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それでは。
──それは絶対に避けたかった選択で。でも、大切なものを守るにはそれしかなくて。妥協に妥協をかさねたうえで考えてみて、それでもやっぱり嫌で。しかしながら、もうそうする他道はなく。
そんな風に考えながら、嫌々に、本当に嫌々に、『帝国軍』に入隊した。
家庭に母親というものが存在せず、唯一の父すら既に他界。十代だった当時の自分が、自身と食べ盛りの妹を養っていくのは正直言って不可能だった。
せめて父親が少しの貯金でもしていたら良かったのだが、社会的に見て『悪い』大人に分類されるであろう父に、期待しろというほうが無理な話だ。
悩みに悩んだ結果、思い浮かんだ職業は『軍人』だった。
帝国軍には年齢制限がなく、尚且つ従順で使える者には多額の給料を払う。幼少期を森で過ごしたため、最強とは言えずとも、ある程度腕には自信があった俺にとっては充分すぎるほど、魅力的な職業だった。
…ある一点を除いては。
危険な職業とは百も承知。仕方のない事だと思うし、死ぬこと自体は俺にとってさほどの問題ではない。
では何が問題なのか。
──妹と会える時間が減ることだ。
可愛い妹が「お兄ちゃん、わたし寂しいよ」と泣いてしまうではないか。いや妹は泣き顔もパーフェクトに可愛いが。
考えぬいた結果、やはり軍へ入隊。可愛い妹と会えなくなるのは確かに悲しいが、その妹を守るためにも金は必要だ。
幸いにも、軍には近衛兵というものがあるし、そこに入れれば余程の事がない限り帝都を離れることはないだろう。
しかし、ここから予想外の展開が続く。
何の因果か、この世に四八しかない兵器『帝具』に適応してしまい。
「守るより攻めるほうが向いているだろう」と、近衛兵ではなく同期のエスデスが率いる隊に入れられ。
最前線でバッサバッサと人を殺しているため、革命を目論む連中のブラックリスト入りを果たし。
想像以上にやんちゃであった妹は、何を考えたのか、俺が留守にしている間に帝都警備隊に入隊。その後、なんと帝具を手に入れ。
それをきっかけに初めての兄妹喧嘩。
そうそう上手くはいかないものだ、と二十を過ぎて漸く気がついた。
「あー。早くセリューに会いたい…」
「…?何か言いましたか?ミラルド副将」
「…いや、何でもない」
そんなこんなで、気づいたら帝国軍の副将軍にまでなっていた。それも、所属は帝国最強の攻撃力とまで言われるエスデス軍で。
──人生甘くないとは分かっているつもりだが、これは些か苦すぎる仕打ちではないだろうか。