この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 お気に入りが500を越えていました。
 本当にありがとうございます!

 完結まで書けるように頑張っていきます!

 今回は久しぶりの5000文字です。

 あまり話が進まない……。


第二十七話 『この歩く天災に爆裂を!』

    白奈side

 

 私は城壁の塔の上から、遠くに辛うじて見えるダクネスとカズマをボーっと見ていた。

 こうしてボーッとカズマを見ていると、昨日のお風呂の一件が思い出されそうになり、顔が熱くなりそうになるのを頭を降って思考を振り払う。

 

 今は、デストロイヤーに集中!

 

 視線を下に向けると、ゴーレムを作るため、人が慌ただしく動いていた。

 現在、カズマは彼処から動かないダクネスを説得すると言っている。

 

 今回の作戦の私の役割は全体の支援と内部に入った時のゴーレムとの戦闘。めぐみんやアクアみたいに何かに特化している訳じゃないからね。

 

 ふと自分の冒険者カードを取り出し見る。

 そこに表情されているスキルポイント欄を見ると、現在のスキルポイントは23ポイント。

 最初に使って以降、使ってないのでレベルアップで増えた事で、これだけ貯まっていたんだろう。

 

 これだけあるなら、今回使える何かのスキルを習得できるはず!

 

 こう言う時こそ、貯まったスキルポイントを使う時だ。

 そう考え習得可能なスキル欄を確認する。

 そこには《自己付属魔法(火)》《両手剣》《接近格闘スキル》などの色々なものが表示されていた。

 

 このスキルはスキルポイントが足りないし、これは今回使えない………………あっ。

 

 目を走らせていくと一つのスキルで目が止まった。

 

 「空間転移魔法……か」

 

 そこには、《空間転移魔法》と書かれたスキル名がある。

 空間転移魔法は文字通り指定した場所にテレポートできる魔法だ。

 勿論指定した場所なので、一度は行ったことがある場所じゃないと、テレポートできない。

 一応ランダムテレポートと呼ばれるのがあるが使用する機会は少ないだろう。

 これなら、今回て言うか結構使える可能性があるかもしれない。

 恐らくあそこから動かないダクネスもデストロイヤーによって本当に危なくなったらこの魔法でアクセルの門付近に強制緊急待避させる事が出きる。

 消費魔力が多いので、あまり何回もは無理だが、私の魔力量を考えると三回くらいはできるだろう。

 更に、デストロイヤー内部にはゴーレムがいるらしい。となると、剣の耐久値も上げた方がいいだろう。

 そう考え、残りのスキルポイントを全て消費して《空間転移魔法》と《物理防御》を習得した。

 

 「おーい、シロナー! 悪い、説得は失敗した。あの頭の固い変態を守る為にも絶対に成功させるぞ。そっちは大丈夫か?」

 

 見ると、カズマがこっちに向かって歩いてきていた。

 どうやら、かなりの時間冒険者カードを見て悩んでいたらしい。

 カズマの言葉でもう一つの自分の役割を思い出す。

 

 「ダクネスなら今テレポート習得したから大丈夫だよ。めぐめんは………この通りです。………ごめん」

 

 「だ、だだ、大丈夫です……! わ、私なら大丈夫……! ぜ、絶対にやれる……!」

 

 視点を右の方に向けるとめぐみんが緊張気味にぶつぶつと言いながら下を向いていた。

 

 これは私の役割なんだから何とかしないと!

 

 「ねえ、めぐみん。何度も言うけどめぐみんなら大丈夫だから。い、いっかい落ち着いて、いざとなったらダクネスは強制的にテレポートさせるからね」

 

 私はめぐみんの隣に屈み混むと、緊張気味のめぐみんに安心される様に出来るだけ優しくそう告げた。

 

 「そ、そそ、そうですか………! だ、だだだ、大丈び……! わ、私は強い……! わ、我が爆裂魔法で消し飛ばしてくれるわあああああ……!」

 

 「ちょっ、待って早いから! 本当に落ち着いて!」

 

 それよりも……。

 

 「ねえ、あんた頭から煙上がってるけど大丈夫なの? なんなのそれ?」

 

 「大丈夫ですよアクア様……。これはその、このよく晴れた天気の中、長時間お日様の日を浴びているので……」

 

 正面から見て、左側の城壁の塔の迎撃地点では、アクアとウィズが屈み混み、何かを話している。

 下ではアーチャーの人達が先がブック状になっているロープのついた矢を弓につがえ、何時でも動きを止めたデストロイヤーに乗り込める様に、ロープを張れる準備を終えていた。

 そして、その他の私達を除く冒険者がゴーレムに効果が高そうな、ハンマーなどの打撃武器を持って集まっていた。

 

 『冒険者の皆さん、そろそろ機動要塞デストロイヤーが見えてきます! 街の住人の皆さんは、直ちに街の外に、遠くに離れていて下さい! それでは、冒険者の各員は、戦闘準備をお願いします!』

 

 

 

 機動要塞デストロイヤー。

 

 それはどこかの私と同じように特典を貰った日本人が、冬将軍の様に、適当に名前をつけたらしい。

 適当に名前をつけないでほしいと言いたい所だけど、その姿を見たら殆どの人は納得できると思う。

 遠く離れた丘の向こう。

 そこから最初にその頭が見えきた。

 まだ遠くだと言うのに、感じる軽い振動。

 ほんの僅かなものだけど、確かに大地が震えている。

 

 「で、でかい……」

 

 思わずそんな事を私は呟いた。

 爆裂魔法の威力は、めぐみんとの長い付き合いで知っている。

 だけど、これは………。

 

 「おい、これ無理じゃねえか? いけるのか?」

 

 そんな私の心で思った事をカズマが隣で言った。

 

 「『クリエイト・アースゴーレム』!」

 

 クリエイターの皆さんが、地面の土でゴーレムを作り出す。

 この街は駆け出し冒険者ばかりの街だ。

 恐らく、より強いゴーレムを作るために、ゴーレムの活動時間を削ったため、このギリギリのタイミングで生み出したんだろう。

 

 「ちょっとウィズ! 大丈夫なんでしょうね! これ本当に大丈夫なんでしょうね!?」

 

 私とカズマ、めぐみんが待機している場所で、アクアが隣に佇むウィズに何度も確認していた。

 

 「大丈夫です、任せてくださいアクア様。これでも最高位のアンデットなのですから」

 

 「本当に大丈夫なんでしょうね!?」

 

 「……もし失敗したら、皆で仲良く土に還りましょう」

 

 「うぇっ!? 冗談じゃ無いわよ! 冗談じゃ無いわよ!! ちょっと二人ともー、そっちは大丈夫なんでしょうねー!」

 

 会話はよく聞こえないが、アクアがこちらに確認してくる。

 

 「大丈夫、我は紅魔族随一……!」

 

 大丈夫かな………?

 

 私は隣でガチガチに緊張しているめぐみんに。

 

 「ねえ、めぐみん。大丈夫だから、失敗しても街を捨てて皆で逃げればいいだけだよ。だからそんなに緊張しなくても大丈夫だから」

 

 「そうだぞ。ちょっと落ち着け。失敗しても誰も責めないさ」

 

 今回、やる事がほとんどない私と指示役のカズマは、そう気軽に言った。

 

 「だだだ、だだ、だい、大丈夫です!」

 

 めぐみんが、噛みまくりながら言ってくる。

 だけど、めぐみんの気持ちは分かる。めぐみんだけでなく、ここにいる多くの冒険者はまだ駆け出しばかりなのだ。

 

 「くるぞー!」

 

 テイラーの声が草原に響いた。

 

 

 

    カズマside

 

 アクアが魔法を放つタイミングや指示は、何故か俺に一任されている。

 ギルドの職員の人に指示を出す為の拡声器の様なものまで預けられた。

 俺が、今回の作戦の主要人物である、アクアやめぐみんのパーティーリーダーだから、と言うことはらしい。

 いつの間にか、デストロイヤーがすぐそばまで接近していた。

 ヤドカリの様に砦みたいな建造物を載せ、それ以外にも甲板の部分の所々にバリスタを搭載した、クモの様な外見の巨大ゴーレム、機動要塞デストロイヤー。

 そのふざけた名前とは裏腹に小さな城にも匹敵する巨大な機動要塞は、仕掛けられた数々の罠を物ともせずに、地面を踏み砕く轟音を響かせながら、

 

 『アクア、今だ!』

 

 俺達の街を蹂躙すべく、迎撃地点へて突っ込んできた!

 

 「『セイクリッド・スペルブレイク』っ!」

 

 アクアがベルディアの時のように何処からか飛んできた杖を手に取ると、俺の合図で魔法を放った。

 アクアの周囲に複雑な魔方陣が5つ浮かび上がったかと思うと、その杖の先端をデストロイヤーに向けて、魔法を撃ち出した。

 撃ち出された魔法がデストロイヤーに触れると同時に、一瞬デストロイヤーの巨体に薄い膜の様な物が張られて抵抗したが、それがガラスでも割られる様に弾け散る。

 多分弾け飛んだあの膜が、魔力結界とかいう物なのだろう。

 なら、これで魔法が届くはず。

 俺は拡声器に向かって大声で!

 

 『今だ! ウィズ、頼む! そちら側の脚を吹っ飛ばしてくれ!』

 

 ウィズに指示を出し終えると、続いて、緊張で震えているめぐみんに。

 

 「おい、お前の爆裂魔法へと愛は本物なのか?」

 

 その言葉で俺が何を言おうとしているのか、めぐみんの隣にいたシロナは察したのか。

 

 「そうだよ、いつも爆裂魔法爆裂魔法言っている、めぐみんがウィズに負けたらみっともないよ! めぐみんの爆裂魔法はアレも壊せないほどの魔法なの!?」

 

 「な、なにおうっ!? 我が名をコケにするよりも、一番私に言ってはいけない事を口にしましたね! 良いでしょう! 見せてあげますよ、本当の爆裂魔法を!!」

 

 怒りで緊張を吹き飛ばし、パッと顔を上げためぐみんが、朗々力強く詠唱を………!

 

 「「黒より黒く、闇より暗き漆黒に」」

 

 俺達の待機する目の前をデストロイヤーが轟音と共に通り過ぎようとする中。

 

 「「我が深紅の混淆(こんこう)を望みたもう」」

 

 かつては、凄腕アークウィザードの名をほしいままにした、現在は経営難に苦しむ小さな魔道具店のリッチーと。

 

 「「覚醒のとき来たれり。無謬(むびゅう)の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」」

 

 そして今、頭のおかしい爆裂娘の名をほしいままにしている、たった一つの魔法に全てを捧げた、紅魔族随一のアークウィザード。

 その二人の最強の攻撃魔法(爆裂魔法)が、デストロイヤーへと放たれる。

 

 「「『エクスプロージョン』っっ!!」」

 

 同時に放たれた二人の魔法は、機動要塞の脚を一つ残らず粉砕した!

 

 突然脚を失ったデストロイヤーが、とんでもない地響き、轟音と共に、平原のど真ん中に底部をぶつけ、そのまま地を滑る。

 最前線で立ち塞がるダクネスの目と鼻の先で動きを止めた。

 爆砕された巨大な脚の破片が冒険者の頭上に降り注ぐ。

 だが、ウィズの方は殆ど破片は降ってこない。

 

 「ぐぬぬ………流石はリッチー。私を遥かに上回るレベル……」

 

 めぐみんがうつ伏せに倒れたまま無念そうにそう呟いた。

 

 「カズマ、めぐみんに魔力お願い」

 

 「ああ」

 

 その小さな体にシロナの魔力を動けるぶんだけ分けてあげると、杖を支えに、めぐみんはフラフラしながら魔力を使い果たした後の真っ青な顔で。

 

 「く、悔しいです……。次こそは……!」

 

 「いやいや、めぐみんは良くやったよ。相手はリッチーで、魔道を極めたアンデットだよ。勝てないのが当たり前だよ。レベルが上がったら絶対にめぐみんが勝つから。今は休んでね」

 

 シロナが木陰に寝かせようとすると、

 

 「もう一度………! もう一度チャンスが欲しいです! 私の爆裂魔法こそ一番だと………」

 

 「ちょっ、ちょっと上着を掴まないで! 流石に私の魔力じゃ爆裂魔法に使用する魔力に足りないから! 分かったから、さっきは調子が悪かっただけだよね! だから、今は安全な所で休んでてね」

 

 めぐみんを木陰に引っ張ってそのまま横に座らせると、他の冒険者が未だ降り注ぐ破片から頭を頭を守る中、アクアとウィズが俺の元にやって来た。

 そして、少し遅れてシロナも。

 ダクネスは、降り注ぐ破片を気にもせず、目を閉じることもなく、一歩もその場から動かないでいる。

 俺が改めてデストロイヤーの巨体を眺めると、脚を失った巨大要塞は沈黙を保っていた。

 降り注ぐ破片が大体収まり、落ち着いて状況を把握出きるようになってきた冒険者から。

 

 「やったか!?」

 

 「俺、これが終わったら結婚するんだ……!」

 

 ちょっ、皆ここでフラグになるような発言は!?

 

 こう言う時はフラグになるような発言は慎み、ここまま油断せずに………!

 

 「やったわ! さあさあ、帰ってお酒でも飲みましょうか! 今回の報酬はお幾らかしらね!!」

 

 「このバカー! なんでお前はそうお約束が好きなんだ!」

 

 「あ、アクア、お願いだからそれ以上言わないでここでそんな発言をしたら………!」

 

 「えっ?」

 

 迂闊な事を口にしたアクアを俺達二人は必死に止めた。

 ………だが、それは既に遅かったらしい。

 

 「……? なんでしょうか、この音は……?」

 

 アクアと共に近寄ってきたウィズが、不安そうにデストロイヤーの巨体を見る。

 何かの警告音に聞こえる様なその音は、明らかにデストロイヤーから聞こえてくる。

 それに気づいた冒険者達が不安げにその巨体を見上げる中。

 それは唐突に。

 

 『被害甚大につき、自爆機能を作動します。搭乗員は直ちに避難してください。搭乗員は直ちに避難してください。この機体は……』

 

 デストロイヤーの内部から流れ出したその機械的な音質は、何度も繰り返される。

 

 「ほら見た事か!」

 

 「ええー!? 待って! これ、私のせいじゃ無いからっ!!」

 

 




 今年中に、二章は終われませんでした。

 第二章は恐らくエピローグ含めて三、四話で終わりだと思います。

 こんな時間の投稿で申し訳ないです。

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