱で最後尾だ。

 

俺は喉が潰れそうなほどの大声を上げた。

 

 

 

 

 俺達は何とか最後尾の車掌席までついた。きっと今頃、先頭車両は鶯谷駅のホームが見えてくる頃だろう。

 

   ダンダンダン!!

 

俺は14年式を発砲し、窓ガラスをぶち割った。

 

「車掌さん!!早く逃げろ!!爆発するぞ!!」

「う、うるさい!!ここが俺の、俺の仕事場で『お客様の安全を守る』のが職務だ!!は、離れるもんか!!あぁ!!!」

 

若い車掌は足をガタガタと震わせ、涙目になり、声も震えているが……意地でも車掌席から避難しようとしない。

 

「(英語)おらぁ!!」

 

おっさんは壊した窓からスーツケースを投げ捨てた。そしてスーツケースが宙を舞っている時……

 

   チュドーン!!!

 

俺とおっさん、そして若い車掌は爆風で壁に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西住みほと美竹蘭(と藤原石町少佐)はホームを()けずり回り、やっと公衆電話を見つけた。

 

  プルルルル……

 

公衆電話からベルの音が聞こえる。西住みほはこの状態を一度見ているが、美竹蘭は初めて見たために驚いた。

 

  ガチャ……

 

西住みほは深呼吸した後、ゆっくりと受話器を持ち上げた。

 

「もしもし……間に合いましたよ?」

『あぁ、お嬢さん(フロイライン)か。イブキにジョニーは何処だい?』

「……あとから来ます。……運動不足で足がなまっているみたいで」

『そうか、私は彼らとも話したかったのだが……。とても残念だ。さようなら』

 

  ッー、ッー、ッー……

 

電話が切れたと同時に、西住みほは背筋が凍った。その時、列車がホームに滑り込んでくる。

 

「ど、どうだった?」

「美竹さん!!逃げて!!」

 

西住みほは美竹蘭の手を引き、階段の裏側に避難させた。

 

「おい、まさかそれって……」

 

青年将校(藤原少佐)はその様子を見て、そうつぶやいた瞬間……

 

  チュドーン!!!

 

鼓膜が破れそうなほどの大爆発音と共に、列車が急加速する。最後尾の列車がホームに乗り上げ、その莫大(ばくだい)な運動エネルギーを使ってホーム上の物体をなぎ倒していく。

 

「あぁ!!クソッ!!」

 

青年将校(藤原少佐)は二人の少女に覆いかぶさった。青年将校(藤原少佐)に破片が降り注ぐ。

 

  ズドドド……!!ドカーン!!

 

そして、階段にぶつかると列車はその勢いを止め、横倒しになって止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発が収まり……数分、いや数十秒、もしかしたら10秒も経っていないかもしれない。今、この場は爆音も怒号も響き渡らず、静寂がこの場を支配していた。

 

「い、生きてる?」

 

美竹蘭は自分が生きていることに驚きながらゆっくりと立ち上がった。彼女の気に入っていた服がホコリで汚れてしまったが、命には代えられない。どうせ、洗えばどうにでもなる。

 

「アハハ……こんなのに比べたら……」

「イッテェ……」

 

美竹蘭の隣で西住みほは割座(女の子座り)をし、皮肉的にも思える快晴の空を見上げながらぼやいていた。その隣では、ホコリまみれの青年将校(藤原少佐)が横になって(うめ)いていた。

 

「……大丈夫?」

「あ、ありがとう……」

 

美竹蘭は西住みほの手を握って引っ張り、立たせた。その時、西住みほの頭から、爆弾を外すためにこの列車に乗った‘‘二人の男’’を思い出した。

 

「……む、村田さん?マクレーさん?」

 

西住みほの頭には『失敗』という二文字に支配された。

 戦車道で失敗した時、死人は出なかった。しかし、今回の失敗のせいで二人は……

 

 西住みほは吐き気を覚え、崩れ落ちた。美竹蘭は西住みほの背を(さす)りながら声をかけるが、本人には聞こえない。

 そんな時だった。

 

「「「ゴホッ!!カハッ!!」」」

 

  ドン!!バリン!!

 

何かを叩く音、ガラスが割れる音がホームに乗り上げ、横倒しになった列車から聞こえた。

 西住みほはハッとその列車を見上げた。

 

「「「ふっひっひっひ……」」」

 

その横倒しになった列車から、若い車掌・ジョニー・マクレー(おっさん)、そして村田イブキが笑いながら這い出てきた。3人は血まみれ、服もあちこち破け、焦げているが……五体満足のようだ。

 

「村田さん!!マクレーさん!!」

「‘‘新巻のお兄さん’’!!」

 

西住みほと美竹蘭は這い出てきた3人に駆け寄った。

 

 

 

 

「(英語)ふっひっひっひ……なんだぁ?くっくっく……」

「へへへ……‘‘大丈夫だ’’って言っただろ?くっくっく……」

「ははは……生きてる、生きてる!!」

 

俺はガラスの破片でさらに傷ができるのを無視して何とか這い出た。そして血と汗とホコリで汚れたてで二人の頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 数分後、俺は『二人の頭を撫でた行為はセクハラではないか?』と思い始め、二人の動向にビクビクしていたのはナイショだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、野次馬を下がらせてくれ!!……構内は怪我人だらけです。幸い死人は出ていませんが、妊婦が破水したのと、心臓発作による重体が1名ずつです。」

 

刑事が俺とジョニー・マクレー(おっさん)、そして藤原さんを手当てしているバンに来て報告してくれた。

 

「(英語)死人はいなかったらしい。重傷者は2名だと。」

 

俺は刑事さんの報告を訳し、ジョニー・マクレー(おっさん)に伝えた。

 

「(英語)全く、死人が出なくてよかった。二人は大丈夫か?……って痛い、痛いから!!もうちょっと優しくやってくれ!!」

 

藤原さんは手当をされながら訊ねた。

 ついでに、藤原さんは爆発が起こった時、西住さんと美竹さんに覆いかぶさって二人を守ったらしい。

 

「(英語)あぁ、耳鳴りがひどい。」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は冗談っぽく笑って言った。

 

「(英語)血を流し過ぎて、少しボーっとしますね。」

「い、イブキ様!!動かないでください!!」

「ムラタ!!君は普通死ぬような目に会ってるんだぞ!?」

 

俺も首を回し、笑いながら言うと……手当をしていたリサとワトソンから叱責をもらった。

 

 

 

 俺達のおかげで何とか死者は出なかったものの、大量の負傷者は出た。そのために警察や救急だけでは人が足りず、東京武偵高の救護科(アンビュラス)衛生科(メディカ)、そしてその生徒たちを運ぶ車両科(ロジ)もここにいるのだ。

 ついでに、この事件が起こったと聞かされ、リサとワトソン‘‘だけ’’は慌ててここまで駆けつけてくれたのだ。他のみんなは……『いつもの事だと』笑って流していたらしい。

 

 

 

 

 ……『どうせ大丈夫だ』と信用されて嬉しいやら悲しいやら

 

俺は思わずため息をついた。

 

「(英語)全く、君達と車掌はよく生きてたね、奇跡だy……いぃいいいい!!痛い!!痛いから!!」

「(英語)あぁ、それが問題だ。」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)はメチャクチャ痛がってる藤原さんを無視し、呟くように言った。

 

「(英語)何か問題でもあるのか?」

 

俺は何が問題だか分からなかった。ジョニー・マクレー(おっさん)は、刑事としての長い経験から何かを感じ取ったのだろうか?

 

「(英語)その奇跡ってやつだ。あの時間で普通ここまでやれるか?」

「(英語)無理だ。だからやらせたんじゃ……」

 

俺の言葉に、ジョニー・マクレー(おっさん)はゆっくりと首を横に振った。

 

「(英語)さっき地図を見せてもらったが、あの時間じゃ無理だ。きっと俺達がゲームに勝とうが負けようが、結局爆発していた。」

 

確かに、上野を過ぎてすぐに爆弾は混ざり始めた。『Die Hard3 in Tokyo  一般人でこの殺気って……』で田中さんが証明した通り、混ざり合った爆薬はとても不安定で少しの揺れでも爆発する。そんな危険物を車内に置いたらどうなるかは……少し考えればわかるだろう。

 

「(英語)ここを狙った理由は?」

「(英語)分からんが……必ず何かあるはずだ。……イツツ」

 

おっさんはポケットからグシャグシャのタバコを取り出し、ジッポで火をつけた。

 

「(英語)なるほど、考慮しておきm……待って!!何そのぶっとい注射!!待って!!やめて!!

「「「うるせぇ!!!」」」

「あぁあああああ!!!」

 

藤原さんの抵抗は虚しく、ぶっとい注射を打たれたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤原さんって注射、苦手なんですか?」

「うん……」

「予防接種の時や採血の時はどうしてるんですか?」

「そういう時はあらかじめ知ってるからね。護摩焚いて、精神統一して、自己催眠かけてそれで行くんだ。」

 

 ……マジで苦手なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 手当が終わった後、俺とジョニー・マクレー(おっさん)・藤原さんは違うバンに案内された。そのバンには西住さん・西住さんそして……HS部隊第一中隊(国内担当)隊長:鈴木敬次大佐と副隊長:瀬島龍二郎中佐、その他スーツ姿の男数人がいた。

 

「「……ッ!?」」

 

俺と藤原さんは慌てて敬礼をすると、二人は返礼をしてきた。

 

「村田大尉、藤原、気を張らなくていい。楽にしろ。」

 

瀬島中佐からそう言われ、俺と藤原さんは深く椅子に座った。

 

「そうそう、気張ったって何にもなりゃしないぜ?……そう言えば村田君とちゃんと話すのは初めてだっけ?鈴木敬次、服を見ればわかると思うが陸軍所属さ。」

 

鈴木大佐はヘラヘラと笑いながら俺に手を差し出し、握手を求めてきた。しかし、俺へ向ける鈴木大佐の圧は藤原さん以上だった。

 

「ハッ!!よろしくお願いいたします」

 

 ……ヤバい、下手したら『辻・神城さんクラス』はあるぞ!?

 

俺は冷汗をかきながら鈴木大佐と握手を交わした。

 

「お、お母さんぐらい怖い人、初めて見た。」

 

西住さんがボソリと言った独り言が、俺には聞こえた。

 

 ……おいちょっと待て西住さん!?あんたこういう人に今まで非難されてたの!?

 

のちに西住さんの母親:西住しほさんが黒森峰女学院で戦車道の指南をしていたと知り、『黒森峰女学院=世紀末』と確信するようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  バン!!

 

バンの扉が閉まり、車内は完全に密室になった。

 

「(英語)こんにちは!!鈴木敬次です。ところでこの人物を見たことはあるかい!?」

「この人物を見た事がありますか?」

 

鈴木大佐と瀬島中佐はそう言って‘‘写真が印刷された紙’’を俺とジョニー・マクレー(おっさん)、西住さん・美竹さんに回した。

 

 紙に印刷されていた写真には……諸葛静幻の他に『丸メガネをかけ、口ひげを生やしたハゲ老人』、『老け顔の苦労していそうな青年』がいた。

 

 ……あれ?このメガネハゲ。芸人&映画監督の『ビート板たかし』に似てないか?

 

「(英語)知らんな」

「「知りません」」

 

俺以外の3人は即答した。俺は余計に言いづらくなった。

 

「(英語)諸葛静幻は極東戦役(FEW)宣戦会議(バンディーレ)で。その他は知りません。」

「(英語)あぁ村田君、さすがにそれは分かっているさ。それ以外を聞いているんだぜ?」

 

俺は鈴木大佐の言葉に、首を横に振って答えた。

 

「(英語)この二人、中国マフィア・藍幇(ランパン)の幹部クラスさ。『ハゲメガネ』のほうが‘‘劉 翔武(りゅう いーう)’’、老け顔の方が‘‘司馬 鵬(しば ほう)’’。今回の事件の首謀者だと見ている。ま、ほぼ当たりだろうね。」

「彼らは中国マフィアの幹部で、今回の事件の首謀者と考えられています。」

 

鈴木大佐と瀬島中佐説明を始めた時、車のドアを叩かれ、扉を開けられた。

 

「‘‘サイモン’’から電話です!!」

 

扉を開けた女性刑事(?)の言葉に、車内は騒然となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(英語)俺達の事は伏せてくれよ?」

「私達の事は伏せてくれると嬉しい。」

 

鈴木大佐と瀬島中佐がそう言った後、‘‘サイモン’’からの電話を繋げた。

 

『(英語)やぁ!!まさかあんなことをして、二人が生きているとは思いもよらなかったよ。それに近衛師団も説得して……どんな魔法を使ったんだい?ジョニー君?イブキ君?』

 

‘‘サイモン’’の陽気な言葉が車内に響きわたる。

 

「(英語)信心深い結果だ!!」

「(英語)日頃の行いの結果だ。神様がそれを見てくれたんだろ?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)と俺はバカバカしそうに‘‘サイモン’’に答えた。

 

『(英語)まぁ良い。バンの中にいるのは誰かな。当ててみよう……軍の鈴木君に瀬島君。警察の丹波君と相川君。外務省やその他に矢部君に満島君かな?』

 

‘‘サイモン’’の言葉に、車内の巻き込まれた俺達四人以外の全員が何らかのポーズを取った

 

「「「「「「……あぁ」」」」」」

 

 ……おい、嘘だろ!?このバンにいる全員を‘‘サイモン’’は監視している!?

 

俺は車内を見渡すが……怪しそうなものは一つもなかった。

 

『(英語)さて、そろそろ役者がそろったな?では、リハーサルは終わりだ。さて、首都圏には小学校・中学校・高校・大学・短大・専門学校など様々あるが……その一つに2トンほどの爆弾を仕掛けた。タイマーで午後3時ジャストに爆発するようにセットしてある。』

「「「「「「……」」」」」」

 

西住さんと美竹さん以外の全員は、驚きのあまり何もしゃべることができなかった。

 

 ……学校にだと!?

 

俺は小学校に通う家族『八神はやて』を思い出した。

 

『(英語)沈黙は‘‘理解の証’’ととるよ?』

「……今、2トンの爆弾と言ったのか?しかも小学校に?」

 

瀬島中佐の緊迫した声が車内に響き渡った。

 瀬島中佐は大の‘‘親バカ’’で、長女が確か小学生だったはずだ。

 

『あぁ、そうだ。余計な口を挟むな。』

 

‘‘サイモン’’は日本語でそう答えた。そのおかげで西住さんと美竹さんはやっと事態の深刻さを理解したようだった。

 西住さんは悟りの境地までいったのか、無表情のままドッシリと椅子に座り、美竹さんは混乱している。

 

 

『(英語)‘‘Simon says……学校から生徒達を避難させようとすれば無線で爆破する。止める手段は一つ、ジョニー君とイブキ君、そしてお嬢さん(フロイライン)に新しい命令を与える。’’』

 

「(英語)おい待て!!西住さんはお前の弟と関係ないだろ!?何故関わらせる!!」

 

俺は声を荒げて反論した。

 

『弟のことまで調べられたとは感心感心。まぁ……私は根に持つタイプでね。彼女にはまだ参加してもらう。……あぁ、もう一人巻き込んだようだが、そっちの方は解放してもいいぞ?私を怒らせてないからね。』

 

‘‘サイモン’’の言葉に西住さんは‘‘虚ろな目’’をしながらカラ笑いをし始め、美竹さんはキョトンとしている。美竹さんは西住さんが‘‘サイモン’’を怒らせるところを想像できないのだろう。

 

 

『(英語)では命令を与えよう。旧芝離宮恩賜庭園の中島に携帯を置いてきた。40分以内に向かえ。余裕で着くはずだ。君達が利口ならそこにある爆弾を探し出し、解除できるだろう。……おっと、忘れるところだった。起爆装置が安物でね。警察や軍で使われる無線の周波数に反応し、誤作動を起こしやすい。なるべくなら無線を使わない事をお勧めするよ?では。』

 

  ッー、ッー、ッー……

 

 電話が切れた。その時、空しい笑い声と共に、ボヤキが聞こえ始めた。

 

「私、またあんなことしなきゃいけないんだ。さっきも死にかけたのに……アハ、アハハ、アハハハハ!!!」

「みほ!?大丈夫!?」

 

美竹さんは西住さんの肩を持って上半身を揺らすが……悲しいことに笑い声がさらに大きくなっていく。

 

「(英語)警察庁長官は?」

 

スーツ姿の一人が尋ねた。英語で話しかけたのは、女子高生二人に話を聞かせないためだろうか。

 

「(英語)ただいま‘‘不倫疑惑’’について記者会見中です。何時来られるか分かりません。」

「「「「「……は?」」」」」」

 

俺は急いでスマホを出し、ニュースを見ると……不倫疑惑についての記者会見をやっていた。

 

 ……‘‘サイモン’’め!!これを狙ってやりやがったのか!?

 

「(英語)昨日、ある雑誌にやられて……スイマセン。」

「(英語)しかも18歳未満だったので余計に問題になりまして……」

 

俺は頭が痛くなってきた。‘‘四次元倉庫’‘からアスピリンを1錠取り出して飲む。

 

「(英語)とりあえず呼べる幹部職員を集めようぜ。」

 

鈴木大佐は重苦しいオーラを放ちつつ、飄々(ひょうひょう)と言う。

 

「(英語)管轄がどうとは言わないだろうな。」

 

瀬島中佐も鈴木大佐に負けないほどのオーラを出し、‘‘脅迫’’と言われてもしょうがないような声色で言い放った。

 

「(英語)私も大学に息子、中学と小学校に娘が通っている。外務省はいくらでも手を貸そう。私が責任を持つ」

 

瀬島中佐の言葉に、スーツ姿のメガネをかけたガリガリの中年男性がどっしりと構えていった。

 

「(英語)警視庁は今すぐ3000ほど出せる。緊急動員で……14時以降までには8000はでる。」

 

スーツ姿の小太りの男は時計を見ながらそう言った。

 今の時刻は11時30分前。8000名を動員するには2時間半以上はかかるのだろう。

 

「(英語)藤原君、(こっち)はどうだって?」

 

鈴木大佐の言葉で俺は藤原さんを見た。藤原さんは今まで携帯で誰かと話をしていたようだ。

 

「(英語)第1師団全て、近衛第2旅団と近衛工兵大隊が動かせます。横須賀・厚木・横田・入間周辺は海軍と空軍が。1時間以内に宇都宮の第14師団が首都圏北部で捜索を始める様です。」

 

藤原さんは‘‘どす黒いオーラ’’を放ちながら報告した。

 

「よし、じゃぁ始めようぜ。あんなクズ野郎に俺達が負けるわけがない。そうだろう?」

 

  パン!!

 

鈴木大佐はそう言って手を叩いた後、俺とジョニー・マクレー(おっさん)、そして西住さんを車外へ追い出した。

 

 

 

 

 

 

「(英語)村田君、西住君へ説明しておいてくれよ?……何かあったら電話だ。交換台を通して話せるはずさ。なるべくなら軍の方が良いな。……頑張れよ?」

「(英語)ハッ!!」

「(英語)あぁ……」

 

鈴木大佐の言葉に俺は敬礼し、ジョニー・マクレー(おっさん)は無言で頷いた。

 

「さぁ行くぞ、西住さん。大丈夫、まだ地獄の一丁目だ。」

「(英語)ったく、なんだってこんな目に会わなきゃなんねぇんだ」

「アハハ……もうヤダ、帰りたい……」

 

俺とジョニー・マクレー(おっさん)は西住さんの手を引き、鏡高組から奪った(借りた)センチュリーに投げ入れようとした所……美竹さんが駆け寄ってきた。

 

「(英語)なんだぁ?お前はもういらないって言われただろ?」

「美竹さん、どうした?」

 

俺とジョニー・マクレー(おっさん)の言葉をかけられた美竹さんは(うつむ)いた後、赤面しながら俺達に向き合った。

 

「みほも、‘‘新巻のお兄さん’’も、おじさんも、死なないで、無事に戻ってきてください……」

 

小さい声ではあったが、俺達の耳にはちゃんと答えた。西住さんもその言葉を聞き、虚ろだった目に光が宿る。

 

「「「あぁ!!」」」

 

俺達はそう言った後、センチュリーに乗り込んで勢いよく旧芝離宮恩賜庭園へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  プルルルル……

 

出発してすぐ、俺の携帯が鳴り始めた。その相手は……藤原さん!?

 

「はい、もしもsh……」

『村田かい?鈴木大佐(HS部隊第一中隊中隊長)から伝言だ。‘‘第一中隊の本気を見せてやる’’だそうだ。』

「……え?」

『‘‘学校の爆弾’’と犯人は心配するな。僕達に任せろ!!』

 

  ッー、ッー、ッー

 

電話が切れた。俺は鈴木大佐の伝言と、藤原さんの言葉が己の心に響き渡った。

 

 ……あぁ、やってやるさ。今までの様に信用できない警察や軍じゃないんだ。

 

俺は‘‘ナカジマ・プラザ’’・‘‘ジョン・F・ケネディ国際空港’’・‘‘ロスの中国総領事’’の事件を思い出した。

 

 ……あの時は地元警察も、軍も信用できなかった。しかし、今回はどうだ?

 

 

「(英語)なんだって!?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)がハンドルを握りながら聞いてきた。

 

「(英語)『援護は任せろ』だと!!」

 

俺の言葉に、ジョニー・マクレー(おっさん)はにやりと笑った。

 

「(英語)なんだ、いつも以上に頼りがいがあるじゃねぇか!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)も同じことを考えていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イブキ達が車で旧芝離宮恩賜公園へ向かい数分後、鶯谷駅(うぐいすだにえき)にいた警察車両はごく一部を残し、ほとんどが爆弾探しへ向かっていった。

 その警察の様子を近くのビルの屋上から観察していた白人の男性がいた。

 

「‘‘撒き餌’’につられたな。」

 

その白人の男性は双眼鏡を外し、観察を止めた。

 

「始めろ」

 

白人男性はニヤリと笑いながら、作戦開始の合図を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 『戦車動かせるのに、車を動かせないわけがないだろう』と言う考えから、西住みほは車を運転できると言う設定です。


 『ガールズ&パンツァー』の西住みほ、そして『BanG Dream!』:Afterglowの美竹蘭が出会いました。彼女達の出会いで二人はどうなるのか…………は閑話で。


 『ビート板たかし』とは…‥『本名:南野たかし』。誰がモデルかは言うまでもありません。




Next Ibuki's HINT!! 「博物館」 

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